多特性を考慮したサービス・タイプの分類

中村 : 多特性を考慮したサービス・タイプの分類
商学論集 第 84 巻第 2 号 2015 年 12 月
【 論 文 】
多特性を考慮したサービス・タイプの分類
中 村 陽 人
【要 旨】
これまでサービス・タイプの分類結果は多数提案されているが,本来,目的や状況に応じて適切な分類
方法を選ぶべきであるのに,実際には特定の分類が盲目的に用いられることが多い。そこで本研究では,
まず分類方法を「独立的/複合的」,「理論主導的/データ主導的」という 2 つの観点の組み合わせから 4
つに大別した。次に先行研究で行われてきたサービス・タイプの分類を,この枠組みに当てはめて整理し,
理論主導・独立型の分類,中でも Lovelock(1983)の 1 つ目の分類ばかりが用いられていることの問題点
を指摘した。さらにデータ主導・複合型の分類として Bowen(1990)の分類を取り上げ,条件を拡大して
追調査・分析を実施した。その結果,Bowen の分類のある程度の再現性が確かめられた。目的に応じて分
類方法は使い分けるべきであり,特に一般化を目指して妥当な調査対象を選択したい場合には,データ主
導・複合型の分類を積極的に採用すべきであると考えられる。
1 背景と目的
様々な分野の様々な事柄について,様々な分類がなされてきた。一般的に分類には以下のような
利点が考えられる。まず,第 1 点目は個別の事柄(分類される個々の要素)を理解しやすいという
ことである。例えば,
「ベリーズ」という国を知らなくても,中米に位置する(分類される)とい
うことがわかれば,かなり暑い地域だろうと想像がつく。さらに,カリブ海に面しているのではな
いか,マヤ文明の栄えた地域ではないか,といったようにいろいろなイメージがわいてくる。第 2
点目は分類対象全体も理解しやすくなるということである。例えば,脊椎動物とはどんなものかと
いうことを考えるときに,脊椎動物が哺乳類,鳥類,爬虫類,両生類,魚類に分類できることがわ
かれば直感的なイメージがわきやすい。つまり整理される(脊椎動物が 5 タイプに分けられる)こ
とでその対象の概要(脊椎動物とはどのようなものか)が把握しやすくなる。そして第 3 点目は,
同じタイプに分類されている別の事柄から有益な情報を得ることができるということである。例え
ば,何か特定の本を見つけに図書館へ行ったが,偶然目にした近くの本の中から,目当ての本より
ももっとわかりやすい本を見つけた,ということはよくあることである。さらに第 4 点目は,働き
かける対象を効果的に絞りやすいという点である。マーケティングの STP を考える際に,市場や
顧客をセグメント化する(分類する)作業がまさにこの利点を活かしたものである。
それでは,サービス・マーケティングの研究領域において頻出するサービス・タイプの分類は,
どのようなことを目的としたものであろうか。研究の世界でよく用いられるのは,大きく 2 つの場
合である。1 つ目はサービスの定義,あるいはサービスが持つ特性や次元に関して議論がなされる
場合である。そして,2 つ目は調査を行うときの調査対象を選ぶ場合である。これは限られたデー
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タで導かれた結論をより一般化するためになされる。つまり,すべてのサービスについて調査を行
うことは事実上不可能であるため,調査の対象としたサービスで導いた結論が,そのサービスでの
み成り立つものではなく,そのサービスが代表する特定のサービス・タイプに共通して成り立つも
のである,としたいわけである。定義や特性に関する議論を目的とする分類は,前述の第 1 点目あ
るいは第 2 点目の利点を活かしたものであり,調査対象の選択を目的とする分類は,前述の第 3 点
目の利点を活かしたものである。
しかし,実務の世界ではサービス・タイプの分類に対して,これまであまり関心が向けられてこ
なかったようである。なぜなら,サービス企業の経営者や管理者は製造業の場合に比べて,自分の
企業を独自でユニークであると考えやすく(近藤 1999),そのため自社が提供するサービス分野以
外にはさほど関心がなかったからであると考えられる。ここで近藤(1999)による以下の指摘は非
常に重要である。
多くのサービス企業は他の企業と共通する課題も持っていて,また同時に,その業種に独特の
問題も存在する。サービスの分類は,共通する部分と独自な領域の両方を明らかにして,その
カテゴリーごとに存在するマーケティング上の課題や経営上のヒントを示してくれる。
(p. 115)
サービス生産性協議会によって進められた JCSI(日本版顧客満足度指数)では,サービスの業
界横断的な顧客満足の指標化が行われている。近藤の指摘と同様に JCSI の考え方も,自社の提供
する特定のサービス領域に縛られることなく,他の業界と比較したり,知見を共有したりすること
を目指しているのである。これはサービス・タイプの分類の高い有用性を示しているといえよう。
つまり「適切な分類」を用いることができるなら,同じサービス・タイプに分類された異なる業種
のサービスの知識やノウハウを,自らのサービス分野にも活かすことができる可能性が非常に高い
ということである。これは先述した分類の第 3 点目の利点である。
サービス・タイプの分類が頻出し,またその分類そのものが有用であることはこれまで述べてき
たとおりであるが,その用いられている分類手法については注意が必要である。というのも,分類
にはいくつかの方法があり,それぞれ長所と短所を持つため,その目的に応じて本来使い分けられ
るべきであるにもかかわらず,実際には有名な分類が盲目的に採用されることが多いからである。
そこで本研究では,分類方法を大別しそれぞれの長所・短所を明らかにした上で,これまであまり
用いられていない多特性を考慮した分類手法である Bowen(1990)の方法について検討し,その有
用性を示すこととする。
2 分 類 方 法
分類には対象を分けるための基準が必要となるが,基準が明確な分類と,基準が不明確な分類が
ある。ここではサービス・タイプの分類の目的に合わせて,基準が明確な分類についてのみ検討を
― 2 ―
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進める1。基準が明確な分類では,考慮した特性が独立的に用いられているものと複合的に用いられ
ているものがある。これをそれぞれ「独立型」
,
「複合型」と名づけることにする。さらに個々の要
素をどこに配置するか(それぞれのサービスをどのグループに割り振るか)という点に付いて,
「理
論主導型」と「データ主導型」の方法を考えることができるので,これらを組み合わせて,分類手
法を 4 つのタイプに分けることができる。本章では分類タイプについて細かい説明を加えた後,
サー
ビスの特性について言及し,実際に行われてきたサービス・タイプの分類について検討していくこ
ととする。
2.1 独立型の分類と複合型の分類
独立型の分類とは,考慮している特性についてそれぞれ独立に評価して個々の要素を分類する手
法である。最も典型的なものが,何らかの 2 つの特性を分類基準とし,それらを 2 軸とした 2 × 2
のマトリクスを作る分類である。縦軸と横軸に設定した特性について,個々の要素はそれぞれ別々
に評価され,マトリクスの中の当てはまるセルに入れられる。この手法は結果が非常にシンプルで
直感的にわかりやすいという長所を持つ一方,2 つ程度の特性しか考慮できないため,残りの多く
の特性の影響を無視することになるという短所も持っている。よって,
特性の選択が非常に重要で,
しかも困難であるという特徴がある。なお,2 つの特性の場合が典型的であると述べたが,もちろ
ん 1 つの特性によって分類する方法もありうる。例えば有形性(無形性)の程度で財を並べた
