6 社会への情報発信

6 社会への情報発信
1.広報の方針
(1)広報活動の方針
現状の説明
昭和32年に月刊広報紙「國學院大學学報」
(以下「学報」と略す)を創刊したが、本学の広報活動
は、当時の石川岩吉学長の発刊の辞を方針の基礎の一つとし、さらに、皇典講究所初代総裁有栖川宮
幟仁親王の告諭に基づく建学の精神と、それに由来する教育理念と教育方針を明らかにすることを目
的に展開されている。
本学では、広報課、入学課、校友課などをはじめ、各部署で広報活動を展開している。
なお、大学全体の広報政策を決定する組織として平成13年度に常務理事会を主体とする広報会議
を立ち上げ、その下に検討機関として教職合同の広報委員会、さらにその下にホームページについて
検討するためのホームページ連絡会を置いている。
点検・評価 長所と問題点
本学の広報活動は、現状の説明でも述べたように学内の殆どの事務部門が何らかの形で実施してお
り、それぞれの方針にそって、主管業務の対象者に向け展開され、所期の目的を果たし成果をあげて
いる。関係各部署との連携・協力も、以前と比べかなり改善されてきている。今後は、より全学的な
広報活動方針のもとに、より効果的な展開を期したい。迅速、正確な情報開示に加え、大学のイメー
ジアップに直結した広報活動を常に意識していくことが重要である。そのため、広告費予算の広報課
での集約、広報委員会への入学部からの委員参加などの方策を実施してきている。
将来の改善・改革に向けた方策
大学のホームページをはじめとする、広報媒体の多様化に向けて、大学としてあるいは法人として
の広報活動の基本方針を確立するために、
広報会議と広報委員会のさらなる活性化を図るべきである。
その中で事務部門と教育・研究部門との連携も図っていかなければならない。
(2)広報活動の現状
現状の説明
本学の広報活動の中心を占めていたのは、「学報」
(別冊「K:DNA」含む)
、
「國學院大學概要」
(邦文・英文)、
「國學院事報」
(名簿・統計資料など)
、
「入学ガイド」
、
「SPICE」(進路就職情報
誌)、
「大学案内」
、
「若木育成会のしおり」
、
「若木育成会会報」
、
「校史」、
「利用案内」
、
「ガイドブック」
などの広報誌紙である。また、各学部・学科や日本文化研究所では、それぞれ学術雑誌を発行してい
る。さらに、法人傘下の関係機関でも各種広報誌紙を、國學院大學院友会でも「院友会報」を、それ
ぞれ発行している。また、催事ごとのポスター、リーフレット、パンフレットなどのように紙ベース
の広報媒体には多くの種類があり、発行している部署も多岐に及んでいる。
紙ベースのもの以外に、音楽CD、CD−ROM、DVD、ビデオテープなどの媒体でも作成して
いる。また、渋谷中央街入口のアーチビジョン渋谷(電光掲示板)や主要駅構内の看板や車内ポスタ
ー、新聞・雑誌等への広告掲載など、外部業者に委託して実施している広告もある。
さらに平成8年度に開設した大学ホームページは、新たな広報媒体として入学情報を始め広く大学
を広報する手段としてますます重要性を増してきている。こちらについては平成17年1月に全面リ
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ニューアルするなど、見やすく使いやすいページになるよう努めている。なお、Webを利用したも
のとして、学生対象のK−SMAPY(学修支援システム)の存在も挙げられる。K−SMAPYの
「お知らせ機能」を利用した学生への広報がすでに多く行われている。
点検・評価 長所と問題点
(1)の現状の説明にも記述したが、公開講座や文化講演会などの各種催し、入学広報、就職広報
などは、それぞれの主管部署が広報しており、学内各部署での広報活動が不統一で、これらの連携が
望まれる。また現在、広報課業務の一つとして「國學院雑誌」
「國學院大學紀要」の編集発行があるが、
本来の広報活動とはいい難く、事務局再編の一環として学内の学術雑誌等の刊行物を一括する部署を
新設するなども考えられる。
いまや情報発信の主流ともなりつつある、大学のホームページの運用も軌道に乗り、新着情報など
もかなりリアルタイムにアップされるようになってきた。しかしながら、管理部門と教育・研究部門と
の連携という点では物足りないところがあり、更に、内容の充実という面でも、まだ十分とは言えな
い。今後も記載内容の充実を図って行きたい。また、マスコミをはじめとする社会一般へのパブリシ
ティということも考えていかなければならない。
将来の改善・改革に向けた方策
各部署での広報活動と連携をはっきりさせて行かなければならない。そのことによって分散化され
ている広報関連予算の計画的運営、経済的かつ人的な効率化を図ることができるであろう。また出版
担当者ではなく、広報担当者の育成を組織的に実施する必要がある。新しい媒体としてのホームペー
ジの運用や「K:DNA」の活用など新しい発想のできる人材を早急に育成して行かなければならな
い。
