配管肉厚測定ロボットの開発 - 福岡県産業・科学技術振興財団

財団法人 福岡県産業・科学技術振興財団
産 学 官 共 同 研 究 開 発 事 業
研究成果報告書
配管肉厚測定ロボットの開発
(平成2 1年度~平成22年度)
1
目
次
【研究総括】
配管肉厚測定ロボットの開発
研究総括責任者
・・・・・・1
新日本非破壊検査㈱
和田秀樹
【研究報告】
1.
超音波肉厚測定器の開発
・・・・・・4
新日本非破壊検査㈱
2.
スキャニング機構の開発
・・・・・・7
新日本非破壊検査㈱
3.
スキャニング機構の開発
・・・・・・8
九州工業大学
4. 高速信号処理
・・・・・1 2
新日本非破壊検査㈱
5 . デ ー タ 圧 縮・長 距 離 伝 送
・・・・・1 3
QEL 株 式 会 社
6 . デ ー タ 圧 縮・長 距 離 伝 送
・・・・・1 6
早稲田大学
7. 配管肉厚測定用ソフトの開発
・・・・・1 8
機械電子研究所
8. 走行制御法の開発
・・・・・2 0
機械電子研究所
9. 走行制御法の開発
・・・・・2 2
九州工業大学
【成 果 実 績 】
・・・・・2 5
2
研究 総括
新日本非破壊検査株式会社
メカトロニクス部
課長
1
和田
秀樹
研究開発の背景および目的
近年、国内のプラント設備の多くは、建設から数十年が経過し老朽化が 問題視されてい
る。そのため設備の健全性を維持し生産能力を低下させないためのメンテナンス がより重
要となってきた。これに伴い、設備の健全性を評価するための検査ニーズも増えてきてい
る。そんな中、様々な形状や構造を持ち 膨大な長さの配管設備の点検作業は大きな課題で
ある。
現在、配管の健全性評価のための検査は、検査員により配管の外側から決められたポイ
ントだけを超音波で厚さを測定する手法が主体である。しかしながらこの方法では、局部
的 な き ず や 減 肉 を 見 落 と し や す い 上 、そ の 形 状 や 分 布 を 正 確 に 把 握 す る 事 が で き な い た め 、
補修を行うためにはもう一度詳細な測定 が要求される。また検査を行うため配管の外側を
覆う保温材の撤去や足場の架設など多くのコストも必要になる など課題は多い。
そこで、3次元的に張り巡らされた配管内を自由に移動し、内部から超音波で連続的に
管の全面の厚さを測定するロボット検査システムを開発する。また、測定データからきず
や減肉の形状や分布が簡単に認識できるようなシステムの開発も併せて行う。
測定作業をロボットに行わせることで、今まで人間では困難であった 高所配管、埋設配
管、保温材に覆われた配管などを、配管の内側からその全面の肉厚測定が可能になる。同
時に、自動化による検査コストの抑制だけでなく、検査員個々の技量に左右されず定量的
な測定を行うことができる。
2
研究開発体制
新 日 本 非 破 壊 検 査 ㈱ 和 田 秀 樹 を 研 究 統 括 責 任 者 と し て 、 下 記 「 産 」「 学 」「 官 」 の 研 究 体
制で本研究開発事業を実施した。
研究総括責任者
〈産〉
新日本非破壊検査株式会社
QEL 株 式 会 社
研究代表者:技師長
担
当
研究代表者:課長
担
九州工業大学工学研究院
当
当
大屋勝敬
者:技術職員
早稲田大学大学院情報生産システム研究科
1
和田秀樹
者:百合本淳、永田宗誠
研究代表者:教授
担
〈学〉
井上美和
者:藤本喜久男、宮原直已、高宮弘行
新日本非破壊検査株式会社
〈学〉
和田秀樹
大多英隆
研究代表者:教授
大貝晴俊
〈官〉
福岡県工業技術センター機械電子研究所
研究代表者:課長
担
3
当
石田康弘
者:奥村克博、渡邉恭弘
研究成果の概要
本研究開発では、3連結型ロボットが配管内を自由に移動し、配管内部から超音波で連
続的に配管の全面の厚さを測定するロボット検査システムを 実現することを目的に、技術
的な課題を解決するために、超音波肉厚測定器の開発、スキャニング機構の開発、高速信
号処理、データ圧縮・長距離伝送、配管肉厚測定用ソフトの開発、走行制御法の開発 の7
つのテーマに別け、その要素を各機関の得意分野と結びつけて開発を実施した。開発にお
いては、各機関で研究開発を行ったシステムを、一つのシステム内で動作できる環境を構
築した。その結果、各々のコントローラが他のコントローラに影響を及ぼすこと 無くシス
テム内で動作できることが確認できた。このことはロボットが配管内での移動や測定にお
いて常に安定した状態で動作できることを意味しており、本システムによる測定の 安定性
を保証する意味で重要な要素を確立できたと言える。
4
研究成果の市場性・優位性
検 査 対 象 と す る 配 管 は 、発 電 、ガ ス 、化 学 、鉄 鋼 プ ラ ン ト な ど に 使 用 さ れ て い る 管 径 350
~ 600mm の 配 管 で あ る 。 現 在 、 配 管 検 査 の 市 場 は 数 十 億 円 と 言 わ れ て お り 、 今 後 も プ ラ ン
ト設備の老朽化により拡大していくものと予測される。加えて本装置はこれまで配管の外
