№1 DNA の発見 ○遺伝物質 DNA の発見 1869 年 F.Miecher 細胞核から抽出した物質(リン酸を含む酸性有機物)を”ヌクレイン”と命名 1889 年 R.Altman “nucleic acid”(核酸)とm命名 ↓ 5 つの塩基の発見 (G→A→T→C→U) ↓ 1900 年 ペントースを含むことを発見 1928 年 F.Griffich 肺炎双球菌を用いた実験 R 型菌 S 型菌 DNA ○ ― ○ ○ タンパク質 ○ ○ ― ○ 多糖類 ○ ○ ○ ― 生存 × ○ × × R 型:弱毒 S 型:強毒 →DNA が形質を伝える 1929 年 ペントースがデオキシリボースであることが判明 1934 年 DNA は巨大分子 1953 年 J.Watson & J.C.Crick №2 DNA の性質 ①酸性分子 ②紫外線吸収 極大 260nm ,極小 230nm 260nm のとき吸光度が 1.0 のとき、 DNA:50μg/ml RNA:40μg/ml 一本鎖 50% ③変性と再結合(アニーリング) ・変性 (denaturation) 二本鎖 二本鎖 DNA が一本鎖となる Tm 1)温度をあげる 2)pH をあげる 50%の二本鎖 DNA が一本鎖になる温度 Tm GC 対が多いほど Tm が上昇 (GC 含量 1%up → 0.4℃up) ・再結合 (アニーリング) 方法・徐々に温度を下げる ・アルカリを中和 元の二本鎖に戻る Tm 値より 20∼25℃低い温度 100℃ ④その他 ・DNA 水溶液の粘度 二本鎖 DNA > 一本鎖 DNA ・密度 GC 塩基対を多く含むものは密度は高い №3 DNA の構造 ○DNA の二重螺旋構造 ①2 本の DNA 鎖が逆方向に一本の軸を中心に螺旋を巻いている (逆平行) ②塩基は軸の内部にあり、糖-リン酸の骨格は外側に位置する ③塩基どうしは水素結合 (AT 間は 2 本,GC 間は 3 本) ・B 型らせん (B-form, B-helix, Watson-Crick 型) 通常(水溶液中)ではこの形態を取る 広い溝と狭い溝の差が明確 1 巻きあたり ピッチ らせん直径 巻き方向 A 型らせん 11 塩基対 2.46nm 2.3nm 右巻き B 型らせん 10 塩基対 3.4nm 1.9nm 右巻き Z 型らせん 12 塩基対 4.5nm 1.8nm 左巻き ○DNA の立体構造 二本鎖 DNA は環状構造もとる (5’末端と 3’末端が連結) ・ 線状 DNA (両末端が自由に動ける) ↓ ・閉環状 DNA (二本鎖の両末端が連結:プラスミド) ↓ ・開環状 DNA (二本鎖 DNA の一方だけが連結) ○DNA の存在 DNA は核もしくは染色体に存在する №4 染色体 ○染色体 …真核生物の核内に存在する DNA とタンパク質からなる情報を担うもの M 期(分裂期)に見られる凝集染色体のみでなく間期(G1,G2 期)のクロマチンも含める ○クロマチン (染色質) …核内で塩基性色素で濃く染色される物質 DNA+タンパク質からなるヌクレオソー ムを構成単位とする ※ヒストン八量体 (オクタマー) H2A (分子量 13,700) H2B (分子量 13,700) ×2 → 八量体 H3 (分子量 15,700) H4 (分子量 11,200) ※ヒストン H1 DNA の巻き始めと終りに結合 ○ヌクレオソーム …クロマチンの基本構造をなす構成単位 ヒストン(塩基性タンパク質)の八量体 に DNA が 1.75 回巻きついたヌクレオソ ームコアと、もう一つのヒストン(H1)で構成される。ヌクレオソーム間は 200bp ○ヌクレオソームコア …直径 11nm、長さ 5.5nm の円筒形で、146 塩基対の DNA が巻きついている ○リンカーDNA (Linker DNA) …ヌクレオソーム間をつなげる部分で、パリンドローム(回文構造)を持つ ○DNA の凝集 ヌクレオフィラメント …ヌクレオソーム部=11nm ↓ クロマチン繊維 …高次構造(ソレノイド構造) 直径 30nm の繊維 ※ソレノイド構造 ↓凝集 …一つの繊維状物質が クロモメア (染色小粒) 一定の直径とピッチ ↓らせん状に凝集 で形成する構造 染色体 №5 細胞周期と分裂 ○細胞周期と DNA S 期 (DNA 合成期) 染色体数 2n → 4n ↓ G2 期 (分裂準備期) …4n ↓ M 期 (分裂期) …4n → 2n ↓ G1 期 (DNA 合成準備期) ↓ S 期または M0 期 …栄養状態,環境による ○M 期 前期 :染色体(核膜は存在) 前中期:核膜が喪失 中期 :染色体が赤道面上に並ぶ 後期 :染色体が両極へ移動 終期 :核膜が再形成 ○有糸分裂 (体細胞分裂) :2n → 4n → 2n×2 ○減数分裂 (生殖細胞) :2n → 4n → n×4 №6 減数分裂 ○第一分裂前期 …染色体の対合,組換えが起こる 細糸期(レプトテン期) 合糸期(ザイゴテン期):対合の開始 太糸期( パキテン期 ) :対合の完了 複糸期(ディプロテン期) :対合が解離し始めキアズマ(交差)形成 移動期(ディアキネス期) ○DNA の複製における重要なポイント ・二重らせん構造を巻き戻すためにエネルギーが必要 ・一本鎖 DNA は塩基対を形成しやすい ・一つの酵素が触媒できるのは極少数に限られる ・複製の誤りを防ぐ,修正する機能を有する ○全ての複製系の共通点 ・塩基対形成の特異性 (A=T,G≡C) ・ヌクレオチド単量体が DNA ポリメラーゼによって伸長中の鎖の 3’末端に一つずつ付加 ・二本鎖の新しい鎖(娘鎖)の塩基配列は、古い鎖(親鎖)と相補的である ○複製の過程概要 (1)二本鎖 DNA の特定部位(複製起点)での開裂により開始 (2)非対称な DNA の不連続合成での DNA 鎖伸長 (3)伸長の停止と DNA 断片の連結 №7 DNA の複製に関する酵素 ○ヘリカーゼ (helicase) DNA 二本鎖を複製の進む方向に向かって解く エネルギーとして ATP が必要 ○DNA ポリメラーゼ DNA の複製において DNA 鎖の伸長を行う 伸長の開始に必ずプライマー(短い核酸[オリゴヌクレオチド])が必要 5’→3’方向にのみ DNA 鎖の伸長を行う 鋳型となる DNA 鎖が必要 基質となるのは 5’-triphosphate 型の deoxribonucleotide のみ ・DNA polymeraseⅠ (DNA polⅠ) ①5’→3’方向への DNA 鎖重合活性 ②3’→5’方向へのエキソヌクレアーゼ活性 3’末端から 1 つずつヌクレオチドを切断 誤って取り込まれたヌクレオチドを除去(校正機能) 1/1000 の間違う確率を 1/100 万まで下げる ③5’→3’方向へのエキソヌクレアーゼ活性 プライマーの除去に関与? 反応速度:600(ヌクレオチド/分)の伸長 存在個数:細胞一個あたり 400 個 ・DNA polymeraseⅡ (DNA polⅡ) ①5’→3’方向への重合活性 ②3’→5’方向へのエキソヌクレアーゼ活性 複製には直接関与せず、DNA の修復や紫外線誘導性突然変異に関与している可 能性が示唆されている。 ・DNA polymeraseⅢ (DNA polⅢ) ①5’→3’方向への重合活性 ②3’→5’方向へのエキソヌクレアーゼ活性 10 個のサブユニットから成るホロ酵素 反応速度:30,000(ヌクレオチド/分) …DNA 合成の中心的役割 存在個数:細胞 1 個あたり 10 個 ○DNA ligase DNA 鎖の連結反応を触媒する ・細菌型…補酵素として NAD を必要とする ・真核生物型…ATP を必要とする ◎酵素作用の流れ ①らせんの巻き戻し (ヘリカーゼ) ↓ ②プライマー鎖の形成 (プライマーゼ) ↓ ③DNA 鎖の合成[重合・伸長] (DNA polⅢ&Ⅰ) ↓ ④プライマーの除去,ギャップの伸長 (DNA polⅠ) ↓ ⑤断片の連結 (リガーゼ) №8 連続・不連続 DNA 複製 ※ラギング鎖 …親 DNA からみて 5’→3’方向 リーディング鎖 …親 DNA からみて 3’→5’方向 ○複製フォークでの反応 ①DNA ヘリカーゼによって二重らせんが開かれる。 ②一本鎖結合タンパク質(SSB)が 結合して一本鎖を安定化する (一本鎖になった DNA はその ままではすぐに二本鎖に戻 る) ③合成開始点にプライマーが結 合する ④合成開始点から DNA polymeraseⅢによって重合が開 始される ○不連続 DNA 複製 ①DNA ヘリカーゼによって二重らせんが開かれる。 ②一本鎖結合タンパク質(SSB)が結合して一本鎖を安定化する ③RNA プライマーゼによって短い RNA プライマーが結合する ④RNA プライマーから DNA polymeraseⅢによって 1000∼2000 塩基対だけ合成される ⑤DNA polymeraseⅠの修復機能により RNA プライマーが除去され DNA 鎖を伸長する ⑥DNA リガーゼによってそれぞれの断片が結合される №9 真核生物の DNA 複製 ○動物細胞の DNA polymerase ①DNA polymeraseα 染色体 DNA の複製において開始反応 ラギング鎖の伸長反応 (岡崎フラグメントを合成) ②DNA polymeraseβ 損傷を受けた DNA 鎖の修復,組換えに関与 ③DNA polymeraseγ ミトコンドリア DNA の複製に関与 校正機能 ④DNA