3 年講究案内(植田 好道) 2015 年 5 月 1. 私は作用素環論と呼ばれる解析学の分科の比較的広範な話題について研究活動を行っています.ゆ えに,それを踏まえた内容を学部講究,修士課程を通して取り上げます.あくまでも「踏まえた内容」 であって作用素環論を広く解釈して話題を選定しましょう.また,狭い意味で私が研究していることを 推奨しません.私が研究していないことでも広く作用素環論に関連する話題であれば一緒に勉強します し,私が知っていることはなんでも (!) 教えますから,違うことをやったほうが有利なのです.また, 近い学年の先輩とも異なることをやったほうが互いに良い意味で切磋琢磨できて有利です.ただし,い きなり作用素環論を学ぶのは現実的ではありませんので最初はどの道に進もうが基礎を学ぶ必要があり ます.今回は下記の本で関数解析の基礎を学びます.その過程で様子を見ながら私から様々な研究課題 につながる話題を提供し,自身でどの方向に進むかを考えてもらいます. Steven G. Krantz, A Guide to Functional Analysis, MAA 関数解析の基本的内容を簡潔に解説した小冊子です.1 人で勉強するのだと丁寧な厚い本の方が実は早く読めるの ですが,指導者の下では必要なことを手短に学べる本を選んだ方がよいでしょう.予備知識として必要なのは微分 積分,線形代数,距離空間,簡単な位相空間論,関数論の初歩,ルベーグ積分論の初歩,案外沢山ですが,要は 3 年前期までの通常科目です.それ以外に必要な知識は勉強しながらで十分です.この本を 3 年後期の間に読み終え ることを想定しています. 2. 講究の運営と助言: ・毎週 1 回 90 分–120 分で行います.必要なら時間を延長します.毎回,テキストの 10 pages 程度を講 義をするような調子で解説してもらいます.それに対して私が必要に応じて質問をします.場合によっ ては補足説明を与えます.他人に説明するのは物事を理解する最良の方法です. ・希望があれば,夏休み/春休み期間も(私の都合が付けば)講究を継続します.ただし休み期間中に 1度は帰省することを推奨しているので一定期間は休みにします. ・なぜか私のところで学ぶ学生諸君は何も見ずに数学を説明されるのでいつも驚かされますが,大切な のは何も見ないことではなくて,議論の筋道を頭に入れ,細々としたことはその場で考えつつ話ができ るようになることです.そうできれば学んだことも良く頭に入ります.皆さんもやればできます. ・九大数学科の講究は 3 年後期から 1 年半もあります.よその大学では 4 年からですから 4 年生を終 える段階でよその修士 1 年の途中程度の進み具合で当然です.将来の進路を検討する上でもできるだけ 早くに研究の最前線に躍り出ることは重要です.研究に向くか向かぬかはやってみないとわかりません から. ・[参考] 上掲の本で提供される内容を習得済みであることが修士受け入れの必要条件です. 3. 私の研究分野について:作用素環論とは行列を無限次元に一般化した線型作用素の振る舞いをそれら の集まりを適切に定式化して研究する分野です.かなり理論構築が進んできたので,様々な「非可換な 現象」を取り扱う platform を与える理論として扱う時代に突入しているように思いますが,他方で分 野固有の成果の方が(短期的には)評価される,という側面もあり過渡期にあるかも知れません.非可 換な現象は数学のあらゆる分野で起こるので逆に言えば何でも研究することができます.狭義の作用素 環論の醍醐味は近似を多重に用いた解析的な議論で代数的に厳密に定式化された定理を証明することで す.すなわち,不等式が複雑に組み合わさった証明で等式を示すという形が最高です.不等式のままで は評価されないのが厳しいところです.なお,手法は分野に頓着せずなんでも貪欲に使います. 4. 連絡先:(私を選ぶ場合は必ず相談に来てください. ) e-mail address: [email protected] (これで連絡を取るのが便利) Homepage address: http://www2.math.kyushu-u.ac.jp/~ueda/index.html (私及び私のところで 研究している学生の研究状況がわかります) 研究室:2階302号室(ここに居ます.1 週間の予定も上記 homepage でわかります. )
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