側から容易に測定する事のできなかった特殊配管の測定にも対応できる。たとえば原子力
発電所に使用されている冷却用の海水配管のように、配管内面にライニングが施されてい
る配管では、配管の外側からの検査では、配管自体の厚さは測定できてもライニングの厚
さが測定出来ない。しかしながら本システムでは配管内部から測定することで、配管自体
の厚さに加えてライングの厚さも測定できる。これにより従来の検査方法では出来なかっ
たライニング厚さ測定が可能となるうえ、検査効率やコスト面でも大きな 優位性を示すこ
ととなる。
また、新たな市場として原子力発電所を想定した場合、原子炉1基あたりこのような海
水 配 管 の 総 延 長 は 500m 以 上 と 考 え ら れ る 。 ま た 国 内 に は 55 基 の 原 子 炉 が 有 り 、 そ の 総 延
長 は 27。5km 以 上 と な る 。さ ら に 原 子 力 発 電 所 の 定 期 検 査 の 周 期 が 13 ヶ 月 で あ る こ と か ら
その市場はかなり大きなものとなる。
原子力発電所などの重要設備において発生する事故は、その規模の大小を問わず社会的
に大きな影響を与えることから、このようなロボットシステムを使用して、高頻度で検査
を実施することができれば、これらの重要設備の安全性は向上し、事故や災害の防止に大
きく役立つと考えられる。ま た重要設備のメンテナンスにおけるロボット化への展開にも
つながり、新たな市場や雇用が創出できるものと期待できる。
5
今後の具体的な計画
新 日 本 非 破 壊 検 査 ㈱ に て PR を 実 施 し 、 ま ず 配 管 検 査 サ ー ビ ス の 事 業 化 を 行 う 。 続 い て 、
検査サービスの実績を基に販売につなげていく。それと同時に生産・販売・メンテナンス
2
体制についても確立していく。また、機構の改良により対象配管の拡大をおこなうと共に
検査以外での使用についても検討する。
6
研究成果の波及効果
ロボットが検査作業を行う事で、作業時間の短縮化や低コスト化が実現できる 。また高
速 デ ー タ 通 信 を 用 い る こ と で 大 量 の デ ー タ を 取 得 で き 、精 度 の 高 い 寿 命 診 断 が 可 能 と な る 。
これにより設備の安全性や信頼性が大きく向上する。北九州地域には 原子力発電所や大規
模なプラントも多く、それらの健全性維持のために役立つものと考えられる。また、本開
発の成果は配管の検査だけで無く、将来的には配管内の他の作業に応用できると考えられ
る。たとえば補修作業に活用することができれば、一つのロボットシステムとして検査と
補修を連携して実施することが可能となる。
さらに、このようなロボット を活用しメンテナンスを効率化することで、今後問題化す
るであろうプラント設備の老朽化への対策や、地震や津波などの災害発生時の設備への影
響も低減できると考えられる。
さらに、これらのロボットの性能や機能の一部は災害発生現場や被災設備でも活用でき
ると考えられることから、災害状況の観察や、補修作業などにも使用可能であり、災害復
旧にも役立たせることも可能であると考えられる。
7
今後の課題と取り組み
本検査ロボットシステムは配管内を自由に移動し、内部から超音波で連続的に管の全面
の厚さを測定することを目的として開発した。これにより重要な配管設備の検査において
はその性能から、検査精度やコスト面で十分な成果が期待できる。しかしながら プラント
の配管設備には全長数キロメートルにもおよぶ長さの配管も存在し、これらの配管では検
査精度より高速性を要求されることも多くある。そこで本検査ロボットシステムを高速で
適用するための効率的な活用方法について検討し、配管の種類、設備や用途に合わせた検
査手法を確立し、検査の要望に沿った検査手法を提供しなければならないと考えている。
また、発火性の燃料配管や、水中検査のニーズにも応えるために、防爆や防水機構につい
ても検討していく必要がある。
近年アジア地域では多くのプラント開発が行われており、今後アジア地域にお ける検査
市場は急速に拡大するものと推測される。そのため、これらの国々の 配管検査に対する考
え方や規格などのついても調査を行っておく必要があると考えている。
3
研究 報告
1.超音波肉厚測定器の開発
新日本非破壊検査㈱
1―1
メカトロニクス部
課長
和田秀樹
はじめに
遠隔ロボットにより長距離の配管を超音波を用いて肉厚測定する場合、超音波センサと
測定器の距離が長くなり、超音波信号にノイズ成分が重畳し測定精度が低下することがあ
る。そのため測定精度の低下を防ぐため本システムでは超音波探傷器をロボットに搭載す
ることとした。しかしながら 市販の超音波肉厚測定器は高機能ではあるが、サイズが 大き
く、本システムのロボットには搭載することは困難である。そのため、ここでは機能を絞
った専用の小型肉厚測定器を 開発する。
1―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
超音波厚さ測定は超音波センサと超音波探傷器を用いて実施される。超音波探傷器は超
