C146-0332 Technical Report LC-GC×GC-MS/MS:強力な統合型分離分析 システム In-depth Analysis of a Very Complex Mixture Mariosimone Zoccali1、Peter Q. Tranchida1、Paola Dugo1, 2、Luigi Mondello1, 2 Abstract: 本テクニカルレポートでは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、サーマルモジュレーション型包括的 2 次元ガスクロマトグラフィー (GC×GC)、およびトリプル四重極型質量分析計(MS/MS)をオンラインで結合する可能性について示す。HPLC により化合物のグループ ごとに選択的に分離し、シリンジ型インターフェイスにより分画した試料を、プログラム昇温気化注入装置(PTV)を組み合わせた GC×GC-MS/MS にオンラインで導入し、ノンターゲット分析およびターゲット分析を行った。 Keywords: 液体ガスクロマトグラフィー、包括的ガスクロマトグラフィー、トリプル四重極型質量分析 1. はじめに 非常に複雑な揮発性有機成分(および半揮発性成分)の混合 質量分析(MS)において、ノンターゲット分析には、シングル 物の組成を詳細に明らかにすること、またはノンターゲット分析 四重極型(quadMS)や低分解能飛行時間型(LR ToF MS)など することは、分析化学分野において主要な難題の 1 つとなってい の低分解能質量分析装置で、十分である。分析者が調査対象と る。ここで言うサンプルの複雑性には単に、成分の多さ(1000 なる溶質成分の物質名と成分数を事前に把握しているターゲット 種類以上)だけでなく、成分のバリエーションの多さ(無極性か GCMS 分析では、quadMS、LR ToF MS、高分解能(HR)ToF MS、 ら高極性)や、濃度範囲の広さ(微量から高濃度まで)を含んで トリプル四重極型(MS/MS)の使用が一般的である。 いる。その結果、非常に複雑な混合物のプロファイリングには GC×GCと、quadMS、LR ToF MS、HR ToF MS、および MS/MS 1)高 分 離 能、2)高 選 択 性、3)高 感 度、4)広 いダイナミック 装置を組み合わせると非常に強力な分析装置となり、ノンター レンジ が 必 要 で ある。包 括 的 2 次 元 ガスクロ マトグラフィー ゲットおよびターゲット分析の両方を行うことが可能となる。しか (GC×GC)のような高分解能ガスクロマトグラフィーは、このよ し、後述のように、包括的 2 次元 GC の分離能では不十分の場合 うな複雑なサンプルのノンターゲット分析に適している。 もあり、その場合、多数の共溶出物が分析結果にも表れることに なる。 Fig. 1 LC-GC×GC-MS/MS 装置構成 1 Department of Pharmaceutical Sciences and Health Products, University of Messina 2 Chromaleont S. r. l. Fig. 2 コールタールの GC×GC-MSクロマトグラム(TIC) 1 おそらく、選択性を向上させる最良の選択肢は、固定相の数を 増やすこと、すなわち、HPLC による事前分離プロセスの採用で ある。HPLC は極性に基づく分離(たとえば、炭化水素、芳香族 成分)に非常に有用である。その後、単純化した分画を、大容量 注入の GC 分析に供することで複雑なサンプルの詳細な分析が 可能となる。 新しい LC-GC×GC-MS/MS システムの可能性を、極めて複雑 で難易度の高いサンプル、すなわちコールタールの分析で評価 した(Fig. 1 ∼ 2)。順相 LC 分離工程で、以下の化合物群毎の分 離に成功した。I)非芳香族炭化水素類、II)芳香族化合物(含硫 黄および非含硫黄化合物)、III)含酸素成分。各LC分画をノンター ゲットおよびターゲットGC×GC-MS/MS分析に供した。その結果、 コールタールの含硫黄化合物は MRM 分析で特定された。