長時間作用性吸入気管支拡張剤「スピリーバ」の喘息

第 42 回
コンパス薬局スキルアップ勉強会
2015.7.7 近藤
『長時間作用性吸入気管支拡張剤「スピリーバ」の喘息適用追加について』
日本ベーリンガーインゲルハイム㈱ 長塚佳織様
参加者:小西、佐藤(杏)、佐藤(那)
、佐藤(綾)、木元、青野、梅津、近藤
喘息治療においては既存薬剤のみではコントロール不十分な患者さんがいまだ存在し、アンケート調
査によると、吸入ステロイド薬を含む長期管理薬を継続的に吸入していてもなお症状がある患者さんは
少なくなく、53.6%の喘息患者さんが週 1 日以上の喘息症状を経験していたことが報告されている。ま
た、1 年間に 27.2%の患者さんが喘息症状や発作により、「予定外受診、緊急受診または入院」といっ
た増悪をしていたことも報告されている。
スピリーバレスピマットは COPD 治療で実績をあげているが、昨年喘息に対する適用が追加され、
このたび喘息予防・管理ガイドライン 2015 年改訂版(JGL2015)において中等症持続型以上に相当す
る治療ステップ 3,4 に位置付けられ、新たな喘息治療の選択肢として期待がもたれている。
【COPD 疫学】
COPD(慢性閉塞性肺疾患)はタバコと一番密接に関係する呼吸器疾患で、直接タバコの煙などの有
害物質を吸い込むことによって、気管支と肺に障害が起こる疾患である。
COPD の死亡者数は 2011 年の厚労省データでは全体で第 9 位、男性は第 7 位に上昇している。
死亡者数の推移をみると同じ呼吸器疾患でも、喘息の死亡者数は減少しているのに対し、COPD は増加
し続けており、今後も増加することが見込まれる。
【COPD ガイドラインにおけるスピリーバの位置づけ】
長時間作用性抗コリン薬(スピリーバ)が COPD 治療の第一選択薬。
軽症から重症まで幅広く使用されている。
【COPD におけるスピリーバの作用機序及び臨床データ】
煙草の煙を主な原因とし知覚神経を刺激する結果、副交感神経が興奮する。放出されるアセチルコリ
ンがムスカリン受容体、特に主に気道平滑筋や粘膜下腺に分布する M3 受容体に結合すると末梢の気道
が収縮し、粘液分泌を促し、COPD 各症状が現れる。特に労作時の息切れや痰の過剰分泌をもたらす。
スピリーバは、M3 受容体を強力に、かつ、長時間に渡ってブロックすることから、息切れ・咳・痰を
効果的に抑えることができる。
スピリーバの使用によって咳の回数に関しては、咳が「なし、もしくは少しある」と答えた患者さん
の割合が使用前の 62.5%から 94.6%に増加。痰の症状に関しても「なし・少しある」と答えた方の割合
は使用前の 63.5%から 91.7%に大幅に増加しており、咳・痰の患者さんの症状を大きく改善している。
息切れの症状に関しては日常生活にほぼ影響がないと解釈できる「同年代の方と同じように運動などが
できる」
、と答えた患者さんの割合が 9.2%から 33.5%まで増加している。
【喘息におけるスピリーバ使用のねらいと臨床データ】
喘息治療の適応追加が検討された理由として、既存や薬剤ではコントロール不十分な患者さんの多く
において「夜間/早朝」の症状を訴える例があるため、夜間の副交感神経が優位な状況下において、抗コ
リン薬のスピリーバが症状改善が見込めるのではないかと予想された。
大規模臨床試験データにおいては吸入ステロイド薬(ICS)と長時間作用性吸入 β2 刺激薬(LABA)
を服用していても症状がある喘息患者さんを対象とした 48 週間の長期投与試験がなされ、呼吸機能
(FEV1)は投与 1 日目から改善がみられ、24 週間後におけるピーク FEV1(0-3h)のプラセボ群との
差は有意に改善し、この効果は 48 週間の試験期間を通じて維持された。
スピリーバレスピマット群は、全身性ステロイド薬を必要とするような重度の喘息増悪の発現リスク
をも 21%低下させた。
【喘息予防・管理ガイドライン 2015 年改訂版(JGL2015)改定ポイント】
「主な長期管理薬の効果に関する特徴」に、LAMA(チオトロピウムソフトミスト)が追記され、中等
症持続型以上に相当する治療ステップ 3,4 に位置付けられた。主な長期管理薬の効果は、4つの特徴
から4段階に分けられ、各薬剤の作用機序のエビデンスから、各々の守備範囲(治療スペクトラム)が
考えられ、LAMA は、気管支拡張効果と気道分泌抑制効果が特に優れていることが示されている。
【スピリーバレスピマット効能効果・用量】
下記疾患の気道閉塞性障害に基づく諸症状の緩解
慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)
、気管支喘息(重症持続型の患者に限る)
(重症持続型とは、たとえば、治療ステップ 3 にあたる中用量~高用量 ICS と LABA を併用している
患者さんで週に 1 回以上喘息の症状がみられる場合。
)
通常、成人には 1 回 2 吸入(チオトロピウムとして 5μg)を 1 日 1 回吸入投与する。
【考察】
COPD の死亡者数が全体で第 9 位、男性は第 7 位と増えている中でいまだにその疾患の認知度が低く、
治療に至っていない患者もいる。また喘息の死亡者数は減少傾向にはあるもののコントロール不十分な
患者様がいる中で、新たな治療の選択肢が増えることは有意義である。ともに疾患と治療の啓発も薬局
として患者様に関与できる部分であるし、スピリーバレスピマットが吸入薬ということから、吸入手技
によって効果が左右される可能性も大きく適切な吸入指導に努めることが必要である。
【質疑応答】
・M3 受容体の分布は?
M1→脳、胃壁細胞(胃酸分泌↑)
M2→心臓(心拍数↓、収縮力↓、伝導速度↓)
M3→平滑筋(縮瞳、消化管平滑筋収縮)、腺(涙、唾液分泌)
・M3 受容体への選択性
チオトロピウムは、ムスカリン受容体サブタイプに対してほぼ同程度の親和性を示すが、M2 受容体に
比較し、M1 および M3 受容体からの解離は非常に遅く(特に、M3 受容体)、解離速度の面から M3 受
容体に選択性を示す。
・副作用発現率(前立腺肥大)
排尿障害の副作用報告はハンディヘラーが 1%未満、レスピマットが頻度不明。
・ハンディヘラーとレスピマットの副作用の現れ方の違い
レスピマットにて口渇の副作用が 2.23%とハンディヘラーの 10.17%より少なくなっている。
・何本までカートリッジをセットして渡せるか
レスピマットにカートリッジを挿入した状態で、成り行き条件の場合、90 日まですべての測定項目は規
格内。ゆえに多くても 2 本程度までが妥当ではないか。