音波センサをコントロールし アナログの超音波信号を生成する装置であり、本システムの
心臓部とも言える。ここでは遠隔操作による測定精度の劣化を防ぐため、 ロボットに搭載
可能で、配管の厚さ測定だけに機能を制限し た小型・高性能な超音波探傷器を開発する。
1―3
目的と目標
遠隔操作ロボットによる配管の連続厚さ測定を高精度で実施するため 、ロボットに搭載
可能な超音波厚さ測定器の開発を目的とし、配管の厚さ測定 だけに機能を特化し、使用す
る超音波センサなどを限定し、可能な限り小型軽量化することを目標とした。
1―4
実験結果
1―4―1
実験基板制作
超音波肉厚測定器の実験基板 を制作し、本研究に最適な回路構成を検討し た。試作した
実験基板の仕様を以下に示す。
実験基板仕様
パ ル ス 幅 : 50~ 300nsec
パ ル ス 電 圧 : 200~ 300V
増 幅 率 : 0~ 60db
セ ン サ 数 : 1ch
表1
実験基板仕様
図1
4
実験基板
1―4―2
要素試験
実験基板を用いて、超音波センサを振動させる
パルスを発生させそのパルスが超音波信号強度に
おぼす影響を調べた。
超 音 波 セ ン サ( 5 MHz)を 用 い て パ ル ス の 幅 と パ
ルス電圧の2つのパラメータを変化させた時の受
信信号強度を図2に示す。
図2
1―4―3
パルス幅・電圧/信号強度
肉厚測定器製作
実験基板の動作試験の結果から超音波センサの信号強度は超音波センサに供給する電圧
パ ル ス に 大 き く 依 存 し て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 パ ル ス 電 圧 に つ い て は 200~ 500V ま で を
基 板 内 で 可 変 で き る 方 式 と し 、200V を 初 期 値 と し た 。ま た 基 板 に 供 給 す る 電 源 に つ い て も 、
ロボットの動作電源からフィルターを用いて生成することとした。
これらの検討結果を考慮し基板の電気仕様を決定し、試作、改良を行い図 1-3に示す
基板を製作した。
基板設計仕様
セ ン サ 数 : 4 ch
セ ン サ 周 波 数 : 5MH
パ ル ス 出 力 電 圧 : 200V
最 大 増 幅 率 : 60db
供 給 電 源 : 24V・ 0,1A
寸 法 : 180×80×30(mm)
図3
1―5
超音波肉厚測定基板
研究成果
図4
超音波波形出力
図5
5
板厚/超音波反射時間
製 作 し た 超 音 波 肉 厚 測 定 基 板 に 超 音 波 セ ン サ ( 5MHz) を 接 続 し 、 そ の 信 号 を オ シ ロ ス コ
ー プ に よ り 観 察 し た( 図 4 )。ま た 板 厚 の 異 な る 試 験 片 を 用 い て 送 信 波 か ら 反 射 波 の 立 ち 上
がりまでの反射時間を測定しその結果を図5に示した。この結果より板厚による反射時間
の変化が直線となることから、この信号から板厚の算出が可能であることが確認された。
1―6
今後の課題と取り組み
今後ロボットの小型軽量化に伴い、基板サイズをさらに小型化する必要があると考えら
れる。また、配管種類により 最適超音波センサを変更する必要が生じた場合でも、それら
に適用できるよう検討を行っていく。
6
2.スキャニング機構の開発
新日本非破壊検査㈱
2―1
メカトロニクス部
課長
和田秀樹
はじめに
配管の肉厚測定に使用する超音波センサは接触式であり、測定はセンサの測定面への接
触状況の影響を大きく受ける。このため 安定した測定値を得るためには、 センサを適度な
力で配管内面に接触させ、超音波が測定面に対し垂直に入射するようにセンサを維持し、
一定の速度で円周方向に回転をさせる機構が必要である。
2―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づ け
スキャニング機構は測定を行う超音波センサを配管内面に押し当て円周方向に走査する
機構である。この機構により配管全周の厚さを連続して測定することが可能となる。 さら
にスキャナの円周方向回転角度、センサの押し付けストロークを計測し制御や厚さ測定デ
ータの管理に用いる。
2―3
目的と目標
高精度で信頼性の高い超音波厚さ測定データを得ることを目的に、一定圧力 でセンサを
面に押し付けるとともに、測定面に対してセンサを垂直に維持することができるセンサ昇
降機構、センサを円周方向に回転させる回転機構、 回転軸の位置を配管中心に調整するた
めの位置調整機構を可能な限り軽量化して製作することを目標とした。
2―4
製作
2―4―1
スキャニング機構設計
超 音 波 肉 厚 セ ン サ を 90°ピ ッ チ で 4 台 搭 載 し 、360°円 周 方 向 に DC モ ー タ で 回 転 さ せ る
機 構 と し 、超 音 波 セ ン サ は DC モ ー タ で ス ラ イ ド シ ャ フ ト と ス プ リ ン グ を 用 い て 押 し 付 け る
