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コンマ圏
alg-d
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2015 年 10 月 19 日
定義. C, D1 , D2 を圏,K : D1 −→ C ,L : D2 −→ C を関手とする.以下のようにして
定まる圏をコンマ圏といい,K ↓ L と書く.
• K ↓ L の対象は組 (d1 , d2 , f ) であり以下を満たすものである.
(1) d1 は D1 の対象である.
(2) d2 は D2 の対象である.
(3) f : Kd1 −→ Ld2 は C の射である.
• K ↓ L の射 (d1 , d2 , f ) −→ (d′1 , d′2 , f ′ ) とは組 (g1 , g2 ) であり以下を満たすもので
ある.
(1) g1 : d1 −→ d′1 は D1 の射である.
(2) g2 : d2 −→ d′2 は D2 の射である.
(3) Lg2 ◦ f = f ′ ◦ Kg1 ,即ち以下の図式を可換にする.
D1
C
K
d1
g1
Kd1
f
Kg1
d′1
L
Ld2
Lg2
Kd′1
f′
Ld′2
D2
d2
g2
d′2
例. D1 = C ,D2 = 1 = {∗} として K : C −→ C を恒等関手 idC ,L : 1 −→ C を
L(∗) = c で定まる関手とすれば,コンマ圏 K ↓ L はスライス圏 C/c である.
b を取る.P を関手 1 −→ C
b と見なしたとき,コンマ圏 y ↓ P を
例. C を圏として P ∈ C
∫
category of elements といい,記号 el(P ),
P などで表す.
C
1
コンマ圏 y ↓ P の対象は c ∈ C ,∗ ∈ 1,θ : y(c) =⇒ P の三つ組であるが,米田の
補題から θ : y(c) =⇒ P は集合 P c の元と同一視できる.よって Ob(y ↓ P ) = {(c, x) |
c ∈ Ob(C), x ∈ P c} とみなすことが出来る.射 (c, x) −→ (c′ , x′ ) は f : c −→ c′ で
P f (x′ ) = x となるものである.
C, D1 , D2 を圏,K : D1 −→ C ,L : D2 −→ C を関手とする.コンマ圏 K ↓ L を考え
ると,関手 π1 : K ↓ L −→ D1 ,π2 : K ↓ L −→ D2 と自然変換 θ : K ◦ π1 =⇒ L ◦ π2 が以
下のように定まる.
L
C
=⇒
D2
π2
K
θ
K ↓L
D1
π1
• (d1 , d2 , f ) ∈ Ob(K ↓ L) に対して π1 (d1 , d2 , f ) := d1 ,(g1 , g2 ) ∈ Mor(K ↓ L) に対
して π1 (g1 , g2 ) := g1 .
• (d1 , d2 , f ) ∈ Ob(K ↓ L) に対して π2 (d1 , d2 , f ) := d2 ,(g1 , g2 ) ∈ Mor(K ↓ L) に対
して π2 (g1 , g2 ) := g2 .
• (d1 , d2 , f ) ∈ Ob(K ↓ L) に対して θ(d1 ,d2 ,f ) := f .
コンマ圏の重要な性質は,この (K ↓ L, π1 , π2 , θ) がある種の普遍性を持つ事である.
命題. C, D1 , D2 を圏,K : D1 −→ C ,L : D2 −→ C を関手として,上記のように
π1 : K ↓ L −→ D1 ,π2 : K ↓ L −→ D2 と θ : K ◦ π1 =⇒ L ◦ π2 を定める.このとき,別
の組 (E, P1 , P2 , η) が同じ条件,即ち
• E は圏である.
• P1 : E −→ D1 は関手である.
• P2 : E −→ D2 は関手である.
• η : K ◦ P1 =⇒ L ◦ P2 は自然変換である.
L
=⇒
D2
P2
η
E
P1
C
K
D1
を満たすならば,関手 H : E −→ K ↓ L が一意に存在して以下を満たす.
2
(1) π1 ◦ H = P1 ,π2 ◦ H = P2 である.
θ
H
(2) 自然変換 K ◦ P1 = K ◦ π1 ◦ H =
=⇒
L ◦ π2 ◦ H = L ◦ P2 は η と一致する.
=⇒
π2
P1
K ↓L
K
=
π1
P2
D1
L
C
K
D1
η
=
=
θ
D2
C
=⇒
L
D2
H
E
E
P1
P1
証明. P1 : E −→ D1 ,P2 : E −→ D2 を関手,η : K ◦ P1 =⇒ L ◦ P2 を自然変換とする.
関手 H : E −→ K ↓ L を
• 対象 e ∈ E に対して H(e) := (P1 (e), P2 (e), ηe ).
• 射 f ∈ E に対して H(f ) := (P1 (f ), P2 (f )).
で定める.このとき明らかに条件 (1)(2) を満たす.またこの条件を満たす H は明らかに
これしかない.
3