204号 - 埼玉県地方自治研究センター

203号
SAITAMA 自治研通信
2015年1月23日
自治が変わる・自治を変える
SAITAMA
自治研通信
【発行】公益財団法人埼玉県地方自治研究センター【住所】埼玉県さいたま市浦和区高砂 4-3-5 県労評会館
【TEL】048‐816-8866
【FAX】048-836-1113
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新年おめでとうございます
理事長
浪江
福治
昨年末は総選挙がありました。「いきなり」の選挙で「なんで選挙なの」と多くの国民にとっては戸
惑いの中の選挙だったと思います。マスコミの選挙関係の報道も少なく、投票率も低く、選挙の意味が
問われる選挙だったと言えます。投票率は戦後最低の52.66%でした。
とはいえ、国の方向性、私たち国民生活の今後の在り方を左右する大きな課題があったことも確かで
した。第一に平和な社会を守り続ける事に関連をする、憲法問題、集団的自衛権問題、基地問題や武器
輸出の問題。第二にアベノミクスと称される経済政策と国民の働き方の問題。第三に原発に対する今後
の方向性。いずれも落ち着いてしっかりと国民的議論をしなければならない課題でした。しかし、投票
率にも見られるように十分に議論がなされての選挙とは言えなかったと言えます。
結果は、与党の自由民主党が単独で絶対安定多数の266を超える291議席、公明党は選挙区で全
員が当選するなどして35議席を獲得し、合わせて議席数の3分の2以上を維持しました。自民党に対
する支持は、他に支持政党が無いため消極的支持であったことも選挙後の「有権者の声」として報道さ
れています。選挙制度の関係もありますが3分の2以上の議席確保とはいえ、全有権者の半分しか投票
せず、投票者の半分の(消極的)支持(比例)で、つまり有権者の4分の1の支持で成り立っている政
府と言えないでしょうか。
選挙後のマスコミ報道によると、集団的自衛権の行使容認など安倍政権の安全保障政策について「支
持しない」が55.1%で過半数を占め、「支持する」の33.6%を大きく上回っています。原発問題
も「脱原発を支持する」が6割です。派遣などの国民の働き方の問題も含めて、国民の意識と政府の進
める方向に「ねじれ」が生じており、3分の2以上の議席を得た衆院選結果が、そのまま政策支持では
ないことは明らかです。
沖縄では、名護市長選、名護市議選、県知事選、今回の衆議院選と、沖縄の県民は辺野古基地建設に
ノーの意思表示をしました。沖縄の基地は戦中戦後アメリカによって強制的に土地を奪われて建設され
ました。合意して基地が造られたわけではありません。しかし辺野古は日本政府が了解してアメリカに
基地提供をするというものです。日本の沖縄の県民が反対の意思表示をしているにもかかわらず、日本
の政府が強行しようとしているのが辺野古基地です。作られる基地はアメリカの基地なのです。
国民の意識と政府の進める政策の「ねじれ」に、改めてこの国の民主主義を問う時期が来ていると思
います。地方分権、地方主権、地方創生、地方を大事にと言われていますが、誰のための国家なのか、
誰のための自治体なのか、根本から問い直すような議論をする時代になっていると思います。
民主主義の発展と確立のため、埼玉県地方自治研究センターとして研究活動を活発にしていきたいと
思います。
本年もよろしくお願いいたします。
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SAITAMA 自治研通信
2015年1月23日
「空家等対策の推進に関する特別措置法」が成立・2014年11月
総務省
平成 25 年住宅・土地統計調査(速報集計)結果の要約より
2014年9月の『埼玉自治研№42』住宅政
る。」とある通り、各市町村が苦慮してきた、倒
策特集で、幸手市の「空き家の適正管理に関する
壊危険家屋や管理不行き届きによる害虫などの
条例」を取り上げた。この時点で埼玉県内の同種
発生、またゴミ屋敷として話題になるなどの現実
の条例は19市町であった。
を踏まえて法案化されたといえる。
国会に「空家等対策の推進に関する特別措置法
「特定空家」は倒壊の危険、保安の危険、
衛生上有害、景観上で放置できない状態
案」を提出し11月14日衆議院,19日参議院
第2条(定義)において、倒壊による危険、保
での議決を経て、27日に法律第127号として
安上危険、衛生上有害、著しく景観を損なってい
公布された。この法律の骨子を紹介する。
る空き家を「特定空家」と定義している。
その後、政府(国土交通省)が11月に187
防災・衛生・景観など地域生活環境の保全
が法律の目的