機 構 と し た 。ま た 、こ れ ら を 機 構 を 左 右( X 方 向 )、上 下( Y 方 向 )に DC モ ー タ で 移 動 さ せ
る 機 構 を 設 け た 。次 に 位 置 情 報 を 計 測 す る た め に 、回 転 角 度 、X、Y 位 置 は ロ ー タ リ ー エ ン
コーダにより計測し、超音波センサの押しつけはポテンショメータを使用した。
ス キ ャ ナ 部 全 重 量 : 3。 4kg
回 転 ス ピ ー ド : 30°/sec。
超 音 波 セ ン サ 昇 降 ス ピ ー ド : 34mm/sec。
X 軸 駆 動 ス ピ ー ド : 8。 4mm/sec。
Y 軸 駆 動 ス ピ ー ド : 11。 4mm/sec。
X 回 転 軸 調 整 量 : 60mm
Y 回 転 軸 調 整 量 : 60mm
7
スプリング
スキャナ回転用ウォーム
ポテンショメータ
スキャナ回転用モータ
センサ昇降用モータ
センサ昇降用ウォーム
超音波肉厚測定センサ
図1
2―4―2
スキャニング機構
実験機製作
移動ロボットの走行軌道が配管中心からズレる
場合の位置制御機構の動作を検証するために回転
機構の中心軸の位置を水平方向および鉛直方向に、
手動のハンドル操作で移動できるスキャニング機構
実 験 機 (図 2 )を 製 作 し た 。
水 平 方 向 移 動 量 60mm( 3mm/回 転 )
鉛 直 方 向 移 動 量 60mm( 3mm/回 転 )
図2
2―5
スキャニング機構実験装置
研究成果
位置調整機構はロボットの姿勢が変化してもスキャニング機構が常に配管の中心に位置
を維持出来るよう、ロボットの中心軸に対して上下・左右にスキャニング機構を移動 でき
る構造として製作することができた。
2―6
今後の課題と取り組み
この機構は走行機構に比べて重量が重いため、そのため安定した走行を行うためのロボ
ットの重量バランスを考えて、軽量化を行う必要性があると考えられる。
8
3.スキャニング機構の開発
九州工業大学工学研究院
3―1
准教授
大屋勝敬
はじめに
ロボットの配管内移動においてロボットの姿勢が変動した場合、スキャニング機構の回
転中心が配管の中心からずれ てしまいます。回転中心がずれると回転中心から超音波セン
サまでの距離が変化するため、超音波センサの押し付け力や 、各々のセンサの走査速度が
異なってしまい測定精度が悪化するという問題が発生する。この問題を解決するためにス
キャニング機構の回転中心軸の位置制御法の開発を以下の手順で行った 。
3―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
超音波センサの走査の安定性は測定精度に大きな影響を与える。そのためロボットの姿
勢が変化してもスキャニング機構が常に配管の中心を維持 し続けるために、上記2項で製
作した位置調整機構を制御し常に配管中心とスキャナ中心を同じにする必要がある。ここ
ではその制御手法の開発を行 った。
3―3
目的と目標
ロボットの移動の姿勢の変動から生じるスキャニング機構の配管中心からのずれ量を計
測し、そのずれを自動的に補正し、常に配管中心とスキャナ中心を同じにする制御法の確
立を目的とした。
3―4
開発結果
3-4-1
スキャニング機構の回転中心の配管中心からのずれの計測法の開発
図 1 に 示 す ス キ ャ ニ ン グ 機 構 の 回 転 中 心 の 配 管 中 心 か ら の ず れ x p 、y p を 直 接 計 測 す る 手
法が存在していない。そこで、四つのスキャニング機構の部分に装備する距離変位センサ
を 用 い て 腕 部 分 の 距 離 の 変 位 lL 、 l R 、 l A 、 l B を 計 測 す る こ と を 考 え る 。 こ の と き 、 図 1 右
に示す関係式を用いれば、この腕部分の変位よりスキャニング機構の回転中心の配管中心
か ら の ず れ xp 、 yp を 得 ら れ る こ と を 発 見 し た 。
lL
lA
lR
y
yp
xp

x
 x p  cos 
 
 y p   sin 
lB
図1
 lL  lR 
 sin    2 


cos    lB  l A 
 2 
ス キ ャ ニ ン グ 機 構 の 回 転 中 心 の 配 管 中 心 か ら の ず れ xp , yp の 計 測
9
3-4-1
スキャニング機構回転中心制御法の開発
配 管 中 心 か ら の ず れ x p 、 y p の 計 測 値 を 用 い た 回 転 中 心 制 御 法 と し て 、図 3 に 示 す 制 御 法
を開発した。なお、図3は X 軸方向のずれの制御法を示したものである。
X軸方向駆動用
モータへの入力
電圧
vx
X軸方向駆動用モータ
X軸方向のずれ
K 1
Ts  1 s
xp
 fx
コントローラ
図2
3-4-2
スキャニング機構の回転中心の配管中心からのずれ抑制制御法
実験による開発された制御法の検証
スキャニング機構の実験機を用いて、開発した制御手法の有効性を検証した 。
図3
スキャニング機構実験機