Shostack(1977)の分類などである。特性が 1 つの場合,その特性について一直線上に個々の要素
が並ぶことになるため,グループ化されずにそのまま表されることが多い。よって独立型の分類手
法の典型的なものというよりも 2 つの特性で行われた分類の特殊な場合(1 つの軸のみに焦点を当
てた場合)と考えるのがよいだろう。また,3 つの特性によって分類する方法もありうる。これは
3 次元の図や複合的な表で表すことが可能である。しかし,分類が複雑になりこの手法が持つ長所
が損なわれるためほとんど用いられない。特性が 4 つ以上になっても表すことは可能だが現実的に
は複雑すぎてまず用いられることはない。
一方,複合型の分類とは,考慮している特性について複合的に評価して個々の要素を分類する方
法である。典型的な方法としては,複数の特性に対する個々の要素の評価データを,クラスター分
析などの多変量解析を用いて分類する方法があげられる。こちらの方法は,多くの特性を加味して
分類することができる一方で,独立型に比べると結果の解釈が難しいという特徴を持っている。
2.2 理論主導型の分類とデータ主導型の分類
調査データなどに基づいて定量的に行う分類を「データ主導型の分類」
,それに対して,分類を
行う者が過去の知見や経験に基づいて定性的に行う分類を「理論主導型の分類」と名づける。理論
主導型の分類で多いのは,まず目的に合わせて特性を選択し,その特性の組み合わせから分類の枠
組みを先に作り,個々の要素をひとつずつどの枠に入れるべきか判断して分類する方法である。後
述するが,この方法は独立型の分類との組み合わせで非常に多く用いられている。理論主導型の分
1
補遺を参照のこと。
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類はデータを集める必要がないのでほとんどコストがかからないという長所を持つが,分類を行う
者の主観的な判断で分類がなされるため,恣意性を排除できないという短所も持つといえる。逆に
データ主導型の分類はアンケートなどの調査で得られた定量的なデータをもとに分類を行うため,
客観性は高いがデータ収集や分析にコストがかかるという点で困難がある。
2.3 サービスの特性
サービスの分類は分類基準の組み合わせによっていくつも存在するが,サービスのどこに焦点を
おいて分類するかによって適切な基準は異なる(Desmet, van Looy, & van Dierdonck 2003)。つまり,
基準が明確な分類では,分類を行う研究者あるいは実務家自身が目的に応じてどの特性を基準とし
て設定するかを決定しなければならない。そのため分類に関する研究では必ず基準となる特性が議
論されることになる。
これまで行われてきた研究では多くの特性について議論されてきたが,その中でも最も重要であ
ると考えられる 4 つの特性に言及する必要があろう。現在出版されているサービス・マーケティン
グに関わる書籍ではサービスの特性について言及する部分が設けられており,多くの場合,無形
,同時性3(simultaneity)(あるいは不可分性(inseparability)
),異質性4(heteroge性2(intangibility)
neous)(あるいは変動性(variability)
)
,消滅性5(perishability)の 4 つの特性で説明されている
(Desmet, van Looy, & van Dierdonck 2003 ; Fisk, Grove, & John 2008 ; Kotler & Keller 2008 ; 近藤
2009 など)。これら 4 つの特性はサービスを特徴づけるものであるから,分類の基準としても非常
によく用いられている。他の特性として,Lovelock(1983),Bowen(1990),Silvestro et al.(1992)
らのレビューを参考にいくつか上げてみると,サービスに焦点を当てたもの(カスタマイズ化の程
度,差別化の程度,サービスの対象が人かモノか)
,従業員に焦点を当てたもの(従業員の重要性,
従業員の技術レベル,フロントオフィスの決定権)
,顧客に焦点を当てたもの(顧客のスイッチ可
能性,顧客の参加度)
,従業員と顧客の接点に焦点を当てたもの(従業員と顧客の関係の深さ,接
触時間の長さ),設備に焦点を当てたもの(設備の重要性)
,需要に焦点を当てたもの(需要変動の
範囲,需要ピーク時の対応能力)など非常に多岐に渡っている。
2
無形性とは,形がないということである。つまり購入前には見ることも味わうことも,触れることも聞くこ
とも匂いをかぐこともできない。サービスは活動もしくは行為であり,購入しても家に持ち帰ることはでき
ない。家に持ち帰ることができるのはサービスの効果だけである。
3
同時性とは,モノが生産後に消費されるのに対し,サービスは生産と消費が同時に行われるという性質のこ
とである。顧客は生産過程に参加し,生産と同時にそのサービスを消費する。生産と消費が分けられないと
いうことで,不可分性と表されることもあるが,内容は同じものである。
4
異質性とは,サービスはプロセスであり同時性を備えているため,サービスを提供する従業員,顧客,物理
的環境,さらには提供時間といった条件次第で差異が生じるリスクが高い性質のことである。サービスはこ
れらの条件で変動する,という意味で変動性と表されることもあるが,内容は同じものである。
5
消滅性とは,モノと違ってサービスは在庫できないという性質である。生産されたサービスは,消費されな
ければ価値がなくなってしまう。
― 4 ―
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2.4 既存研究におけるサービス・タイプの分類
2.1,2.2 で言及したように,本研究では分類方法を「独立的/複合的」
,「理論主導的/データ主
導的」という 2 つの観点からとらえ,それらの組み合わせから 4 つのタイプに大別する。つまり,
「① 理論主導・独立型」「② データ主導・独立型」
「③ 理論主導・複合型」
「④ データ主導・複合
型」の 4 つである。以下,4 つのタイプについて確認していく。
① 理論主導・独立型
この分類はまず重要性の高いと考えられる 2 つの特性を選び,その 2 つの特性を 2 軸とする 2 ×
2 のマトリクスを作成する。例えば,特性 1 についてその性質が強いか弱いか,特性 2 についてそ
の性質が強いか弱いか,の組み合わせからなる 4 つのグループを作るわけである。次に個々のサー
ビスについて,特性 1 の性質は強いか弱いか,特性 2 の性質は強いか弱いかを分類者が判断し,マ
トリクスの当てはまるセルにそのサービスを加える。これを対象とする全てのサービスで繰り返す。
この方法はデータ取得に関わるコストがかからず,結果が 2 × 2 のマトリクスに表されて非常にわ
かりやすいため,これまで行われてきた分類のほとんどがこの分類を採用している。中でも最もよ
く用いられているのが Lovelock(1983)の分類である。Lovelock(1983)はサービス・タイプの分類
を扱った 9 本の先行研究をレビューした結果,5 つの目的に応じてそれぞれに適した 2 つの特性を
2 軸とする分類を示している(表 1)
。特に 1 つ目のサービス活動の理解を目的とする分類は非常に
よく用いられている(図 1)
。
② データ主導・独立型
この方法は特性を選びマトリクスを作るところまで,理論主導・独立型の分類と同じである。違
表 1 Lovelock(1983)の 5 つの分類
目的(何を知りたいか)
特性 1
特性 2
① どんな性質のサービス活動な
のか ?
サービスの性質
サービスの直接的な受け手
有形/無形
人/モノ
② 組織と顧客との関係はどんな
タイプなのか ?
