線形代数学Ⅰ 演習問題 1 2015 年度前期 工学部 1 年 担当: 原 隆 (未来科学部数学系列・助教) ※レポートを提出したい人は、以下の注意点を守って提出して下さい。 (ⅰ) 必ず分かるところに学籍番号、学科、氏名を書いて下さい。 (ⅱ) A4 の紙を用いて、複数枚になる場合はホチキスや針無しステープラーで綴じて下さい。 (ⅲ) 提出期限は 5 月 7 日 (木) とします。レポートボックスは設けませんので、講義開始時に教卓に提出し て下さい。 問題 1-1. 以下の空間ベクトル a, b に対して (ⅰ) 内積 a · b, (ⅱ) 外積 a × b, 及び (ⅲ) a と b が 張る平行四辺形の面積 S をそれぞれ計算しなさい。 3 (1) −1 a= −2 , b = 1 . 1 2 (2) 1 4 a = 2 , b = 5 . 3 6 問題 1-2. 以下の平面ベクトル a, b が張る平行四辺形の面積 S を求めなさい。また、a からみて b は反時計回りの位置にあるか、時計回りの位置にあるかを答えなさい。 ( (1) a= −2 −3 ) ( ,b= −1 3 ) . (2) a= (√ ) 3 −3 ( ,b= √ ) −2 3 7 . 問題 1-3. 以下の空間ベクトル a, b, c が張る平行六面体の体積を求めなさい。また、a, b, c がこの 順で右手系をなしているか、左手系をなしているかを答えなさい。 (1) (3) 1 −1 0 a = 1 , b = 2 , c = 4 . 1 2 3 2 −1 3 , b = 4 , c = −2 . a= 1 3 5 −1 1 (2) (4) −1 −1 a= −1 , b = 2 , c = 1 . 0 1 4 √ √ 3 3 4 , b = 1 , c = −2 . a= 0 √ 7 10 9 3 【略解】 問題 1-1. 3 (1) a = −2 , −1 b= 1 . 2 1 a · b = 3 · (−1) + (−2) · 1 + 1 · 2 = −3 . ( ) −2 1 det 1 2 ( ) −5 1 2 −7 . a×b= det 3 −1 = 1 ( ) 3 −1 det −2 1 √ S = |a|2 |b|2 − (a · b)2 √ √ = (32 + (−2)2 + 12 )((−1)2 + 12 + 22 ) − (−3)2 = 5 3 . または S = |a × b| = 1 (2) a = 2 , 3 √ √ (−5)2 + (−7)2 + 52 = 5 3 . 4 b = 5 . 6 a · b = 1 · 4 + 2 · 5 + 3 · 6 = 32 . ( ) 2 5 det 3 6 ( ) −3 3 6 6 . a×b= det 1 4 = −3 ( ) 1 4 det 2 5 √ S = |a|2 |b|2 − (a · b)2 √ √ = (12 + 22 + 32 )(42 + 52 + 62 ) − 322 = 3 6 . または S = |a × b| = 【講評】 √ √ √ (−3)2 + 62 + (−3)2 = 3 12 + 22 + 12 = 3 6 . ベクトルの内積及び外積を求める基本問題。基本的に出来は良かったですが、特に外積の 計算でケアレスミスをしている人が散見されました (特に 符号 ± の間違い)。気を付けましょう。 ( ) x x′ ′ z z ′ また、外積 y × y の y 成分 det x x′ の 符号 を間違えた人は、公式を覚え間違え z z′ ている可能性が 非常に高い ので特に気をつけて下さい。 外積の計算は 2 次行列式を 3 つ計算しなければならないこともあり、計算ミスが非常に多発し易 い問題です。自分の計算が正しいかチェックするためにも、 a × b を計算したら、必ず a · (a × b) = 0 かつ b · (a × b) = 0 となっていること (つまり a × b が a とも b とも直交していること) を確認する 癖を付ける様にしましょう。それだけで計算ミスをする危険性はぐっと減る筈です。 また、a と b が張る平行四辺形の面積を求める問題も計算ミスが多発する問題です。こちらに関 しても、 √ 公式 S = |a|2 |b|2 − (a · b)2 を用いる方法と、外積の大きさ S = |a × b| を求める方法で計 算してみて、同じ値が出ることを確かめる ようにすると、計算ミスの発生確率を格段に減らすことが出来ます。普段から計算ミスの危険性を回 避するために検算を行う癖を付けておきましょう。 問題 1-2. ( (1) a = −2 ) ( −1 ) , b= −3 3 det(a b) を計算して、 ( ) −2 −1 det(a b) = det = (−2) · 3 − (−3) · (−1) = −9. −3 3 したがって S = | det(a b)| = 9 . また、det(a b) < 0 なので、b は a からみて 時計回り の位置にある。 ( ) (2) a = √ 3 ( , b= −3 det(a b) を計算して、 √ ) −2 3 7 (√ 3 det(a b) = det −3 したがって S = | det(a b)| = √ ) √ √ √ −2 3 = 3 · 7 − (−3) · (−2 3) = 3 . 7 √ 3 . また、det(a b) > 0 なので、b は a からみて 反時計回り の位置にある。 【講評】 平面ベクトルの張る平行四辺形の面積と 2 次行列式との関係についての基本問題。こちら は (計算ミスを除けば) 非常に良く出来ていました。 何名か S = √ |a|2 |b|2 − (a · b)2 を計算していた人もいましたが、平面ベクトルに限ればこの公式 を用いるよりは 2 次行列式を計算した方が圧倒的に計算は速く出来ると思いますので、2 次行列式を 計算することをお薦めします (勿論時間があったら上の公式を用いて検算すると完璧ですが)。抑え ておくべきポイントは、行列式の符号が「時計回り」の位置にあるか「反時計回り」の位置にあるか、 という 位置関係の情報を教えてくれている ということでしょうか。こちらも併せて良く復習してお きましょう。 問題 1-3. 先ずは 3 次行列式 det(a b c) を計算しよう。 1 (1) a = 1 , 1 −1 b= 2 , 2 0 c= 4 . −3 ( 1 1 ( 1 det(a b c) = (a × b) · c = det 1 ( 1 det 1 det 2 2 ) ) 0 0 0 2 · 4 = −3. 4 −3 · = −1 3 3 3 ) −1 2 よって求める平行六面体の体積は 3 。また、det(a b c) > 0 より、(a, b, c) はこの順で 左手系 をなす。 1 (2) a = −1 , 0 −1 b= 2 , 1 −1 c= 1 . 4 ( ) −1 2 det 0 1 ( ) −1 −1 −1 0 1 1 = −1 · 1 = 4. det(a b c) = (a × b) · c = det 1 −1 · 4 1 4 ( ) 1 −1 det −1 2 よって求める平行六面体の体積は 4 。また、det(a b c) > 0 より、(a, b, c) はこの順で 右手系 をなす。 2 −1 3 , b = 4 , c = −2 . (3) a = 1 3 5 −1 2 −1 3 det(a b c) = det 1 4 −2 = −4. 3 5 −1 よって求める平行六面体の体積は 4 。また、det(a b c) < 0 より、(a, b, c) はこの順で 左手系 をなす。 √ √ 3 4 3 1 , c = −2 . (4) a = 0 , b = √ 9 3 7 10 √ √ 3 4 3 √ = 3 3 − 2. 1 −2 det(a b c) = det 0 √ 7 9 3 10 √ よって求める平行六面体の体積は 3 3 − 2 。また、det(a b c) > 0 より、(a, b, c) はこの順 で 右手系 をなす。 ※ (1), (2) ではスカラー三重積を直接計算していますが、勿論どの問題もサラスの公式を用いて計算 しても構いません。 【講評】 3 つの空間ベクトルの張る平行六面体の体積と 3 次行列式に関する問題。ではありますが、 要は 3 次行列式 (スカラー三重積) を計算する問題でした。3 次行列式の計算は、スカラー三重積の 定義通りに計算しても勿論良いですし、サラスの公式を用いて計算しても良いですが、何れも結構複 雑で かなり計算ミスが発生し易い ので、計算ミスにはくれぐれも注意しましょう。出来ればこの様 な問題でも、時間があればスカラー三重積の計算とサラスの公式を用いた計算を両方とも実行して、 答えが一致することを検算するようにすると完璧です。 概ね良く出来ていましたが、やはり計算間違いをしている人も散見されました。3 次行列式の計算 は若干複雑で計算ミスをし易いところですので、 必ず 検算をする癖を付けましょう。 また、(1), (3) で平行六面体の体積を V = −3. V = −4 と答えている人が若干名いらっしゃいま した。(「符号付き」体積と考えれば強ち間違いとも言えませんが) 断り無く「体積」と言われたら 通常は 正の実数 を答えることとなっていますので、今回も「平行六面体の体積は V = 3 または V = 4 で、(a, b, c) はこの順で左手系を成す」が正解となります。細かい点ではありますが、この様 な日本語の微妙な言い回しに慣れる様にしましょう。
© Copyright 2024 ExpyDoc