石川知明

高性能林業機械による搬出作業システムにおける伐採対象面積と機械回送距離との関係
石川知明・板谷明美(三重大院生物資源),中西将大(三重大生物資源)
1.はじめに
わが国の人工林は成熟期に入っており,木材生産が期待できる状況になっている。しかし,採算
が合わないことを主な理由として,木材を搬出し利用することはあまり行われていない。一方,合
板などに使用する並材では国内人工林からの木材供給への期待が高まっている。このような市場の
要求に応えて,木材を安定的に供給するには,高性能林業機械による搬出作業システムを導入する
ことが有効である。しかし,高性能林業機械は高価であるため,稼働率を上げるための機械回送計
画を策定することが不可欠である。そこで,本研究では,木寄せが不要な程度に高密度に作業路を
作設し,チェーンソーで伐倒,バケット容量 0.45m3 クラスのプロセッサで造材,フォワーダで集
3
材する間伐作業を取り上げ,丸太材積 1m あたりの伐採搬出経費を最小にする 伐採対象面積と機
械回送距離との関係を明らかにした。また,その結果を活用した 機械回送計画の策定を試みた。
2.これまでの研究
3
これまでの研究から,丸太材積 1m あたりの伐採搬出経費を最小にする伐採対象面積 S は,
2 × n × MLf × vf
S =
×
Cf
LT
Vl × D
×
(1)
Ck
3
ただし, D:作業路密度(m/ha), Vl:ha あたりの丸太材積(m /ha), LT:1 日あたりの労働時
3
間(秒/日),Cf:1 日あたりのフォワーダ集材経費(円/日),MLf:1 回あたりのフォワーダ積載量(m /
回), vf:フォワーダの走行速度(m/秒), n:回送台数(台), Ck:1 回あたりの回送経費(円/回)で
表せることが明らかとなった(中西ら,2009)。
3.伐採対象面積と機械回送距離との関係
(1)式の第 1 項は作業システムによって決まるものであり,第 2 項は作業条件によって決まるも
のであることから,これらの積を K とする。また,1 回あたりの回送経費は,回送距離の 1 次関
数で表せるとすると,(1)式は,
S = K ×
(2)
f (r)
ただし, K:(1)式の第 1 項および第 2 項の積, r:回送距離(km), f ( r ): 1 回あたりの回送経
費を回送距離で表した 1 次関数で表せる。(2)式は回送距離によって経費が最小となる伐採対象面
積が決まることを表している。そこで,この結果を 活用した 機械回送計画の策定を実際の林地に
おいて試みた。
キーワード:高性能林業機械,機械回送,団地,搬出,計画
経費が最小となる伐採対象面積(ha)
5
4
3
2
1
0
0
5
10
15
20
25
機械回送距離(km)
図-1
伐採対象面積と機械回送距離
10000
機械回送とフォワーダ集材経費(円/m3)
搬出丸太材積
50 m3/ha
100 m3/ha
150 m3/ha
6
回送距離
1km
10km
20km
5000
0
0
1
2
3
4
伐採対象面積(ha)
図-2 伐採対象面積と経費
(丸太材積 50m3 のとき)
5
6