株式会社フジクラ

代替工法のための視覚・計測技術の実現可能性検討事業 <株式会社フジクラ>
目的と目標
事業の概要と特長
燃料デブリ取り出し代替工法のための高放射線線量環境下においても使用可能な視覚
化機材の実用化を目的として開発検討を行う。
本補助事業においては、純粋石英ガラスを用いたイメージファイバは、高い耐放射線特性
を有することから、石英ガラス光ファイバ製造技術を応用して、燃料デブリ取り出しに求めら
れる2MGy以上の高い放射線耐久性を有するファイバスコープを開発するための基礎検証
作業を行う。また、石英ガラスイメージファイバの短所を補うものとして高解像度・高可撓性
を有し、かつ伝送路の長尺化も容易なファイバアレイ型スキャンイメージングシステムの実
現性に関する設計検証を実施する。
高放射線環境下における視覚技術の実現へ向けて、3つの可能性検討を実施する。
A.高OH基含有純粋石英ガラスイメージファイバを用いた近赤外領域での観察における放射線
照射耐久性の検証
B.フッ素ドープ純粋石英ガラスコア・イメージファイバの開発検討とその耐放射線特性の検証
C.光ファイバアレイを用いた高解像・高可撓性イメージングシステムの検証
・テーマA:石英ガラスファイバは、高い耐放射線性を有するが、特に近赤外域では伝送特性の
劣化の影響が少ない領域となる。この特徴を活かし、近赤外域を用いた観察で2MGy以上の放
射線照射に耐え得る高耐久性ファイバスコープの実現を目指す。
・テーマB:石英ガラスに微量のフッ素を添加することで、光ファイバの耐放射線特性が大きく改
善される。光通信用ファイバでは既に実用化しているが、この技術を画像伝送用のイメージファ
イバに展開し、可視領域での高耐放射線性ファイバスコープの実現を目指す。
得られた成果
今年度の事業では、イメージファイバのガンマ線照射試験を実施し、伝送画像の観察と伝送特性の計測を行って、放射線照射に対する耐久性に評価を行い、2MGyの累積線量レベルに対する
ファイバスコープの実現可能性を検証する計画である。 なお、当初計画では2015年2月にガンマ線照射施設にて試験サンプルの照射試験を実施し、評価検証を行う予定であったが、予定して
いた照射設備の故障を受け、現在は設備の復旧を待ち、試験実施を延期している。現時点では4月中旬~下旬で試験を実施する予定である。
1.照射試験用サンプルファイバの試作
照射試験用イメージファイバの設計と試作を行った。 照射試験実施環境により、試験用イメージファイバは照射部を20mとして全長で100mが必要となる。 また線量率10kGy/hrを得るため
にはイメージファイバをR100mmの小径に束ねる必要がある。 この条件から、今回の照射試験に供するファイバを画素数6000画素として設計、試作を行った。
試験用ファイバとして、近赤外観察用高OH基含有コアと、可視光観察を目的としたフッ素ドープコアの2種類で、それぞれ100m長のイメージファイバを用意した。
2.照射試験評価機器のセットアップ
試験用イメージファイバのガンマ線照射下での伝送画像及び伝送特性を評価するために機器のセットアップを完了した。 画像評価は近赤外光観察系と可視観察系のそれぞれを構築した。
近赤外光観察系は、対物レンズ、カメラレンズ、ビデオカメラ、および照明用光源をそれぞれ近赤外仕様として機器の選定と光学部品の設計・試作を行った。
3.初期特性の評価
各イメージファイバサンプルに対し、ガンマ線照射前の初期状態で伝像画像及び伝送特性の評価を行った。
4.ガンマ線照射試験
照射条件は、線量率10kGy/hr×200時間で累積2MGyまでの試験を実施する。ファイバの照射部は20mとする。ガンマ線を連続照射しながら、適宜伝送画像と伝送特性のデータを取得し、
初期からの変化の有無を確認する。 試験実施は4月中旬~下旬の予定。
画像観察システムの構成はシンプルであり、イメージファイバの耐久性が高いことが実証されれば、照明用ファイバと合わせてファイバスコープとし観察システムを構築することは容易である。
システム構成(近赤外観察)
サンプルファイバ伝送画像
近赤外
今後に向けた課題
可視
照射試験により得られた成果から、可視/近赤外の観察
方法を選択し、視覚化技術の実用化検討を実施する。
1.イメージファイバの高画素化と長尺化。ターゲットを50m、100mとし、それぞれの画素数の
最大化を図る。
2.現場導入に向けたファイバスコープの開発。スコープ導入経路や環境を考慮し、現場運用
に適したファイバスコープ構造の設計と開発を進める。
将来的には、画像観察システム、スコープの搬送、駆動系など、システム全体の構築を考慮
した検討が必要となる。