初期状態において、スキャニング機構回転中心の配管中心からX軸方向ならびにY軸方
向 に そ れ ぞ れ 約 12mm ず ら し て い る 。そ し て 、超 音 波 セ ン サ を 配 管 円 周 方 向 に 持 続 回 転 さ せ
た 状 態 で 、ス キ ャ ニ ン グ 機 構 回 転 中 心 の ず れ の 抑 制 実 験 を 行 っ た 。実 験 結 果 を 図 5 に 示 す 。
図5において、横軸は時間であり、縦軸はスキャニング機構回転中心の配管中心からのず
れを表している。結果から明らかなように、開発した回転中心のずれ抑制制御法の有効性
が確かめられた。
10
図4
3-5
スキャニング機構回転中心のずれの抑制実験結果
研究成果
3-4に示したように距離変位センサを用いて、スキャニング機構の腕部分の距離を測
定することで、位置のずれを抑制する制御法を開発することができた。
3-6
今後の課題と取り組み
配管自体の変形による影響についても検討しておく必要がある。また、許容できる変形
量についは測定精度と合わせて検証しなければならないと考えている 。
11
4.高速信号処理
新日本非破壊検査㈱
4―1
メカトロニクス部
課長
和田秀樹
はじめに
超 音 波 肉 厚 測 定 器 か ら 出 力 さ れ る 超 音 波 信 号 は ア ナ ロ グ 信 号 で あ り 、そ の ま ま で 長 距 離
伝送するとノイズやケーブルの減衰の影響をうけるため、測定精度が 低下する可能性があ
る。
そ こ で 、ロ ボ ッ ト 側 で ア ナ ロ グ 信 号 を デ ジ タ ル 信 号 に 変 換 し 、信 号 処 理 を 行 っ た う え で 、
PC 側 と 通 信 を 行 う 方 法 を 取 る こ と と し た 。
4―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
超音波探傷器から出力されたアナログの超音波信号の精度を劣化させずに長距離伝送す
るにはデジタル信号変換して伝送するのが有効である。そこで高周波の超音波信号の精度
を 劣 化 さ せ ず デ ジ タ ル に 変 換 す る 高 速 A/D 変 換 器 が 必 要 あ る 。 ま た 変 換 さ れ た デ ジ タ ル 化
された超音波信号は信号処理専用の基板に渡され、圧縮・伝送される。
4―3
目的と目標
こ こ で の 開 発 目 的 は 、 高 周 波 で 連 続 的 に 出 力 さ れ る 超 音 波 信 号 に 特 化 し た A/D 変 換 の た
め の 信 号 処 理 方 法 の 開 発 を 行 う こ と で あ る 。 製 作 す る A/D 変 換 基 盤 は ロ ボ ッ ト に 搭 載 す る
こ と か ら 超 音 波 探 傷 器 と 同 じ サ イ ス (180×80)で 製 作 す る こ と と し た 。
4―4
基板製作
A/D 変 換 の サ ン プ リ ン グ 速 度 は 、 超 音 波 信 号 の 中 心
周 波 数 が 5MHz で あ る こ と か ら 、十 分 に 超 音 波 信 号 の 再
現 が 可 能 で あ る 100MSPS に 設 定 し た 。
また、肉厚測定器へのサンプリングのタイミング信
号 を A/D 変 換 と 同 期 さ せ る た め 、FPGA 内 部 で 生 成 す る
こととした。
図1
4―5
A/D 変 換 基 板
研究成果
ロ ボ ッ ト に 搭 載 可 能 で 、超 音 波 ア ナ ロ グ 信 号 を 100MHz で サ ン プ リ ン グ 可 能 な A/D 変 換 器
を開発した。これにより、長距離伝送による測定精度の劣化が解消された 。
4-6
今後の課題と取り組み
超音波肉厚測定器と同様に更なる小型軽量化を目指す。
12
5.データ圧縮・長距離伝送
QEL 株 式 会 社
5―1
技師長
井上美和
はじめに
A/D 変 換 さ れ た 測 定 デ ー タ は 膨 大 で あ る た め 、 限 ら れ た 時 間 内 で 伝 送 す る に は デ ー タ を
圧 縮 す る 必 要 が あ る 。本 研 究 で は ロ ボ ッ ト と PC の 超 音 波 デ ー タ の 伝 送 を 効 率 よ く 行 う た め
データの圧縮方法を確立する。
ロボット
I/F ボ ー ド
CPU ボ ー ド
制御ボード
制御信号
超音波データ
Ethernet
制御ボード
PC
コントローラ
制御ボード
図1
5―2
伝送システム構成図
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
測定したデータを高速で伝送できなければ、ロボットの走査速度やサンプリング数を減
らす必要があるため、検査の時間の増大や、測定精度の低下が起こってしまう。本研究は
検査コストの低減にきわめて重要である。
5―3
目的と目標
1 ス キ ャ ン の 超 音 波 デ ー タ を Ethernet の 1 パ ケ ッ ト で 高 速 伝 送 で き る も の を 開 発 す る 。
