1 中国における環境税の理論と現実

中国 に おける 環境税の理 論と現 実 ― ― 農 地 転 用 に よ る 「 土 地 収 入 」 と 環 境 目 的 の 「 土 地 課 税 」 を 巡 る 議 論 王 天 荷 要 旨 本 研 究 の 目 的 は 、 中 国 の 「 環 境 関 連 税 制 」 が 真 の 環 境 税 と し て 機 能 す る 為 の
税制改革を考察することである。一般的に環境税とは、環境に負の影響を与え
る物質に課税する汚染防止を目的にした税であるが、実際は汚染税に限らず多
様な形を取っている。従って、本稿で述べる環境目的の土地課税も土壌汚染の
防止を目的にした課税というよりも、環境のために農地資源を保全することを
目 的 に し て い る 。 改 革 開 放 以 降 の 中 国 で は 、 大 量 の 農 用 地 が 建 設 用 地 に 転 換 さ れ 、 経 済 発 展 を
促した一方、土地資源の大きな損失をもたらした。そこで、農地転用による既
存の土地収入を環境目的の土地課税として機能させることで、「外部不経済の
内部化」というピグーの提唱した真の環境税にするための税制改革を論じた。
本 稿 で 明 ら か に な っ た 点 は 以 下 で あ る 。 ① 中 国 に お け る 土 地 制 度 の 特 徴 と 農 地 転 用 の 過 程 を 整 理 し た 。 ② 建 設 用 地 と
の競合により生じる農用地の過剰な用途転換は外部不経済をもたらすことを説
明した。③中国の現実から、用途転換が土地資源の減少した要因であること、
及び「土地財政」現象の仕組みを分析し、市(地区)・県(区)政府が農地転
用において中心的な権力を持ち、重要な役割であることを示した。④中国にお
ける経済的手段が理論と乖離している原因を分析し、問題解決の対策としての
環 境 目 的 の 土 地 課 税 の あ り 方 を 検 討 し た 。 キ ー ワ ー ド : 用 途 転 換 、 土 地 課 税 、 環 境 税 1