信託事業 土地信託事業 2回 0400‐15‐5211 田中 優紀 1.信託とは 委託者が受託者(ex.信託銀行)に財産権を引 き渡し、一定の目的に従い、受益者のために、 受託者がその財産の管理・運営・処分をする こと。 財産の種類や信託終了時の信託財産の返還 方法・運用方法により、さまざまに分類される。 信託業務の分類 信託業務 金銭信託 金銭以外の信託 信託終了時 信託終了時 金銭で交付 現物有姿で交付 貸付信託 年金信託 投資信託など ファンドトラスト 従業員特殊信託 など 有価証券信託 住宅ローン信託 動産信託 土地信託など 包括信託 2.土地信託 土地の有効活用を目的に、地主が委託者兼受益 者として信託銀行に土地を信託し、信託銀行は 受託者として企画立案から資金調達、建物の発 注・管理・運営までを信託銀行が行う。そのようにし て得られた収益から諸経費を差し引いたものを受益 者である地主に配当する。 1986年から民有地だけでなく、国・公有地にも適用 可能となる。 土地信託には、賃貸型土地信託と処分型土地信託 の2種類がある。 ・賃貸型土地信託 信託財産である土地の上に建物を建設し、長期に 不動産の賃貸事業を行う信託で、信託終了時には 現状のまま信託財産が受益者に交付される。 ・処分型土地信託 信託財産である土地に建物を建設したうえで、土 地や建物などを売却する信託。信託終了時にはそ の処分代金が受益者に支払われる。 3.事例-フェスティバルゲート 大阪市浪速区霞町市電車庫跡土地信託事業 ・委託者兼受益者:大阪市交通局 ・受託者:東洋,中央,三井,日本の4信託銀行 ・目的:土地の有効活用,地域振興に資する開発 ・信託期間:1991.3~2020.3の30年間 フェスティバルゲートは賃貸型土地信託として、隣接 するスパワールドは処分型土地信託として開発 1997.7 「都市型立体遊園地」としてオープン 入場料無料・交通至便、商業施設・映画館も完備 →開業初年度の入場者数は、TDLに次ぐ第2位の 656万人を記録した。 ↓ しかし、入場者数・テナントともに激減し、・・・ ↓ 2004.7 受託者(UFJ・中央三井・三菱の3信託銀 行)は、事業形態の変更と債務の弁済などを求める 民事調停を大阪簡易裁判所に申し立てる。 開業中7年間で、1度も黒字を計上しなかった。 原因 1.信託銀行にとって遊園地業という不慣れな事業 2.「親方日の丸」的な発想の 見通しの甘さ 3.構造上新しい遊具などの増 設が困難 4.リピーターを得る集客力の あるイベントなし 5. USJの誕生 2004.3 調停委員会から調停案の提示があり、29 日調停成立 調停事項 ・2004年9月末日を以って信託契約解除 ・信託財産の引渡し ・契約上の地位継承 ・信託財産に属する債務の処理 ・解決金の支払い ⇒結果、大阪市は実質200億円の負債を負担 4.土地信託のメリット 管理・運営に関する事務は信託銀行が行うため、手 間をかけずに事業を実施できる。 資金借り入れは信託銀行が代行する。 国・公有地に関しては、地域開発事業を進める手段 となる。 5.土地信託のデメリット 信託配当は実現主義であるため、収益は不確定で 事業リスクがある。 信託銀行への報酬支払いが必要となる。 責任の所在や、委託者の権利(信託法)確保があい まいである。 6.土地信託事業の今後 使用していない土地を有効的に利用するた めの手段の1つ。その土地の特性や信託者・ 受益者のニーズにあわせて、受託者は正しく その手法を選択しなければならない。 委託者・受託者・受益者それぞれの、権利・ 義務関係を、法制などにより具体的にしてい く必要がある。 参考資料 社団法人信託協会HP (http://www.shintaku-kyokai.or.jp/) UFJ信託銀行HP (http://www.ufjtrustbank.co.jp/) 大阪市交通局HP (http://www.kotsu.city.osaka.jp/)
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