光電流アプリケーション向け 電流帰還アンプの補償 Jonathan Pearson著 はじめに 電流帰還アンプ(CFA)がトランスインピーダンス・アンプ (TIA)用途の第一候補に挙げられることは、これまでありませ んでした。CFA の反転入力の電流や反転入力電流のノイズが比 較的大きく、同等の電圧帰還アンプ(VFA)を 1 桁以上も上回る こと、さらにシステム設計者が CFA に不慣れなために、気軽に 使用できないということも敬遠される原因であると考えられま す。しかし実際には、CFA の扱いは容易であり、高ゲイン、低 消費電力、低ノイズ、広帯域幅、高スルーレートを必要とするア プリケーションにおいては、同等の VFA より優れた性能を発揮 します。理想的な CFA では、ループ・ゲインがクローズドループ・ ゲインに依存しないため、クローズドループ・ゲインとは関係な く優れた高調波歪み特性や帯域幅性能を提供できることも特長の 一つに挙げられます。 この TIA のクローズドループ・ゲインは次式で表すことができます。 vo 1 = RF R i 1 + F Z 本稿では、TIA として動作する CFA に対し、光ダイオードなど の光/電流トランスデューサの寄生容量がどのような影響を及ぼ すか、またこのような寄生容量に対してアンプを適正に補償する にはどうすればよいかについて説明します。CFA の動作に関す る基本的な資料とともに、CFA と VFA を分析する中で見出され るいくつかの類似性についても紹介します。VFA 回路の「ノイ ズ・ゲイン」や CFA 回路の「帰還インピーダンス」についての解 析は、ここでは行いません。その代わり、ループ・ゲインを使用 する際に従来から用いられている帰還理論を利用しています。こ れは、電流領域と電圧領域間を移動するときに生じる問題を避け るためであり(ループ・ゲインは常に無次元量となります)、さ らにこの理論はボーデ線図で簡潔かつ容易に表すことができるか らです。 電流帰還アンプの基礎 理想的な CFA では負の帰還信号が電流であるため、入力インピー ダンスがゼロ(入力で完全短絡)となります。これとは逆に、理 想的な VFA では帰還信号が電圧であるため、入力インピーダン スは無限大となります。CFA はその入力に流れる誤差電流を検 出し、入力電流の Z 倍に相当する出力電圧を発生させます。この 場合の Z はトランスインピーダンス・ゲインです。誤差電流の方 向は、負帰還が生成されるように定義されます。Z は VFA のオー プンループ・ゲイン A に似ており、理想的な CFA では無限大に 近づきます。図 1 の基本回路は、理想電流源からの電流を出力電 圧に変換するために、理想的な CFA を TIA として構成したもの です。 (1) 式 1 は、Z が無限大に近づくと TIA のゲインがその R F 理想値に 近似することを示しています。Z が無限大に近づくと誤差電流 i e がゼロに近似し、入力電流はすべて R F を流れます。ループ・ゲ インは式 1 の Z です。 RF 残念ながら理想的な CFA というものは存在しないため、実際の デバイスは理想に近い次善の構成、すなわち、入力間にユニティ・ ゲイン・バッファを備えたものを使用します。電流ミラーが誤差 電流を高インピーダンス・ノードに反映することにより、電流が 電圧に変換され、バッファ処理の後、出力されます(図 2 参照)。 RF ie Zie Ro FET 入力オペアンプは、入力バイアス電流や入力電流ノイズが 非常に小さいため、TIA アプリケーションにおいて低出力電流 デバイス(光電素子など)を入力電流源として使用するような場 合に、候補の筆頭に挙げられることが多いものです。FET 入力 オペアンプはこうしたさまざまなアプリケーションで優れた性能 を発揮しますが、高速性能を必要とするシステムでは動作速度が 不十分な場合があります。そのため、よりノイズ耐性に優れた高 速システム用の TIA として、CFA が採用される傾向が強まりつ つあるのです。 i x1 Vo 図2. 実際のCFAを用いたTIA(ユニティ・ゲイン・バッファ付き) RO = 0 である限り、クローズドループ ・ ゲインは式 1 で与えられ たものと同じです。R O > 0 のとき、クローズドループ ・ ゲイン は次のようになります。 vo 1 = RF R + RO i 1 + F Z また、ループ・ゲインは (2) Z となります。 RF + RO 実際の部品を使用したTIAの設計 フォトダイオードなどの光電デバイスは、寄生シャント容量がデ バイスの面積に比例します。R O = 0 のときは、この容量は完全 にブートストラップされるため、クローズドループ応答に影響を 及ぼしません。実際の CFA では RO > 0 であり、寄生容量が応答 に影響を及ぼして回路が不安定になる可能性があります。