まま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となる
法律は第1条(目的)に「この法律は、適切な
おそれのある状態又は著しく衛生上有害となる
管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観
おそれのある状態、適切な管理が行われていない
等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼし
ことにより著しく景観を損なっている状態その
ていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財
他周辺の生活環境の保全を図るために放置する
産を保護するとともに、その生活環境の保全を図
ことが不適切である状態にあると認められる空
り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家
家等をいう。」
等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、
市町村(略)による空家等対策計画の作成その他
所有者(管理者)の責務・空家等の適切な管
理を
の空家等に関する施策を推進するために必要な
第3条で所有者(管理者)は、「周辺の生活環
事項を定めることにより、空家等に関する施策を
境に悪影響を及ぼさないよう、空き家等の適切な
総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の
管理に努めるものとする。」と規定された。
増 進 と 地域 の 振興 に 寄与 す るこ と を目 的 と す
市町村の責務「空き家等対策計画を作成」
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「この法律において「特定空家等」とは、その
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第4条は市町村の責務を定めている。
「 市町村
六 特定空家等に対する措置(第十四条第一項
は、第六条第一項に規定する空家等対策計画の作
の規定による助言若しくは指導、同条第二項の規
成及びこれに基づく空家等に関する対策の実施
定による勧告、同条第三項の規定による命令又は
その他の空家等に関する必要な措置を適切に講
同条第九項若しくは第十項の規定による代執行
ずるよう努めるものとする。」
をいう。以下同じ。)その他の特定空家等への対
やや気になるのは努力義務になっている点で
処に関する事項
ある。市町村によって取り組みに温度差が出てく
るのではないか。
七 住民等からの空家等に関する相談への対応
に関する事項
「基本指針」を国が定める
八 空家等に関する対策の実施体制に関する事
第5条では、国の仕事として基本指針を定める
こととしている。
「 国土交通大臣及び総務大臣
は、空家等に関する施策を総合的かつ計画的
に実施するための基本的な指針(以下「基本
指針」という。)を定めるものとする。
2 基本指針においては、次に掲げる事項を
定めるものとする。
一 空家等に関する施策の実施に関する基
本的な事項
二 次条第一項に規定する空家等対策計画
に関する事項
三 その他空家等に関する施策を総合的か
つ計画的に実施するために必要な事項
「空家等対策計画」に定める事項
項
九 その他空家等に関する対策の実施に関し必
要な事項」
市町村に「協議会」を組織して自治的に
法第7条は、空家対策計画の作成のため市町村
に「協議会」を組織することができる。と定めて
いる。その構成は次のようになっている。
「協議会は、市町村長(特別区の区長を含む。以
下同じ。)のほか、地域住民、市町村の議会の議
員、法務、不動産、建築、福祉、文化等に関する
学識経験者その他の市町村長が必要と認める者
をもって構成する。」(法7条2項)
これを見ると幸手市の報告にあった通り、住宅
は個人財産であり、また個人の家庭に入り込む話
第6条に次のように定められた。
であって、同時に地域の防災や環境にも影響する
「市町村は、その区域内で空家等に関する対策
ことから、行政の一歩的な取り組みでなく地域の
を総合的かつ計画的に実施するため、基本指針に
自治を重視して対策が立てられるよう考えられ
即して、空家等に関する対策についての計画(以
ている。
下「空家等対策計画」という。)を定めることが
「立ち入り調査等」行政権限を明確化
できる。
第9条では、空き家の調査等のためにその敷地
2 空家等対策計画においては、次に掲げる事
項を定めるものとする。
内に立ち入る権限を市長村長に認めている。
「市町村長は、当該市町村の区域内にある空家
一 空家等に関する対策の対象とする地区及び
