トランスクリプト5

学校Ⅳ 15才(5)
(大助のナレーション)
本当は屋久島の縄文杉なんかもうどうでもよかったんだけど、おばさんがフェリーの切符を
買ってくれたから「今さらやめます。」ともいえずに、のってしまった。屋久島はͱだった。
ひとつきに35日ͱが降るそうだ。南国の楽園みたいな島かと思っていたけどだいぶイメー
ジがくるった。海岸に僕のお金でもとまれそうな民宿があった。休業中だったが、びしょぬ
れの僕を見てあわれに思ったんだろう。おばあさんがかび臭いಊ屋に布団をしいてくれた。
(屋久島、だいすけが海岸でお಍呂に入っている)
大助 モーニング娘もウォウウォウウォウウォウ、世界がうらやむイェイイェイ(ష歌)
あー。あ、やば。
女 おはよう。君、地元の人?
大助 いいえ、縄文杉みにきたんです。
女 ふーん。
大助 あの、どれくらいかかるんですか?30分とか1時間とか。
女 えーĆ君、何にも知らないできたのね。往復10時間はかかるのよ。へたしたら一泊よ。
大助 10時間?
女 そう。
大助 そんなことしてまで見る価値あるんですか?
女 はあ、価値があるかないかは君の価値観しだいね。
(縄文杉へ行く道の途中)
大助 あ、おねえさん。
女 あ、さっきの。
大助 僕も一緒に行っていいですか?
女 いいよ。
(どんどんすすんでいく)
女 ねえ、君たかいとこ大丈夫?
大助 大丈夫です。
(橋の上)
大助 わĆ
女 ねえ、君、中学生でしょ?
大助 そうですよ。
女 へえ、学校はどうしたの?いってないの?
大助 なんでそんなこときくんですか?こんな時に。
女 だって、気になるでしょ。
大助 うるさいな。だまってろよ。
女 わー、汽車がきた。
大助 わーĆ
女 はははは、わ、ホントにきた。わーĆ
<CM>
(縄文杉までの道)
女 いいカッパもってるじゃない。
大助 去年僕がなんとなく山に行きたいなっていったらおやじがすぐ一式買って来てくれたんだ。
女 お父さんの気持ち、わかるような気がするよ。
大助 僕はそんなふうにいつまでたっても子ども扱いされるのがいやなんだよ。
女 へえ。
大助 大丈夫?はい、よし。
女 ねえ、君、その背中のީഴくさいものは何?
大助 友達からもらったんだ。
女 女の子?
大助 僕の親友。
女 へえ。
大助 こんにちは。
女 こんにちは。
ね、中身何?
大助 秘密。
女 へえ。
女 大丈夫?
大助 は、は。
女 今度は私が先ね。
女 がんばって。
大助 あ、これですか、縄文杉?あ、すごいな。
女 あのね、屋久島では千年以下の杉はまだ一人前じゃないのよ。こういうのを小杉っていうの。
大助 あ、まった。
女 休む時は私がいうからそれまでは我慢して歩こう。
大助 はー。
女 どうした?
大助 俺、もういやだ。
女 行くよ。
大助 行かない。
女 じゃあ、勝手にしなさい。
(休憩)
大助 だいたい、大人の‫ؘ‬うことなんて矛盾だらけですよ。
女 へえ。
大助 そうじゃないですか。人間は個性的でなくちゃいけない、一人一人はみんな違うんだ、って
いうから、じゃあ僕は僕のやり方でいこうとすると、「なんでお前はみんなと同じ事ができ
ないんだĆ」って怒るんだ。「あれやっちゃいけない、これもやっちゃいけない。」やっちゃ
いけない事が多すぎて、しかも「あれやれ、これやれ。」って。やらなきゃいけない事が多す
ぎて本当に疲れんだよな。
女 そうね。それで、学校行かないんだ。
大助 おねえさんは学校楽しかった?
女 別に。ただね、好きな先生がいてね。ひげもじゃでどっちが上か下かわかんないようなヘン
な顔した人だったけど、その先生に会うのだけが楽しみで学校に行ってたかな。
大助 それじゃあ、僕の苦しみはわかってもらえないな。
女 いいんだよ。学校に行くか行かないかは君の自由なんだから。
ただね、人間は一人前になんなきゃいけないのよ。どんな方法であれ、一人前になる努力を
しなきゃいけないの。
大助 一人前ってどういうこと?
女 どうかな。屋久杉にきいてみたら?
大助 おーい、屋久杉のバカヤロー、お前は千年も二千年もだまってつったってなにがおもしろい
んだ。
大助 あとどれぐらいですか?
女 まだまだ。
女 は、は、よいしょ、は、は、は。これがウィルソン株。は、は。
大助 これがウィルソン株。すごいな。
女 中はいってみようか。
大助 こんなかに?