また、 VFA のオープンループ・ゲイン A と同様、実際の CFA では低い 周波数で Z 値が大きく、周波数の増大に伴って減衰するため、位 相偏差は周波数が高くなるにつれて遅延の度合が大きくなりま す。一次近似としては、式 3 に示すように、Z(s) を s = p 時の単一 主要ポールと DC トランスインピーダンス Z O で表すことができ ます。Z(s) における高周波ポールについては後で取り上げます。 Z ( s) = ZO s 1− p (3) 図 3 の回路は、寄生容量 C とトランスインピーダンス Z(s) を含んで います。CFA の反転入力容量は C に含めてしまうことが可能です。 RF RF ie ie Zie i Vi Vo 図1. 理想的なCFAを用いたTIA Analog Dialogue 47-02, July (2013) i C Z(s)ie Ro x1 Vo 図3. 実際のCFAを用いたTIA(寄生容量を含む) www.analog.com/jp/analogdialogue 1 反転入力で KCL を適用することで式 4 が得られます。 式 2 の R F を Z F に置き換えると、クローズドループ・ゲインは式 9 のように表すことができます。 vo + ie Ro = − ie − ie RoCs + i RF (4) 誤差電流 ie は次のように表されます。 ie = vo Z (s ) 1 1 1 CF s + RO s + RF C F (RO || RF )CF 1 + vo = i (5) 1 式 4 と式 5 から、図 3 の回路のクローズドループ TIA ゲインとし て次の結果が得られます。 vo = i RF 1 + 1 1 RF Ro C s + ( R || F Ro ) C Z ( s) (6) ループ・ゲインは式 6 から明らかであり、次式により与えられます。 Z ( s) Z 1 = O Loop Gain = 1 − s (7) 1 1 RF Ro C s + RF Ro C s + p (RF ||Ro )C (RF ||Ro )C 1 (RF ||Ro )C 時の高周波ポールという 2 つのポールを含んでいます。R O より も R F が著しく大きい場合には、R F と R O の並列値を R O によっ て近似させることができます。これら 2 つのポールは、ループ・ ゲイン値が 0 dB より大きい周波数で高周波ポールが発生した場 合に安定性の問題を引き起こします。R O と C が小さい場合に は、クロスオーバ周波数より高い周波数で寄生ポールが発生し、 アンプは安定しますが、ほとんどの TIA 回路は、こうしたケー スに該当しないため、反転入力寄生容量の補償方法を考えなけれ ばなりません。 Loop Gain = 1 Z ( s ) s + RF C F 1 RO s + (RO || RF )C F 1 s + RF C F Z = O s s 1 RO s + 1 − 1 − (RO || RF )C F p p H 式 3 に示すような単一ポール伝達関数を持つ CFA は、帰還ルー プの位相遅延が –90° に制限されるため、帰還抵抗がどのような 値であっても安定動作します。しかし、実際の CFA の 2 次ポー ルは高周波数で重大な位相遅延をもたらすため、安定性を確保す るためには R F の最小値を現実的な値に制限することになります (許容可能な最小位相余裕は一般に 45°です)。ここから先の解説 では、Z(s) は s = p 時の主要ポールとともに s = p H 時の高周波 ポールを含むものとします。 一般的には、帰還インピーダンスがゼロにならないよう、CFA 回路内では帰還コンデンサを使用すべきでないと言われていま す。しかし話はそれほど単純なものではありません。帰還コンデ ンサは振幅の変化だけでなく、位相偏差を引き起こすからです。 ここでは、CFA を用いた TIA に帰還コンデンサを追加するとど うなるかを説明します(寄生入力容量についてはとりあえず省き ます)。図 2 の回路で帰還コンデンサ C F を帰還抵抗 R F の両端に 追加すると、ループ・ゲインにポールとゼロが発生します。Z F は、RF と CF の並列組合せとして定義されます。 ZF = 2 1 C F s + RF C F (9) (8) (10) ループ・ゲインは、Z(s) における s = p 時の主要ポールと s = pH 時 の高周波ポールを含んでいます。また、帰還コンデンサが追加さ れたために、 s = − 1 (RO || RF )CF 時のポールと s = − 1 時 RF C F のゼロも含んでいます。 ボーデ線図では、C F に起因するゼロが C F に起因するポールよ り低い周波数で発生しています。これは、ゼロ周波数式の分母に R F が含まれ、ポール周波数式の分母に (R O ||R F ) が含まれるか らです。