鋼ポータルラーメン橋の実橋載荷試験

鋼ポータルラーメン橋の実橋載荷試験
[論文]
片 山 和 也*
永 田 敏 春***
概
山 本
大久保
正
宣
寿**
人****
要
東九州自動車道の成恒橋(支間長53.0m)を対象として,鋼ポータルラーメン橋の変形挙動や剛結
部の応力性状を把握するため,実橋載荷試験を実施した.また,計画的な予防保全を行う上で必要と
なる振動特性の初期値データを取得することを目的として,段差落下による振動試験も実施した.実
橋 試 験 で は , 活 荷 重 載 荷 時 の 全 体 挙 動 , 剛 結 部 の 応 力 性 状 お よ び 振 動 特 性 を 計 測 し て , FE M 解 析 値 と
の比較検証を行った.
静的載荷試験では,鋼ポータルラーメン橋の変形挙動およびひずみ分布に対して,計測値と解析値
が良好な一致を示しており,FEM解析モデルの妥当性が検証できた.剛結部の応力性状は,鋼桁とRC
橋台の境界部で応力集中が確認された.振動試験では,供用前の鋼ポータルラーメン橋の振動特性が
取得できた.固有振動数は,鉛直たわみとねじれが非常に近接していた.
1.はじめに
内を結ぶ主要アクセスルートとして,重要な役割を果た
近年,初期建設コストや維持管理コストの縮減を目的
すことが期待されており,早期供用を目指して建設中で
として,RC橋台に鋼桁を埋め込み,支承や伸縮装置を省
ある.成恒橋は,東九州自動車道の椎田南~宇佐間に位
略した鋼ポータルラーメン橋の建設が増加している.
置し,支間長53.0mを有する国内最大級の鋼ポータルラ
本形式では,温度変化による鋼桁の伸縮に追随する機
能が制限されるため,橋台と盛土間に空隙が生じたり,
ーメン合成2主I桁橋である 6) .成恒橋の全景を写真-1
に示す.
剛結部近傍に舗装割れが発生することが懸念され 1) ,適
用支間長は30~50m 2) とされている.
2.2
試験方法
鋼ポータルラーメン橋に関する既往研究では,解析的
静的載荷試験は,重量約400kN の50tラフタークレー
検討や剛結部をモデル化した供試体による載荷試験の事
ン(以下,試験車という)を支間中央部の床版上に2台
例 3) は,多数実施されているが,実構造物を対象とした
載荷して,変位とひずみを計測した.この載荷荷重は,
載荷試験や振動試験の事例
4),5)
は数例あるのみで,非常
に少ないのが現状である.
設計活荷重の約40%に相当する.載荷ケースは,主桁G1,
G2上の並列載荷と主桁G1側の偏心載荷とした.変位は,
本研究では,支間長53.0mの鋼ポータルラーメン橋で
鋼桁支間長Lに対して,L/2,L/4,L/8点および橋台の鋼
ある成恒橋を対象として,実橋載荷による変形挙動およ
桁支点上を測点とし,光波測距儀により計測した.ひず
び剛結部の応力性状を把握するため,静的載荷試験を実
みは,正曲げモーメント最大となる支間中央部,ならび
施した.また,計画的な予防保全を行う上で必要となる
に負曲げモーメント最大となる剛結部を着目断面とし,
振動特性の初期値データを取得することを目的として,
鋼桁と床版に設置したひずみゲージにより計測した.
段差落下等による振動試験も実施した.実橋試験では,
振動試験は,外乱の少ない状態での常時微動観測,試
活荷重載荷時の全体挙動,剛結部の応力性状および振動
特性を計測して,FEM解析値との比較検証を行った.
2.実橋載荷試験の概要
2.1 成恒橋の概要
東九州自動車道は,福岡県北九州市を起点として,東
九州(大分・宮崎・鹿児島)を縦断し,鹿児島市に至る
幹線道路である.このうち,椎田南~宇佐間は,既に供
用中の福岡県側一般有料道路椎田道路と大分県側一般有
料道路宇佐別府道路に直結し,北九州市内および大分市
*
***
橋梁事業部
橋梁事業部
大阪工場 設計部 設計課
工事部 工事グループ 課長
写真-1
**
****
(22)
成恒橋全景
橋梁事業部 大阪工場 設計部
博(工)橋梁事業部 大阪工場
生産情報課長
設計部長
片山技報
No.34
(
験車1台を支間中央部で段差落下させた強制振動,およ
鋼板厚(mm)である.
