平成 26 年度 修 士 論 文 要 旨 機械プロセス・エネルギー工学領域 6625038 西 貴大 温水排熱からの蒸気回生システムの開発 1 緒言 2 吸着式ヒートポンプの原理 Equilibrium adsorption, x [kg-w / kg-z] 図 1 に吸着式ヒートポンプの基本原理を示す. 4 3 Switching Process Regeneration (Steam genaration) (Desorption) F (Air) Blower 50 50 Unit ; mm Zeolite 107 Steam trap F Flow meter P Pressure gauge Thermocouple Valve Heat resistant glass Water,25℃ ℃ For Steam generation P F (Water) Camera 図 2 ラボ装置の概要 蒸気生成時は,蒸気発生器の下部から水を供給 する.生成した蒸気は蒸気発生器の上部から回収 される.再生時は,水を蒸気発生器の下部から排 出する.その後,加熱した空気を蒸気発生器の上 部から発生器に送風することでゼオライトの再生 を行った. 4 実験結果 Steam partial Pressure [Pa] p1 p2 (Drying) Air 60~ ~80℃ ℃ 250 化石燃料の資源的制約や地球温暖化から CO2 排 出量の削減が求められている.その取り組みの一 つとして,製鉄所や化学プラントから排出されて いる 60~80℃の排温水から 150℃以上の蒸気を生 成し,蒸気をアミン法などの CO2 分離回収装置や 生産プロセスの加熱源として利用する方法が提案 されている.[1] 温水を蒸気に回生する方法とし て,ゼオライトの吸着熱を利用したヒートポンプ の開発を進めているが,充填層内での温水吸着⇒ 蒸気発生や再生時の挙動はよくわかっていない. 本研究では,最高蒸気温度 200℃,単位ゼオライ トあたりの発生蒸気量 0.05kg-蒸気/kg-ゼオライ トを満たす蒸気発生器を設計するため,充填層内 の様子を可視化した装置(以下,ラボ装置)での実 験と蒸気発生器内の流動解析により蒸気発生器に ついて検討した. For Regeneration P Steam generation 図 3 に,ゼオライトの充填層厚を変化させた場 合の発生蒸気量とゼオライト・装置上部(蒸気)の 温度変化を示す. Steam Zeolite Thickness [mm] 200 2 150 Switching Process 1 (Zeolite adsorbs water Heating by adsorption heat) Adsorbent temperature, T [ ℃ ] 図1 100 50 吸着式ヒートポンプの基本原理 ゼオライトが充填された蒸気発生器に温水を注 水し,温水がゼオライトに吸着される際に発生す る吸着熱を用いて温水を蒸気に回生する.ゼオラ イトの再生は,排温水で稼働できる吸収式ヒート ポンプで過熱した乾燥空気によってゼオライトか ら水分の脱着を行う.このサイクルを繰り返すこ とで,蒸気を連続的に生成する. 3 ラボ装置と実験方法 図 2 にラボ装置の概要について示す.ラボ装置 は,蒸気生成とゼオライトの再生状況を可視する 為に蒸気発生器を耐熱ガラス製にした. 50 100 150 200 250 300 Temperature [℃] 0.01 0.02 0.03 0.04 0.05 Ws/Wz [kg-w/kg-z] 図 3 充填層厚と発生蒸気量と温度の関係 図 3 において,発生蒸気量とゼオライト温度は 共に充填層厚の増加に伴い大きくなることがわか った.これは,充填層厚の増加によって,充填層 下部で発生した蒸気を充填層上部で吸着する時間 が長くなり,ゼオライトがより過熱されて,充填 層上部での温度が上昇することと,過熱されるゼ オライトの量自体も増加するためと考えられる. これより,200℃以上の蒸気を安定して生成するた めには更なるゼオライト層厚が必要になる. ゼオライトの再生に過熱乾燥空気を用いる場合, 再生空気の送風動力を低減するためには,充填層 の圧力損失を低減する必要がある.