C F を持つ 1 個の CFA を用いた TIA のボーデ線図(式 10)を図 4 に示します。 LOOP GAIN (LOG SCALE) ZO RF + RO 𝛚1 = 𝛚2 = 1 R F CF 1 ( RO RF ) CF STABILITY PROBLEMS 帰還コンデンサの追加(余談) 1 ループ・ゲインは次式で表されます。 ループ・ゲインは、s = p 時の低周波ポール、 s = − 1 Z ( s ) s + RF C F 1 –p 𝛚1 𝛚2 –pH 𝛚 STABLE 図4. CFAを用いたTIA(帰還型)のボーデ線図 このゼロによって周波数が増大するとともに振幅増大と前方への 位相偏差が発生しますが、安定性という面ではそのほうが好まし い場合があります。しかし、図 4 でモデル化されたシステムの場 合、そのゼロによってループ・ゲインと 0 dB との交差ポイント が外側に押し出され、p H 時のポールによって振幅漸近線が 0 dB のクロスオーバの手前より –40 dB/ディケードで降下します。 青い破線は CF なしのループ・ゲインを示しており、式 2 と 2 ポー ル対応の Z(s) を使用すれば式 11 のように表すことができます。 ZO 1 (11) Loop Gain without C F = RF + RO 1 − s 1 − s p p H Analog Dialogue 47-02, July (2013) 図 4 は C F なしの場合にアンプは安定動作し、C F を追加すること によって安定性に問題が生じることも示しています。しかし図 4 のグラフは、帰還コンデンサの使用を完全に否定するものではあ りません。というのも、この特定の Z(s) がすべての CFA を代表 するものではなく、またここでは実際の抵抗値やコンデンサ値を 使用しているわけではないからです。図 4 は、帰還容量の安全な 範囲が高周波ポールによって制限されることを示しています。さ らに、単一のポール伝達関数を持つ仮説上の CFA においては、 帰還容量をいくらでも安全に追加することができ、さらには帰還 容量を追加すればそのクローズドループ帯域幅を拡張できること も示しています。 寄生容量に起因するポールを除去するためにCFに起因する ゼロを利用 CF を CFA に追加した場合の影響については大まかな理解が得ら れたと思いますので、次に C F を使用して入力電流源の寄生シャ ント容量を十分に補償できることを示します。図 3 の回路のク ローズドループ・ゲインは式 6 で表すことができます。帰還コン デンサを追加したときにこの回路がどうなるかを示すために、式 6 の R F を Z F に置き換えます。これは、式 9 を導くときに行った 作業に似ています。ZF は式 8 に定義されています。この回路を図 5 に示します。 CF RF ie Vi C i Z(s)ie Ro x1 Vo 図 5 の回路のクローズドループ・ゲインは式 12 で与えられます。 1 CF s + 1 RF C F 1+ 1 1 Ro (C + C F ) s + (RF ||Ro )(C + 1 Z ( s )C F s + RF C F C F ) (12) ループ・ゲインを求めると次のようになります。 1 Z ( s )C F s + R F CF = Loop Gain with C and C F = 1 Ro (C + C F ) s + (RF ||Ro )(C + CF ) 1 s + R Z OCF F CF s s 1 Ro (C + C F ) 1 − p 1 − p s + (R ||R )(C + C ) H F o F (13) 式 13 の C F に起因するゼロは式 10 のゼロと同じですが、C F に起 因するポールは s=− 1 1 から s = − (RO || RF )CF (RO || RF )(C + CF ) に変わります。 C F に C を加えることで、ポールの位置をゼロの位置まで移動し、 入力電流源の寄生容量 C に起因するポールを除去することができま す。式 13 において、C F と C に起因するポール周波数が C F に起因 するゼロ周波数と等しくなるようにすれば、式 14 が得られます。 Analog Dialogue 47-02, July (2013) C (14) 式 14 は CF 値を計算するための単純な式であり、図 5 に示す TIA の寄生容量 C に起因するループ・ゲイン内のポールを除去するこ とができます。ポールのゼロ・キャンセルが完了することにより、 ループ・ゲインは式 11 のような主要ポールと高周波ポールを持 つ元の形式に戻ります。ここで、クローズドループ・ゲインは式 15 のように表すことができます。 vo = i 1 1 C F s + R F CF + 1 1 RF + RO Z ( s) (15) 式 14 を使用する際、特に難しいのは固定値ではない R O 値を求 めることですが、これは CFA のデータシート上に必ず規定され ているとは限りません。