女 なんで、あっちあっち。行くよ。
大助 いいよ、僕こっから見てるよ。
女 あ、縄文杉。大助君、縄文杉。ちゃんと見なさい。
はー、やっときた。
(大助のナレーション)
樹齢七千年の木が目の前にあった。夢のようにあこがれていた縄文杉についに会えた。よそ
のおねさんにしかられしかられようやくたどり着いた。僕は心の中で叫んだ。「やったーĆ
おれはやった。」
<CM>
(縄文杉のところ)
大助 いただきます。
(河島家、ૣ話で大助が話している)
妹 もしもし、あ、おにいちゃんĆ今どこ?もしかして屋久島?ええ、本当に屋久島にいたんだ。
で、どうだった?縄文杉。
大助 すごかったぞ。もう、感動に継ぐ感動。明日山から下りるからさ、お土産に屋久杉のはし買
ってってやるよ。
妹 お土産なんかいいから早く帰っておいでよ。ママ、心配して泣いてるよ。お父さんは「殺す。」
って‫ؘ‬ってる。本当よ。
大助 ママには心配するなってそう‫ؘ‬っとけよ。じゃあな。
(縄文杉のսくの宿)
大助 でんわ、ありがとう。
女 通じた?
大助 ええ。
女 ਑と話したの?
大助 妹。
女 へえ。妹ってかわいい?
大助 あいつと話してるときが一番楽しいんだ。頭がよくて、明るくて、顔はかわいくて。そうだ
な、もし妹が家出したら、親父なんか会社ほっぽりだして真っऌになって日本中探し回るん
だろうな。あいつに比べたら僕なんか。ねくらだし、ばかだし、顔だってこんなにきびだら
けだしさ。
女 なんで?私は君のにきび、かわいいなっておもってるよ。話をすれば君は賢い子だってわか
るし、性格だっていいし。素敵な15歳だよ。まず、君はありのままの自分を好きにならな
きゃ。一人前になるって‫ؘ‬うのはそこから始まるんじゃないのかな。(あくび)寝ようか。
おやすみ。また明日ね。
(朝)
女 おはようございます。どちらまで?
通り人 宮のうら駅まで。
女 いってらっしゃい。
大助 宮のうら駅の頂上までどのぐらいかかるの?
女 4時間から5時間、どうする?一緒に行く?
大助 僕やめる。自信ないから。
女 ねえ、ひとりで降りて行ける?
大助 大丈夫だよ。
女 君はこっち。はい。これあげる。まちがえやすい場所はボールペンで囲んであるから、ここ
にきたら気をつけるのよ。それから、もし万一ͱが激しくなったり日が暮れてきたりしたら
無理はしないでどっか物ͨにͩれて助けを待つこと。山を甘くみちゃだめだよ。いいね。そ
れじゃ、お別れね。短い時間だったけど君と一緒で楽しかったよ。
大助 僕もです。おねえさん、どうもありがとう。
女 まあ、これからもいろんなことがあると思うけど、なんたって命が大事。死んじゃだめ。命
を大切にして一人前になりなさい。
大助 わかった。
女 じゃあね。
おーい、がんばれĆ
(山を降りる大助)
通り人 あ、こんにちは。お先に。
大助 がんばってください。
(大助のナレーション)
のぼりに比べればくだりはうんと楽だと思い込んでいたのが間違いだった。30分も歩かな
いうちに঱首が痛み、ひざががくがくしてきた。
大助 変だな。とっくにウィルソン株に出なきゃいけないんだけどな、間違ったのかな。あ、もど
ろう。
あ、そうだ。ͱ具を着なちゃいけないんだ。ぬれたら体が冷えてしまう。ͱがひどくなって
きたらどこか物ͨにͩれて助けを待つ。どうしようかな。まだ大丈夫かな。もう少し歩けば
なんとか道に出るんじゃないかな。
大助 助けてーĆ
大助 やっぱりだめだ。どうしよう。無理をしないで助けを待つ。もどろう。(あしを滑らせる)
わĆわあ。
<CM>
(山の中、大助のナレーション)
なぜだろう、僕の目に学校の教室がうかんだ。机の上に金Թが2匹泳いでいる。あ、僕はま
もなく死ぬんだ。ふと、その時思った。
大助 おーい、助けてー。助けてくださーい。おーい。
通り人 あ、はははは。(おばさんたちが橋の上を通っている)
大助 死ぬかと思ったよ、おれ。
通り人 大丈夫?
(町へ出る)
男2 おい、具合悪かとか?おい、具合悪かとか?
大助 あの、このսくでやすくとめてくれる旅һ知ってますか?
男2 のらんか。
大助 すいません。