デ ー タ 処 理 用 の パ ソ コ ン に 実 装 す る 伸 張 、 展 開 用 の OCX で ネ ッ ト ワ ー ク 経 由 の デ ー
タ処理を可能とする。
5―4
研究成果
5-4-1
高 速 信 号 処 理 用 CPU ボ ー ド の 開 発
13
高 速 信 号 処 理 が 可 能 な 既 存 の CPU ボ ー ド の 大 き さ で は ロ ボ ッ ト へ 搭 載 で き な い た め 、 小
型 CPU ボ ー ド を 製 作 し た 。
図2
5-4-2
CPU ボ ー ド
I/F ボ ー ド の 開 発
上 記 CPU ボ ー ド は 小 型 化 に よ り 高 密 度 で 設 計 さ れ て い る の で 改 変 等 が 困 難 に な る た め 、
A/D ボ ー ド や Ethernet 等 の I/F は 別 基 板 で 製 作 し た 。
I/F ボ ー ド を 経 由 し て A/D ボ ー ド か ら 取 得 し た 超 音 波 デ ー タ を 、CPU ボ ー ド で 取 得 で き る
ことを確認した。
図3
5-4-3
I/F ボ ー ド
制御ボードの開発
コ ン ト ロ ー ラ と CPU ボ ー ド で 制 御 信 号 の 通 信 を 行 う た め 、コ ン ト ロ ー ラ を Ethernet に 対
応させる小型の通信基板を製作した。
この制御ボードを使用することで、コントローラとロボット間の制御用シリアル信号を
超 音 波 デ ー タ と 同 じ Ethernet で 伝 送 す る こ と が 可 能 に な っ た 。
図4
5-4-4
制御ボード
超 音 波 デ ー タ 受 信 用 ソ フ ト ウ ェ ア ラ イ ブ ラ リ ( OCX)の 開 発
Ethernet 経 由 で 送 ら れ て き た 超 音 波 デ ー タ を 、ア プ リ ケ ー シ ョ ン ソ フ ト ウ ェ ア に 取 り 込
む た め の API ラ イ ブ ラ リ ( OCX) を 製 作 し た 。
このライブラリを使用することでアプリケーション ソフトウェアは伝送処理を意識せず
14
に超音波データの取得が可能になった。
5-4-5
超音波データの圧縮・ノイズ除去法の開発
ワイル符号化を符号情報を持たせるなどの改良を行い、超音波データに特化した圧縮方
法を開発した。
不要なノイズの特徴を解析し、必要な情報を残したままノイズのみを除去する手法を開
発した。
圧 縮 ・ ノ イ ズ 除 去 を 行 う こ と で デ ー タ 量 を 約 7%ま で 圧 縮 し 、 1 ス キ ャ ン の 超 音 波 デ ー タ
を Ethernet の 1 パ ケ ッ ト で 伝 送 が 可 能 に な っ た 。
5-5
図5
圧縮前の波形
図6
圧縮後の波形
研究成果
5-4-5に示した通りデータ圧縮、ノイズ除去を行うことによりデータを7%まで圧
縮することができた。
5-6
今後の課題と取り組み
目標としていた結果が得られたため、本研究部分は終了となる。
15
6.データ圧縮・長距離伝送
早稲田大学大学院情報生産システム研究科
6―1
教授
大貝晴俊
はじめに
A/D 変 換 さ れ た 測 定 デ ー タ は 膨 大 で あ る た め 、 限 ら れ た 時 間 内 で 伝 送 す る に は デ ー タ を
圧 縮 す る 必 要 が あ る 。本 研 究 で は ロ ボ ッ ト と PC の 超 音 波 デ ー タ の 伝 送 を 効 率 よ く 行 う た め
の 研 究 で あ る 。本 研 究 で は デ ー タ 数 を 減 ら す た め ノ イ ズ 除 去 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た 。
6―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
測定したデータを高速で伝送できなければ、ロボットの走査速度やサンプリング数を減
らす必要があるため、検査の時間の増大や、測定精度の低下が起こってしまう。本研究は
検査コストの低減にきわめて重要である。
6―3
目的と目標
超音波信 号の平滑 化・信号処理に よるノ イズ処理と サンプリ ングの 最適化に ついて、
シミュレーションにより検討する。
6―3
実験結果
超 音 波 信 号 の 平 滑 化・信 号 処 理 に よ る ノ イ ズ 処 理 と サ ン プ リ ン グ の 最 適 化 に つ い て 、
シミュレーションにより検討した。
実 測 の 超 音 波 信 号 に ラ ン ダ ム ノ イ ズ ( 大 き さ : 0、 10、 30、 50) を 加 え て 加 工 し 、 信
号 の ノ イ ズ 処 理 を Matlab に よ り ノ イ ズ 処 理 の 性 能 を 評 価 し た 。25 点 の 移 動 平 均 法 を 用 い
た。
図1
図2
実測信号
16
移動平均法によるノイズ処理
図3
実 測 信 号 + ノ イ ズ (10)
図4
移動平均によるノイズ処理
図5
実 測 信 号 + ノ イ ズ (30)
図6