(3)広報手段の活用
現状の説明
本学は対象や目的に応じて、多種多様な広報手段を採用している。主な例として、新聞、受験雑誌、
パンフレット、DM、看板、ポスター、CD−ROM、広報誌紙等がある。インターネットを活用し
たホームページや電子メールによる広報も、ますます重要性を増してきている。私立大学という性格
上、受験生向けの広報が最も多いわけだが、現在はオープンカレッジ等を中心に、一般社会人向けの
広報も増やしている。
一般的に大学が活用している手段のほとんどが利用されていると考えられるが、
対象と目的に応じ、
限られた予算等の制約の中で、確実に効果的な手段を選び活用してきている。例えばホームページに
ついては、従来もほとんど外部委託せず各部署の担当者により更新を行ってきたが、リニューアルに
際しても外部業者の関与については全体構成、デザインなど一部にとどめ、広報課・情報システム課
などを中心に学内中心で実施する方法をとった。
また、都営バスのラッピング広告を、他大学に先がけて行なったりするなど積極的に新しい手段の
利用にも取り組んでいる。
点検・評価 長所と問題点
広報手段の活用という面からすると、効果的な手段を適宜採用してきているが、手段の選定は対象
者と内容に応じ、経費を考慮の上行っている。それは、対象者(教職員、学生、父母、受験生、卒業
生、一般社会等)によって必要な情報が違ってくるからである。主として在学生を対象とした広報紙
「K:DNA」の創刊も新しい手段の一つであり、父母を対象とした「若木育成会会報」を大幅にリ
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ニューアルするなどの方法もとっている。しかしながら、全ての対象者に同一の内容を広報するとい
う機会も増えてきており、方法等を再点検する時期に来ている。特にインターネットなどを利用した
Web広報は、その有力な手段となりつつある。
将来の改善・改革に向けた方策
広報手段は数多くあるが、同一の対象に重複した情報が流れていないか等、手段・方法が異なるこ
とにより見逃している無駄はチェックする必要がある。また逆に、特定の対象者だけに流していた情
報が、少しの費用を増加させて他の対象者にも流すことにより、宣伝効果が数倍もアップするという
ことも考える必要があろう。
平成16年10月に実施した「チンギス・ハン宮殿址」考古学的調査記者発表に見られるように、
社会的に価値がありニーズがある情報は、低いコストあるいは無料で情報発信できる(ニュースリリ
ース等)
。このようなものがあれば 100%活用すべきである。また、費用対効果に優れ、量的制限もな
く、必要な情報を世界的に発信できるWeb広報は、今後全学を挙げてますます力を入れていかなけ
ればならないであろう。
(4)広報手段の効果
現状の説明
広報活動を手段と効果という関係から見ると、違った効果があればこそ異なった手段を採用してい
るわけである。私立大学として最も重要な、受け入れ部分に該当する受験生向けの情報は、専門の業
者を通じて広報し、それなりの効果をあげている。また一般の新聞、雑誌に入学試験に関する情報を
載せることで、一般社会に対する周知効果をもたらしている。
一方、ホームページはその両方を兼ね備えた媒体であり、各部門でもその重要性は認識されてきて
はいるが、情報量・質ともにまだ不足していると考えられる。
点検・評価 長所と問題点
私立大学にとって広報の効果を評価するということは、受験生が増えたかどうかが最も端的な評価
であろう。しかしそれは、希望的結果論であって広報活動の費用対効果を知ることにはならない。商
品の販売宣伝ではないので、あの広告を出してからこの商品の売上が非常に伸びたというような即効
性は望むべくもない。しかしながら、広報に対する問い合わせや資料請求、公開講座のパンフレット
等に対する反応などを通じて、ある程度広報効果を測定することはできる。今後は広報効果を測定し
ていく手法を確立していく必要がある。
将来の改善・改革に向けた方策
パブリシティの拡大を図る必要がある。マスコミ(新聞、一般雑誌、受験雑誌)等の媒体により取
り上げられたニュースは、受け手側から見ると、社会的に情報の価値が高いものとして受け取られる
ため、広報効果が高いと考えられる。そのためにはまず、学内情報をより効果的に掘り起こし収集す
る体制を整備する必要がある。
また、法人傘下の各学校や、関係法人などと密接に連携することにより、相乗効果のある広報活動
を展開していくことが可能である。学内各部署や傘下各校および関係法人各機関が、それぞれの目的
や予算に応じ広報活動を展開しているが、よりコストパフォーマンスの高い広報活動を展開する意味
からも、広報の連携を図らなければならない。
なお、ホームページに関しては業者と連携して効果測定をすることを計画中である。
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2.情報発信の方法
