9 研究の成果と課題 (1)職員の意識から 先生たちからの声 【子どもの姿】 ○ 説明文の学習の仕方が分かり,長い文章を抵抗なく読めるようになってきた。また,説明文 に対する苦手意識は減ってきているように感じる。 ○ ペアで学習活動を協力して行ったり,意見を交流したりしながら学習できるようになった。 ○ 図書室に進んで行ったり,国語に限らず他教科等でも自主的に辞典を引く子どもが増えたり するなど,国語に自ら親しもうとする子どもが増えてきた。 ● グループ学習で出された意見を十分にまとめることができていない。 ● すらすらと読めなかったり,語彙力が不足したりして,内容を十分にとらえられない子ども がまだ見られる。 【教師自身の変容】 〔指導事項を重視した授業づくりを通して〕 ○ 指導事項の重要性が分かり,各学年の系統性を意識した教材研究ができるようになった。 ○ 年間を通して,学習内容の定着を意識して学習指導に当たれるようになった。 ○ 学習課題を明確にした授業に変わってきた。 ○ 「評価規準→判断基準→読みの視点」というふうに,実際の活動レベルで評価と指導を一体 化したことで,指導事項をおさえた指導ができるようになった。また,学年で共通した指導が できるようになった。 〔学びの実感を重視した学習過程の工夫を通して〕 ○ 単元を貫く言語活動の考え方を生かし,目的的に読ませることを意識したことで,単元構成 を工夫しようとするようになった。また,子どもも生き生きと学習に取り組めるようになって きた。 ○ 学習計画をもとにした見通しをもった学習で,教児ともに,学習過程をおさえた学習ができ るようになった。 〔その他〕 ○ ノート指導の仕方を共通実践したことで,ノートが構造化されてきた。 ○ ペア活動などを他教科にも生かすようになった。 ○ 国語の授業をするのが楽しくなった。 研究仮説にある, 「子どもに身に付けさせるべき指導事項を明確に位置づけた指導法を工夫する」 ことに関して, 「判断基準」 「表現例」 「読みの視点」を設定した授業づくりを進めてきた。このこと によって,教師自身が目の前の教材を使って,子どもたちに何を身に付けさせなくてはならないかを 明確にした授業づくりをすることができるようになった。子どもたちの意識の中では,まだ指導事項 が十分に理解できていないと感じていることが意識調査を通して分かったので,今後は,子ども目線 に立ったより明解な「読みの視点」のあり方と,そのための一単位時間における言語活動のあり方を さらに探っていく必要がある。また,単元や一単位時間の導入や終末にどのような学習活動を位置付 ければ,子どもたちのレディネスがそろい,自分の学びが実感できるかを探っていく必要がある。 (2)成果と課題 本研究の成果と課題は,次の通りである。 - 26 - 【成果】 ○ 全職員で,指導事項をおさえた授業づくりに取り組んだことで,系統性を意識した学習指導 が行えるようになった。また,単元における指導目標が明確になった。 ○ 「判断基準」 「表現例」 「読みの視点」を設定したことで,評価と指導の一体化が図れるよう になった。 ○ 学習過程をそろえたことで,子どもたちにも説明文の学習の仕方が分かるようになった。 ○ 単元を貫く言語活動のよさを生かしたことで,目的意識や課題意識をもって説明文を目的的 に読ませることができるようになった。 ○ 伝え高め合える授業づくりを目指したことで,自分の考えをもち,友達の意見に興味をもっ て伝え合おうとする子どもが増えた。 ○ ノート指導をそろえたことで,板書のあり方やおさえるべき用語,語彙等を熟考して授業を つくろうとする意識が高まった。 ○ 指導事項を意識した指導をしたことで,算数や理科等でも接続語を生かしてまとめたり,社 会の調べ学習で,段落ごとの内容や主語に着目して必要な情報を取り出したりすることができ る子どもが増えた。また,日記等で事例を挙げるときに,学習した文章構成を生かして表現で きる子どもが増えた。 ○ 環境構成を工夫したことで,辞書や関連図書に進んで親しもうとする子どもが増えた。 【課題】 ● 語彙力を上げるための手立て ● 単元を貫く言語活動のより効果的な位置付け方 ● 指導事項の定着を図る「読みの視点」のあり方 ● ペアやグループ活動のさせ方と全体での練り上げ方 ● 子どもが自己の学びの成果を実感できるような価値付け方や評価の返し方 ● 学んだことを他教科や日常生活へつなげ,他教科や生活の中で国語の学びが生かされたとい う成功体験を味わわせるための手立て 最後に,子どもの日記を紹介したい。今後,このような子どもの声がたくさん聞かれるような実践 が積み重ねられるようにしていきたい。 わたしが楽しかったことは,今日の国語の学習です。はじめは小見出しを上手に作れなか ったけど,なれてきたらいい小見出しが作れるようになりました。そのことから,小見出し を作ることが楽しくなったからです。いい小見出しを作れるようになったので,次はそのこ とを生かして, 「3年生国語かるた」を作れるように練習していきたいと思います。 (3年児童の日記より) 【 参 考 文 献 】 文部科学省「小学校学習指導要領解説国語編」 (文部科学省 平成 20 年) 鹿児島県総合教育センター 研究紀要第119号」 (鹿児島県総合教育 平成 27 年) 水戸部修治「小学校国語単元を貫く言語活動の授業展開」 (東洋館出版 平成 25 年) 水戸部修治「 『単元を貫く言語活動』を位置付けた小学校国語科学習指導案パーフェクトガイド1・ 2年,3・4年,5・6年」 (明治図書 平成 26 年) 白石範孝「読解力がつく白石流『要点・要約・要旨』の授業」 (学事出版 平成 25 年) 白石範孝「国語授業を変える『用語』 」 (文渓堂 平成 25 年) 全国国語授業研究会・白石範孝・桂聖「小学校国語科活用力シリーズ1活用力を育てる説明文 の授業―この教材をこの発問・板書で教える―」 (東洋館出版 平成 20 年) 田村学・黒上晴夫「考えるってこういうことか!『思考ツール』の授業」 (小学館 平成 25 年) - 27 -
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