サービス・デリバリーの性質
組織と顧客の関係
継続的な取引/個別的な取引
会員/非公式
③ カスタマイズや判断の余地は
どれぐらいあるか ?
個別の顧客の要望に対して接客ス
タッフが判断できる程度
サービスがカスタマイズされて
いる程度
高い/低い
高い/低い
④ サービスの需要と供給はどう
なっているか ?
供給の程度
時間的な需要の変動の程度
需要のピーク時でも対応できる/
需要のピーク時は対応能力を超え
る
広い/狭い
⑤ どのようにサービスが提供さ
れるのか ?
取引の性質
サービス販路
顧客が提供者の所へ行く/
提供者が顧客の所へ来る/
手紙や電子媒体など
単一/複数
出所 : Lovelock(1983)から著者作成
― 5 ―
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図 1 Lovelock(1983)の 1 つ目の分類(どんな性質のサービス活動なのか ?)
出所 : Lovelock(1983)
いは個々のサービスの配置の仕方である。理論主導型ではどのセル(グループ)に個々のサービス
が当てはまるかを,分類者が過去の知見や経験を元に判断し,決定していたが,データ主導型では
調査によって 2 つの特性それぞれの評価値を回答者から集め,数値化して判断することになる。例
えば,あるサービスについて特性 1 の性質が強いか弱いかをリッカート尺度などを用いて評価して
もらう。同様に特性 2 の性質についても評価してもらうと,回答者全員の個々のサービスに対する
特性 1,特性 2 の評価値を得られる。サービスごとにそれぞれの特性の平均値を求めれば各サービ
スを配置した散布図を描くことができる。最後に,それぞれの特性について性質が強いか/弱いか
の境界値となる数値を決めれば,後は自動的に個々のサービスを分類できる。境界値としてよく用
いられるのは平均値と中央値であり,それぞれ平均値折半(mean-split),中央値折半(median-split)
と呼ばれる。
この方法は回答者が少なくても実施することができる。そのため実務的なところではよく用いら
れている(HP などで散見される)
。しかし,回答者が少なく,さらに回答者の選び方が恣意的で
あるため,数量データを用いたのに客観性があがっていないことになる。逆に客観性をあげるため
に回答者をきちんと確保するとすれば大きなコストがかかってしまう。また,それだけのコストを
かけるのであれば,後述するデータ主導・複合型の方が優れている。したがって,研究ではこの分
類手法を採用するメリットがあまりないため,実際にはほとんど使われていない6。
6
分類対象が多数の場合(数百人規模以上の調査回答者を分類する場合など)には,この分類方法が用いられ
ることも多い。回答者を,ある傾向の高いグループと低いグループに分けたい場合などである。ただし,平
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③ 理論主導・複合型
この方法もほとんど行われていないといってよい。なぜなら,複数の変数が複雑に絡み合った状
態を,多変量解析を用いずに理論で整理するというのは非常に難しいためである。数少ない例の 1
つが,Johansson & Olhager(2004)である。Johansson & Olhager は,サービス・プロセスにあわせ
て 4 タイプ(専門サービス,サービス・ショップ,マス・サービス,サービス工場)を考えている
が,その際 11 の特性の高低などで 4 タイプを特徴付けている。このようなことが可能になったのは,
すべての特性について 4 つのタイプが専門サービス,サービス・ショップ,マス・サービス,サー
ビス工場の順番で常に一直線に並ぶと考えているからである。そのため,例えば,「カスタマイズ
の程度」という特性にしても,
「働き手のスキル」という特性にしても,常に専門サービスが最も
高く,次にサービス・ショップが高く,次にマス・サービスで,最も低いのがサービス工場,とい
う一方向の関係が成り立っている。この性質は非常に興味深い。なぜなら,サービス・プロセスと
いう変数はいくつもの特性を含むもの,あるいは,代わりに用いることができるものと考えること
ができるからである。例えば,
「値段の高いものは品質がいい」という値段と品質の関係が成り立
つとすると,値段と品質はどちらか一方だけわかればよいことになる。さらに「値段の高いものは
デザインがいい」という関係も成り立つとすれば,値段を尋ねるだけで,品質についてもデザイン
についても把握できることになる。すると,値段という特性はいくつもの特性を表すものというこ
とになる。つまり,1 つの特性でありながら,多特性の性質も含んでいることになる。
「サービス・
プロセス」はまさにこのような変数と考えることができる。このサービス・プロセスに関連して,
Kellogg & Nie(1995)の分類にも言及したい。Kellogg & Nie は「サービス・プロセス」と「サービス・
パッケージ」を 2 軸としたマトリクスによる分類を行っている。これは ① の理論主導・独立型の
分類であるが,「サービス・プロセス」が,多特性の性質を持つために,実際には 2 軸によるマト
リクス以上の特性が含まれているのである。
④ データ主導・複合型
この方法は,複数の特性の評価を数値化したデータで扱い,複合的な関係を踏まえて分類する方
法である。これまでそれほど行われてきていないが,後述するように状況によっては非常に有効に
活用できる可能性が高い方法である。ここではその例として Bowen(1990)の方法と Silvestro et al.
(1992)の方法を簡単に取り上げる7。
Bowen(1990)は先行研究で用いられた 19 個の特性の中から,専門家の一致した意見により 7
個 の特性を選び,10 個のサービスについてそれぞれ 7 特性がどれだけ当てはまるかを 5 点尺度で
8
評価させた。442 人の回答者から得られたデータをクラスター分析によって分類し,最終的に 3 タ
均値や中央値を境界とする場合,それらの値よりほんのわずかでも値が大きければその特性が高いグループ
に入るし,ほんのわずかでも値が小さければその特性が小さいグループに入ることになるため,それぞれの
グループの特徴が希薄化しやすい。よって,2 分割ではなく,3 分割,あるいは 4 分割して平均値付近のグルー
プを取り除く方法もある。こうすることでグループの特徴は明確になりやすいが,一方でせっかく集めたデー
タを部分的に利用しないことになり,効率性や倫理性の点からやや問題があるともいえる。
7
詳細は中村(2008)で取り上げているので参照されたい。
8
厳密には当初,9 つの特性を選んでいるが,分析途中でバラツキの大きな 2 つの特性を除いたので,最終的に
は 7 特性での分類となっている。
― 7 ―
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イプに分類した。分類は 7 つの特性を加味したもので,各サービスについてそれぞれの特性の平均
得点を比較したりすることはできるが,それぞれ独立に特性が評価されたのではなく,複合的な特
性間の関係をまとめて分類が行われている。また,Silvestro et al.(1992)の分類も多くの特性を考
慮したものである。先行研究で用いられた特性の中から重要な 6 個の特性を選び,その 6 特性を基
に Delphi アプローチが用いられた。具体的には 11 のサービスについて,5 人の専門家がそれぞれ
6 特性を 3 点満点で評価し,
5 人の結果を合わせるという方法で,
意見が食い違ったものについては,
意見が一致するまで議論が重ねられた。Delphi アプローチは少数の代表的な人の感覚を基にしてい
るし,食い違った意見を話し合いで一致させていく方法なので,Bowen の分類に比べ主観的であ
る点は否めないが,こちらも多くの特性を加味した分類となっている。
2.5 考察
これまで行われてきた分類を考えてみると,4 つの分類方法があるにもかかわらず,研究では圧