ポールのゼロ・キャンセルは、0 dB と の交点におけるループ・ゲイン・プロットの傾斜が 20 dB/ディ ケードに十分近ければ問題ありません。式 14 は、R O が 0 に近づ くときに生じるブートストラップの増加により、C F の値が R O に比例して減少することを示しています。この場合、C は完全に ブートストラップされ、必要な C F は 0 と等しくなります。式 14 は、R O C = R F C F のようにマッチング表現をした時定数の形式 で表すこともできます。式 14 のマッチングした時定数形式は、 VFA の寄生加算ノード容量を補償するときに使われる数式、す なわち RGCG = RFCF に酷似しています。この場合の RG は VFA のゲイン抵抗で、C G は R G の両端に加えた容量であり、これは 一般に寄生加算ノード容量となります。しかし、このような利点 には代償が伴います。C F を追加すると TIA は安定しますが、式 12 と式 15 からわかるように、 s = − 図5. 実際のCFAを用いたTIA(寄生容量を補償するためのCF付き) vo = i R 1 1 = ⇒ C F = o RF C F (RF || Ro )(C + C F ) RF 1 でクローズドルー RF C F プ・ゲインにポールが形成されます。式 15 で示したクローズド ループ・ゲインは、互いの伝達関数を掛け合わせる 2 つのカス ケード接続システムとみなすことができます。最初のシステムは 式 15 の左端の要素を伝達関数として備えており、オームの次元 を持ちます。2 つ目のシステムは式 15 の右端の要素を伝達関数 として備えており、その次元は無次元です。 ループ・ゲインの振幅が –20 dB/ディケードで 0 dB に交差する 限り、2 つ目のシステムの応答はループ・ゲインによって決定さ れ、1 次伝達関数によってモデル化することができます。基礎的 な帰還理論に従えば、このロールオフ条件が満たされていれば、 ループ・ゲイン振幅が 1 を大きく上回る場合に第 2 のシステムの クローズドループ・ゲイン振幅はほぼユニティになり、ループ・ ゲイン振幅が 1 を大幅に下回る場合にはその振幅通りになります。 クローズドループ・ゲインの 3 dB ポイントは、ループ・ゲイン 振幅が 0 dB に交差する周波数で発生します(傾斜が –20 dB/ ディケードより少し速いと、クローズドループ応答の 0 dB 交差 ポイント近くでピーキングが発生します) 。したがって、安定した アンプの場合、第 2 のシステムは 1 次ローパスフィルタに近似さ せることができます。このフィルタは、通過帯域にユニティ・ゲ インを持ち、ループ・ゲイン振幅が 0 dB に交差する周波数とカッ トオフ周波数が等しいものとなります。最初のシステムの伝達関 数は帰還係数の逆数であり、単純な 1 次ローパス応答によって R F の DC 値および 1 のコーナー周波数が得られます。 2π RF C F 直感的には、C F に起因する追加ポールの発生は理にかなってい ます。というのも、出力電圧は帰還インピーダンス(周波数の増 大に伴って低下する)を流れる電流によって生成されるからで す。ポールは、C F のリアクタンスが R F 値と等しくなる場合に形 成されます。これと同様の現象は、VFA を用いた帰還コンデン サ補償型の TIA でも見られます。C F を式 14 で計算した値から 慎重に引き下げてポール周波数を移動させ、位相余裕を小さくす ることにより、クローズドループ帯域幅をいくらか広く取ること ができます。ただし、こうした操作はあくまでも実験上のことと して行うようにしてください。 3 シミュレーション・データ クローズドループ・ゲインのポールによる帯域制限が生じている この結果をテストするために、CFA の単純なシミュレーション・ ことは明白です。元のアンプのループ・ゲイン 0 dB のクロスオー バ周波数を求めると 145 MHz であり、これは一次システムの約 モデルを作成しました。この場合、ZO = 1 M Ω、p = –2π (100 kHz)、pH = –2π (200 MHz)、RO = 50 Ω、RF = 500 Ω です。 1.1 ns の時定数に対応しています。R F C F 時定数は 2.5 ns です。 ループ・ゲインの大きさ(振幅)を求めるには、式 11 にこれら (位相余裕が 90° より小さいのでループ・ゲインのロールオフ・ レートは 0 dB クロスオーバで –20 dB/ディケードより少し速 の値を当てはめてその絶対値をとります。 くなりますが、1 次のクローズドループ・モデルの近似度はかな り正確です。)