商業銀行委託貸付管理弁法の草案

商業銀行委託貸付管理弁法の草案
中国銀行業監督管理委員会は商業銀行委託貸付管理弁法の草案を公表し意見募
集をしました。日系企業でも委託貸付を実行している会社もありますが、本弁
法の施行後は資金源や使途について一定の制限がかかります。ちなみに既存の
委託貸付について遡及適用はされず期限到来により清算されます。
企業間の資金融通
中国において一般の企業等は貸付等の金融業務を取り扱うことは禁止されてい
ます。従来から企業の余剰資金を委託貸付として利用することで資金の運用が
おこなわれていました。
受託者
(商業銀行)
【取引図】
資金の預け入れ
融資の実行
実質的な金利の支払
委託者
借入人
委託貸付とは(定義)
(貸付通則第 7 条)
政府部門、企業、事業単位及び個人等の委託者は資金を提供し委託者が決定し
た貸付対象、用途、金額、期限及び利率等に基づき、貸付人(受託者)が委託
者に代わって実行し及び使用を監督しかつ貸付金の回収に協力する貸付をいう。
貸付人(受託者)は手数料を受け取るのみで貸付のリスクは負わない。
(本弁法第 3 条)
委託者が資金を提供し商業銀行(受託者)は委託者が確定した借入人、用途、
金額、通貨種類、期限、利率等に基づき代わりに実行し使用の監督並びに回収
に協力する貸付を指す。
委託貸付(委託者)の会計処理
委託貸付は企業の採用する会計原則によってそれぞれ次の科目に関連して計上
されています。
西
山
会
計
事
務
所
http://nishiyama-accountingfirm.com/
企業会計制度
企業会計準則
貸付金(BS)科目
長期債権投資
委託貸付
利息計上(PL)科目
投資収益
その他業務収入
実務において、委託貸付ではなく「その他未収入金」で無利子の貸出しが行わ
れている事案もあります。少額かつ臨時的並びに短期間の場合は大きな問題に
はなりませんが、資金が流用されている場合もあり「その他未収入金」勘定の
動きには注意が必要です。
本弁法により規範化される委託貸付業務
① 商業銀行の委託代理業務
委託貸付は商業銀行の委託代理業務であり、商業銀行は商業手数料を徴収し信
用リスクを引受けない。
② 資金源の確認
商業銀行は委託者の資金源を審査するとき委託者にその資金源が合法的であり
コンプライアンスに合致していることを証明する書類若しくは同等の法的効力
を有する証明の提出を要求する。
次の資金をもって委託貸付を実行することはできません。
・国家が規定する特殊な用途を有する各種専用基金
・銀行の与信資金
・債権発行で募集した資金
・募集した他者の資金
・出所を証明できない資金
③ 使途の制限
商業銀行が受託して実行する貸付は明確な用途を有し、資金用途は法律の規定
等に合致していなければならず次に掲げる用途には使用してはならない。
・国家が明文化して禁止している製品及びプロジェクトの生産、経営若しくは
投資
・債権、先物、金融デリバティブ商品、理財商品、持分権益等の投資
・登録資本金、増資の資金
・国家が明確に規定しているその他の禁止用途
本弁法により委託貸付の実務について規範化され商業銀行側の責任が明確化さ
れ従来に比べ利用できる場面は減少するものと予想されます。企業にとっては
資金調達並びに運用について再考することが必要です。
西
山
会
計
事
務
所
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