倒的に理論主導・独立型の分類が用いられてきた。確かに,メリットが少ないデータ主導・独立型
の方法や,実際に行うことが困難な理論主導・複合型の分類の採用率が低いのはうなずけるが,デー
タ主導・複合型の分類方法や,この手法によって導かれた分類がほとんど使われていないのは非常
に残念なことである。
Bowen(1990)は分類にあたり,既存研究の分類方法について大きな 2 つの欠点を指摘している。
それは 2 × 2 のマトリクスでは,切り口が 2 つの特性に限られてしまうということ,そして,どれ
も実証的な根拠を持たないということである。サービスのある一面について議論する中で,その議
論している内容に直接関わる特性を 2 つ取り上げて理論主導・独立型の分類を行ったのであれば,
それは状況を簡潔にそして明確に表すことができ,その状況に適した分類であるといえるだろう。
しかし,多様な特性を含むサービスの全体像を考えた分類を必要とする場合もある。前章にてサー
ビス・タイプの分類を行う目的として,2 点指摘した。1 つ目はサービスの定義やサービスが持つ
特性や次元に関して議論がなされる場合であり,2 つ目は調査を行うときの調査対象を選ぶ場合で
ある。この調査対象を選ぶという 2 つ目の目的こそ,データ主導・複合型の分類を用いるべき最た
る例である。ここで図 2 とあわせて表 1 と図 1 を見てほしい。図 2 の 2 つの分類はいずれも
Lovelock(1983)の中で提案された分類で,左側の分類は図 1 で示した分類(表 1 の「① どんな性
質のサービス活動なのか ?」を目的とする分類),右側の分類は表 1 の「③ カスタマイズや判断の
余地はどれぐらいあるか ?」
を目的とする分類である。図 1 の分類をもとに調査対象を選ぶとすると,
それぞれのグループからどのサービスを選んでもよいので,図 2 の左側のように,医療,教育,工
業設備の修理・保全,法律サービスを選択する可能性がある。しかし,それら 4 つのサービスは図
2 の右側のように別のある分類を用いると,いずれも同じグループに分類されそうである。つまり,
理論主導・独立型の分類では別のグループに属しているように見えたサービスが,考慮している 2
つの特性以外のある側面からみれば同じグループに属してしまっており,これでは調査対象のサー
ビスの選び方として失敗といえる。もちろんデータ主導・複合型でもすべての特性を考慮している
わけではないので同じようなことになる可能性はあるのだが,それは理論主導・独立型に比べれば
はるかに小さなリスクであるといえる。
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中村 : 多特性を考慮したサービス・タイプの分類
図 2 選択の失敗(出所 : Lovelock(1983)より著者作成)
しかし,ここで確認しなければならないことがある。それは Bowen の用いた分類方法やそこで
示された分類がどれだけ信頼性の高いものなのか,ということである。つまり,再現性がどれだけ
あるのかということである。特に,この分類方法の中心となるクラスター分析は結合方法や距離の
算出方法などでさまざまな選択肢があり,Bowen の選択が妥当なものなのかどうかも検討する必
要がある。ゆえに,次章では調査データを用いて Bowen の方法を再現しながら,方法と与えられ
た分類について細かく検討していく。
3 方 法
3.1 検討事項と分析の概要
Bowen の分類の手順に沿って 4 つの検討事項を確認していく。1 つ目の検討事項は回答者によっ
てバラツキの大きな特性を削除する場合の基準についてである。表 2 は Bowen の研究結果を示し
たものである。Bowen の方法ではある特性の,各サービスに関する個々の標準偏差の値を平均し
たものが 1.20 より大きい場合に,その特性はバラツキが大きいと判断し削除された。表 2 を見る
と下から 2 段目の SD の行で 1.20 を上回る「有形性/無形性」
(SD=1.31)と「顧客参加の程度」
(SD=1.24)が該当し削除された。しかし,ここで用いられている標準偏差 1.20 を基準とする根拠
は示されていない。標準偏差の性質を考えると 1.20 という値を基準とするのは妥当ではないと考
えられる。なぜなら 2 つの集団のバラツキの程度を比較するには,平均値の影響を加味しなければ
ならないからである。よって相対的なバラツキという意味で変動係数を基準に用いる方が適切であ
ると考えられる。しかし,変動係数を用いるにしてもその基準はどのぐらいに設定するかというこ
とを決定するためには,そこに焦点を当てた詳細の検討が必要であろう。そこでこの議論はまた別
の機会にゆずることとして,本研究では回答のバラツキをもとにした項目削除は行わないことにす
る。
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商 学 論 集
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表 2 Bowen(1990)の記述統計量の結果
有形性/ 差別化
無形性 の程度
病院
(入院)
s1
映画館
s2
ファスト・
フード
s3
高めの
ホテル
s4
写真の現像
s6
カフェ
s10
病院
(外来)
s11
遊園地
s12
レストラン
ビジネス
ホテル
s13
s14
取引が
カスタ
従業員 顧客の サービス
従業員の
顧客参加
連続/
マイズ
と顧客 スイッチ の対象が
重要性
の程度
不連続
の程度
の関係 しやすさ 人/モノ
t1
t2
t3
t4
t6
t7
t8
t9
t10
平均
2.61
3.70
3.58
4.66
4.42
3.39
4.62
3.29
3.21
SD
1.29
1.12
1.21
0.73
0.83
1.31
0.85
1.28
1.28
変動係数
.494
.303
.338
.157
.188
.386
.184
.389
.399
平均
3.63
2.26
1.57
2.61
1.74
4.54
4.01
2.04
1.75
SD
1.41
1.17
0.99
1.03
0.86
0.96
1.28
1.23
0.98
変動係数
.388
.518
.631
.395
.494
.211
.319
.603
.560
平均
2.19
2.61
2.28
3.40
2.34
4.76
4.08
2.47
1.42
SD
1.26
1.24
1.07
1.07
1.04
0.76
1.21
1.19
0.85
変動係数
.575
.475
.469
.315
.444
.160
.297
.482
.599
平均
2.50
3.71
3.60
4.46
3.51
4.34
4.33
2.39
2.28
SD
1.24
1.19
1.16
0.77
1.05
0.99
1.03
1.22
1.16
変動係数
.496
.321
.322
.173
.299
.228
.238
.510
.509
平均
2.90
2.67
2.70
3.08
1.88
4.58
1.87
1.74
3.05
SD
1.56
1.19
1.32
1.21
1.07
0.88
1.20
1.05
1.69
変動係数
.538
.446
.489
.393
.569
.192
.642
.603
.554
平均
2.05
2.86
2.66
3.59
2.63
4.53
4.21
3.10
1.58
SD
1.22
1.20
1.16
1.03
1.09
0.92
1.07
1.32
0.92
変動係数
.595
.420
.436
.287
.414
.203
.254
.426
.582
平均
2.82
3.92
3.77
4.72
4.73
3.77
4.70
3.51
3.99
SD
1.45
1.11
1.26
0.66
0.67
1.25
0.80
1.26
1.33
変動係数
.514
.283
.334
.140
.142
.332
.170
.359
.333
平均
2.76
2.80
1.90
3.64
2.74
3.17
4.07
3.34
2.15
SD
1.33
1.08
1.10
1.09