充填層での圧 力損失は式(1)の Ergun の式で示される.また、再 生時の観察の結果,ゼオライトは充填層の上部か ら下部方向へ順番に乾燥される.このことから, 充填層厚は薄い方が再生時間を短縮でき,再生に 有利であることがわかった. (1) Steam generation Regeneration Exhaust air Steam Front Exhaust air Front 10 5 0.5 1.0 1.5 Flow rate [m/s] 2.0 均一化を行った形状をスケールアップ装置に反 映させて実験した結果を図 6 に示す. Dew-point decline time 10 % Cut Time [min] 120 Steam generation 0.20 16 % Up 0.15 90 60 120 108 0.158 0.184 0.05 30 0 0.10 Before After Before After 0 図 6 スケールアップ装置の稼働結果 Regeneration air Warm Water Increased flow rate 図 5 蒸気発生器内の流速分布 150 以上の実験結果から,高温の蒸気を安定して発 生させるためには充填層厚を厚くし,ゼオライト の再生時には層厚を薄くする装置構造が必要であ る.図 4 に,この指針に基づいたゼオライト 169kg 充填した装置(以下,ベンチ装置)について示す. 15 0 0 ただし, ⊿P:圧力損失 [Pa],L:充填層厚さ [m] ε:空隙率 [-], μ:粘性係数 [Pa・s] U:流体速度 [m/s], φ:球形係数 [-] d:粒子径 [m], ρ:流体密度 [kg/m3] 5 ベンチ装置と実験結果 Before After Side 図 4 ベンチ装置の形状 ベンチ装置では充填層を上下に 2 分割し,蒸気 生成時は下部から温水を流入させることで充填層 厚を 400mm 以上で利用できる.再生時は装置の側 面から再生空気を流入させて上下に流すことによ り再生空気の通過する層厚を薄くする構造とした. ベンチ装置では,蒸気発生器内の空気の流速分 布を均一化するため,3 次元の流動解析を行った. 使用したツールは環境シミュレーション社製の WindPerfectDX2012 を用い,充填層内は式(1)の Ergun の式を適用し解析を行った. 図 5 に蒸気発生器内の流速分布を示す.点線は 流速分布の均一化を行う前,実線は均一化実施後 の流速分布である.均一化は,ゼオライト層に整 流板を設置し行った.均一化を行うことで 0.3m/sec 以下の流速分布が 9%向上した. 図 6 の左図は再生工程における再生空気の露点 が-10℃に低下するまでの時間である.均一化を行 った結果,再生時間は 10%短縮された.右図は,発 生蒸気量である.再生空気の流れを均一化した結 果,蒸気の発生量が 16%増加した.また,この時の 最高蒸気温度は 218℃を達成し,当初の目標であっ た最高蒸気温度 200℃以上,発生蒸気量 0.05kg-蒸 気/kg-ゼオライトを満たす蒸気発生器となった. 6 結論 本研究では,最高蒸気温度 200℃,単位ゼオライ トあたりの発生蒸気量 0.05kg-蒸気/kg-ゼオライ トを満たす蒸気発生器を設計するため,充填層内 の様子を可視化した装置での実験と蒸気発生器内 の流動解析により蒸気発生器について検討した. その結果,蒸気発生時には層厚さを厚く,再生時 には薄く使用することのできるスケールアップ装 置を設計し,最高蒸気温度 218℃,蒸気発生量 0.18kg-蒸気/kg-ゼオライトを達成した. 参考文献 [1] 中曽浩一,E.Oktariani,野田敦嗣,板谷義紀,中 川二彦 , 深 井潤, エネ ルギ ー資源 学会 論文, Vol32,9-16 (2011). Ws/Wz [kg-w/kg-z] Flow rate distribution [%] (1 − ε )2 µU + 1.75 (1 − ε )ρU 2 ∆P = L150 3 ε 3 (φd ) ε (φd )2 20
© Copyright 2024 ExpyDoc