段差落下することで鉛直たわみ振動を加振させ,主桁G1
背面盛土による受働抵抗は,道路橋示方書Ⅳ下部構造
編 8) に規定されている地盤反力度と変位の関係より,水
側で段差落下することでねじれ振動を加振させた.
変位および加速度の計測位置を図-1に示す.剛結部
と支間中央部のひずみゲージの計測位置を図-2に示す.
平方向地盤反力係数の初期勾配を線形バネとしてモデル
化した.背面盛土の地盤反力係数は,次式より算出した.
なお,試験時においては,背面盛土がA1側が未施工,
B 
kH = α k ⋅ kH 0 ⋅  H 
 0.3 
A2側が施工済,アスファルト舗装が未施工であった.
2.3
(1)
ここに, Κ x,y :ずれ剛性(N/mm 2 ), φ :孔径(mm), t :
した加速度計で計測した.強制振動は,着目振動モード
を鉛直たわみ1次とねじれ1次とし,試験車を幅員中央で
)
K x , y = 95000 × φ 2 / 70 2 × t
び試験車を走行させた交通振動をそれぞれ床版上に配置
FEM解析方法
FEM解析は,鋼桁およびRC橋台を含めた全橋をモデル
化して,汎用有限要素解析コードNASTRANで実施した.
図-3に示すように解析モデルは,鋼部材をシェル要素,
コンクリート部材をソリッドでモデル化した.
鋼桁と橋台の剛結部に設置する孔あき鋼板ジベル(以
下,PBLという)は,鋼板部のシェル要素とコンクリー
−3 / 4
(2)
1
(3)
α ⋅ E0
0.3
こ こ に , K H : 地 盤 反 力 係 数 (kN/m 3 ) , α k : 補 正 係 数
(=1.0), K H0 :直径0.3mの剛体円板による平板載荷試
験の値に相当する水平方向地盤反力係数(kN/m 3 ), B H :
背 面 土 圧 を 受 け る 面 の 換 算 載 荷 幅 (m) , α : 換 算 係 数
kH 0 =
(=1.0)である.
ト部のソリッド要素の間を並進3方向のバネ要素でモデ
ル化した.PBLのずれ剛性は,既往の引抜き試験結果 7) よ
< 鋼桁上フランジ面 >
300
り,孔面積と鋼板厚に比例すると仮定して,次式より算
1550
鋼桁ひずみゲージ
(上フランジ貼付)
150 100
出した.
S2
S1
C3
C2
C1
C4
C5
C6
A2F
D E
400 250
A1F
C
G1
800
G2
鋼桁ひずみゲージ
(ウェブ貼付)
3100
径間長 50500
橋 長 55500
600
2500
側 面 図
橋 長 55500
径間長 50500
桁 長 54500
支間長 53000
2500
500
750
2500
500
750
A1
3100
3100
300
S1
C1
C2
C3
C4
C5
C6
R
155
425 270
850
< 鋼桁下フランジ面 >
155
425 270
850
A2
0.30%
850
250 400
2500
< 鋼桁部 >
600
300 150
150
850
A2
A1
10150
445 9260 445
2325 5500 2325
< 剛結部 >
600
300 150
150
6614.4 1250
B
鋼桁 PC床版
5 x 8000 = 40000
横桁間隔 1250 6614.5
(GCL上)
床版ひずみゲージ
(コンクリート埋込)
S1
A
1400
床版ひずみゲージ
(配力筋貼付)
平 面 図
750
400 400
150
100
S2
鋼桁ひずみゲージ
(下フランジ貼付)
剛結部 鋼桁部
(a)剛結部
320
1260
325
3500
PRC 床版 t=300mm
鋼桁ひずみゲージ
(上フランジ貼付)
4.38%~4.50%
3100
鋼桁ひずみゲージ
(ウェブ貼付)
200
200
鋼桁ひずみゲージ
(下フランジ貼付)
G1
2325
150
425 270
850
G2
5500
2325
(b)支間中央部
図-1
片山技報
1550
3500
< 鋼桁部 >
600
300 145
155
床版ひずみゲージ
(配力筋貼付)
3100
1250
325
床版ひずみゲージ
(コンクリート埋込)
1550
10150
9510
320
鋼桁 PC床版
断 面 図
図-2
変位および加速度の計測位置
No.34
(23)
ひずみゲージの計測位置
試験時の背面盛土は,A1側が未施工,A2側が施工済で
-5に示す.並列載荷した場合,支間中央部の変位は,
あったため,A2側のみ背面盛土を線形バネでモデル化し
計測値が3.8mm,解析値が4.7mmであった.偏心載荷した
た.橋台基礎と地盤は,水平・鉛直・回転バネでモデル
場合,支間中央部の変位は,計測値が5.9mm,解析値が
化した.背面盛土および基礎モデル化を図-4に示す.
