第5号

「自立した生徒を育てる」~生かして「挑戦」,生かされて「感謝」
,学ぶ喜びと「感動」の創出~
平成 27 年 5 月 15 日(金)
安芸太田町立筒賀中学校
校 長 近藤 毅
今年の運動会のテーマは「炎助意(エンジョイ)」。心(意)を一つにして助け合い,炎の
ように燃える運動会を楽しもうや!そんな生徒たちの思いが伝わってくるテーマです。
このテーマが実現するとき,きっと大きな感動が生まれていると思います。
本当の感動は,
「たいぎい」
「つらい」
「もう限界」という弱気な自分を乗り越えて,いまま
でになかった自分の壁に仲間とともに全力で挑戦したときに生み出せるものです。
次は,私が初任のころに担任をしていた生徒の作文です。
体育祭のピラミッド,僕は一番下の段だ。正直言ってこの練習はいやだった。上の段の人
たちの重さがいっきに背中や腰にかかるのでとても痛くなるし,おわると気が抜けたように
なって少しふらつくときもあったからだ。自分が崩れるとすべてがダメになると思うと逃げ
出したい気持ちになることもあった。いっそケガでもして自分だけ棄権するようなことにな
ればと思うことすらあった。
そんな矢先に,友だちがけがをして休むことになった。彼は僕らのグループだった。最後
の練習が終わった後,A が僕にいった。「下の段は俺たちで何とかやろうな!」
A の目が真剣だったので僕はうなづくしかなかった。もう,逃げ出すことができなくなった。
体育祭当日,ついにピラミッドの演技が始まった。腕や背中に次々と重みが重なっていく。
腕の関節がきしむようで震えそうになった。そのとき,僕の隣で支えていた A がいった。
「もうすこしじゃけえ,ふんばれ! 支えとるもんはもっと大きいもんじゃけえ!」
大きな声ではなかったがはっきり聞こえた。下の段には僕以外に B や C もいる。
A は下を向いていたので誰にいっているのかはわからなかったが,きっと弱気な僕に言って
いると思った。そして,
「支えているもっと大きいもの」という言葉が僕を励ました。
ピラミッドは大成功。新米教師の私は一人飛び上がって喜んでいたのですが,この話は後
日談がありました。実は,下の段の B や C も「A は自分にいっている」と思ってがんばった
ということでした。
ところが,当の A は,弱気になりそうな自分を励ますために他には聞かれないようにと思
いながら自分に言っていたのだそうです。<成人を迎えた教え子たちとの同窓会で初めて知りました>
-
このことを知った私が同窓会で彼らにどういったかは想像にお任せます。-
友だちに支えられ,生かされた自分。その中で得られた感動。つのる「ありがとう」の思
い。若い私はそれをキャッチできていませんでした。ことばになっていない生徒相互の感情
に,教師が,たんに「よかったね」で終わらせず,丁寧に生徒間の心温まる行為を取り上げ
言葉にして,共感的に肯定的に,明日への意欲が沸き立つようにほめてやりたいものです。
私たち教師は,
「生徒たちの心にやる気の灯をともす言葉を持つプロ,感動創出の仕掛け人」
であると思います。この運動会をとおして一人一人の生徒の心に灯をともしてください。