美郷村における子どものしつけと子どもの 道徳授業への関心についての

阿波学会紀要 第50号(pp.179-184)
2004.3
美郷村における子どものしつけと子どもの
道徳授業への関心についての調査研究
――――――――――――――――― 教育班(徳島教育社会学会)―――――――――――――――――
*1
伴 恒信
*2
仲田幸一朗
1.調査の目的
*2
村田 豊
*2
田中 祐子
3.調査の結果と考察
近年、あいさつができない、自分の身の回りのこ
1)美郷村における子どもの道徳授業に対する実
態調査
とができない、親や先生の言うことがきけないなど
子どもたちの道徳性の低下が叫ばれている。家庭の
美郷村内での「あなたは道徳の授業で自分の意見
しつけが十分にされていないためという見解もある
が持てますか」、「あなたは道徳の時間に自分の思っ
が、実際にしつけはされなくなっているのであろうか。
ていることを発表しますか」、「あなたは道徳の授業
今回、美郷村での調査においてこのテーマを選ん
が楽しいですか」、「あなたは道徳の時間に勉強した
だのは、都市部と違って美郷村などの村部では家族
ことは大切ですか」という質問に対する回答結果を
の繋がりが深いと考えられるためである。このよう
クロス表で示す。その際、道徳授業への関心をより
な家庭でのしつけが、学校における道徳授業にどの
明確に見るために徳島市の子どもと比較して見るこ
ような影響を及ぼしているかを明らかにすること
ととする。
盧
が、本研究での目的である。
「あなたは道徳の授業で自分の意見がもてま
すか」についての調査結果(表1)。
2.調査概要
美郷村においては「意見が持てる」が47.9%、
調査時期 平成15年7月
「意見に左右される」が25.0%、「意見が持てない」
調査方法 質問紙法
が27.1%である。対して、徳島市においては「意見
調査対象 美郷村 小学5,6年生、
が持てる」が39.8%、
「意見に左右される」が32.3%、
中学1,2,3年生
「意見が持てない」が27.9%である。美郷村、徳島
種野小 9名
市を比較してみると、「意見が持てる」の項目で、
中枝小 7名
美郷村の子どもが徳島市の子どもに比べて道徳の授
美郷中 33名
業において自分の意見が持てる、ということがわか
(男子 22名 女子27名)
る。
合計 49名(回収率 98%)
盪
なお、都市部との比較を行うために、徳島市J校
においても同じ内容の調査を行った。
徳島市 J小学校 小学5,6年生 233名
(回収率 99%)
(男子126名、女子107名)
「あなたは道徳の時間に自分の思っているこ
とを発表しますか」についての調査結果(表2)
。
美郷村においては「発表する」が46.8%、「人に
言われるのは嫌」が23.4%、「発表しない」が29.8%
である。それに対して、徳島市においては「発表す
る」が37.2%、「人に言われるのは嫌」が30.3%、
*1 鳴門教育大学 *2 鳴門教育大学大学院
179
美郷村における子どものしつけと子どもの道徳授業への関心についての調査研究/教育班
「発表しない」が32.6%である。美郷村と徳島市を
ない」が10.8%である。美郷村と徳島市を比較して
比較してみると、「発表する」で美郷村が46.8%、
みると、「とても楽しい」の項目で美郷村が4.1%、
徳島市が37.2%となっており、美郷村が徳島市に比
徳島市で10.0%となっており、徳島市の子どもが美
べて道徳の時間に自分の思っていることを発表でき
郷村の子どもに比べて、道徳の授業が楽しいと感じ
る、ということが読みとれる。
ていることが読みとれる。
蘯
「あなたは道徳の授業が楽しいですか」につ
いての調査結果(表3)。
盻
「あなたは道徳の時間に勉強したことは大切
だと思いますか」についての調査結果(表4)。
美郷村においては「とても楽しい」が4.1%、「わ
りと楽しい」38.8%、
「あまり楽しくない」が46.9%、
「つまらない」が10.2%である。それに対して、徳
島市は「とても楽しい」が10.0%、「わりと楽しい」
が35.9%、「あまり楽しくない」が43.3%、「つまら
美郷村においては「大切なので考えよう」が
40.4%、「大切だけど考えない」48.9%、「大切でな
いので考えない」が10.6%である。それに対して、
徳島市においては「大切なので考えよう」が58.7%、
「大切だけど考えない」が40.4%、「大切でないので
表1 道徳の授業で自分の意見がもてますかのクロス表
あなたは、道徳の授業で自分の意見がもてますか。
もてない
左右される
もてる
地域 美郷村 度数