polymeraseδ 染色体 DNA の複製においてリーディング鎖の伸長 ⑤DNA polymeraseε 染色体 DNA の複製や修復に関与 (? ) 校正機能 №10 ◎DNA の変化を引き起こす原因 ①複製の誤り 水素結合 1 個に対し、10-4 個程度 A=T:10-8 G≡C:10-12 突然変異 ※ヒトの約 50 億塩基対のうち 40%が A=T で 60%が G≡C だから、 A=T:{(5×109)×0.4}×10-8 = 20 G≡C:{(5×109)×0.6}×10-12 = 0.003 1 回の複製につき、A=T 間では約 20 個,G≡C 間では 0.003 個のエラー塩基対が発生 ↓ 校正機能の範囲内のためほとんど発現しない ②紫外線 ・ピリミジン二量体 同一鎖上の隣り合うピリミジンどうし間に紫外線によって共有結合を形成 チミン二量体(T=T) > チミン・シトシン二量体(T=C) > シトシン二量体(C=C) ↓ DNA 複製時に、二量体部分の塩基が読み取れず、複製が止まってしまう。 したがって、細胞分裂が停止する。 ・ブラックライト + ソラレン化合物 二本鎖にまたがった 2 個のチミン間に共有結合を形成 (架橋) ↓ 複製時の水素結合開裂のときに共有結合は開裂できず、複製の妨げになる ・放射線 (X 線,γ線など) DNA 鎖切断 塩基配列の変化 ③化学物質 ・亜硝酸 (HNO2) 食品の保存料などに利用 脱アミノ基活性が強い シトシン → ウラシル (C-G → T-A) グアニン → キサンチン アデニン → ヒポキサンチン ・亜硫酸 ・メチル化剤 (ジメチル硫酸,ヨウ化メチルなど) ・アルキル化剤 (マスタードガスなど) N-グリコシド結合の切断 → 塩基の除去 ・マイトマイシン等 架橋 ・重金属,SH 化合物等 リン酸化ジエステル結合の切断 → DNA 鎖の短鎖断片化 ◎突然変異の種類 点変異,塩基の置換,塩基の挿入,塩基の欠失 ①点変異 ・ミスセンス変異 アミノ酸配列が変化 → タンパク質が変化 ・ナンセンス変異 ペプチド鎖終結変異 アミノ酸指定コドン → 終止コドン ②挿入変異 ・フレームシフト変異 3 の倍数以外のアミノ酸が挿入される → コドンの読み取り単位がずれる ③欠失変異 ・フレームシフト変異 3 の倍数以外のアミノ酸が欠失する → コドンの読み取り単位がずれる №11 DNA の修復 ◎二量体の修復 ①光修復 (光回復) 二量体を逆反応により直接的に修復 光修復酵素 …デオキシリボジピリミジンフォトリアーゼ 可視光(300∼500nm)によって活性化されてピリミジン二量体を形成するシ クロブチル環を開裂する(共有結合を切断) ②除去修復 損害部分が UvrABC エンドヌクレアーゼにより除かれ、DNA ヘリカーゼによって傷害 DNA 断片(約 12 ヌクレオチド)を除去する。その後、切込みによって生じた 3’-OH を DNA polymeraseⅠが認識し、DNA polymeraseⅠによって修復され、DNA リガーゼによって連結 される。 ③組換え修復 (複製後修復) 傷害部分をスキップして DNA を複製した後で姉妹鎖交換によって修復する 姉妹鎖交換 …塩基対が相補的であるという性質を利用して、二量体箇所の娘鎖の複製個 所をもう一本の鋳型から持ってくる。 ④SOS 修復 DNA の損傷がシグナルとなり、緊急の処置として働く修復機構。RecA タンパク質 DNA polymeraseⅢに結合し、修復機能を犠牲にしてまでも強引にアデニンを対合させて複製に 向かわせる。 ◎塩基の誤りの修復 ①逆反応による修復 メチルトランスフェラーゼ …メチル化の除去 ②不適合修復 (ミスマッチ修復) DNA polymeraseⅠの校正機能に見逃された誤塩基の除去。 水素結合できていないことでおこる歪みを認識する。 誤塩基を取り込んだ娘鎖と親鎖は、アデニンのメチル化の度合いによって判断される ※DNA 鎖のアデニンはメチル基を持つが、メチル基は複製後しばらくして結合さ れるので、アデニンのメチル化が低いほうが娘鎖として認識される。 ③シトシンの脱アミノ化及び脱プリン反応の修復 → チミン 変異: シトシン →ウラシル 脱アミノ化 メチル化 反応活性部位 4 位のアミノ基:シトシンデアミナーゼによる脱アミノ化 5 位の炭素原子:メチル化酵素によるメチル化 ↓ ①N-グリコシダーゼが誤塩基を見つけて、糖-リン酸結合は残したままグリコシド結合の みを切断してウラシルを切り取る。 ②塩基の脱落部位(AP 部位)を AP エンドヌクレアーゼが見つけて DNA 鎖を切断する。 ③DNA polymeraseⅠと DNA リガーゼによって修復される。 №12 転写 ◎DNA と RNA 糖 :DNA は 2’-H なのに対し、RNA は 2’-OH 塩基:DNA の T は RNA では U になる ○RNA の種類 ・mRNA メッセンジャーRNA,伝令 RNA 500∼10,000 ヌクレオチド タンパク質をつくるための個々の遺伝子から転写(合成)された RNA → タンパク質合成のための鋳型 真核細胞は mRNA 前駆体である hnRNA(不均一核内 RNA)から mRNA が合成される。 ※hnRNA は核内にあり、成熟 RNA は核外に存在する。 ・tRNA トラスファーRNA,転移 RNA 70∼80 ヌクレオチド リボソームにアミノ酸を運搬 少なくとも全てのアミノ酸に対応するために、アミノ酸の数だけ tRNA がある。 二次構造:クローバー葉構造 三次構造:L 字型構造 tRNA 分子中には二本鎖と一本鎖部分がある。 特殊塩基を持つ (D:ジヒドロウリジン,ψ:プサイドウリジン) 3 つのループ(一本鎖部位)がある。 D ループ,TψC ループ アンチコドンループ …コドンと相補的な部位(アンチコドン)を持つ 複雑な特殊塩基が多い → コドンとの対合の安定性に 3’末端には A-C-C-があり、5’末端には多くの場合 G がある。 ・rRNA タンパク質合成の場であるリボソームを構成する RNA 5S rRNA 大サブユニット 23S rRNA 50S 23 種のタンパク質 大腸菌リボソーム 70S 小サブユニット 16S rRNA 30S 21 種のタンパク質 大サブユニット 60S 28S rRNA 5.8S rRNA 5S rRNA 約 50 種のタンパク質 小サブユニット 40S 18S rRNA 約 30 種のタンパク質 動物リボソーム 80S ※ S 値 (沈降係数) 遠心分離機を用い、沈降速度に基づいて計算する。分子量が大きいほど速く 沈降するが、分子の形も影響する。分子量と S 値とは直接比例しない。 ◎RNA 分子の合成 ○RNA polymerase ・一本鎖 DNA を鋳型とし、5’→3’方向に反応を進める ・プライマーは不要で、DNA を読み始める部位(プロモーター)を認識する ・プロモーター部位で DNA 二本鎖を解く ○原核生物 RNA polymerase ・RNA 合成の中心を担うコア酵素(α2ββ’)とプロモーターを認識するσ因子からなる、 分子量約 45 万以上のタンパク質 ・RNA 合成触媒活性中心はβ ○真核生物 RNA polymerase RNA polymeraseⅠ:rRNA 遺伝子を特異的に転写し、rRNA 前駆体を合成する 10 前後のサブユニットからなり、核小体に局在する α-アマニチンに対して非感受性 RNA polymeraseⅡ:タンパク質をコードする遺伝子を転写し、mRNA 前駆体を合成する 一部の核内低分子 RNA (snRNA)も合成する 10 前後のサブユニットからなり、核質に局在する α-アマニチンに対して高感受性 RNA polymeraseⅢ:tRNA,5S rRNA,多くの snRNA を合成する 10 前後のサブユニットからなり、核質に局在する α-アマニチンに対して低感受性 ◎転写反応 ①開始 鋳型 DNA のプロモーター領域に RNA polymerase が結合。 ここでプライマーは不要である。 ②伸長 RNA の 3’-OH 基と基質※の 5’-三リン酸部分がホスホジエステル結合で連結 Mg2+が不可欠 ※ rNTP:リボヌクレオシド 5’-三リン酸 ③終結 鋳型 DNA のターミネーター部分で RNA polymerase が反応を停止し DNA から離れる ○転写単位 RNA polymerase が転写を開始し、終了するまでをいう ○シストロン DNA 分子の中で、開始及び終結を含めて 1 本のポリペプチドに対応する情報部分 ○モノシストロニック転写 真核生物の行う転写法 転写単位の中に遺伝子の最小単位であるシストロンを一つだけ含む ○ポリシストロニック転写 原核生物の行う転写法 1 つの転写単位が複数のイントロンを含む =一つの転写単位から複数のタンパク質 ◎プロモーター …転写開始に必要な DNA 領域 [大腸菌] RNA polymerase のσ因子によって認識される 転写開始地点より約 10 塩基上流にある (-10) ※コンセンサス配列 (特定の機能を持つ DNA 共通領域) -10 付近の AT に富んだ Pribnow Box (TATAATG)と-35 領域(約 35 塩基上 流)が、大腸菌プロモーターのコンセンサス配列 [真核生物] TATA Box (Goldberg-Hogness Box) (TATAAA) mRNA の転写開始地点より約-25 この領域に TFⅡD が結合し、転写開始複合体を形成 ※エンハンサー:数千塩基上流にあり、転写開始を促進 TBP:TFⅡD の中心サブユニット ◎転写終結 ○ターミネーター …転写終結に関わる DNA 配列 [大腸菌] T を多く含む配列とその上流のパリンドローム様構造をもつものがある。 