移動平均によるノイズ処理
図7
実 測 信 号 + ノ イ ズ (50)
7―4
図8
移動平均によるノイズ処理
研究結果
ノイズの大きさが大きくなっても、移動平均で十分処理できることがわかる。
信 号 自 体 で は 圧 縮 可 能 な デ ー タ は 1500 以 降 で あ り 、 3/ 5 に デ ー タ 量 を 削 減 で き る 。
サンプリングについては、必要とする分解能の制約から削減できない。
7―4
今後の課題と取り組み
シミュレーション結果から目標とする結果が得られたため、本開発は終了となる。
17
7.配管肉厚測定用ソフトの開発
福岡県工業技術センター機械電子研究所
7―1
電子技術課
渡邉 恭弘
はじめに
配管内の小型超音波肉厚測定器から取得した測定データは超音波の波形データであり、
配 管 の 減 肉 量 、減 肉 位 置 や 分 布 を 可 視 化 す る こ と で 結 果 の 解 析 を 容 易 に す る こ と が で き る 。
7―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
本研究はプロジェクト全体の中でも最終段階に位置するものである。送られてきたデー
タを分かりやすく表示することで検査効率が上昇すると考えられる。
7―3
目的と目標
超 音 波 の 波 形 デ ー タ か ら 肉 厚 を 算 出 し グ ラ フ ィ ッ ク 表 示 す る ソ フ ト ウ ェ ア( GUI)を 製 作
する。
7―4
研究成果
波形データの反射波のピークまでの時間から肉厚を測定した。円周の波形データ集から
測定した肉厚を円周状に表示し、減肉の箇所を赤く色分けすることで視覚的に分かりやす
い GUI を 作 成 し た 。 さ ら に 、 円 周 の 肉 厚 を 円 周 方 向 に 展 開 し 時 系 列 に 表 示 す る こ と で 、 配
管全体の肉厚状態を可視化した。赤色部は円周肉厚測定と同様に減肉部である。
波形データ
配管肉厚の時系列表示
配管肉厚を円周状に表示
(減肉位置の図示化)
図1
測定結果表示画面
また、配管内のロボットは肉眼では確認できないため、ロボット姿勢がわからない。そ
こ で 、 ロ ボ ッ ト 内 の セ ン サ 値 を 表 示 す る ロ ボ ッ ト 状 態 表 示 GUI を 作 成 し た 。
18
図2
7-5
ロボットの状態表示画面
今後の課題と取り組み
目標としていた結果が得られたため、本研究部分は終了となる。今後の課題としては、
垂 直 移 動 中 の 回 転 方 向 が 現 セ ン サ で は 算 出 不 可 能 な の で 、 セ ン サ の 改 良 、 お よ び GUI 作 成
が必要である。
19
8.走行制御法の開発
福岡県工業技術センター機械電子研究所
8―1
電子技術課
奥村克博
はじめに
本プロジェクトで採用する機構は、走行するだけであれば手動で姿勢の制御を行うこと
で配管内を自在に走行することが可能である。しかしながら、今回はロボットの先端に超
音波肉厚測定を行うスキャニング機構が搭載されており、それを使用して配管内の全面に
わたって測定を行おうとするものである。そのためスキャニング機構や走行機構の姿勢を
細かく手動で制御することは極めて煩雑な作業となる。
そこで、ロボットの姿勢を自動で制御するための手法の開発を行った。
8―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
ロボットの姿勢制御を行う前に、ロボットの先端に重量物を搭載した状態で配管内をス
ムーズに走行可能かどうかを確認する必要がある。そのため、機構シミュレーションソフ
トを用いた走行シミュレーションを行った。
8―3
目的と目標
姿勢制御を行うためロボットの走行シミュレーションを行った。
8―4
実験結果
既に開発されているくの字型ロボット「エルボマスタ ー」と同じ重量・重心位置を持つ
簡 略 化 3D モ デ ル を 作 成 し 、機 構 解 析 ソ フ ト COSMOS Motion を 用 い 、動 作 特 性 を 調 べ る た め
のシミュレーションを行った。
シミュレーションは、地面に対して垂直方向へ移動する場合について、以下の3パター
ンにて行った。
ⅰ)ロボット前部にスキャニング機構を搭載しない場合
ロボット前部にスキャニング機構を搭載しない場合のシミュレーションを行った結果、
実機同様、問題なく垂直移動が可能なことが分かった。
ⅱ)ロボット前部にスキャニング機構を搭載した場合
ロボット前部に開発されたスキャニング機構(超音波センサなし)と同じ重量の機構
を 搭 載 し た モ デ ル を 作 成 し シ ミ ュ レ ー シ ョ ン を 行 っ た 結 果 、ロ ボ ッ ト 前 部 が 大 き く 傾 き 、
姿勢が破綻するという結果が得られた。
ⅲ)ロボット前部にスキャニング機構と超音波センサを搭載した場合
ロボット前部に開発されたスキャニング機構に超音波センサが取り付けられた支柱を
20
搭載した場合についてシミュレーションを行った。実際のスキャニング機構には超音波