(1)情報の収集
現状の説明
情報の収集は、各担当部署が目的に応じて行っている。その中心的存在である広報課では、学内外
の関係者からの各種情報、新聞・雑誌等からの情報、口コミ、大学周辺地域の情報、メール、ホーム
ページの問い合わせからの情報などを収集している。このほか、同課では学内および法人傘下学校か
らも情報を収集している。その主なものは会議資料、学術関係情報(学会・研究会など)、学内行事・
出張などの情報、学生活動状況、本学関係団体(院友会、若木育成会、関係法人)の情報などである。
これらの情報は学報記事やホームページ、また「統計資料」などに活用されている。入学広報に関し
ては入学課が人口動態や進学動向ほか、入試データに基づき情報を収集している。
以上のほか、主に広報課からの情報提供の呼びかけに対し、個人ないし団体から学術研究、著作、
作品発表、社会活動等についての情報が同課宛に寄せられている。
点検・評価 長所と問題点
目的、テーマに即した取材がなされ、発信手段を考慮に入れた情報収集態勢がとられている。収集
された情報は内容の分析、発信情報としての必要性、重要度、即時性などが判断されたのち、発信材
料として有効活用されている。
平成10年度に学内基幹LANが本格稼動したことで、学内情報を共有することが可能となった。
大学構成員の間で共通認識、統一した見解を持つことができる環境が整い、このことは学内情報を収
集する点でも大きくプラスとなっている。今後は、各種情報が広報課はじめ担当部署に迅速かつ確実
に集中するよう、LANあるいはインターネットを有効に活用することが課題のひとつである。さら
に、大学関係者一人一人が「情報の提供者」であるという意識をもつことが望まれる。
ホームページ上に広報課で作成している
「広報課取材日誌」
は取材写真などをタイムリーに公開し、
学内の今を伝えようとしている。さらに「メディアクリップ」は、新聞・雑誌等に掲載された本学お
よびその関係者などの情報をまとめたものであり、また「出版情報」は関係者の書籍など出版情報を
掲載したものである。いわば「情報の収集の副産物」であるが、社会における本学の動向を知る上で
一つの指標となる存在でもある。
「統計資料」については連続性があり各年度の状況、変化の推移を比較検討するうえに有効で、実
態把握や各種企画・政策立案などの基礎データ資料として活かされている。また、本学が学内外から
どのように評価され、社会的要請にどう応えているかも読み取ることもできる。
将来の改善・改革に向けた方策
従来の新聞・雑誌・書籍・口コミ等の媒体に加え、インターネットを利用した情報収集も有力な手
段となってきている。このようなさまざまの媒体を利用した情報収集能力を持つよう広報担当者は努
力しなければならない。また、在学生や受験生、院友(卒業生)などに対しアンケートを行なったり、
情報モニター制なども検討しなければならないであろう。
(2)情報の発信
現状の説明
本学における情報発信業務は、事務局では広報課のほか、入学課(入学広報)や就職課(企業向け)、
総合学習・事業課(公開講座)
、校友課(父母向け)
、神道研修部事務課(神職養成)など、基本的に
各担当部署が目的に応じて、新聞、雑誌、パンフレット、ポスター、ホームページ、学内広報誌紙、
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学校や企業訪問等、コストパフォーマンスが高く効果的と思われる広報手段を採用している。また、
学術研究関係の情報については日本文化研究所や各学部資料室、学会事務局が担当している。
点検・評価 長所と問題点
各担当部署が個々に発信するという現在の広報活動は、その媒体や手段が多岐におよぶ反面、情報
の重複によるコスト面の問題などを招いている。しかし、平成8年度以降実施しているホームページ
などインターネットを活用した広報の整備は、情報量はやや不足している部分もあるが、より広い範
囲への統一した情報提供を続けている。また、発信は必ずしも「外」に対してだけ必要なのではなく、
情報の共有化を図るという点において、学内への情報発信もまた重要である。これについては平成
10年度に学内基幹LANが完成したことにより情報環境が整ったことで大幅に向上している。さら
に、K−SMAPYや「K:DNA」など在学生向けの発信も充実してきている。今後はホームペー
ジ上での情報発信内容が問われることになるであろう。
将来の改善・改革に向けた方策
発信という部分においても、
「連携」を考えていかなければならない。これにより情報の収集・分析
はもちろん、計画的な発信も可能となり、さらに経済的にも効率のよい効果的な発信が可能となる。
次に、教職員・在学生・在学生父母(若木育成会員)
・院友に國學院大學への帰属意識を持ってもらう
ための「発信」をする必要がある。広い意味での國學院大學の構成員一人一人が帰属意識を持つこと
で、各人が有能な「広報パーソン」として母校を語ってくれることになるであろう。
