「安全性診断サービス」の現状確認から得た 「運用テンプレート」

エンタープライズICT総合誌 月刊ビジネスコミューニケーション(Webサイトへ)
「安全性診断サービス」の現状確認から得た
「運用テンプレート」
㈱ BC コンサルティング システム安全検証センター(SSVC)
シニアコンサルタント 中村 真二
ITIL®が提示した「サービス」と「価値」を基本にしてサービスマネージメントを基にした「安全性診断サービス」を開始し
てから 1 年となる。実施した結果から多くの現場で「必要なドキュメントが作成されていない」ことが判明した。
現場における ITIL Ⓡ 達成率の現状
ITIL Ⓡ ベースの体系化した運用テンプレート
「安全性診断サービス」での診断結果を「ITIL 達成率」
有効的なドキュメントが作成されていない実態を踏
として表現している。ITIL 達成率とは、ITIL から提示
まえて、ITIL ベースに体系化された運用テンプレート
されている活動の適用状況ではなく、ドキュメントの
を考案した。
成長度(口頭、メモ、組織が管理しているドキュメント、
この運用テンプレートは、安全性診断サービスの
会社が管理しているドキュメント、改善されている)
チェックリスト(ITIL のサービスライフサイクルの詳
を分析している。よって、ITIL 活動の適用状況だけで
細な活動手順)からドキュメントを体系化しているた
は測れない実態が把握できる。
め、運用テンプレートの記述枠を埋めることで、ITIL
実施してきた安全性診断サービスを整理したのものを
準拠が可能となる。
図 1 に示す。全てが同じチェック項目で診断した結果で
すべての運用テンプレートでドキュメントを作成す
はないが、安全性診断サービスの診断結果では 30%後半
ることで、安全性診断サービスの診断結果である ITIL
から 40%後半で各 ITIL ライフサイクルが実行されてい
達成率は 60%∼ 80%と飛躍的に向上することが可能
る。このレベルの ITIL 達成率は業務に必要なドキュメン
となる。
トの多くはメモで管理されている状態で、組織として承
安全性診断サービスと伴に運用テンプレートで活動
認されていないドキュメントに書かれた内容でシステム
を定義した上でのシステム運用活動を実施することを
運用が実行されていることを表している。
お勧めする。
多くの例では、「システム運用手順書はあるが更新し
ていない」
「メモの方が正しい」
「作業に慣れているため、
作業効率を向上するためにシステム運用手順書を見る
お問い合わせ先
㈱BCコンサルティング
システム安全検証センター(SSVC)
E-mail:[email protected]
ことはない」などが多く聞かれる。
サービス活動/段階
具体的活動項目
方針設定
サービスストラテジ
(SS)
100%
適用範囲
開始段階
80%
38%
40%
継続的サービス改善
(CSI)
26%
20%
0%
43%
38%
ITIL達成率
35%
サービスオペレーション
(SO)
サービスデザイン
(SD)
サービストランジション
(ST)
図1 平均的な ITIL 達成率
ビジネスコミュニケーション 2015 Vol.52 No.6
統制組織
ITサービス継続性管理
60%
資源配分
品質計画
業務影響分析
要件定義段階
リスク分析
文書内容の例
SD-186
SD-187
SD-188
SD-189
SD-190
SD-191
SD-192
SD-193
SD-194
SD-195
SD-196
SD-197
SD-198
SD-199
SD-200
SD-201
SD-202
SD-203
SD-204
SD-205
SD-206
SD-207
SD-208
SD-209
SD-210
SD-211
SD-212
SD-213
CIをコントロールするレベルの定義
CIをコントロールするレベルの決定
CIの定期的なレビュー計画の作成
CIの定期的なレビュー
CIの定期的なレビュー結果の文書化
CIの定期的なレビューでの不具合発生した場合の対処
CIの識別
サービス継続性管理プロセスの定義
構成のバージョン、仕様の追跡
命名/番号付け規則の定義
命名/番号付け規則の文書化
命名/番号付け規則における将来の成長性の考慮
CIごとの命名
CIの識別子およびバージョンによる一意な識別
物理的な装置の全CIへの構成識別子のラベル付け
ラベルの精度維持に関する立案
ラベルの精度維持に関する計画
ラベルの精度維持に関する文書化
固定資産管理プロセスのラベルとの組み合わせ
属性の定義
属性の文書化
CIを説明する必須文書の規定
CIを説明する委任文書の規定
サービス・ライフサイクルの各段階における責任の定義
サービス・ライフサイクルの各段階における責任の文書化
CI間の関係、依存性に関する情報の文書化
CI間の関係、依存性に関する情報の保持
CI間の関係に関する情報の定義
表1 運用テンプレート一覧
5