特集 環境装置②/エコスラグ 溶融スラグ有効利用の事例紹介 県リサイクル認定制度の活用及び 利用基準制定により利用が進んだ事例 新日鉄住金エンジニアリング株式会社 環境ソリューション事業部 技術部 資源化推進室 シニアマネジャー 宮谷 寿博 ・施設稼働:2002年4月(2012年4月に施設規模 1.はじめに 230トン/日・炉×2炉=460トン/日 秋田県内では2002年度から2005年度にかけ、秋田 に能力増強) 市、鹿角広域行政組合、大仙美郷環境事業組合、大館市 ・溶融炉型式:シャフト炉式ガス化溶融炉 において一般廃棄物溶融処理施設が稼働し溶融スラグが ・設計・製作:新日本製鐵㈱(現・新日鉄住金エンジ ニアリング㈱) 発生している。この中で、最大規模を有する秋田市総合 環境センターから発生する溶融スラグの公共工事向け利 ・溶融スラグ発生量:約12,000トン/年 用拡大への取り組みについて記載する。 ⑵ 施設稼働初期の溶融スラグ市場環境 2.秋田市総合環境センターの概要と 稼働初期のスラグ市場 2002年度頃は、秋田県や秋田市では一般廃棄物溶 融処理施設から発生する溶融スラグの利用に関する認 識は低く、溶融スラグ配合再生アスファルト合材や溶 ⑴ 秋田市総合環境センター溶融処理施設の施設概要 融スラグ配合コンクリート2次製品においては、室内 ・施設規模:200トン/日・炉×2炉=400トン/日 試験や試験施工による基礎データを積み上げての理解 写真1 秋田市総合環境センター溶融処理施設全景 18 INDUSTRIAL MACHINERY 2015.6 特集:環境装置②/エコスラグ 活動を実施する状況にあった。このような環境下にお ② 溶融スラグ入り製品の利用条件への取り組み いて、秋田市総合環境センター溶融処理施設稼働初期 溶融スラグ配合再生アスファルト合材、溶融スラ の溶融スラグの用途は、民間工事での埋戻材代替とし グ配合コンクリート2次製品の利用条件や品質管理 ての利用に留まっていた。 基準検討に際しては、 秋田県建設交通部建設管理室、 3.溶融スラグ利用拡大への取り組み 環境部及び秋田市が主体となり地元アスファルト合 材工場、地元コンクリート2次製品工場に加え、全 国的な見地でのアドバイザ、県工事発注部門内の意 ⑴ 秋田県リサイクル認定制度 全国的な資源循環型社会推進への取り組みを受け、 秋田県では2002年4月より「秋田県リサイクル製品 見集約を実施し、利用条件や設計単価を制定した。 ③ 秋田県溶融スラグ利用基準の制定 認定制度」の運用を開始し、県内発生溶融スラグをリ ①②の結果を受け、2006年1月に秋田県建設交 サイクル原料とするコンクリート2次製品を認定した 通部建設管理室では「秋田県溶融スラグ利用基準」 (写真2に溶融スラグ配合コンクリート2次製品の例 を制定し、溶融スラグ品質管理基準用途別溶融スラ を示す)。しかしながら、認定制度初期段階では認定 グ利用条件(再生アスファルト合材、コンクリート 取得企業や認定数量の拡大が進まず、秋田県や秋田市 2次製品、埋戻材)等を定め、秋田県発注工事での 発注工事での利用が拡大しない状況が続いた。 利用が拡大した。更に、秋田県の取り組みを受け、 溶融処理施設を有する秋田市発注工事においても溶 ⑵ 秋田県溶融スラグ利用基準の制定 溶融スラグ配合再生合材の試験施工・追跡調査結果 融スラグ配合製品の優先使用(特記記載)に取り組 や秋田県リサイクル製品認定状況を受け、秋田県建設 むことになった。 交通部は県と秋田市を含む溶融処理施設を保有する県 ④ 溶融スラグ利用企業 (コンクリート2次製品工場) 内自治体(一部事務組合含む)と共に、資源循環型社 の対応 会の推進として一般廃棄物溶融スラグの県工事での積 「秋田県溶融スラグ利用基準」の制定、秋田県や 極的な利用に取り組んだ。 秋田市発注工事での溶融スラグ配合コンクリート2 ① 溶融スラグの品質管理への取り組み 次製品の優先使用の取り組みを受け、溶融スラグ配 秋田県建設交通部建設管理室は、県環境部と秋田 合製品を製造する地元コンクリート2次製品工場は 市及び県内自治体、溶融処理施設納入プラント企業 「秋田県リサイクルコンクリート研究会」を発足し、 による溶融スラグ品質基準を制定した。当時はまだ 溶融スラグの勉強会や溶融スラグ配合コンクリート 溶融スラグJIS制定がなされていなかったが、土壌 2次製品の品質管理向上に取り組んだ。その結果、 汚染対策法環境基準、溶融スラグJIS化検討情報を 本研究会には県内コンクリート2次製品工場すべて 反映した内容となった。 が参加することになった。 写真2 溶融スラグ配合コンクリート2次製品の例 産業機械 2015.6 19 ⑶ 2008年度リデュース・リユース・リサイクル推進 土交通大臣賞」を受賞した(写真3参照) 。 「秋田県建設 功労者等表彰で「国土交通大臣賞」受賞 交通部建設管理室」と「秋田県リサイクルコンクリー 上述の取組内容が評価され、2008年度リデュース・ ト協会」による「官民共同による溶融スラグ利活用の リユース・リサイクル(3R)推進功労者等表彰で「国 取り組み」が評価された。 ⑷ 秋田市総合環境センター溶融スラグの利用実績割合 推移 図1に秋田市総合環境センター溶融処理施設から発 生する溶融スラグの用途別利用割合実績推移を示す。 秋田市総合環境センターから発生する溶融スラグは 施設稼働後、発生量の全量利用を維持しているが、 「秋 田県溶融スラグ利用基準」の制定を受け、2006年度 からコンクリート2次製品用の利用量が増加し、アス ファルト合材に道路関連の埋戻材利用を加え、公共工 事での安定的利用が継続している。 写真3 表彰状 民間埋戻 公共埋戻 アスファルト合材 コンクリート2次製品 溶融スラグ利用割合 (%) 100 75 50 25 0 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 年度 2009 2010 2011 2012 図1 秋田市総合環境センターの溶融スラグの用途別利用実績推移 20 INDUSTRIAL MACHINERY 2015.6 2013
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