2015.7.16 第1号 ■ 今回のゲスト 峯田電器株式会社/エルワンミネタ 代表取締役社長 峯田季志氏 今回は、山形県山辺町にある、峯田電器株式会社の代表取締役社長を務める峯田季志氏にインタビュー して参りました。峯田氏は家業の峯田電器に入社し、1991 年から代表取締役社長を務めています。峯田 氏は、町の電器屋が減少していく中で「電話一本でお客様の家に駆けつける」というお客様を想い続けた サービスを長年に渡り展開してきました。家電製品の販売だけではなく、お客様に満足して喜んで頂くた めのホスピタリティ精神も大切にしています。また、経済産業省が主催する「平成 24 年度おもてなし経 営企業選」 、 「平成 27 年度がんばる中小企業・小規模事業者 300 社」の選出や「パナソニック特別優秀店 賞」 (44 年連続受賞)など数々の功績を残しています。 今回は、町の電器屋の人的サービスにおけるホスピタリティに着目しましたが、医療や介護とは異なっ た視点からでも、迅速な対応や地域性を活かす取り組みは参考になります。また、医療や介護においても 顧客の想像を超えるサービスが必要であり、それが言わばホスピタリティというものです。峯田電器は想 像を超えるサービスを提供することで、お客様に感動を与え続け、お客様との信頼関係を築いてきました。 ■ ホスピタリティのヒント 迅速な 特性を 目的の 対応 活かす 共通認識 ▼峯田電器は、困っているお客様に対して迅速に対応することを心がけ、そのスピード感を大事 にしています。その一例として、困っているお客様の家に誰かがすぐ駆けつけられるように、社 用車には全て無線がついています。また、峯田電器の社員はお客様に満足して頂きたいのでどん な状況でもお客様が困っていたら駆けつける、この変わらぬ精神を持ち続けてきました。 ▼峯田電器は、町の電器屋だからこそ地域の人の顔が見える商売を強みとしています。そして高 齢化のニーズに応えた介護用品の販売やレンタルを展開しています。また、町の電器屋の特性を 活かし「おうちカフェ」や「御用聞き営業」 、ゴルフ大会等、地域に根ざした活動をしています。 峯田電器では、定期的にお客様の顔が見える環境を作り信頼関係を構築しています。 ▼峯田電器では、売り上げが目的ではなく、お客様に満足して頂くためにサービスを提供すると いう共通認識を持っています。だから、社員一人ひとりが自らホスピタリティある行動をし、お 客様に喜ばれています。 医療経営研究所 医療介護ホスピタリティアドバイザー 藤原梨沙 1 ©2015 Copyright By Health Care Management Institute 2015.7.16 第1号 創業から変わらぬ、お客様への想い 藤原 本日はどうぞよろしくお願い致します。まず、貴社の概要や取り組んでいることを教え て頂けますか。 峯田さん 当社は、全国どこにでもある町の電器屋です。エアコン、洗濯機、冷蔵庫、テレビなど、 一般的な家電製品を販売しているごく普通の電器屋ですよ。 現代では、家電量販店やインターネット、ホームセンターにおいても家電製品が買える という時代になっていて、どこからでも気軽に家電製品を購入できますよね。当社は、価 格や品揃え、利便性といった同質競争では他の店に敵いませんが、「地域の人の顔が見える 商売」であることを強みとしています。それを強く打ち出していかないと、我々の存在価 値はない、という覚悟でいます。 約 25 年前から、量販店が価格一辺倒で進出してきた時点で、当社は異なった分野でお客 様に満足していただけるように、家電を販売することだけではなく、電話一本でお客様の 家に駆けつける等の様々なサービスを行っています。 例えば、当社では「御用聞き営業」という、営業する社員が担当のお客様の家を訪問し、 困っていることを聞きながら新たな商品を販売する営業活動を行っています。こうして、 常にお客様の困りごとにも耳を傾けるようにしています。 さらに、お風呂場の蛇口が壊れた場合はユニットバスに取り換える提案などもしていま す。お客様に快適で暖かいお風呂場やトイレを提供するためリフォームを行うなど、お客 様の住環境も支援しています。リフォームすることによって、ヒートショック(急激な温 度差がもたらす身体への影響)も防いでいます。 藤原 家電製品の販売以外にも様々なサービスを提供しているのですね。電話 1 本で駆けつけ るサービスですが、どういった内容で電話がかかってくるのでしょうか。 峯田さん 例えば、冬であれば、お湯が出ない、暖房が壊れた等の電話がかかってきますね。最近 では、 「省エネ」や「節電」という言葉がキーワードになっています。特に震災後は皆さん も意識しているところですよね。私達は、その省エネや節電といったところも気にかけ、 お客様に対して光熱費がさらに安くなる家電をおすすめしたり、もっと快適に過ごせるよ うな提案などをしています。 また、今はほとんどありませんが、約 30 年前は夜 11 時 30 分頃に電話がかかってきた こともありました。実は、私の自宅の番号が夜間専用の受付電話番号になっていて、電話 がきたら自宅からお客様の家まで駆けつけていました。お酒を飲んでいた日にはタクシー でお客様のところまで行って、ヒューズ(昔のブレーカー)を交換していました。