1.13
1.43
1.14
1.39
1.12
変動係数
.482
.386
.579
.299
.412
.451
.280
.416
.521
平均
2.06
3.91
3.68
4.61
3.80
4.62
4.41
2.56
2.06
SD
1.19
1.11
1.13
0.72
1.00
0.84
0.96
1.30
1.09
変動係数
.578
.284
.307
.156
.263
.182
.218
.508
.529
平均
2.49
2.61
3.21
3.27
2.24
4.40
4.02
2.47
1.84
SD
1.19
1.11
0.96
1.05
0.95
1.00
1.19
1.12
0.94
変動係数
.478
.425
.299
.321
.424
.227
.296
.453
.511
平均
2.60
3.11
2.90
3.80
3.00
4.21
4.03
2.69
2.33
SD
1.31
1.15
1.14
0.94
0.97
1.03
1.07
1.24
1.14
変動係数
.504
.370
.393
.247
.323
.245
.266
.461
.489
出所 : Bowen(1990),p. 46 の表を加筆修正したもの。
2 つ目の検討事項は特性の数である。Bowen の方法では先行研究で用いられた 19 個の特性の中
から 9 個の特性を選択している。しかし,
その後の研究でさらに別の特性も登場していることから,
Bowen が参照した先行研究にはなかったが,Silvestro et al.(1992)のレビューに加えられていたも
― 10 ―
中村 : 多特性を考慮したサービス・タイプの分類
のを中心に 6 つの特性を加え,15 特性で調査を行うこととした。
3 つ目の検討事項は分類の対象となるサービスの数である。Bowen は 10 種類のサービスを用い
たが,先行研究で用いられたサービスからさらに 10 種類のサービスを追加した。
4 つ目の検討事項はクラスター分析である。クラスタリングの手法は,階層的クラスター分析と
非階層的クラスター分析とに分けられる。Bowen の方法では非階層的クラスター分析
(k-means 法)
が用いられ,ここで作られたクラスター数が妥当であるかを階層的クラスター分析(Ward 法)で
確認するという手順が採られている。非階層的クラスター分析(中でも k-means 法)は簡単なア
ルゴリズムでかつ高速なため(坂井ほか 2010)
,計算の負担が小さく特にサンプルサイズが大きな
ときによく用いられている。しかし,非階層的手法の問題点として,クラスター数を事前に指定し
初期値の設定の仕方によっ
なければならない点と,
クラスター重心の初期値の選択基準が曖昧な上,
てクラスタリングの結果に影響を及ぼす点が指摘され,階層的手法と非階層的手法を組み合わせて
実施することが推奨されてきた(Malhotra et al. 2012)。辻本(1981)は初期値の設定方法を数種類
で比較した結果,前もって行った階層的クラスター分析で得られたクラスターを初期値として設定
した場合に,どのデータについても比較的好ましい(クラスター内でのバラツキがより小さく,ク
ラスター間でのバラツキがより大きいような)クラスターが得られることを明らかにした。そこで
本研究でもこの方法を採用し,まず,階層的クラスター分析(平方ユークリッド距離,Ward 法)
を行い,いくつかのクラスターに分類する。次にデンドログラムにおける結合距離と各種統計量基
準の数値を元にクラスター数を決定し,各クラスターの重心を算出する。続いて階層的クラスター
分析で得られたクラスター数とクラスター重心を用いて(クラスターの重心を初期値として)非階
層的クラスター分析(k-means 法)を行う。最後に,特性ごとにクラスター間の平均値を一元配置
分散分析と多重比較を用いて比較し各クラスター(つまりサービス・タイプ)の特徴を明らかにす
る。以上 4 つの検討事項についてまとめたものが表 3 である。なお,分析は IBM SPSS Statistics
Base 20 を用いるが,クラスター分析の各種統計量基準の算出のみ JUSE-StatWorksV4.0 を用いる。
3.2 調査概要
調査方法 : インターネット調査
調査期間 : 2010 年 2 月 8 日∼ 10 日
調査対象 : 20 ∼ 69 歳の男女 300 名(調査会社の登録パネル)
割 付 け : 性別(男女)と年代(20 代,30 代,40 代,50 代,60 代)の組み合わせからなる 10
セルに均等に 30 名ずつ
調査会社の登録パネルに対してインターネット調査を行った。特性ごとに 20 個のサービスを示
し,それがどの程度あてはまっているのかを,7 件法によるリッカート尺度(1 : まったくそう思
わない,2 : そう思わない,3 : あまりそう思わない,4 : どちらともいえない,5 : ややそう思う,6 :
そう思う,7 : とてもそう思う)を用いて回答させた。
― 11 ―
商 学 論 集
第 84 巻第 2 号
表 3 検討事項の対照表
検討事項
バラツキが大きい
ため項目を削除
する場合の基準
Bowen(1990)
全特性の標準偏差の平均が 1.20 より大きい。
特に除外しない
標準偏差が大きいとする基準を 1.20 とす
る根拠が不明確。
9 特性
特性の数
本研究
15 特性(左記に 6 特性を追加)
・有形性/無形性(t01)
・設備の重要性(t05)
・差別化の程度(t02)
・顧客との接触時間の長さ(t11)
・カスタマイズの程度(t03)
・専門性(t12)
・従業員の重要性(t04)
・フロントオフィスの決定権(t13)
・従業員と顧客の関係(t06)
・結果視点/プロセス視点(t14)
・顧客のスイッチしやすさ(t07)
・評価のしやすさ(t15)
・サービスの対象が人/モノ(t08)
・顧客参加の程度(t09)
・取引が連続/不連続(t10)
10 タイプ
サービスの数
クラスター分析
の手順
20 タイプ(左記に 10 タイプを追加)
・病院(入院)(s01)
・配送(s05)
・映画館(s02)
・銀行(s07)
・ファスト・フード(s03)
・理容室(美容院)(s08)
・高めのホテル(s04)
・携帯電話(s09)
・写真の現像(s06)
・電車(s15)
・カフェ(s10)
・クリーニング(s16)
・病院(外来)(s11)
・保険(s17)
・遊園地(s12)
・教育(s18)
・レストラン(s13)
・レンタル(CD,DVD)(s19)
・ビジネスホテル(s14)
・スーパーマーケット(s20)
① 非 階 層 的 ク ラ ス タ ー 分 析(k-means
法)。擬似 F 統計量や CCC 基準でク
ラスター数を 3 に設定。【→この分類
結果を採用】
① 階層的クラスター分析(平方ユーク
リッド距離,Ward 法)を行い,クラ
スター間のサンプルサイズができる
だけ同じになるようにクラスター数
を決定。各クラスターの重心を算出。
② 階層的クラスター分析(Word 法)で
① の結果と比較。① の妥当性確認の
ために実施。類似性測度は不明。
② ① で得られたクラスター数とクラス
ターの重心を用いて,非階層的クラ
スター分析(k-means 法)。【→この分
類結果を採用】
4 結 果
15 特性,20 サービスの記述統計量は表 4 のようであった。Bowen が 5 件法だったのに対し,本
研究では 7 件法を用いた結果,当然のことながら標準偏差の値は総じて Bowen の研究よりも高い
値を示したが,変動係数は必ずしも高い値とはならなかった。各特性のバラツキを確認すると,
Bowen で削除された 2 特性について,
「有形性/無形性」のバラツキは他の特性に比べて大きい
(SD=1.68)が,
「顧客参加の程度」のバラツキは比較的小さい(SD=1.36)。また新たに加えた特
性の中では,「結果視点/プロセス視点」という特性のバラツキが大きい(SD=1.69)。
次に階層的クラスター分析(平方ユークリッド距離,
Ward 法)を行った。デンドログラム(図 3)
― 12 ―
