迫真勉強会・電磁誘導セミナー 1. ノイマン・ファラデイの法則 回路に沿って生じる起電力と, 回路に鎖交する磁束 Φ の関係は e=− dΦ dt 2. 電磁場の変換則 慣性系 K 系における電磁場 (E, B) が静電磁場であるとき, K 系に対し速度 v で運動する慣性系 K’ 系における電磁場 (E ′ , B ′ ) は E′ = E + v × B v B′ = B − 2 × E c ... 押さえておくべきポイントはこの2つだけ! 「回路の静止系で見る」ことと, 「磁石の静止系で見る」ことの違いは? →起電力の原因を, ローレンツ力 (磁場) ととるか, 電場 ととるかの違い. 「どちらで解釈しても, それは −Φ̇ に等しくなる」という主張が, ファラデイの法則である. 例題1 1辺 l の正方形コイルが, コイル面に対し垂直な方向の一様磁場 B 中 B を, 一定の速度 v で運動している. ただし v は図の AB と垂直で, コイ ルは磁場に対し垂直な面内を運動する. このとき, コイルに沿って生じ C B る起電力は? D 1. 電場がゼロの系 AB, CD はローレンツ力によって, 起電力 eBA = vbl, eCD = vbl が生じるが, これは1周に沿って合計すると, 0. 2. 回路の静止系 回路は速度を持っていないので, 起電力の原因をローレンツ力と 考えることはできない. 上記の変換則によって, この系では一様 な電場 E = v × B が存在するので, ABCD に沿っての起電力 は H E · dr = vBl − vBl = 0. ※いずれの場合にしても, ファラデイの法則 e = −Φ̇ = 0 が成立している. 1 A v 例題2 一様磁場 B 中に置かれた幅 l の導体レール上を, 導体棒が一定の速度 v で B 運動している. このとき, レールと棒でできた回路 ABCD に沿って生じる起 C 電力は? B v D 1. 電場がゼロの系 棒はローレンツ力を受けるので, 棒に沿って B → A の方向に起電力 A x 0 vBl が生じる. 回路の棒以外の部分には起電力は生じないので, 回路に 沿っての起電力は vBl. 2. 棒の静止系 棒にはローレンツ力は働かない. 起電力の原因は電場 E = v × B と考 える. 棒に沿っての起電力は, ∫ BA E · dr = vBl. ... と答えると, OUT ! この場合, 電場は一様に存在するので, レール CD にも起電力 vBl が 生じている. しかし, この系ではレール CD は速度 −v で運動してい るので, 磁場からローレンツ力を受け, 起電力 −vBl が生じ, これらが 打ち消しあう. したがって, 結果的には, 起電力は棒にのみ生じており, e = vBl. ※当然, ファラデイの法則が成立している. BADC の方向を起電力の正の向きとすると, 回路を貫く磁束は Φ = −Blx, よって, 起電力は e = −Φ̇ = +vBl. 例題3 導体磁石と電圧計, 導線を使って図のような回路をつくる. 導線と磁 石は接しており, 接点は抵抗なくなめらかに動く. 磁石と電圧計は速度 v の相対運動をしている. このとき, 回路に沿っての起電力を3つの方 V 法で求めよ. v B 1. ファラデイの法則 回路の外縁をぐるっと回るループをとれば, この面に鎖交する磁 束の時間的な変化はない. よって e = −Φ̇ = 0. 2. 磁石に固定された系で見る この場合, 回路のうち電圧計と導線の部分は速度 v で左へ運動しているが, そこには磁場がないので ローレンツ力を受けず, この部分には起電力は生じない. 磁石の部分は運動していないので, やはりロー レンツ力を受けず, この部分にも起電力は生じない. ∴ e = 0. 3. 電圧計に固定された系で見る 回路のうち磁石の部分は速度 v で運動するので, ローレンツ力により起電力 vBl が生じるが, この場合, 磁石の部分には電場 −v × B(注意!) が存在するので, この電場による起電力は −vBl となり, 結局, 2 合計の起電力は 0. ※電磁場の変換公式における v は, 「磁場の静止系から運動系をみた相対速度」である. この場合, v は磁石 と共動する系から電圧計を見た速度になるので, それは −v(左向き) である. 例題4 一様な磁場 B 中で, 長方形のコイルが一定の角速度 ω で回転してい B る. 回転軸は磁場と垂直で, コイルの寸法は, 回転軸と平行な辺の長さ が a, 垂直な辺の長さが b である. このとき, コイルに生じる起電力を 求めよ. ただし, t = 0 においてコイル面は磁場に垂直であったとする. ω A B N S C D 1. 磁石の静止系 AD の部分は, 速度 aω/2 で運動しているので, ローレンツ力を受け, 起電力 aω 2 Bb sin ωt が生じる. CD の部分も同様に起電力が生じるので, 1 周に沿っての起電力は e = abBω sin ωt. 2. 回路の静止系 少々天下りだが, 次のように考えると良い. ある時刻 t において A 点だけを局所的に考えると, その点 は磁石の静止系に対して速度 v = ( aω 2 cos ωt, aω 2 sin ωt, 0) を持っているので, B をこの速度で変換し た電場 E = v × B = (0, 0, − aω 2 B sin ωt) が存在すると考える. このように考えると, ある時刻 t に おいて, AD に沿って電場 aω 2 B sin ωt が, BC に沿っては電場 − aω 2 B sin ωt が存在するので, コイルに 沿っての起電力は e = aωBb sin ωt. いずれの場合にも, ファラデイの法則 e = −Φ̇ が成立していることを確認されたい. その際, (1) の場合は ∫ d B = (B, 0, 0), n = (cos ωt, sin ωt, 0) として − dt B · ndS を, (2) の場合は B = (B cos ωt, −B sin ωt, 0), ∫ ∂B n = (1, 0, 0) として − ∂t · ndS を計算すれば良い. 3
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