22. 複合機能材料学研究部門 後藤 孝 - Act IMR 金属材料研究所の

22. 複合機能材料学研究部門
部門担当教授
後藤 孝
(1998.4 ~)
【構成員】
教授:後藤 孝/助教:伊藤 暁彦、且井宏和/JSPS 外国人特別研究員:Zhao Pei, Wei Liu/
事務補佐員 [1 名]/大学院生[14 名]/研究生[1 名]
【研究成果】
本部門では、気相法、液相法、固相法など種々の材料合成プロセスを駆使し、酸化物および
非酸化物系高機能セラミックス材料の開発を行っている。気相法としては、MOCVD 法、プラズマ
CVD 法、レーザーCVD、スパッタ法、レーザーアブレーション法を用い、微細構造を制御した材
料の開発を試みている。-アルミナは燃料電池固体電解質として広く用いられている材料であ
るが、これまで結晶性に優れた膜を、生成したままで、後処理をすることなしにすることはで
きなかった。本部門では、レーザーCVD 法を用い、結晶配向性に優れた-アルミナ膜を高速で
合成することに成功した(Ref.1)。また、Y 系超伝導膜は実用材料として多くの研究が行われ、
実用化段階にある。高効率で高性能の膜を金属テープ上に合成することが求められている。本
部門では、レーザーCVD 法により実用ハステロイ C276 テープ上に従来の MOCVD 法の約 100 倍の
成膜速度で、臨界電流密度 2.5MA/cm2 の YBCO 系膜の合成に成功した(Ref.2)
。液相法によって
も種々の高機能性材料の開発に取り組み、本部門で発見した新規強誘電体 BaTi2O2 の大型単結晶
の育成に成功した。このことにより、BaTi2O5 の固有の諸物性の測定が可能になり、BaTi2O5 がイ
オン伝導性と強誘電性を有する特異な材料であることを明らかにした(Ref.3)。固相法では、
主に SPS(スパークプラズマ焼結)法による難焼結性材料および酸化物系透明材料の開発を行っ
ており、初めて SPS による透明 Lu2H2O7 の作製に成功した(Ref.4)
。本部門では、気相法と固相
法の融合による材料創製の手法として、回転式 CVD(RCVD)法により直接粉体表面に金属や化合
物ナノ粒子を析出被覆し、触媒や焼結助剤としての機能を発現させ、SPS 法と組み合わせるこ
とにより高機能材料を作製してきた。Ni は良好な焼結助剤であるが、少量の Ni を均一に分散す
るのは困難であった。本部門では、RCVD により Ni ナノ粒子を Al2O3 粉体表面に析出させ、高い
硬さを有し高靱性の Al2O3-Ni ナノコンポジットの作製に成功した(Ref.5)。
Ref.1
Akihiko Ito, Yu You, Hirokazu Katsui, Takashi Goto
Growth and microstructure of Ba β-alumina films by laser chemical vapor deposition
Journal of the European Ceramic Society, 33, 2655 (2013).
Ref.2
Pei Zhao, Akihiko Ito, Takeharu Kato, Daisaku Yokoe, Tsukasa Hirayama and Takashi Goto
High-speed growth of YBa2Cu3O7-δ superconducting films on multilayer-coated Hastelloy C276
tape by laser-assisted MOCVD
Superconductor Science and Technology, 26, 055020-1-055020-8 (2013).
Ref.3
Hirokazu Katsui, Keiji Shiga, Rong Tu, Takashi Goto
Crystal growth of BaT2O5 by the floating zone method
Journal of Crystal Growth, 384, 66 (2013).
Ref.4
Liqiong An, Akihiko Ito, Takashi Goto
Fabrication of transparent Lu2Hf2O7 by reactive spark plasma sintering
Optical Materials, 35, 817 (2013).
Ref.5
Jianfeng Zhang, Rong Tu, Takashi Goto
Spark plasma sintering of Al2O3–Ni nanocomposites using Ni nanoparticles produced by rotary
chemical vapour deposition
Journal of the European Ceramic Society, 34, 435 (2013).
【研究計画】
本部門では新材料の探索および微細構造制御による新機能の発現と特性の向上を 2014 年度も
継続発展させる。新規成膜プロセスとして強力レーザーを用いた CVD を提案したが、この手
法をさらに発展させ、各種機能性材料および構造用材料を合成し、特性の向上および高効率合
成を行う。回転式 CVD と SPS を組み合わせた材料開発プロセスを提案したが、さらに多くの粉
体へのナノ粒子、コーティングを行い触媒材料の開発および、粉体表面の表面修飾を行い、低
温、高速焼結プロセスの開発に取り組む。