センサを管内壁に密着させるためのバネが組み込まれているが、本シミュレーションで
は バ ネ は 用 い ず 、 管 内 壁 と セ ン サ 支 柱 間 に 0。 5mm の 隙 間 を 設 け た モ デ ル を 用 い て い る 。
シミュレーションの結果、上記ⅱ)の結果と異なり安定して垂直移動が可能であった。
ⅰ)スキャニング機構非搭 ⅱ)スキャニング機構搭載
載
(超音波センサなし)
図1
8―5
ⅲ)スキャニング機構搭載
(超音波センサあり)
シミュレーション結果
研究成果
走行シミュレーション結果より、現在開発を進めているスキャナ形状、重量であっても
垂直管内を移動できるという結果を得ることができた。
8―6
今後の課題と取り組み
シミュレーションの結果、満足がいく結果となった。今後も新たな機構を採用時には事
前にシミュレーションを行うことで、開発スピードの迅速化が期待できる。
21
9.走行制御法の開発
九州工業大学工学研究院
9―1
教授
大屋勝敬
はじめに
ロボットの走行は搭載するスキャナ機構の重さ、センサやホルダの配管内面との接触摩
擦などの外乱を受け姿勢が変動することが想定される。そのためこれらの外乱を受けても
安定した姿勢を保った走行が出来るようにロボットの姿勢を自動制御する手法の開発を行
った。
9―2
プロジェクト全体における本研究開発部分の位置づけ
ロボットの走行性能はその走行姿勢を一定に保つことで向上し、配管内の移動距離を延
長することができる。すなわち配管肉厚測定ロボットの測定できる距離を伸ばすこととな
る。また安定した走行を確保することで、測定データの信頼性も向上すると考える
9―3
目的と目標
円周上に等間隔に配置した4個の超音波センサを一定の周速度で回転させつつ、配管内
を設計者が指定した姿勢を保ったまま一定速度で走行するための走行制御法の開発ならび
に走行機構の開発を行う。
9―4
実験結果
9―4-1
簡略化したロボットの走行運動方程式の導出
図1に示したロボットの簡略モデルを基に運動解析を行い、 つ
ぎ の 簡 略 化 運 動 方 程 式 を 導 出 し た 。な お 、外 乱 d(t)は 、超 音 波 セ
ンサが回転することによりロボットの進行方向運動に加わる外乱
を表している。
 (t )
v sin  (t )
 (t )  k2 (t )  d (t )
v sin  (t )
 (t )  k1u (t )
 (t ) ロール角度 r
 (t ) 操舵角度 v
d (t )
9―4-2
v
外乱
r
配管半径
車輪の
進行速度
u(t )
モータへの
入力電圧
図1
ロボットの簡略化モデル
導出した運動方程式を基にした姿勢制御コントローラの開発
導出した簡略化モデルを基にして、超音波センサが回転することにより発生する外乱の
影響を軽減できる姿勢制御コントローラを開発した。 開発したコントローラの構成を図2
に 示 す 、 rd は 目 標 ロ ー ル 角 度 で あ る 。
22
図2
9―4-3
コントローラの構成
実験を通したコントローラの性能検証
図 2 の 制 御 シ ス テ ム の 固 有 値 が - 0 。 8 、 - 1 と な る よ う に フ ィ ー ド バ ッ ク ゲ イ ン g1、
g2 の 値 を 設 定 し 、r d =0 と し た 場 合 に 、図 3 に 示 す 実 験 環 境 に お い て ロ ボ ッ ト の 走 行 実 験 を
行った。
開発されたコントローラを用いて、超音波センサが回転することにより発生する外乱
の影響を受けることなく、一定速度でロボットが走行することを確認した。
さらに、開発したコントローラを用いることにより、 超音波センサが回転することに
より発生する外乱の影響を受けることなく ロボットのロール角度φを設計者が指定した
ロ ー ル 角 度 r d に 一 致 さ せ る こ と が で き る か ど う か の 実 験 も 行 っ た 。そ の 結 果 を 図 4 に 示 す 。
な お 、 目 標 ロ ー ル 角 r d は 数 の シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 結 果 、 (赤 線 )と 同 じ 角 度 を 与 え て い る 。
図 4 に 示 す よ う に 、ロ ボ ッ ト の ロ ー ル 角 度 φ は 目 標 ロ ー ル 角 r d に 追 従 し て い る こ と が わ か
る。
図3
実験環境
図4
9―5
ロール角度の実験結果
研究成果
上記のごとく実機を用いた走行試験の結果から、開発したコントローラの有効性が確認
出来た。
23
9―6
今後の課題と取り組み
今回の試験では、水平の直管を用いて実験を行ったが、今後は様々な構造の配管におい
ても走行試験を行いその有効性と実用性を評価したい。
24
成果 実績
【一行あける】
(1) 口頭発表
・該当事項無し
(2) 論文発表
・該当事項無し
(3) 雑誌掲載
・該当事項無し
(4) 特許出願
・1件
(5) 商品化
・未定
(6) 受賞
・該当事項無し
25