中村 : 多特性を考慮したサービス・タイプの分類
表 4 記述統計量の結果
顧客と
有形性
フロント
カスタ 従業員
従業員 顧客の サービス 顧客 取引が
の接触
差別化
設備の
専門性 オフィス
/
マイズ
の
と顧客 スイッチ の対象が 参加 連続/
時間の
の程度
重要性
無形性
の決定権
の程度 重要性
の関係 しやすさ 人/モノ の程度 不連続
長さ
病院
(入院)
s1
映画館
s2
ファスト・
フード
s3
高めの
ホテル
s4
配送
s5
写真の現像
s6
銀行
s7
理容室
(美容院)
s8
携帯電話
s9
カフェ
s10
病院(外来)
s11
遊園地
s12
レストラン
s13
ビジネス
ホテル
s14
電車
s15
クリーニング
s16
保険
s17
教育
s18
レンタル
(CD,DVD)
s19
スーパー
マーケット
s20
平均
SD
結果視
点/プ 評価の
ロセス しやすさ
視点
t14
t15
t1
t2
t3
t4
t5
t6
t7
t8
t9
t10
t11
t12
t13
3.65
1.84
5.66
1.3
5.37
1.44
6.34
1.01
6.12
1.12
4.87
1.41
3.45
1.64
6.20
1.29
6.27
1.04
5.22
1.38
4.85
1.82
6.74
0.76
4.84
1.77
3.38
2.06
4.79
1.71
.475
5.85
.208
5.85
.166
2.48
.264
3.49
.375
4.22
.113
3.14
.366
2.69
.609
4.05
.357
4.51
1.37
.234
1.35
.231
1.23
.496
1.52
.436
1.57
.372
1.44
.459
1.42
.528
1.84
.454
1.43
.317
変動係数
.504
.230
.268
.159
.183
.290
平均
SD
変動係数
3.42
1.75
.512
3.99
1.51
.378
2.51
1.29
.514
3.43
1.5
.437
5.59
1.31
.234
2.03
1.2
.591
平均
3.36
4.20
2.86
4.56
4.11
2.21
6.01
5.77
3.25
3.27
3.05
2.97
3.34
3.62
4.89
SD
変動係数
1.56
.464
1.59
.379
1.38
.483
1.57
.344
1.42
.345
1.28
.579
1.28
.213
1.44
.250
1.5
.462
平均
SD
4.27
1.95
5.68
1.37
5.09
1.58
6.17
1.17
5.38
1.41
4.67
1.6
5.42
1.58
5.91
1.32
5.23
1.45
1.55
.474
4.54
1.62
1.4
.459
4.83
1.74
1.35
.455
5.54
1.24
1.65
.494
5.48
1.37
1.75
.483
5.16
1.9
1.39
.284
5.57
1.43
変動係数
平均
.457
3.96
.241
4.38
.310
3.24
.190
4.85
.262
3.96
.343
3.32
.292
5.03
.223
3.31
.277
3.65
.357
3.79
.360
2.83
.224
3.91
.250
3.88
.368
2.77
.257
4.61
SD
変動係数
1.60
.404
1.45
.331
1.43
.441
1.39
.287
1.41
.356
1.49
.449
1.55
.308
1.87
.565
1.46
.400
1.45
.383
1.35
.477
1.46
.373
1.47
.379
平均
SD
3.39
1.47
3.67
1.40
2.79
1.34
3.68
1.53
4.96
1.49
2.61
1.38
5.59
1.49
2.79
1.62
3.09
1.47
3.39
1.51
2.48
1.19
4.57
1.55
3.43
1.51
1.65
.596
2.17
1.35
1.38
.299
4.64
1.56
変動係数
平均
.434
4.24
.381
4.32
.480
4.41
.416
4.83
.300
4.20
.529
3.88
.267
4.32
.581
3.45
.476
4.50
.445
5.06
.480
3.66
.339
5.07
.440
3.95
.622
3.36
.336
4.65
SD
変動係数
1.65
.389
1.54
.356
1.64
.372
1.50
.311
1.51
.360
1.58
.407
1.77
.410
1.80
.522
1.56
.347
1.36
.269
1.51
.413
1.44
.284
1.66
.420
1.70
.506
1.40
.301
平均
SD
4.14
1.83
5.59
1.29
5.28
1.41
6.22
1.02
4.73
1.43
5.45
1.29
4.73
1.86
6.06
1.28
5.83
1.17
5.37
1.30
5.24
1.46
6.22
1.00
5.80
1.17
3.07
1.86
5.59
1.47
変動係数
平均
.442
3.70
.231
3.99
.267
3.15
.164
3.15
.302
4.94
.237
2.79
.393
4.19
.211
3.69
.201
3.21
.242
4.40
.279
3.54
.161
3.80
.202
3.32
.606
3.30
.263
4.20
SD
変動係数
1.64
.443
1.48
.371
1.40
.444
1.51
.479
1.49
.302
1.47
.527
1.63
.389
1.81
.491
1.53
.477
1.53
.348
1.50
.424
1.53
.403
1.48
.446
1.37
.415
1.40
.333
平均
SD
変動係数
3.89
1.55
.398
5.12
1.31
.256
3.78
1.41
.373
5.04
1.41
.280
4.03
1.29
.320
3.17
1.51
.476
5.60
1.46
.261
5.51
1.47
.267
3.81
1.54
.404
3.74
1.52
.406
3.76
1.49
.396
3.76
1.45
.386
4.14
1.47
.355
4.27
1.72
.403
4.76
1.39
.292
平均
SD
3.85
1.76
5.61
1.37
5.36
1.37
6.29
0.94
5.98
1.06
4.67
1.51
3.79
1.63
6.14
1.25
6.20
1.03
5.44
1.33
4.52
1.70
6.68
0.79
4.75
1.72
3.23
1.91
4.54
1.70
変動係数
平均
.457
3.11
.244
5.31
.256
3.26
.149
4.83
.177
6.26
SD
変動係数
1.83
.588
1.38
.260
1.51
.463
1.47
.304
0.92
.147
.323
2.52
1.33
.528
.430
5.62
1.51
.269
.204
5.64
1.45
.257
.166
3.39
1.42
.419
.244
3.52
1.54
.438
.376
3.48
1.54
.443
.118
4.05
1.52
.375
.362
3.40
1.61
.474
.591
4.80
1.68
.350
.374
5.19
1.24
.239
平均
SD
3.51
1.76
5.87
1.13
4.09
1.55
5.84
1.06
4.77
1.33
3.49
1.45
5.86
1.32
5.68
1.35
4.46
1.34
4.19
1.47
3.92
1.35
5.04
1.36
4.76
1.41
4.47
1.77
5.59
1.26
変動係数
.501
.193
.379
.182
.279
.415
.225
.238
.300
.351
.344
.270
.296
.396
.225
平均
SD
変動係数
平均
SD