一方、 炭化水素類はフルスキャン情報で十分であった。 2-2. 装置構成 ● システムコントローラCBM-20A ● 並列デュアルプランジャ型送液ポンプ LC-30AD ● オンライン脱気ユニットDGU-20A ● フォトダイオードアレイ検出器 SPD-M20A ● カラムオーブン CTO-20A ● オートサンプラSIL-30AC ● 専用デュアルサイドポートシリンジ搭載オートインジェクタ (サンプル移送装置)AOC-5000 Plus ● インジェクタOptic-4(ジーエルサイエンス) ● ガスクロマトグラフGC-2010 Plus 2 台 ● 2 段ループ型サーマルモジュレータ ZX-2(Zoex) ● トリプル四重極型質量分析計 GCMS-TQ8040(MS 部) ● 1 次元カラム : SLB-5ms 30 m × 0.25 mm ID × 0.25 µm ● ループカラム : 1.5 m × 0.18 mm ID 無極性ヒューズドシリカ (Supelco) チューブ ● 2 次元カラム : Supelcowax-10 1 m × 0.1 mm ID × 0.1 µm (Supelco) Fig. 3 分画 I の LC-GC×GC-MS/MSクロマトグラム(TIC) 2. 実験 2-1. 試料と薬品 溶媒にはすべてHPLCグレード品(Sigma-Aldrich)を使用した。 Fig. 4 分画 II の LC-GC×GC-MS/MSクロマトグラム(TIC) 標準硫黄化合物はすべてSigma-Aldrich社から購入した。コール タールは、LC分析の前にジクロロメタンで1:200( した。 )に希釈 2-3. 分析条件 LC条件 カラム : SUPELCOSIL LC-Si(100 × 3.0 mm ID × 5.0 µm 流速 : 0.35 mL/min 移動相 :(A)n-ヘキサン、 (B) ジクロロメタン グラジエントモード : 0∼6.5分(100 % A)、6.5∼7.5分(100 % B ) (分析終了まで) 2 ) フルスキャンモード LC分画 I)非芳香族炭化水素:1.35 ∼ 1.85 min(175 µL) II)芳香族化合物(含硫黄/非含硫黄化合物) :1.85 ∼ 7.00 min (1802 µL) III)含酸素化合物:8.95 ∼ 14.10 min(1802 µL) スキャン速度 : 20,000 u/sec 質量範囲 : 45∼360 サンプリング周期 : 33 Hz イオン源温度 : 250 ℃ インターフェイス温度 : 280 ℃ GC×GC分析 MRMモード I)非芳香族炭化水素(Fig. 3) スプリット比 : 200(1 min)→ 0(1.5 min)→ 150 コリジョンガスにAr(200 kPa) を使用 GC1およびGC2オーブン温度 : 50 ℃∼280 ℃(3 ℃/min) キャリアガス : He 注入口圧力 : 175.8 kPa(線速度一定モード) モジュレーション時間 : 5 sec MRMトランジションおよびコリジョンエネルギーはFig. 5を参照 ホットパルス時間(300 ℃) : 300 msec Ⅲ)含酸素化合物(Fig. 9) MSイオン化モード : 電子イオン化(EI) スプリット比 : 250(1 min)→ 0(1.5 min)→ 150 スキャン速度 : 20,000 u/sec GC1オーブン : 50 ℃∼280 ℃、3 ℃/min : 45∼360 GC2オーブン : 110 ℃∼280 ℃(20分) 、3 ℃/min : 33 Hz キャリアガス : He 質量範囲 サンプリング周期 イオン源温度 : 250 ℃ 注入口圧力 : 175.8 kPa(線速度一定モード) インターフェイス温度 : 280 ℃ モジュレーション時間 : 5 sec ホットパルス時間(300 ℃) : 300 msec Fig. 5 MSイオン化モード : 電子イオン化(EI) スキャン速度 : 20,000 u/sec 質量範囲 : 45∼360 サンプリング周期 : 33 Hz イオン源温度 : 