さらにρ因子(転写終結因子)があり、 RNA polymerase に結合して、 RNA polymerase を DNA から外す機構がある。 [真核生物] ※あまりよく研究されていない T の多い構造? RNA polymeraseⅡの転写はある一定の範囲内で徐々に終わる? それより上流にポリ A シグナル(AAUAAA)が見られ、ポリ A 鎖が付加される №13 転写後修飾とスプライシング ○両末端の修飾 5’末端:キャップ構造 (m7G:7-メチルグアノシン)の付加 → mRNA の安定化に関与 3’末端:ポリ A (100∼200 個のアデニル酸)の付加 → mRNA の安定化に関与 翻訳に関与 (ポリ A 鎖除去→翻訳開始が阻害される) ○スプライシング 真核生物 RNA 合成後にその一部が切り取られて除かれる機構 ・イントロン:スプライシングによって切り除かれる部分 (介在配列) 成熟 mRNA に含まれない部分 ・ エキソン :スプライシングで残ってつなげられる部分 mRNA 前駆体で分断されている遺伝子 最終的に 1 つになってタンパク質合成の情報となる ○GU-AG 則 スプライシングされる RNA のイントロンの両末端には 5’GU…AG3’という構造があり、 RNA 鎖の切断と再結合に重要である。 イントロンの 5’GU 側に切 り込みが入り、スプライシング 供与部位を形成する。スプライ シング受容部位(3’側から 19∼ 37 塩基 5’側の A)でリン酸ジエ ステル結合して、ラリアット構 造を形成する。その後、スプラ イソソームによって、環状イン トロンの切り出しとエキソン の再結合が行われる。 №14 翻訳 ○翻訳 (概要) ・タンパク質合成はリボソーム上で起こる ・リボソーム上にはペプチド結合形成の酵素があり mRNA や tRNA の結合場所がある ・mRNA 中のコドンに tRNA のアンチコドンが対応(水素結合)し、ポリペプチド内のアミ ノ酸配列が決定する。 ・ペプチド鎖の伸長は、アミノ末端(N 末端)から開始し、mRNA の 5’→3’へ翻訳される。 ◎コドン …アミノ酸を指定するトリプレット (塩基の 3 つ組) ・開始コドン:ポリペプチドの合成は AUG から開始される AUG はメチオニン(大腸菌ではホルミルメチオニン)を指定 ・終止コドン:ポリペプチドの合成を終結させるコドン UAA,UAG,UGA 終止コドンには対応するアミノ酸を持たない ○コドンの縮重 多くのアミノ酸が複数のコドンで指定されている冗長性 ○アミノ酸の活性化 アミノ酸を RNA に連結する反応 tRNA の 3’末端の共通配列の先に共有結合でアミノ酸を結合させる (アミノアシルt RNA) ・アミノアシル tRNA の二段階反応 アミノ酸 +ATP + 酵素 Mg2+ 酵素-AMP-アミノ酸 + PPi tRNA アミノ酸-tRNA + AMP + 酵素 ※酵素… アミノアシル tRNA シンテターゼ 校正機能を持ち、間違ったアミノ酸を連結した場合、 アミノアシル tRNA を分解する ○アンチコドンのゆらぎ アンチコドンの 1 番目と、コドンの 3 番目は必ずしも相補的塩基対を形成しない ↑ 縮重の性質より、実際には 64 個全てのコドンに対する tRNA がない。 原因は tRNA の中のアンチコドン部分のあいまいさ。 №15 ペプチド鎖伸長の分子構造 ○原核生物 ①リボソーム小サブユニットが、mRNA 中の SD 配列に結合する。 ※SD 配列と 16SrRNA 3’末端付近は相補的 ②開始因子と GTP 存在下で開始アミノアシル tRNA が P(ペプチジル)部位に結合する ③開始因子と GDP,PPi を解離してリボソーム大サブユニットを結合させる ④伸長因子(EF-Tu,EF-Ts)と GTP の存在下で、次のアミノアシル tRNA が A(アミノアシ ル)部位に結合する。 ⑤ペプチジルトランスフェラーゼによって A 部位の tRNA がアミノ酸を受け取り、アミ ノ酸間でペプチド結合を形成する。 ⑥1 番目の tRNA が P 部位から離れる。 その後リボソームが mRNA 上を 3’方向に移動し、 空となった A 部位に次のアミノアシル tRNA が入る。 ↓ ④⑤⑥の繰り返し ○真核生物 原核生物とほぼ同様 ・mRNA の 5’末端のキャップ構造に小サブユニットが結合し、 下流の AUG(開始)コドンに移動 ↓ 以下、原核生物と因子の種類以外共通 №16 タンパク質の加工 ○タンパク質の加工 (翻訳後修飾) ①ペプチド鎖の切断 N 末端がメチオニンでない場合 例)・分泌性タンパク質 N 末端が限定分解されて、細胞外に分泌される ・タンパク質分解酵素やインスリンの限定分解 プレプロタンパク質 → プロタンパク質 → 成熟タンパク質 ②アミノ酸側鎖の化学的修飾 リン酸化,糖鎖の付加 ③編集 (エンディング) ペプチド鎖のつなぎ換え (タンパク質のスプライシング) インテイン(前駆体タンパク質内部)が切り出され、 エクステイン(両端のペプチド鎖)が連結される №17 タンパク質 ◎タンパク質 (ポリペプチド) ペプチド結合によるアミノ酸重合体 → 20 種の L-α-アミノ酸 ○タンパク質の高次構造 ①一次構造 タンパク質中のアミノ酸配列 ②二次構造 ペプチド結合間の水素結合によって安定化された規則性を持つ構造 ・α-ヘリックス 3.6 塩基/巻 の右巻きラセン ペプチド鎖の CO の O と C 末端のアミノ酸残基 3 つ離れた NH の H の水素結合 ・β構造 隣接したポリペプチド鎖間で水素結合を形成し、安定化した構造 β-シート …β構造をとる多数の鎖が並んで形成 ③三次構造 いくつかの結合力によって作られるポリペプチドの三次的構造 (ポリペプチド鎖の全体としての折りたたまれ方) ・結合力 水素結合 (二次構造中, 特定のアミノ酸間) ジスルフィド結合 (システイン残基間) イオン結合,疎水性相互作用 リン酸ジエステル結合,van der Waals 力 ④四次構造 複数のポリペプチドが非共有結合によって特定の空間配置を取る構造 各ポリペプチドをサブユニットと呼ぶ ◎変性 …構造の変化 高次構造が崩壊し、物性変化,失活する ・不可逆変性:ゲル化(凝固)し元に戻らない変性 熱変性,強酸,重金属,有機溶媒など ・ 可逆変性 :変性剤(界面活性剤,尿素など)を取り除くと元に戻る変性 №18 タンパク質の分類 ①組成による分類 ・単純タンパク質 L-α-アミノ酸から構成されているタンパク質 ・複合タンパク質 L-α-アミノ酸以外に補因子を含むタンパク質 ・ 核 タンパク質 ・金属タンパク質 ・リボ 〃 ・色素 〃 ・リン 〃 ・ 糖 〃 ※誘導タンパク質 天然タンパク質に、物理的・化学的処理したタンパク質 ②形状による分類 ・球状タンパク質 ポリペプチド鎖が折りたたまれ、全体として球状もしくは回転楕円体をとる。 酵素タンパク質,アルブミンなど 全体として球状を取るため、構成アミノ酸残基の多くは分子内部に存在する (内部:疎水性アミノ酸残基,表面:親水性アミノ酸残基) 特定のアミノ酸の繰り返し配列は通常見られない ・繊維状タンパク質 二次構造をとる細長い形状のタンパク質 多くは構造タンパク質で溶けにくく、生体内で骨格構造を形成 ③機能による分類 ・構造タンパク質:コラーゲンなど ・触媒 〃 :酵素 ・輸送 〃 :ヘモグロビンなど ・防御 〃 :血清抗体 (免疫グロブリン) ・収縮 〃 :筋肉繊維 ・貯蔵 〃 :フェリチン (肝臓に鉄を貯える) ※コラーゲン 存在:腱,軟骨,血管壁,皮下組織,歯 ヒト体内に 30%存在 アミノ酸組成の 1/3 がグリシン (プロリンも多い) 特殊アミノ酸(ヒドロキシプロリン,ヒドロキシリシン)を含む三重らせん構造 ・三重らせん構造 三本のポリペプチド鎖(α鎖)がそれぞれ左巻きのらせん構造をとり、各鎖は互いに 右巻きのらせん状になっている。 ・ポリペプチド鎖 (α12α21) 約 1000 残基のアミノ酸で、長さはアミノ酸残基数×0.29nm,直径約 1.4nm の鎖。アミノ酸配列の 3 個ごとに Gly が存在し、アミノ酸 3 個で 1 巻き。 プロコラーゲン → コラーゲン原繊維 → コラーゲン細繊維 → コラーゲン小繊維 → コラーゲン繊維 → 腱,軟骨 ※防御タンパク質 免疫グロブリン (Ig;抗体) ・免疫 …生体が自己以外の異物を排除するために行う反応 体液性免疫 抗体依存性免疫 体液中に放出された抗体(免疫グロブリン)が体外から侵入した異種タンパ ク質や病原体成分などに特異的に結合し、その物質を排除して生体を防御 する 細胞性免疫 細胞によって異物を排除する免疫現象 キラー細胞(T-リンパ球),活性マクロファージ(大食細胞)など 免疫が障害的に作用 → アレルギー,アナフラキシー,アトピー ○アレルギー (過敏症) …免疫応答の結果、生体に障害をもたらす反応 Ⅰ型:IgE が関与 抗原接触後、数秒∼数分で発症する即効型アレルギー 花粉症,ぜんそく,じんましんなど Ⅱ型:IgG,IgM が関与 補体系を活性化する細胞傷害性反応 自己免疫性溶血性貧血など Ⅲ型:抗原抗体複合体によって起こる組織障害 