3.60
1.66
.461
3.28
1.69
5.22
1.29
.247
3.87
1.36
3.67
1.54
.420
2.78
1.47
5.09
1.42
.279
4.25
1.44
5.23
1.34
.256
5.41
1.34
3.42
1.50
.439
2.26
1.29
5.88
1.28
5.71
1.24
4.00
1.39
4.01
1.45
3.81
1.47
4.13
1.40
4.37
1.42
4.58
1.69
5.41
1.22
.218
3.69
1.79
.217
5.43
1.42
.348
2.97
1.34
.362
4.12
1.55
.386
3.86
1.43
.339
5.10
1.45
.325
2.77
1.55
.369
3.63
1.73
.226
4.30
1.40
変動係数
平均
SD
変動係数
平均
SD
変動係数
平均
SD
変動係数
.515
3.35
1.53
.457
4.75
1.62
.341
4.64
1.63
.351
.351
4.62
1.32
.286
4.88
1.35
.277
5.65
1.25
.221
.529
3.41
1.42
.416
4.37
1.60
.366
5.26
1.28
.243
.339
4.67
1.45
.310
4.79
1.59
.332
6.16
1.11
.180
.248
4.91
1.27
.259
3.07
1.53
.498
4.12
1.57
.381
.571
3.87
1.49
.385
4.72
1.58
.335
5.26
1.32
.251
.485
5.41
1.42
.262
4.41
1.70
.385
3.81
1.58
.415
.262
2.72
1.72
.632
5.13
1.64
.320
5.70
1.52
.267
.451
4.10
1.41
.344
5.46
1.37
.251
5.96
1.11
.186
.376
4.65
1.32
.284
5.47
1.26
.230
5.51
1.20
.218
.370
3.46
1.39
.402
5.01
1.54
.307
5.32
1.30
.244
.284
4.99
1.34
.269
5.39
1.38
.256
6.22
1.00
.161
.560
4.25
1.42
.334
4.69
1.60
.341
5.12
1.47
.287
.477
2.07
1.22
.589
2.97
1.70
.572
3.75
1.97
.525
.326
5.34
1.26
.236
4.59
1.52
.331
4.79
1.66
.347
平均
SD
変動係数
3.30
1.56
.473
3.84
1.40
.365
2.89
1.40
.484
3.44
1.44
.419
4.25
1.52
.358
2.85
1.39
.488
5.62
1.44
.256
4.22
1.92
.455
3.04
1.40
.461
4.24
1.62
.382
3.18
1.29
.406
2.96
1.35
.456
3.02
1.45
.480
3.18
1.60
.503
4.56
1.36
.298
平均
SD
変動係数
平均
SD
変動係数
3.41
1.63
.478
3.74
1.68
.448
4.88
1.32
.270
4.82
1.37
.284
3.34
1.52
.455
3.85
1.45
.377
4.57
1.43
.313
4.91
1.35
.275
4.50
1.34
.298
4.83
1.36
.281
3.10
1.45
.468
3.56
1.43
.401
5.54
1.45
.262
4.99
1.54
.308
4.45
1.77
.398
4.97
1.53
.307
3.66
1.39
.380
4.23
1.36
.321
4.52
1.40
.310
4.40
1.44
.329
3.82
1.36
.356
3.94
1.47
.373
3.64
1.46
.401
4.70
1.31
.280
3.70
1.53
.414
4.09
1.51
.369
3.18
1.40
.440
3.55
1.69
.477
4.89
1.16
.237
4.87
1.42
.291
― 13 ―
商 学 論 集
第 84 巻第 2 号
図 3 デンドログラム
表 5 各種統計量基準の結果
クラスター数
結合
レベル
クラスター 全クラスター
平方和
内平方和
RMSSTD
SPRSQ
RSQ
PSF
PSt^2
7
10.500
8.575
32.329
0.510
0.033
0.799
8.636
3.158
6
12.006
10.056
38.332
0.552
0.037
0.762
8.974
2.962
5
15.564
23.382
46.115
0.595
0.048
0.714
9.357
2.494
4
27.204
21.706
59.716
0.702
0.084
0.630
9.062
5.035
3
34.471
62.323
76.952
0.718
0.107
0.523
9.304
3.823
2
51.581
96.688
102.742
0.766
0.160
0.363
10.239
5.093
から結合距離が長いのはクラスター数が 4 のときであると視覚的に判断できる。また,各種の統計
量基準(表 5)によれば,平方セミパーシャル相関係数(SPRSQ)と擬似 F 統計量(PSF)の値は
クラスター数 4,擬似 t2 統計量(PSt^2)の値はクラスター数 3 を支持しているようであるし,平
方重相関(RSQ)はあまり明確な傾向が見られなかった。以上の結果からクラスター数は 4 が適当
であると判断した。続いて,クラスター数を 4,4 つのクラスターのそれぞれの重心を初期値とし
て非階層的クラスター分析(k-means 法)を行った。分類の対象となる個々の要素が少ないためク
ラスタリングの結果は同じになり,重心の変動もなかった。
最後に,それぞれのクラスターについて一元配置分散分析を用いて各特性の平均値を比較し,有
意な差が見られたものについては,さらに多重比較(Scheffe の方法)を行った。結果は表 6 のと
― 14 ―
中村 : 多特性を考慮したサービス・タイプの分類
表 6 クラスター分析と多重比較の結果
クラスター 1
クラスター 2
クラスター 3
クラスター 4
病院(入院)
高めのホテル
理容室
病院(外来)
教育
映画館,レンタル
ファストフード
写真の現像
携帯電話,配送
電車,スーパー
銀行
クリーニング
保険
カフェ
遊園地
レストラン
ビジネスホテル
多重比較
有形性/無形性
t01
4.11 (1.84) 3.48 (1.63)
4.12 (1.70) 3.53 (1.72) 2,4 < 1,3**
差別化の程度
t02
5.64 (1.31) 4.10 (1.48)
4.61 (1.42) 5.38 (1.31) 2 < 3 < 4 < 1**
カスタマイズの程度
t03
5.27 (1.42) 2.95 (1.43)
4.06 (1.63) 3.70 (1.53) 2 < 4 < 3 < 1**
従業員の重要性
t04
6.24 (1.05) 3.99 (1.59)
4.76 (1.51) 5.20 (1.40) 2 < 3 < 4 < 1**
設備の重要性
t05
5.27 (1.53) 4.72 (1.52)
4.06 (1.63) 5.07 (1.48) 3 < 2 < 4**, 4 < 1*
従業員と顧客の関係
t06
4.98 (1.46) 2.65 (1.43)
4.16 (1.60) 3.15 (1.50) 2 < 4 < 3 < 1**
顧客のスイッチしやすさ
t07
4.24 (1.81) 5.19 (1.70)
4.71 (1.71) 5.74 (1.40) 1 < 3 < 2 < 4**
サービスの対象が人/モノ t08
6.00 (1.35) 4.44 (1.98)
3.77 (1.99) 5.64 (1.38) 3 < 2 < 4 < 1**