前述のK−SMAPYや「K:DNA」などを効果的に利用することにより、在学生に対し働きか
けることがその第一歩となるであろう。
3.広聴と情報効果
現状の説明
基本的に、各担当部署から発信された情報については、その発信元を明示していることにより、問
い合わせや意見・要望等は、直接それぞれの部署に寄せられてきている。また、担当部署がわからな
い場合には、身近な情報媒体(入学ガイド、公開講座ポスター、NTT電話帳等)に記載された電話
番号を利用して問い合わせされることが多く、総務課や広報課、入学課、教務課等から、各担当部署
に転送されている。ホームページを利用しての問い合わせについては、各担当部署へ直接届くような
仕組みを整備しているが、全体的には広報課でも内容を把握し、問い合わせ及び回答状況を確認でき
るようになっている。なお、前述したとおり、発信した情報に対する効果を測定することは非常に難
しいが、資料の請求や、催物への参加申し込み、その他問い合わせの件数等により、各担当部署が、
その把握に努めている。
点検・評価 長所と問題点
各担当部署がそれぞれの判断で情報を発信し、それに対する問い合わせ、意見、要望を直接受けて
いることが多く、それぞれが迅速かつ有効な対応に取り組んでいるといえる。また、催物を実施した
際には、それぞれが受講者・参加者等にアンケートを行うなど、外部からのニーズを反映させやすい、
「小回りのきく」状況であるともいえる。しかし反面、各担当部署での対応にバラつきがあり、大学
スタンスの統一性というものが曖昧となってしまっている部分も見受けられる。また、本学に対する
ニーズを把握するために、
「どの部署に」
「どのような問い合わせや、意見・要望が」
「どのくらい」来
ているのか、いわゆる「バロメーター」を学内共通情報として持つ必要があるが、ホームページ経由
や公表されたアンケート結果などを除いては、
それがつかみにくい状態になっていることも否めない。
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将来の改善・改革に向けた方策
すでに述べたように、本学に対するニーズを総合的に分析し、各部署が統一性を持った対応を行っ
ていくためにも、広聴機能の連携を図り、情報交換を密にすることが必要である。例えば、各部署に
対する意見・要望、問い合わせ等での注目すべき内容はもとより、月ごとの問い合わせ概況について
も、広報・広聴の担当部署に集約し、とりまとめたものを一定期間ごとに公表する。つまり、学内共
通情報として共有することにより、今本学が何を求められているのか、これからどのようなことをす
ればよいのかを認識するための、大きなきっかけになるものと思われる。とりあえずはホームページ
経由のものから実施できるであろう。
また、先の「情報の収集」の部分でも述べているが、アンケートや情報モニター制度などをさらに
工夫し、本学学生や、若木育成会、院友会の関係者等による、
「本学への意見や要望の提示」
「本学が
発信した情報に対する評価」等を積極的に行ってもらい、本学教職員、学生、父母、卒業生一丸とな
った広報活動を展開していくことが考えられる。
4.広報戦略
現状の説明
現在、広報会議や広報委員会は設置されているが、
「戦略」と呼ばれるような形での広報活動は不十
分である。それぞれの担当部署が主体となり、必要に応じて部署間で連携を取りながら、対象に働き
かけているのが現状である。しかし、ヴィジュアル的な共通ポイントとして、箱根駅伝初出場を契機
にスクールカラーを確定したり、大学のシンボルマークやロゴを商標登録したりして、駅広告・学報・
封筒・名刺などに統一的に活用されているなど、かなり前向きに取り組んでいることも事実である。
また、
ホームページをリニューアルし、ページデザインや使用ソフトを統一したことで利用者の便宜を
図った。これらも、広報戦略の大きな要素であろう。
点検・評価 長所と問題点
上記のように、
視覚に訴える部分はある程度統一されてきており、学内関係者には帰属意識を高め、
学外者に対しては、大学の知名度アップにつながることが期待されている。
これらの手段・方法が、より「戦略」的に展開されれば、さらに効果的な広報ができるだろう。広
報の内容・方法などの戦略については広報委員会中心に議論されてはいるが、さらに踏み込んだ方針
決定が求められる。
将来の改善・改革に向けた方策
広報戦略は大学の経営戦略の一環であるといっても過言ではない。各部署での広報の連携を図り、
年間を通じてのキャッチコピーを決定するなどの、具体策を広報委員会で提案し、広報会議で決定、
実施していくことが肝要である。本学の構成員に対し、本学としての戦略を明示することで、各人に
共通認識が定着し、帰属意識が高まってくる。そこから、各部署での広報活動に臨むことで、戦略的
な広報ができていくと考えられる。
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