上述したような 2 つのカスケード接続システムの 6 10 1 モデルを使って、カスケード接続システムの総時定数を 2 つの時 Loop Gain without C F = 2 2 (16) 500 + 50 乗和平方根( ) 、すなわち約 定数の 2 Root Sum Square 2.7 ns f f 1 + 1 + 200 MHz と推定することができます(入力電流源 ∼ の立上がり 10 90% 100 kHz 時間 1 ns は、無視できるほどの短い有効サブ ns 時定数に相当)。 f が 約 145 MHz で あ れ ば、 こ の 式 の 値 は 1 と な り ま す。145 これは、図 7 の応答にとってほぼ適切な値と考えられます。 MHz でのループ・ゲインの位相偏差は次式で与えられ、 CF を 3 pF に落とすことで位相余裕がいくらか減少するとともに クローズドループ・ポール周波数が増大し、反応速度が改善され 145 MHz 145 MHz ≈ − 126 (17) − tan −1 ∠ Loop Gain without C F = − tan −1 ます(図 9)。 100 kHz 200 MHz 位相余裕は約 54°となります。寄生容量のない基本的な CFA に おいて、手始めとしては妥当な値です。図 6 に、立上がり時間 1 ns の電流ステップ入力に対するこのモデルの応答のシミュレー ションを示します。 図9. ステップ応答:3 pFの帰還容量を追加(20 ns/div) C F の最適値を得るためには、何らかの実験を行う必要がありま す。C F を選択する際は、負荷容量、ボード・レイアウト、R O の 変更といった他の要素も考慮の対象に加えます。 図6. 基本的なTIAのステップ応答:寄生容量なし(20 ns/div) 応答はクリーンであり、リンギングも最小限に抑えられています。 位相余裕 54°で、まさに予想通りの応答です。反転入力とグラウ ンドの間に 50 pF の寄生容量を追加した場合に同じアンプのス テップ応答がどうなるかを図 7 に示します。 結論 CFA を TIA と し て 使 用 す る こ と に 関 心 を お 持 ち で あ れ ば、 CFA の反転入力でトランスデューサ容量を補償する方法、およ び補償が機能する仕組みを理解する必要があります。ここでは、 従来の帰還技術を使って、反転入力容量を補償するために帰還抵 抗と並列に 1 個の帰還コンデンサを追加するという単純な方法を 紹介しました。帰還コンデンサはクローズドループ応答に不要な ポールをもたらしますが、計算値を参考にしつつ、実験を通して コンデンサの値を調整することで、ポールによる帯域制限効果を 軽減することができます。 参考文献 図7. ステップ応答:反転入力とグラウンドの間に 50 pFの寄生容量を追加(20 ns/div) 図 7 の縦のスケールは図 6 の場合と同じですが、リンギングが生 じている分、表示は 1 目盛だけ下げてあります。このアンプでは 過剰なリンギングが観察され、位相余裕の問題が生じていること は明らかです。このアンプの場合は、式 14 で求めた 5 pF の帰還 容量を追加することで安定化することができます。図 8 に、5 pF の帰還容量を追加すると応答がどうなるかを示します。 Gray, Paul R.,、Robert G. Meyer「Analysis and Design of Analog Integrated Circuits」John Wiley & Sons, Inc.、 1977 年 Lundberg, Kent 「Feedback Control Systems」 M.I.T. Course Notes Roberge, James K.「Operational Amplifier: Theory and Practice」John Wiley & Sons、1975 年 著者 Jo n at h a n Pe a r s o n [ j o n at h a n . p e a r s o n @ analog.com] は、2002 年 8 月から当社の高速ア 図8. ステップ応答:ポール/ゼロ・キャンセル機能を使用、 5 pFの帰還容量を追加(20 ns/div) 4 ンプ・グループのシニア・アプリケーション・エ ンジニアとして働いています。入社前は、テレコ ム業界でアナログ回路/システムの設計者をし ていました。ノースイースタン大学で BSEE(電 気工学理学士)、ウースター・ポリテクニック大学(WPI)で MSEE(電気電子工学修士)の学位を取得しており、4 つの特許 の著者/共著者でもあります。余暇には家族との団らんや、さま ざまなギターの演奏、音楽の録音、真空管ギター・アンプやアン ティーク・ラジオの収集などを楽しんでいます。 Analog Dialogue 47-02, July (2013)
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