6.3mmであった.いずれも,計測値は解析値より1~2割
鋼桁とPC床版は完全合成とした.鋼部材およびコンクリ
小さくなる傾向が認められた.その要因として,橋台基
ート部材の材料定数を表-1に示す.線形条件は,平面
部に考慮した地盤バネが解析で用いた値よりも大きく,
線形のみ考慮して,縦断・横断勾配は無視した.メッシ
ほぼ固定状態に近い挙動を示したためと推察される.
ュサイズは,一般部が150mm程度,剛結部および支間中
央部が100mmとした.
また,支間中央部からA2側にかけて計測値と解析値の
乖離が大きくなる傾向が認められた.これは,A2側橋台
の背面盛土による軸圧縮力を線形バネでモデル化した際
3.試験および解析結果
3.1 静的載荷試験
(1)変形性状
に,解析で用いたバネ値よりも大きく,ほぼ固定状態に
近い挙動を示したためと推察される.
写真-2に示すように,支間中央部に試験車2台を静
的載荷して変形性状を計測した.並列載荷ならびに偏心
載荷時における主桁G1の鉛直変位の計測値と解析値を図
剛結部
A2
Z
Y
X
鳥瞰図
A1
C6
C5
図-4
C4
C3
C2
表-1
断面図
弾性係数
C1
Z
背面盛土および基礎モデル化
(N/mm 2)
X
Y
鋼桁
ポアソン比 線膨張係数
備 考
2.00E+05
0.3
一般部
2.80E+04
0.167
1.00E-05 σ ck=30N/mm 2
剛結部
2.98E+04
0.167
1.00E-05 σ ck=36N/mm 2
PC床版
3.10E+04
0.167
1.20E-05 σ ck=40N/mm 2
壁高欄
2.80E+04
0.167
1.20E-05 σ ck=30N/mm 2
橋台
図-3
材料定数
解析モデル
(a)並列載荷
1.20E-05
(b)偏心載荷[主桁 G1 側]
写真-2
静的載荷状況
(24)
片山技報
No.34
(2)ひずみ分布
前面側(D~Cライン)の鋼桁ウェブ下端および下フラン
並列載荷時における支間中央部の主桁G1橋軸方向ひず
ジで圧縮応力が発生するのみで,それ以外にはほとんど
み分布の計測値と解析値を図-6に示す.計測値と解析
応力が発生していない.並列載荷時における剛結部の主
値は概ね一致している.支間中央部では,中立軸が上フ
桁G1橋軸方向ひずみ分布の計測値と解析値を図-8に示
ランジ近傍に位置しており,合成桁としての挙動を示し
す.剛結部では,境界付近(E~Cライン)の主桁下フラ
ていることが確認できた.
ンジおよびウェブ下端に大きなひずみが発生しているが,
一方,負曲げ領域となる剛結部では,図-7に示すよ
境界部より鋼桁埋込み長の1/2以上(B~Aライン)にな
2
ると,ひずみがほとんど発生していない.計測値と解析
値は概ね一致している.