Ⅱ型とは異なり抗原を持たない細胞や組織が障害を受ける 主に IgG によって起こるが、多くの因子が関与する複雑な機構 アルツス反応,血清病など Ⅳ型:T-リンパ球が関与する遅延型アレルギー 抗原接触後 48∼72 時間で反応が最大となる 接触性皮膚炎など ○免疫グロブリン 外来性分子(抗原)と特異的に相互作用(抗原抗体反応)し、それを不活化するタンパク質 動物の体液,主として血清γグロブリン画分中に存在 IgG IgA IgM IgD IgE 2 本の Hα鎖 2 本の Hδ鎖 2 本の Hγ鎖 2 本の Hμ鎖 2 本の Hε鎖 構造 2 本の L 鎖 2 本の L 鎖 2 本の L 鎖 2 本の L 鎖 2 本の L 鎖 分子量 15 万 16 万 90 万 17∼19 万 19 万 糖含有率 1∼3% 8∼10% 10% 15% 10∼20% 血清中 0.5-1.5mg/m 8-15mg/ml 2-3mg/ml 20-30μg/ml 0.2μg/ml 濃度 ※IgG の構造 H鎖:5万×2 L鎖:2.5万×2 H鎖 V領域 M.W. = 15万 H鎖:450アミノ酸残基 L鎖:220アミノ酸残基 L鎖 可変部:110アミノ酸残基 そのうち、約6塩基×3の超可変部 C領域 ・V 領域 (可変部;variable) 抗原結合の特異性を与える ・C 領域 (不変部;constant) 分子の全体的構造の維持 免疫系のほかの構成要素によって IgG 分子が認識される過程に関与 №19 収縮タンパク質 ◎筋肉 平滑筋 …不随意筋で内臓のゆっくりした動き 横紋筋 骨格筋 …随意運動ができて神経とホルモンの支配で収縮 心筋 …神経とホルモンの支配で規則正しく継続収縮 ◎筋細胞 (筋繊維) ・平滑筋細胞:単核で横紋性の収縮装置をもたない 分化後に収縮型から増殖型へと可変 ・骨格筋細胞:直径 10∼100μm,長さ数 cm の大きな多核細胞 細胞内に収縮装置(筋原繊維)が発達 ・ 心筋細胞:単核細胞(数個の核をもつ場合がある) 筋原繊維を持つが構成タンパク質の分子量は骨格筋と異なる ◎筋原繊維 (ミオフィブリル;筋フィラメント) 直径 1μm の円筒状 サルコメアという単位からなる 筋原繊維の隙間に筋小胞体が存在 筋小胞体 …Ca2+を含む袋状構造物 ・ミオシンフィラメント (太いフィラメント) 4 分子のミオシン(重鎖[H 鎖] 2 分子+軽鎖[L 鎖] 4 分子)からなる ・アクチンフィラメント (細いフィラメント) アクチン …フィラメントの主成分。 筋原繊維中では F アクチンとして存在。 F アクチンは G アクチンが重合して繊維状になったもの。 トロポミオシン …2 本のαらせんポリペプチド鎖がコイルを形成したもの。 筋原繊維中では 7 個の F アクチンと結合。 トロポニン …トロポニン I,T,C から成る複合体。一定の間隔で F アクチン 上に存在。 ○筋肉収縮のためのミオシンフィラメント頭部の傾く機構 1) ミオシンに ADP と Pi が結合 (アクチンフィラメントとは結合していない) 2) 収縮命令によってミオシン頭部がアクチンに結合し、アクトミオシンを形成 3) ADP と Pi を放出して、アクチンフィラメントが傾く → 頭部に結合しているアクチンフィラ メントがたぐり寄せられ、ミオシン フィラメントに対して滑り込み、筋 収縮となる。 4) アクトミオシンを形成している頭部に ADP が結合し、アクチンとミオシンは解離する。 5) ミオシンにより ATP1分子が加水分解され、 1) に戻る。 ◎筋収縮 ⅰ) 神経からの命令 ⅱ) 筋細胞(繊維)の細胞膜が興奮 + 内○ − →外○ − 内○ + …電位:外○ ⅲ) 筋小管による細胞内部への興奮伝達 ⅳ) 筋小胞体から Ca2+が放出 ⅴ) Ca2+がトロポニン C に結合 → アクチンフィラメントとミオシンフ ィラメントが密着 ⅵ) アクチンフィラメントとの接触により、ミ オシンフィラメント頭部の ATP アーゼ作 用が活性化され、ATP を加水分解する。 ⅶ) 頭部の立体構造が変化し、アクチンフィラ メントをたぐり寄せる。これによってサル コメア長が短くなり、筋原繊維全体も収縮。 ⅷ) ATP の加水分解エネルギーにより、Ca2+ポ ンプが作動し Ca2+が筋小胞体に回収される。 №20 ヘモグロビン ○ミオグロビン 分子量 18000 のグロビン+ヘムの単量体 筋内細胞で酸素を運搬 ○ヘモグロビン (血色素) ヘム+グロビン(タンパク質の一種) 主として酸素を運搬 分子量約 16000 の 4 個のサブユニットから成る (四量体が 1 つの機能単位) ヒト成人:α2β2 (α:141 残基,β:146 残基) ・α鎖とβ鎖の立体構造 ほぼ等しい構造で、8 つのα-ヘリックスをつなぎ合わせて丸めたような構造 ・ヘム プロトポルフィリンという窒素を含む環を 4 つ持つ平らな分子の中央に二価の鉄が 配意したもの(プロトポルフィリンと Fe2+の錯体)。