13
12
23
地域 の %
27.1%
25.0%
47.9%
徳島市 度数
63
73
90
地域 の %
27.9%
32.3%
39.8%
合計
度数
76
85
113
地域 の %
27.7%
31.0%
41.2%
合 計
48
100.0%
226
100.0%
274
100.0%
表2 道徳の時間に自分の思っていることを発表しますかのクロス表
地域 美郷村 度数
地域 の %
徳島市 度数
地域 の %
合計
度数
地域 の %
あなたは、道徳の時間に自分の思っていることを発表しますか。
発表しない
人に言われるのがいや
発表する
14
11
22
29.8%
23.4%
46.8%
71
66
81
32.6%
30.3%
37.2%
85
77
103
32.1%
29.1%
38.9%
合 計
47
100.0%
218
100.0%
265
100.0%
表3 あなたは、道徳の授業が楽しいですかのクロス表
つまらない
地域 美郷村 度数
地域 の %
徳島市 度数
地域 の %
合計
度数
地域 の %
5
10.2%
25
10.8%
30
10.7%
あなたは、道徳の授業が楽しいですか。
あまり楽しくない
わりと楽しい
とても楽しい
23
19
2
46.9%
38.8%
4.1%
100
83
23
43.3%
35.9%
10.0%
123
102
25
43.9%
36.4%
8.9%
合 計
49
100.0%
231
100.0%
280
100.0%
表4 道徳の時間に勉強したことは、大切だと思いますかのクロス表
あなたは、道徳の時間に勉強したことは、大切だと思いますか。
大切でないので考えない
大切だけど考えない
大切なので考えよう
地域 美郷村 度数
5
23
19
地域 の %
10.6%
48.9%
40.4%
徳島市 度数
2
91
132
地域 の %
.9%
40.4%
58.7%
合計
度数
7
114
151
地域 の %
2.6%
41.9%
55.5%
180
合 計
47
100.0%
225
100.0%
272
100.0%
阿波学会紀要 第50号(pp.179-184)
考えない」が0.9%である。美郷村と徳島市で比較
表5 回転後の成分行列 a
してみると、「大切なので考えよう」の項目で美郷
村が40.4%、徳島市で58.7%となっており、徳島市
の子どもが美郷村の子どもに比べて道徳での勉強が
大切だと考えている。
眈
クロス集計の考察
美郷村と徳島市をクロス集計で比較してみると、
道徳の時間に「自分の意見が持てる」、「発表する」
という点で美郷村が徳島市に比べて比率が高い。そ
の一方で、道徳の時間は楽しい、大切だと考えると
いう点では、徳島市の調査校の方が美郷村に比べて
比率が高い結果となっている。美郷村においては道
徳授業への参加という点では積極性がみられる反
面、道徳授業の意義というものは伝わってないもの
と思われる。次に美郷村における道徳授業の実態を
明らかにするために、家庭に観点をあてて「しつけ」
に注目してみる。家庭での「子どものしつけ」が道
徳授業への関心にどのように影響しているかを見る
ために、美郷村における家庭での「子どものしつけ」
2004.3
1
成 分
2
3
夕食の準備や片づけを手
.771
−.167
.209
伝う。
朝起きて、家族に「おは
.692
.133
.117
よう」という。
テレビは時間を決めて見る。
.647
.213
.164
親のいいつけをよく守る。
.636
.274 7.031E−02
家の手伝いをすすんでする。
.623 3.524E−02
.465
近所の人に会ったらあい
.543
.441
.146
さつをする。
言われなくても自分で明
7.767E−03
.839 2.865E−02
日の準備をする。
使ったものは、ちゃんと
.349
.758 −8.39E−02
もとの所へもどす。
自分の部屋はきちんとか
4.475E−02
.665
.293
たづける。
自分の気持ちをはっきり
.217
.577
.424
伝える。
親を大事にする。
.209 7.937E−02
.824
両親にうそをつかない。
.315 −1.43E−02
.658
夜おそくまで外出せず、
両親に言われた時間には 3.686E−02
.303
.615
必ず帰る。
因子抽出法:主成分分析
回転法:Kaiserの正規化を伴うバリマックス法
a. 6回の反復で回転が収束した。
を因子分析して明らかにしていく。
2)因子の指標化
4.「子どものしつけ」についての因子分析及
び因子の指標化