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
-5.0
-6.0
-7.0
-8.0
計測値
【L/2点】
計測値:3.8mm
解析値:4.7mm
解析値
鋼桁鉛直変位(mm)
鋼桁鉛直変位(mm)
うに,境界部の鋼桁下フランジ側でσ x =-12.3N/mm の
高い圧縮応力が発生している.剛結部内の鋼桁は,剛結
A1
L/2
0
10
20
A2
30
40
50
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
-1.0
-2.0
-3.0
-4.0
-5.0
-6.0
-7.0
-8.0
【L/2点】
計測値:5.9mm
解析値:6.3mm
計測値
解析値
A1
L/2
0
10
A1側桁端部からの距離(m)
20
A2
40
30
50
A1側桁端部からの距離(m)
(a)並列載荷
(b)偏心載荷[主桁 G1 側]
図-5
主桁 G1 の鉛直変位
1000
PC床版上面
500
上フランジからの距離(mm)
0
鋼桁上フランジ
計測値
-500
解析値
-1000
-1500
-2000
A
-2500
B
鋼桁下フランジ
-3000
-3500
-100
-75
-50
-25
0
25
50
75
C
D
E
σ x =-12.3N/mm 2
100
ひずみ(με)
図-6
図-7
並列載荷時における支間中央部
の主桁 G1 橋軸方向ひずみ分布
並列載荷時における剛結部の
主桁 G1 橋軸方向応力コンター
800
PC床版上面
計測値E
計測値D
解析値A
解析値E
解析値C
解析値B
-400
PC床版上面
計測値C
計測値B
0
解析値D
鋼桁上フランジ
鋼桁上フランジ
鋼桁上フランジ
S1
A
B
C
D E
PC床版
-800
-1200
鋼桁
上フランジからの高さ(mm)
PC床版上面
計測値A
400
-1600
ひずみゲージ
-2000
-2400
-2800
-3200
-100
鋼桁
下フランジ
鋼桁下フランジ
-75
-50
-25
ひずみ(με)
0
(a)埋込部[A,B ライン]
図-8
片山技報
No.34
25 -100
-75
鋼桁下フランジ
-50
-25
ひずみ(με)
0
(b) 埋込部[C,D ライン]
25 -100
-75
-25
ひずみ(με)
(c)境界部[E ライン]
並列載荷時における剛結部の桁 G1 橋軸方向ひずみ
(25)
-50
0
25
3.2 振動試験
(1)常時微動
12.0Hzであった.
鉛直たわみの強制振動で計測された応答波形,スペク
微小振幅域で計測された常時微動の応答波形とスペク
トルを図-9に示す.加速度の最大振幅は,支間中央部
トルおよびモード形状を図-10に示す.加速度の最大
振幅は60gal程であり,卓越周波数は4.4Hzであった.
で0.7gal程であった.卓越周波数は,4.4Hzが最も卓越
同様に,ねじれの強制振動で計測された応答波形,ス
しており,4.2Hzにも卓越周波数が確認された.これら
ペクトルおよびモード形状を図-11に示す.加速度の
は,鉛直たわみ1次とねじれ1次の振動モードに相当する.
最大振幅は90gal程であり,卓越周波数は4.2Hzであった.
鉛直たわみとねじれの振動数が近接しているため,常時
段差落下で得られた卓越周波数は,微小振幅域で計測
微動で計測された応答波形は2つの振動成分が連成した
された常時微動の値と同じであり,固有振動数は振幅依
ものとなっている.
存性が無いことが確認された.
(2)段差落下
構造減衰の評価は,段差落下による強制振動で計測さ
れた応答波形の固有振動数の周波数帯のみをバンドパス
枕木から段差落下させ,強制振動による応答波形を計測
フィルターで抽出し,得られた自由減衰波形より対数減
した.鉛直たわみ振動に着目する場合には,幅員中央で
衰率を算出した.対数減衰率の計測値は,鉛直たわみ振
試験車を段差落下させた.ねじれ振動に着目する場合に
動 δ h =0.10,ねじれ振動 δ θ =0.04であり,鉛直わた
は,主桁G1上で試験車を段差落下させた.なお,試験車
み振動がねじれ振動に比べて,かなり高くなる傾向が認
の バ ネ 特 性 は , バ ネ 上 振 動 が 2.0Hz , バ ネ 下 振 動 が
められた.鋼ポータルラーメン橋は,鋼桁と橋台が剛結
加速度(cm/s2)
写真-3に示すように,支間中央部で試験車の後輪を
2
構造であり,鉛直たわみの振動モードは橋台の変形を伴
1
うため,対数減衰率が高くなったものと推察される.一
0
方,ねじれの振動モードは,橋台の変形が小さく鋼桁の
ねじれ変形のみが発現するため,対数減衰率が小さくな
-1
ったものと考えられる.
-2
時間(sec)
(a)応答波形
20
加速度(cm/s2)
10
0
0.2
0.15
30
0
-30
-60
10
0.1
20
時間(sec)
(a)応答波形
4.2Hz
30
2
0.05
スペクトル振幅(cm/s2)
スペクトル振幅(cm/s2)
4.4Hz
60
0
0
5
10
15
周波数(Hz)
(b)スペクトル
図-9
常時微動の鉛直方向加速度
[支間中央部主桁 G1 側]
4.4Hz
1.5
4.2Hz
1
0.5
0
0
5
10
15
周波数(Hz)
(b)スペクトル
(c)モード形状
図-10
写真-3
段差落下状況
(26)
鉛直たわみ強制振動の加速度応答
[支間中央部主桁 G1 側]
片山技報
No.34
加速度(cm/s2)
100
計測値は,解析値に比べて,鉛直たわみが16%程,ねじ
50
れが5%程高い値であった.これらは,解析モデルと実構
0
造物とで橋台基礎や背面盛土の境界条件が整合できてい
-50
ないためであり,実構造物の方が境界条件の拘束度が高
く,より固定状態に近い挙動を示したためである.