250 ℃ インターフェイス温度 : 280 ℃ LC-GC×GC-MS/MS クロマトグラム(MRM) II)芳香族化合物(含硫黄/非含硫黄化合物) (Fig. 4∼8) スプリット比 : 250(1 min)→ 0(1.5 min)→ 150 GC1オーブン : 50 ℃∼280 ℃、3 ℃/min GC2オーブン : 60 ℃∼280 ℃(3.3分)、3 ℃/min キャリアガス : He 注入口圧力 : 175.8 kPa(線速度一定モード) モジュレーション時間 : 5 sec ホットパルス時間(300 ℃) : 300 msec MSイオン化モード : 電子イオン化(EI) Fig. 6 C4-T 異性体類の LC-GC×GC-MS/MS クロマトグラム(MRM) 2-4. ソフトウェア ● 5D Solution ver. 1.0.9 ● GCMSsolution ver. 4.20 ● LCsolution ver. 1.25 ● ChromSquare ver. 2.1 3 Fig. 7 C2-BT 異性体類の LC-GC×GC-MS/MS クロマトグラム(MRM) Fig. 8 DBT 異性体類の LC-GC×GC-MS/MSクロマトグラム(MRM) 最後に、含酸素化合物を含む 3 番目の分画をフルスキャンモー 3. 結果と考察 図で認められるように、事前分離プロセスは非常に有益であ り、極めて複雑なサンプルであるコールタールを単純化したサ ブサンプル群に分画できた。この精製工程により、ノンターゲッ ト/ ターゲット分析がより簡便なものとなった。すべての分画を ドで分析した。2 次元での分析には、GC2 に対し60 ℃のポジティ ブオフセットを適用し、含酸素化合物の広範囲にわたるピークの 広がりを抑制した。 Fig. 9に示すように、良好なクロマトグラムが得られ、 フラン、 フェ ノール、インデノール、およびナフトール類を簡単に同定できた。 フルスキャンモードで分析し、2番目の分画についてはMRMモー ドでも分析し、含硫黄化合物を検出した。 非芳香族炭化水素の直鎖炭化水素、分枝炭化水素、環状炭化 水素化合物(C12∼C28)を含む最初の分画を、Fig. 3 に示した。 芳香族化合物の分析では、2D 空間全体を十分に活用できる ように、GC2 に対し 10 ℃のポジティブオフセットを使用した。 Fig. 4 に示すように、ピレン類の WrapAround が確認されたが、 その他に分析対象のないクロマトグラム領域であるため、問題 にはならない。より高温のポジティブオフセットを使用すれば、 ピレン類の WrapAround は減少するが、分類群内の分離も低下 することになる。さまざまな分類群の芳香族化合物が良好に 分離し、単環∼四環式の化合物を容易に同定可能であった。含 硫黄化合物(Fig. 5 ∼ 8)では、14 種類のサブクラスに属する計 129 化合物が同定された。 Fig. 9 分画 III の LC-GC×GC-MS/MSクロマトグラム(TIC) 4. 結論 今回提案した 4 次元分析法は、非常に強力な手法であると 結論付けられる。LC、サーマルモジュレーション型 GC×GC お よび MS/MS を組み合わせたことで、高い選択性とピークキャ パシティが得られ、非常に複雑なサンプルのターゲット分析お よびノンターゲット分析が可能となった。 本資料の掲載情報に関する著作権は当社または原著作者に帰属しており、権利者の事前の書面による 許可なく、本資料を複製、転用、改ざん、販売等することはできません。 掲載情報については十分検討を行っていますが、当社はその正確性や完全性を保証するものではあ りません。また、本資料の使用により生じたいかなる損害に対しても当社は一切責任を負いません。 本資料は発行時の情報に基づいて作成されており、予告なく改訂することがあります。 初版発行:2014 年 12 月 © Shimadzu Corporation, 2014 3218-12403-20ANS
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