ここでは、抽出された各因子について適切な名称
をつけ整理を行う。
本研究における目的である、「美郷村における子
「因子1」は「夕食の準備や片付けを手伝う」、
どものしつけが道徳授業への関心に及ぼす調査研
「朝起きて、家族におはようのあいさつをする」、
究」のもと、まず美郷村における「子どものしつけ」
「テレビは時間を決めて見る」などが、「因子1」を
を質問紙項目から分類して因子分析を行った。
構成する成分である。これらの項目は日常生活にお
1)得点化と因子分析の結果
ける「生活性」を表したものであると考えられる。
まず、因子の得点化をしていく。
「とてもそう思う」
よって、「因子1」は「日常における生活指標」と
を4点、「やや思う」を3点、「あまり思わない」を
名付ける。
2点、
「全然思わない」を1点として、各因子を得点
「因子2」は「言われなくても自分で明日の準備
化する。次に、「道徳授業への関心」を示す4項目
をする」
、
「使ったものはちゃんともとにもどす」
、
「自
「あなたは道徳の授業で自分の意見がもてますか」、
分の部屋はきちんとかたづける」などが「因子2」
「あなたは道徳の時間に自分の思っていることを発
を構成する成分である。これらの項目は自ら考えて
表しますか」、「あなたは道徳の授業が楽しいです
動く、自分で行動するという項目が共通して見られ
か」、「あなたは道徳の時間に勉強したことは大切だ
る。よって、
「因子2」を「自主性指標」と名付ける。
と思いますか」においても得点化、カテゴリー化を
「因子3」は「親を大事にする」、「両親に嘘をつ
行う。その後、しつけによる子どもの行動を表した
かない」、「夜おそくまで外出せず、両親に言われた
項目をそれぞれ主成分分析、バリマックス法で回転
時間には必ず帰る」の3つの項目が検出された。こ
を行った(表5)
。その結果、3つの因子が抽出され
れらの項目に共通してみられることは、親という存
た。以下ではその抽出された各因子について述べる。
在をどう思っているか、親を尊敬しているのかを表
181
美郷村における子どものしつけと子どもの道徳授業への関心についての調査研究/教育班
していると考えられる。よって「因子3」は「親へ
盧
の尊敬」と名付ける。
「因子1」と「道徳授業への関心」のクロス
集計結果(表6)。
3)カテゴリー化とクロス集計結果
因子1は「日常生活における生活指標」と名付け
ここでは「道徳授業への関心」と各因子の得点を
た。図1から、因子1「日常生活における生活指標」
「高」、「やや高」、「やや低」、「低」の4段階にカテ
が「高」の子どもは「道徳授業への関心」でも高い
ゴリー化する。次にカテゴリー化された各因子と
値がみられる。また、因子1が「低」の子どもは
「道徳授業への関心」をクロス集計にかけて関連性
「道徳授業への関心」に関しても低い値を示してい
を見る。
る。しかし、因子1が「高」であっても道徳授業へ
の関心が「低」の子どもの割合も
表6 日常生活における生活指標と道徳授業における関心のクロス表
日常生 低 度数
活にお
日常生活における指標
ける生 やや低 度数
活指標
日常生活における指標
やや高 度数
日常生活における指標
高 度数
日常生活における指標
合計
度数
日常生活における指標
の %
の %
の %
の %
の %
道徳授業への関心
低
やや低 やや高
5
2
1
62.5% 25.0% 12.5%
1
2
6
9.1% 18.2% 54.5%
4
7
33.3% 58.3%
5
1
2
41.7% 8.3% 16.7%
11
9
16
25.6% 20.9% 37.2%
高
2
18.2%
1
8.3%
4
33.3%
7
16.3%
多いことが図1から読み取ること
合計
8
100.0%
11
100.0%
12
100.0%
12
100.0%
43
100.0%
ができる。
盪
「因子2」と「道徳授業へ
の関心」のクロス集計結果
(表7)。
「因子2」は「自主性指標」と
名付けたものである。図2から読
み取ることができるのは、「因子
2」の度合いの低い子供(自主性
が低い子供)ほど「道徳授業への
表7 自主性指標と道徳授業への関心のクロス表
自主性 低 度数
指標
自主性指標
やや低 度数
自主性指標
やや高 度数
自主性指標
高 度数
自主性指標
合計
度数
自主性指標
の %
の %
の %
の %
の %
道徳授業への関心
低
やや低 やや高
6
1
3
54.5% 9.1% 27.3%
2
3
4
20.0% 30.0% 40.0%
1
3
4
11.1% 33.3% 44.4%
2
2
5