-100
10
20
時間(sec)
(a)応答波形
スペクトル振幅(cm/s2)
4
30
4.まとめ
静的載荷試験では,鋼ポータルラーメン橋の変形挙動
4.2Hz
およびひずみ分布に対して,計測値と解析値が良好な一
3
致を示しており,FEM解析モデルの妥当性が検証できた.
剛結部の応力性状は,鋼桁とRC橋台の境界部で応力集中
2
4.4Hz
が確認された.また,振動試験では,供用前の鋼ポータ
ルラーメン橋の振動特性が取得できた.固有振動数は,
1
鉛直たわみとねじれが非常に近接していた.
今回,鋼ポータルラーメン橋の実橋載荷試験で得られ
0
5
0
10
15
た供用前の初期値データが,今後の維持管理計画に役立
周波数(Hz)
つことを期待している.
(b)スペクトル
謝辞:実橋載荷試験は,「東九州自動車道
山国川橋
(鋼上部工)工事」で実施したものである.本試験を進
めるにあたり,西日本高速道路株式会社
九州支社およ
び中津工事事務所の方々をはじめ,関係各位に深く感謝
の意を表します.
参考文献
(c)モード形状
図-11
1)独立行政法人土木研究所,鋼管杭・鋼矢板技術協会,
ねじれ強制振動の加速度応答
[支間中央部主桁 G1 側]
表-2
常時微動
社団法人プレストレスト・コンクリート建設業協会,社団法人日本
橋梁建設協会,社団法人建設コンサルタンツ協会:橋
振動試験結果
固有振動数(Hz)
段差落下① 解析値②
台部ジョイントレス構造の設計法に関する共同研究報
比率①/②
対数
減衰率
鉛直たわみ
4.4
4.4
3.8
1.16
0.10
ねじれ
4.2
4.2
4.0
1.05
0.04
告書(その2),2012.3.
2)社団法人日本橋梁建設協会:複合橋梁の概要,2007.4.
3)塩永亮介,河野豊,川辺篤宣,上田和哉:鋼ポータル
ラーメン橋「色太第三橋」の実験と施工,石川島播磨
技報,Vol.44,No.2,pp.58-65,2004.3.
ただし,今回の計測は,背面盛土がA1橋台が未施工,
4)高木優任,平田尚,道下泰博,横山功一:インテグラ
A2橋台が施工済の状態での計測値であり,橋台の背面盛
ル複合ラーメン橋の実橋載荷試験,鋼構造年次論文報
土が両側で施工済の状態では,対数減衰率が異なる可能
告集,第10巻,pp.583-590,2002.11.
性もあり,留意する必要がある.
5)芦塚憲一郎,宮田弘和,江頭慶三,木曽収一郎,栗田
(3)交通振動
章光:鋼ポータルラーメン橋の施工と実橋載荷試験,
交通振動では,試験車を平均速度約9km/hで走行させ,
第7回複合構造の活用に関するシンポジウム,pp.1-1-
加速度応答波形を計測した.加速度の最大振幅は,支間
1-6,2007.11.
中央部で10gal程であった.安全管理上,試験車の走行
6)片山和也,山本正寿,山野修,永田敏春:国内最大級
速度が低速であり,走行面である床版上の路面凹凸が少
の支間を有する鋼ポータルラーメン橋の設計と施工
なかったため,交通振動による衝撃的な波形も認められ
- 東九州自動車道
なかった.交通振動のパワースペクトルより,4.2Hzと
4.4Hzに卓越周波数が確認できた.
片山技報No.33,pp.30-35,2013.11.
7)明橋克良:鋼2主桁とRC橋脚との複合ラーメン橋剛結
常時微動,段差落下および交通振動による固有振動数
部の力学的挙動と設計法に関する研究,大阪市立大学
と対数減衰率の計測値と解析値を表-2に示す.加速度
振幅が異なる3種類の振動試験でも,固有振動数は全て
博士論文,2001.11.
8)社団法人日本道路協会:道路橋示方書・同解説Ⅳ下部
同じ値であり,振幅依存性が無いことが分かった.また,
片山技報
No.34
山国川橋(鋼上部工)工事 -,
(27)
構造編,2012.3.