等の所在及び当該空家等の所有者等を把握する
対象とする空家等の種類その他の空家等に関す
ための調査その他空家等に関しこの法律の施行
る対策に関する基本的な方針
のために必要な調査を行うことができる。
二 計画期間
2 市町村長は、第十四条第一項から第三項ま
三 空家等の調査に関する事項
での規定の施行に必要な限度において、当該職員
四 所有者等による空家等の適切な管理の促進
又はその委任した者に、空家等と認められる場所
に関する事項
に立ち入って調査をさせることができる。」
五 空家等及び除却した空家等に係る跡地(以
各市町村条例でも立ち入り権限等を規定する
下「空家等の跡地」という。)の活用の促進に関
条例はあったが、法律で定められたことによって
する事項
これが強化され、さらにこれを拒否すると20万
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円以下の過料を科せることとなった。(法第16
ている。(第16条1項)
条)
財政措置と税制上の措置(財政上の措置及び
税制上の措置等)
所有者に関する資産税情報などの利用も可能
に
第十五条 国及び都道府県は、市町村が行う空家
第10条では、空家等の所有者等に関する固定
等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切
資産課税情報などをこの法律の施行の必要な限
かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対
度で利用できることが明記された。これは個人情
策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税
報保護法との関連で、本来の目的外使用が禁止さ
制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ず
れることにより、例えば環境課で雑草の繁茂する
るものとする。
土地の所有者等に関する情報が同じ役所内でも
2 国及び地方公共団体は、前項に定めるものの
得にくくなっていた状況に対応する措置である。
ほか、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家
「市町村長は、固定資産税の課税その他の事務の
等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資する
ために利用する目的で保有する情報であって氏
ため、必要な税制上の措置その他の措置を講ずる
名その他の空家等の所有者等に関するものにつ
ものとする。
いては、この法律の施行のために必要な限度にお
以上の法律ができたことにより防災上危険
な空家等に対応する自治体の積極的な取り組
みが求められることになる。
いて、その保有に当たって特定された利用の目的
以外の目的のために内部で利用することができ
る。」
また同3項で「前項に定めるもののほか、市町
村長は、この法律の施行のために必要があるとき
は、関係する地方公共団体の長その他の者に対し
て、空家等の所有者等の把握に関し必要な情報の
提供を求めることができる。」と定め、不在地主
等の情報を他の市町村に求めることができる規
定も設けられた。
「特定空家」に対する措置は助言・指導から
勧告→命令→行政代執行、過料も規定
法第14条は、「特定空家」に対して、市町村
長が行える措置を定めている。
まず第1項で、「特定空家」の所有者に対して
「環境保全上必要な措置や倒壊等の恐れのある
建物の除却を含めて助言・指導をすること」を定
埼玉自治研センター公開セ
ミナー開催のお知らせ
例年、埼玉県地方自治研究センターが開
催している「2015年度地方財政計画と
自治体財政」のセミナーを開催します。
記
日 時:2015年2月15日
(日)14時〜2時間程度
会 場:県労評会館3F会議室
資料代:500円(セミナー資料)
講 師 :地方自治総合研究所
研究員 菅原敏夫氏
別紙でお申し込みください
め、第2項では「勧告」、第3項では「命令」す
ることができるよう定めている。
当然に所有者の弁明の機会(公開の場も)も与
えられている(第5項)が、第3項の命令に従わ
ないときには、行政代執行法の定めに従って、市
町村長が代執行できることを定めている。(第9
項)
さらに、第14条3項の「命令」に違反した者
は50万円以下の過料に処する規定も設けられ
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第21回埼玉ホームヘルパー・介護職
員セミナー開催のお知らせ
日
時:2015年2月22日(日)
14時から
会 場:さいたま共済会館
参加費:1000円
別紙でお申し込みください。