14.3% 14.3% 35.7%
11
9
16
25.0% 20.5% 36.4%
関心」が「低」の度合いが強まる
高
1
9.1%
1
10.0%
1
11.1%
5
35.7%
8
18.2%
合計
傾向がある。逆に「因子2」の度
11
100.0%
10
100.0%
9
100.0%
14
100.0%
44
100.0%
合いの「高」の子供(自主性指標
8
7
7
6
6
が高い)ほど、「道徳授業への関
心」が高いことが見受けられる。つ
まり、「因子2」の「自分の部屋
をかたづける」項目などの自主性
があるほど、「道徳授業への関心」
に関連があることが判断できる。
5
5
4
4
3
3
道徳授業
への関心
2
低
やや低
1
度
数0
低
やや低
1
やや高
高
低
やや低
やや高
高
図1 日常生活における生活指導
182
道徳授業
への関心
2
やや高
度
数0
高
低
やや低
やや高
図2 自主性指標
高
阿波学会紀要 第50号(pp.179-184)
蘯
間に有意差は見られない(表10)。
「因子3」と「道徳授業への関心」のクロス
集計結果(表8)。
表9 分散分析 b
「因子3」は「親への尊敬指標」と名付けた。図
モデル
1 回帰
残差
全体
「因子3」の度
3から読み取ることができるのは、
合いが「高」(親への尊敬指標が高い)いほど「道
徳授業への関心」の度合い「高」と「やや高」に集
平方和
自由度 平均平方
2.270
1
2.270
44.335
41
1.081
46.605
42
F値
有意確率
2.099
.155 a
a. 予測値:(定数)
、日常における生活指標
b. 従属変数:道徳授業への関心
中していることがわかる。「親を大事にする」など
の項目が「因子3」には含まれているので、親との
表10
係数 a
関係、尊敬の度合いが高いほど「道徳授業への関心」
モデル
1 (定数)
日常におけ
る生活指標
も高い傾向があると読み取ることができる。
4)データ単回帰分析による「道徳授業への関心」
と各因子の関連性
盧
2004.3
非標準化係数
標準化係数
B
標準誤差 ベータ
1.876
.422
.214
.147
.221
t
有意確率
4.448
.000
1.449
.155
a. 従属変数:道徳授業への関心
「道徳授業への関心」と因子1「日常におけ
盪 「道徳授業への関心」と因子2「自主性指標」
る生活指標」の単回帰分析
の単回帰分析
「道徳授業への関心」と因子1「日常における生
活指標」を単回帰分析により算出した。分散分析表
「道徳授業への関心」と因子2「自主性指標」を
の有意確率を見てみると(表9)、有意確率が.155で
単回帰分析により算出した。まず分散分析の有意確
あった。有意な水準を.05以下と考えると、「道徳授
率をみると、.017と有意な数字を示している(表11)。
業への関心」と因子1「日常における生活指標」の
また標準化係数は、.359を示しており(表12)、「道
徳授業への関心」と因子2「自主性指
表8 親への尊敬指標と道徳授業への関心のクロス表
道徳授業への関心
やや低 やや高
4
1
1
57.1% 14.3% 14.3%
3
1
4
30.0% 10.0% 40.0%
3
3
2
37.5% 37.5% 25.0%
1
3
8
5.9% 17.6% 47.1%
11
8
15
26.2% 19.0% 35.7%
低
親への 低 度数
尊敬指
親への尊敬指標
標
やや低 度数
親への尊敬指標
やや高 度数
親への尊敬指標
高 度数
親への尊敬指標
合計
度数
親への尊敬指標
の %
の %
の %
の %
の %
高
合計
標」との間には関連があると考えられ
る。
1
7
14.3% 100.0%
2
10
20.0% 100.0%
8
100.0%
5
17
29.4% 100.0%
8
42
19.0% 100.0%
蘯
「道徳授業への関心」と因子3
「親への尊敬指標」の単回帰分析
「道徳授業への関心」と因子3「親
への尊敬指標」を単回帰分析により算
出した。分散分析では、有意確率が.028
をとり有意な値を示している(表13)。
標準化係数は.339であった( 表14 )。
10
「道徳授業への関心」と因子3「親へ
分散分析 b
8
表11
6
モデル
1 回帰
残差
全体
4
道徳授業
への関心
低
2
度
数0
高
低
やや低
やや高
図3 親への尊敬指標
高
F値
有意確率
6.233
.017 a
a. 予測値:(定数)
、自主性指標
b. 従属変数:道徳授業への関心
表12
係数 a
やや低
やや高
平方和