今では 信じられないような笑い話になりますが、そのようなことを真面目に対応してきました。 2 ©2015 Copyright By Health Care Management Institute 2015.7.16 藤原 第1号 夜間に関わらず、お客様の家まで駆けつけていたのですね。お客様にとっては、信頼し ている社員の方が電話一本で来て下さるのは、非常にありがたいことだと思います。 峯田さん 私たちが電話で駆けつければ、お客様はわざわざ出かけなくて済むので、特に高齢者の お客様にとってはたいへん満足して頂いているサービスだと思います。しかし、私達は特 別なことは何もやっていません。昭和 30 年~40 年代くらいまでは、他の電器屋も当社と 同じようなことをしていました。 その時代は、カラーテレビなどが非常に売れていましたね。昭和 50 年を過ぎると、家電 製品も成熟し、消費者が家電製品の買い替えどきになってきました。そうなると、少しで も安くて色々な製品が展示され、比較できるところから購入したいという消費者のニーズ が出てきました。 さらに、コストがかかるからという理由から、多くの電器屋は今の私達のやり方から離 れていきました。売れるかも分からないのに、人を準備し、お客様のお家を巡回し、電話 対応をするという行動は一般常識から考えて、ロスが多くて生産性が低いんです。 でも、当社の強みは「電話一本で駆けつける、すぐ対応する、そしてお客様に喜んでも らう」これしかないと思いました。私は、親戚付き合いのような、そんな商いをすれば品 揃えや価格以上の価値を生みだすことができ、生き残っていけるのではないかと思い、今 日までやってきました。 藤原 その他にも「おうちカフェ」という活動も行っているようですね。これらは、峯田さん 自身が考案されたものなのですか。 峯田さん 私が考えたのではありません。おうちカフェは女子社員が考えたもので、週に 1 回火曜 日に行っています。おうちカフェでは、「ゴパン」という米からパンを作る機械を使用し、 それで作ったパンとコーヒーで、来て下さったお客様に無料で提供し、おもてなしをして います。現代では米離れもあり、おうちカフェは米の普及促進という意味もあります。 その場に来て、ゴパンなどを買われる方はいませんが、来て下さった方は何か家電製品 を買うという時は、当社から購入してくれるんです。ですから、おうちカフェがいますぐ 商売に繋がるかということではないのですが、コミュニケーションをとりながら地道に信 頼関係を作っています。 また、おうちカフェは「サロン」のような場所として、近所の方に利用して頂いていま す。当社の近くにはスーパーがあり、その買い物ついでに寄ってお茶を飲みに来て下さる 方もいます。地道に当社のファンが増えてくれれば良いのではないかと考えています。目 的は売り上げではなくお客様が満足してくれることですから。 おうちカフェ以外にも、グランドゴルフ大会とパークゴルフ大会を地域の方々に対して 開催しています。毎回たくさんの方が集まって下さり盛り上がっています。パークゴルフ 3 ©2015 Copyright By Health Care Management Institute 2015.7.16 第1号 大会は 70~80 人くらいで、グランドゴルフ大会は 170~180 人くらい集まり、たくさ んの方が足を運んで下さいますね。 藤原 おうちカフェだけではなくゴルフ大会も開催し、お客様に楽しんでもらっているのです ね。峯田さんが今までで印象に残った、貴社でのエピソードはありますか。 峯田さん たくさんエピソードはありますが、その中でもお客様から特に喜ばれた 2 つのエピソー ドがあります。1 つは、東日本大震災の日のエピソードです。ある社員が仙台に遊びに行っ ていた時のことです。震災直後、山形の自分の家に帰る前に、自分の営業担当になってい た独居の高齢者のお客様の自宅に伺い、一人ひとり安否確認をしたという話です。 もう1つは、お客様に時計をプレゼントしたエピソードです。孫からもらった大事な時 計が壊れてしまったお客様がいました。その時計が当社では修理できなかったので、同じ 時計を購入しプレゼントした社員がいました。 この話を聞いて、お客様を想う気持ちが多いほど、深いほど、自ら様々なサービスやホ スピタリティを考えて提供できるのだと思いましたね。私は、社員に対して創業時から変 わらぬ想いを伝え続け、社員の皆にもこの仕事に対して誇りを持ってもらいたいと思って います。社員は決して「物を売る道具」ではありませんので。 藤原 素敵なエピソードですね。また、峯田さんはお客様と同じくらい社員のことも大切に想 っているのですね。峯田さんが一番大事にしているホスピタリティは何でしょうか。 峯田さん 「頼まれごとは試されごと」 、これを一番意識して、すぐ返事をする、すぐ対応する、と いうことを大切にしています。スピード感は私の中で価値あるものです。同じことをやる にしても、早いというのは絶対のウリになります。 ですから、当社の車には全部無線をつけています。タクシー会社のようなものですね。 お客様から電話がきた時に、そのお客様の家の近くを走っている車はないだろうかと探す ことができます。