鉄の 6 つの配位結合のうち、4 個 は同一平面上で窒素と結合し、残りの 2 つは平面に対して上下に配位する。1 つはタ ンパク質(グロビン)のヒスチジンのイミダゾール基に配位する。 残りの一つが酸素と配位する。 ・一酸化炭素中毒 一酸化炭素はヘモグロビンに対する結合力が酸素の数万倍 ・脱酸素ヘモグロビン 酸素と結合していないヘモグロビン →鉄原子はポルフィリン環の面から出ている 酸素ヘモグロビンにはないイオン相互作用や水素結合がある [T 状態(緊張状態)] …酸素親和力が弱い ・酸素ヘモグロビン 鉄原子が酸素分子と結合し、鉄原子はポルフィリン環の平面内に入る イオン相互作用が少ない [R 状態(弛緩状態)] …酸素親和力が強い 高酸素濃度条件下では安定 ○酸素結合能力の調整 ①酸素分圧:高 → 飽和 低 → O2 を解離しやすい ② pH :低 → O2 を解離しやすい ③CO2 と結合すると O2 を解離しやすい CO2 …各サブユニットの N 末端アミノ酸に結合 ④ジホスホグリセリン酸が高濃度だと酸素親和力が低下 →組織(細胞)に酸素を供給しやすくなる №21 酵素 ①酵素の特徴 1) 特異性:限られた基質に対し限られた反応のみを触媒 2) 生理的条件下で働く (pH,温度など) 3) 触媒能力が高い:107∼1020 程度上昇 4) 最適 pH:pH7 付近 5) 最適温度 ②ホロ酵素 …アポ酵素+補因子(金属など) 酵素タンパク質の決まった場所に配位結合で固定 (タンパク質の立体構造を強固にする) ③補欠分子族(配合団) FAD やビオチンなど酵素にはじめから強く結合していて離れない ※補酵素,NAD+,CoA など 通常は酵素に結合しておらず、必要なときだけ酵素と結合して作用する ④酵素と基質の結合 1) 鍵と鍵穴モデル (1894 年 E. Fisher) 酵素の活性部位は基質分子の大きさ,形,化学的性質とちょうど適合するような原 子配置を取っている 2) 誘導適合モデル (1968 年 D. E. Koshland Jr.) 基質の接近もしくは結合に伴い、酵素分子の構造が変化し、活性中心がその触媒機 能の発現に向けて誘導的に形成される ⑤活性部位 1) タンパク質中のわずかなアミノ酸残基からなる (空間的には接近しているが一次構造上は離れている事がある) 2) ひとつまたは複数の基質分子が結合し、酵素-基質複合体(ES 複合体)を形成する部位 ※一般的に酵素と基質の結合は共有結合ではない 水素結合,イオン結合,疎水性相互作用,原子間の密接な接触など ⑥分子レベルの酵素作用 1) ニワトリの卵白リゾチーム ・129 個のアミノ酸からなる分子量 14,300 の単一鎖ポリペプチド ・4 個のジスフィルド結合をもつ ・細菌の細胞壁のペプチドグルカンの N-アセチルグルコサミンと N-アセチルムラミン 酸の間のβ-1,4 結合を加水分解する (細菌細胞壁分解→細菌死滅→卵内部を保護) ・ペプチド鎖が折りたたまれて 2 つの塊りとなり、その谷間が活性化部位となる (A∼F の部位にそれぞれ糖が結合) ⑦反応機構 1) Glu35 の-COOH がグリコシド結合の O に水素イオンを与え、D 環 C1 とグリコシド酸 素間の結合を切断 2) D にある糖では C1 が正の電荷(カルボニウムイオン)を持ち、Asp52 の-COO-の負電荷 により安定 → D 環は歪み安定 3) 水分子由来の OH-がカルボニウムイオンと反応し、ABCD にある糖を生成物とする。 同時に水素イオンが Glu35 の-COO-と結合し、-COOH となる 4) 酵素は元の状態に戻る ⑧キモトリプシン …ペプチド結合の加水分解 M.W.=25,000 240 残基のアミノ酸が基質結合部位を形成 重要なアミノ酸…Ser195, His57, Asp102 ⑨酵素の活性阻害 1) 不可逆的阻害 阻害剤が酵素の特異的な官能基と共有結合を形成し、酵素活性を阻害する。 → 酵素分子から除去できない 阻害剤;有機リン剤,重金属イオン シアン化合物 (ミトコンドリアの電子伝達系を阻害) 2) 可逆的阻害 阻害剤を除去でき、活性を取り戻せる a) 基質阻害 b) 拮抗阻害 基質分子に類似した物質が活性部位に結合し、基質が結合できない c) 非拮抗阻害 活性化部位とは別の場所に阻害剤が結合し、酵素の構造を変え、基質を反応 生成物に変換できなくなる
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