自由度 平均平方
6.330
1
6.330
42.648
42
1.015
48.977
43
モデル
1 (定数)
自主性指標
非標準化係数
標準化係数
B
標準誤差 ベータ
1.640
.368
.323
.129
.359
t
有意確率
4.456
.000
2.497
.017
a. 従属変数:道徳授業への関心
183
美郷村における子どものしつけと子どもの道徳授業への関心についての調査研究/教育班
の尊敬指標」の間には関連があると考えられる。
表13
って、親が子どもをしつけるにあたって、子どもに
分散分析 b
モデル
1 回帰
残差
全体
平方和
自由度 平均平方
5.581
1
5.581
42.895
40
1.072
48.476
41
F値
有意確率
5.204
.028 a
子ども達の道徳授業への関心を高めることができる
最後に、因子3「親への尊敬指標」と「道徳授業
への関心」について考察する。因子3と「道徳授業
への関心」を単回帰分析により算出すると、因子3
係数 a
モデル
1 (定数)
親への尊
敬指標
自分の行動を責任を持って行わせることによって、
と考えられる。
a. 予測値:(定数)
、親への尊敬指標
b. 従属変数:道徳授業への関心
表14
子どもほど、道徳授業への関心が高いと言える。よ
非標準化係数
標準化係数
B
標準誤差 ベータ
1.564
.431
.322
.141
.339
と「道徳授業への関心」の間に有意差がみられた。
t
有意確率
3.632
.001
2.281
.028
a. 従属変数:道徳授業への関心
この結果から次のようなことが考えられる。
因子3は子どもたちがどれだけ親を尊敬している
のかを示したものであり、因子の成分として「親を
大事にする」、「両親に嘘をつかない」などの項目が
含まれている。このことから親を尊敬し、両親を敬
5.考察
因子1「日常における生活指標」、因子2「自主
っている子どもほど道徳授業への関心が高いと考え
られる。
性指標」、因子3「親への尊敬指標」の各因子と
「道徳授業への関心」の関連性について考察する。
6.まとめと今後の課題
まず因子1「日常における生活指標」と「道徳授
道徳授業への関心と「自主性」、「親への尊敬」と
業への関心」について考察する。因子1と「道徳授
の間には明確な有意差がみられ、「日常における生
業への関心」を単回帰分析により算出すると、因子
活」については有意差がみられなかった。このこと
1と「道徳授業への関心」の間に有意差はみられな
から「自主性」や「親への尊敬」を大切にする子ど
かった。この結果から次のようなことが考えられる。
もほど道徳授業への関心が高い傾向があると言え
因子1は日常生活の中で行う約束事であり、因子
る。
の成分として「夕食の準備や片付けを手伝う」、「朝
本研究では、子どもの「しつけ」と「道徳授業へ
起きて、家族に『おはよう』という」、「テレビは時
の関心」には関連性があると言えるが、「しつけ」
間を決めて見る」などの項目が含まれている。この
と因子1「日常における生活」との間には、関連性
ようなことは、子どもを「しつける」と言った行動
がないと言える。
ではなく、その家庭の決まり事、規範であると考え
しかし、他の多くの要因が推測されるので本調査
ると、家庭との「約束」だから守ると捉えることが
の結果だけでは、不十分な点が多く完全とは言えな
出来るのではないだろうか。
い。今後は美郷村の地域の特徴を踏まえながら、徳
次に因子2「自主性指標」と「道徳授業への関心」
について考察する。因子2と「道徳授業への関心」
島市の調査結果と比較・分析し考察を行っていく予
定である。
を単回帰分析により算出すると、因子2と「道徳授
最後になりましたが、質問紙にご協力いただいた
業への関心」の間に有意差がみられた。この結果か
美郷村の子ども達、保護者の皆様、教育委員会の
ら次のようなことが考えられる。
方々に厚くお礼を申し上げます。
因子2は子どもたちの自主性を示したものであ
り、因子の成分として「近所の人に会ったら挨拶を
する」、「言われなくても自分で明日の準備をする」
、
「自分の気持ちをはっきり伝える」などの項目が含
まれている。このような行動を自主的に行っている
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文 献
小島敏子(1989):「児童の生活実態と意識に関する調査研究
―日豪の比較を中心に―」、鳴門教育大学院修士論文。
瀬尾真未(2003):「しつけおよび道徳教育に関する日韓比較
調査研究」、鳴門教育大学院修士論文。