顧客参加の程度
t09
5.90 (1.23) 3.17 (1.46)
4.69 (1.56) 3.92 (1.48) 2 < 4 < 3 < 1**
取引が連続/不連続
t10
5.22 (1.41) 3.90 (1.58)
5.06 (1.36) 3.86 (1.52) 4,2 < 3,1**
顧客との接触時間の長さ
t11
4.95 (1.64) 3.37 (1.49)
4.04 (1.63) 3.74 (1.47) 2 < 4 < 3 < 1**
専門性
t12
6.28 (1.06) 3.76 (1.62)
5.15 (1.39) 4.25 (1.51) 2 < 4 < 3 < 1**
フロントオフィスの決定権 t13
5.20 (1.56) 3.27 (1.56)
4.30 (1.60) 4.17 (1.56) 2 < 4,3 < 1**
結果視点/プロセス視点
t14
3.72 (2.08) 3.24 (1.68)
2.80 (1.64) 4.53 (1.73) 3 < 2 < 1 < 4**
評価のしやすさ
t15
5.06 (1.66) 4.57 (1.41)
4.86 (1.44) 5.24 (1.31) 2 < 3**, 3 < 1 < 4*
注 1) 多重比較の欄の数字はクラスターの番号を表している。*p<.05, **p<.01
注 2) 表中の値は「平均値(標準偏差)」を表している。
おりであった。
5. 考 察
Bowen(1990)の分類の結果と本研究の分類の結果を比較したものが表 7 である。レストラン,
映画館,ファストフードで異なる結果が得られた。レストランは Bowen で想定していたものがや
や高めのレストランだった一方,本研究における調査では「レストラン」としたので,ファミリー
レストランを想定した回答者が多かったものと思われる。映画館とファストフードはクラスター 2
とクラスター 3 で混在してしまった。また,本研究では新しいクラスターが登場した。このクラス
ターに所属するサービスはいずれも Bowen にはなかったものであることから,これは分類対象と
なるサービスを増やしたことが影響していると考えられる。このことから,分類対象となるものは
できるだけ多めに準備する必要があるといえる。
Bowen では回答のバラツキが大きいことから途中で除外された変数があった。本研究で比較的
バラツキが大きかった「有形性/無形性」と「結果視点/プロセス視点」を見てみると,前者はい
ずれのクラスターについてもあまり差が出なかったことから,分類に関する貢献度が低い項目で
あったことがわかる。一方,後者は比較的似ているクラスターであるクラスター 3 とクラスター 4
での差異が顕著な項目であり,分類に大きな影響を与えたといえる。このことから,安易に特性を
― 15 ―
商 学 論 集
第 84 巻第 2 号
表 7 Bowen の分類と本研究の分類の比較
クラスター 1
クラスター 2
クラスター 3
クラスター 4
かなり高
やや高
やや高
やや高
やや高
やや低
中
中
顧客のスイッチしやすさ
中
やや高
やや高
高
顧客との接触時間の長さ
やや高
やや低
中
中
人
半々
半々
人
やや連続
中
やや連続
中
高
中
やや高
高
専門性が高い。顧
客と従業員との接
触が多く,顧客に
合わせた柔軟な対
応が求められてい
る。
他に比べてカスタ
マ イ ズ は 低 め で,
従業員の重要性は
軽め。
比較的専門性が高
い。 ク ラ ス タ ー 4
に比べると設備の
重 要 性 が 低 い。4
に比べて結果重
視。
対 人 中 心。3 に 比
べてプロセス重
視。
病 院( 入 院 ), 高
めのホテル,理容
室,病院(外来),
教育
映画館 ,レンタル, 銀行,クリーニン カ フ ェ, 遊 園 地,
フ ァ ス ト フ ー ド , グ,保険
レストラン ,ビジ
写真の現像,携帯
ネスホテル
電話,配送,電車,
スーパー
本研究
従業員の重要性
カスタマイズの程度
サービスの対象が人/モノ
取引が連続/不連続
差別化の程度
その他の特性や相対的な
評価など
サービス
Bowen(1990)
従業員の重要性
高接触でカスタマ
イズされた対人的
なサービス
低∼中程度の接触
でほとんどカスタ
マイズされない非
対人的なサービス
―
中程度の接触で標
準化された対人的
なサービス
かなり高
中
―
中
カスタマイズの程度
高
中
―
低
顧客のスイッチしやすさ
高
かなり高
―
高
低
顧客との接触時間の長さ
高
低
―
かなり人
モノ
―
人
取引が連続/不連続
中
中
―
不連続
差別化の程度
高
中
―
中
―
カフェ,ファスト
フード ,ビジネス
ホ テ ル, 映 画 館 ,
遊園地
サービスの対象が人/モノ
サービス
レストラン ,高め
のホテル,病院(外 写真の現像
来),病院(入院)
注 1)
本研究と Bowen(1990)の相違点を太字・斜体で表している。
削除しないほうが良いと考えられる。
細かな点で Bowen と本研究における分類の差異は見られるが,クラスターの分類のされ方を見
ると各クラスターの特性の傾向は非常に似通っており,ある程度安定した結果が示されたと考えら
れる。Bowen の分類で示されたとおりに個々のサービスがいつも分かれるとは言い切れないし,
本研究で指摘したような点をいくつか改善していく必要はあると思われるが,少なくとも,理論主
導・独立型の分類方法を盲目的に用いるのではなく,Bowen が示した分類の枠組み(3 タイプ)や
分類方法(データ主導・複合型の分類)も選択肢に入れて検討されるべきであると考えられる。
本研究では,その目的や状況もほとんど考慮されずに,盲目的に理論主導・独立型の分類を用い
― 16 ―
中村 : 多特性を考慮したサービス・タイプの分類
るのではなく,目的や状況に応じて適切な分類方法を選ぶべきであるということを主張したい。特
にサービス・タイプに限らず,一般化を目指して妥当な調査対象を選択したい場合には,より多く
の特性を考慮する必要があり,本研究で紹介したデータ主導・複合型の分類を採用すべきであると
考えられる。
補 遺
基準が不明確な分類の例としてあげられるのは,多次元尺度構成法である。多次元尺度構成法で
は分類される個々の要素間の(非)類似度のデータから個々の要素を 2 次限でマッピングすること
ができる。例えばいくつかの国について,国家間の物理的な距離を類似度のデータとして分析すれ
ば,世界地図のようなマップを得ることができる。この場合,物理的な距離という明確な基準を持
つため,得られた結果も物理的な距離をもとに解釈することができる。しかし,必ずしも明確な基
準が使われるとは限らない。物理的な距離ではなく,国のイメージを類似度として回答してもらっ
たデータを用いて分析が行われた場合,マッピングの結果についてその軸が何を示すのかが非常に
不明確である。ある回答者は地理的な距離を基準としているかもしれないし,別のある回答者は資
本主義か社会主義かといった政治体制や同盟関係を基準としているかもしれない。そういった様々
な基準が混ぜ合わさって出てくる結果は,基準の解釈が非常に困難なものである。得られたマップ
からある国とある国は「近い」と判断されても,それがどのような基準において近いのかというこ
とはわからない。このように多次元尺度構成法の場合,不明確な基準を用いた分類というものが可
能になる。しかし,第 1 章で述べた一般的な分類の 4 つの利点のうち,このような分類は 1 ∼ 3 の
利点という意味ではあまり有効ではない。ある国と別のある国がなぜ同じグループに分類されたの
か,ということが明らかにならないからである。したがって,本研究では基準が不明確な分類につ
いては検討の対象から外すこととした。
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第 84 巻第 2 号
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附記
本研究は JSPS 科研費(課題番号 : 21830021,24730360)の助成を受けたものである。
― 18 ―