自分の担当する範囲の社員じゃなくても、誰かしらによって困っている お客様の一次対応がすぐできるシステムになっています。 お客様から頼まれたことに対して、お客様の想像を超えるサービスを提供すると満足し てもらえますが、その辺でもできるサービスを提供しても満足してもらえないんですね。 お客様の想像を超えることができれば、究極のサービスに繋がるのではないでしょうか。 藤原 お客様に満足して頂くために、スピード感や信頼関係を大切にしてきたのですね。介護 用品等も扱っているそうですが、この地域は高齢化も進んでいるということから、非常に ニーズがあるのではないでしょうか。 4 ©2015 Copyright By Health Care Management Institute 2015.7.16 峯田さん 第1号 そうですね、ニーズはあります。2000 年に介護保険法が発令された時、何か自分達も 支援できないかと考え介護用品のレンタルと販売を始めました。県内に 11 店舗ある「介護 ショップさふらん」のうち、「さふらん山辺店」を山辺本店がインショップとして営業して います。当店では介護用のベッド、電動カート、補聴器など取り扱っています。また、当 店の補聴器の売り上げが、パナソニックの取扱店で昨年日本一になりました。お客様とは 築いてきた信頼関係があり、補聴器のニーズや需要もあるので自ずと売り上げに繋がって いきました。 藤原 日本一になったのですね、おめでとうございます。44 年連続、パナソニックの特別優秀 店賞を受賞されているそうですが、素晴らしい記録なのではないでしょうか。 峯田さん ありがとうございます。その賞を受賞するには条件がありますが、ありがたいことに連 続で頂いています。44 年の中には大震災や増税などがあり、外的な経済環境や経営環境へ の悪影響で、売り上げがダウンした時もありましたが、ほぼ毎年大きい節目以外は前年を 割らない売り上げであると、毎年評価して頂いています。 連続して賞を頂けるということは、当社の誇りになっています。そのための経営努力は しているつもりですが、当社の他にも全国には素晴らしいところはたくさんありますよ。 藤原 受賞できるということは、それだけ努力をしてきたことや培ってきたものはあると思い ます。最後に、峯田さんの今後の展望や夢をお聞かせ下さい。 峯田さん 現在では、シャッター通りになる商店街が増え、郊外に大きなショッピングセンターが できてきたおかげで、地方の商店街の活気がなくなってきています。我々の業界も同じで、 縮小傾向にあります。いま、街の電器屋は全国に 3 万店しかありません。減少の要因とし ては経営者の高齢化、後継者不足の問題です。 現在、インターネットサイトや家電量販店、テレビショッピングでも家電製品が購入で きる時代ですが、本当に家で安全に使用されているのでしょうか。何か事故が起きた時に は誰が責任をとるのでしょうか。特にいま、家電メーカーでもリコール商品はたくさん出 ています。家電量販店やホームセンターから家電製品を購入されたお客様は、果たしてし っかり対応されているでしょうか。当社は迅速なクレーム対応や商品説明で、すぐ事故に 対応できることから、町の電器屋としての使命を地域に根ざしておく必要があります。 このような私の考えに共感してくれる県内のお店が 1 店でも 2 店でもあれば、当社の仲 間になって頂き、これから少しずつ経営を拡大していく必要があるのかなと感じています。 藤原 峯田さん 今後の貴社の活躍に注目したいです。本日はありがとうございました。 ありがとうございました。 5 ©2015 Copyright By Health Care Management Institute 2015.7.16 第1号 ■ プロフィール 峯田電器株式会社 峯田季志氏 昭和 26 年:山形県山辺町に生まれる。 山形工業高校を卒業後、松下幸之助商学院に入塾。 昭和 46 年:峯田電器株式会社入社。 平成 3 年:同社代表取締役社長に就任。現在3店舗を展開。 平成 21 年:組合功労により「中小企業庁長官賞」受賞。 平成 22 年:財団法人きらやか銀行産業振興基金より「きらやか産業賞」受賞。 平成 24 年:経済産業省の「おもてなし経営企業選」に選出。 平成 27 年: 「がんばる中小企業・小規模事業者 300 社」に選出。 44 年連続でパナソニック株式会社(旧松下電器)から特別優秀店賞を受賞。 峯田電器株式会社/エルワンミネタ 住所: 〒990-0301 山形県東村山郡山辺町山辺 1272-4 TEL: 023-664-7912 URL: http://main.el-1mineta.com/ 本店の他にも、あかねヶ丘店と長崎店があります。社員の皆様が、丁寧に明るく対応して 下さいます。ぜひ足を運んでみて下さい。 峯田電器では、家電製品の販売以外にも様々な心のこもったサービスを展開しています。 この記事が、皆さんのホスピタリティにおける一助となれば幸いです。 峯田電器の皆様、ご協力頂きありがとうございました。 医療介護ホスピタリティアドバイザー 藤原梨沙 6 ©2015 Copyright By Health Care Management Institute
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