2015 佐渡国際トライアスロン大会 参戦記(TITC・原)

佐渡へ
(2015 年 9 月 6 日開催)
TITC
原 嘉朗
第1回南紀白浜トライアスロン大会を翌年に控えた 2013 年、
佐渡国際トライアスロン大会を視察させていただいたのが今からちょうど2年前。そ
の時はまさか自分がこの大会に出場できるなんて思ってもみませんでした。
昨年 2014 年大会はエントリー当選。初挑戦となる予定でしたが、直前の自転車事故で
無念の欠場となってしまい、今年の大会は個人的にも実に2年越しの想いの詰まった
佐渡紀行となりました。
2年前の佐渡は、トライアストンを始めるきっかけともなった我が師である近藤真彦
さんとご一緒させていただいたので、東京から上越新幹線経由でのスムーズな来島で
したが、今回は和歌山からの一人旅。
関西から佐渡島はアクセスが悪く、悩んだあげくの伊丹空港からの空路の選択が間違
いだったのか?
と思わされるほど搭乗ゲート前にアスリートらしき人は見当たらず、
いろんな意味で不安いっぱいの旅立ちとなりました。
『トライアスロンは地域の方々のご理解とご協力があってこそ成り立っている』
とおっしゃる近藤さん。感謝の気持ちを込めて、コース上のご本人歓迎看板にこっそ
りサプライズ直筆サインをされていました。
さすが! スーパースター!
新潟からは高速船ジェットフォイルで佐渡島、両津港へ、案内スピーカーからは『佐
渡おけさ』が流れて。眼下にはいつもの見慣れた太平洋とは明らかに違う色の日本海。
漆黒の海。
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かわら屋根最北端といわれる佐渡の、豪雪対策であるという漆塗りのあざやかな黒の
能登瓦に反射する日の光と、細長い杉の木を格子状に合わせる『鎧(よろい)ばり』
の家々が荘厳な町並みは、白浜や宮古島のような南海のリゾートにはない(いつかど
こかで見た)絵に描いたような心のふる里、それは懐かしくも恐るるべき日本の原風
景。決して楽観的ではない空気と音楽に出迎えられて、旅の浮ついた気持ちが少しだ
けキリッと引き締まる思いがします。
宿に荷物を下ろして さっそく選手説明会へ。
会場はなかなかの歓迎ムードで盛り上がっており、初めの不安な気持ちもどこへやら。
佐渡の人々は(宿の主人もそうでしたが)拍子抜けするくらい非常にストレートでわ
かりやすく親切でした。(南国特有のいい加減さはなく、良くも悪くもすべてが直球で
した。)
競技面から見てもまさにストレート勝負な佐渡の印象。
トランジットが一ヶ所なのでスイム、バイク、ラン、フィニッシュ、すべての着替え
が同じ場所で非常にシンプル。農作物収穫用のコンテナがバイクラック下に設置され
ていたのも(当日は雨でしたが荷物も汚れず)特にありがたかったです。
とにかく間違えるのが難しいくらいのシンプルなレギュレーションでした。
バイク委託は大会当日の朝でも OK。実際に当日は宿からバイクでスタート会場に向か
い、ゴール後に自走で宿に帰れました。
最短二泊で帰れる離島のロングレース。シンプル&イージー。
2
すべてにおいて大会前の計画と準備をしっかりと とことんまでやる事が、結局はスム
ーズな大会運営につながるのではないかという事を改めて勉強させていただきました。
【スイム】
初めての日本海。
不安もありましたが、湾内の割には透明度もあ
り魚や海藻もチラホラと、沖合 900m に第一ブイ、
右折して 150m で第二ブイ、900m 戻って 1950m を
2 周回って・・・
『あれ?100m 多くない?』
と
私も思いましたが、スタートは 100m 沖まで
歩いて行きます(遠浅なので)。
ちょっと損した気分でしたが、ビーチランから
のエントリーよりも混乱もなく、ゆったりとレ
ースは始まります。
3
【バイク】
一番キツいと言われる小木の坂だけは前日にチームメイトの車
で下見させていただきましたが、有名なZ坂や、それ以外にも
ちょこちょこと登りがあり、噂に違わぬ難コース。
中間点の両津港を過ぎた辺りで天気予報よりも早く雨が降り出
し、視界が悪くなります。
105km 住吉 AS 辺りからは、本部から遠いせいか食料補充が間に
合っておらず食べ物が何もない・・(バイク 8 時間を切れないグ
ループは)おにぎりどころかバナナすら売り切れで、とにかく
固形物がない。
『バナナ!!』
『次のエイドでお願いします!!』
がしかし、つぎのエイドにも食べ物はありませんでした。
雨足は徐々に強くなり、あっという間に土砂降りに、(下りは特に怖かったけど、そこ
はもうみなさんご存知のように、己の勘と天運をたよりに突っ込んで行くしかないん
ですが)冷たい雨に体温と気力を徐々に奪われて行きます。
空きっ腹にコーラを流し込みながら、日本海の重たーい空気に押しつぶされ、意識も
朦朧。
それでも最後まで自分を支えてくれていたのは、応援していただいた皆さんの『いい
ね』と熱いメッセージ、そして2年越しのこの場にいられる喜びと・・とにかくレー
スを楽しむ事を心がけ、トイレですれ違う強者どもにも会釈を忘れずに・・
『高いお金を払って苦しむ。それがトライアスロンの醍醐味』
いつかの北山先生のお言葉を肝に銘じ、特に 160km 地点の小木の坂からのラスト 30 キ
ロは、フィジカルからメンタルへの急勾配でもありました。
4
【ラン】
ランコースはほぼフラットで、今年からコース変更になり 21.1km の 2 周回。スタート
会場を出て商店街を抜けると大型店舗やホームセンターの並ぶバイパスへ、そして 3km
過ぎからはただもうひたすら田園風景の中を走ります。
見たこともないような見渡す限りの稲穂の海は、どこか外国を連想させるほど広大で、
前半明るいうちは、まだその鮮やかな黄金色に元気をもらえる気がしましたが、日が
落ちると真っ暗(あたり前ですが)。闇はまさに漆黒の、距離感を見失うような暗闇に
巨大な投光器が所々にそびえ立ちます。
容赦なく降り続く雨の中、何度も心が折れそうになりますが、一歩一歩積み重ねてい
くことだけに神経を集中させます。
最初の折り返しでガーミン(トライアスロン専用ウオッチ)を見ると 12km の表示、計
算があわず(12×4=48km!?)少しパニックになりますが、復路の折り返しがスター
ト地点より近いんだろうなと勝手な希望的予想をたてて何とか足が売り切れないよう
に 7 分/km のペースで1周回目の往路を折り返します。
しかしながら近いはずの復路の終わりはなかなか現れず、高まるあせりと不安に反比
例するように徐々にペースは落ちていきます。
結局スタート会場横の道路が復路の折り返しで総距離 23km。(全然近くない!?)
再度パニックになり、暗くて見えないガーミンのライトを点けたくて適当にボタンを
押してしまい距離がリセット!!(汗)。
(もう少し使い方を勉強していればよかったのですが。
というか 本番は夜ランになるのだから練習も夜ランしておくべきだった・・)
そこからは他のボタンを押すたびに表示が変わり(泣)、結局ガーミンはペースメーカ
ーとしての役割のみで、距離はエイドのたびに『あと何キロ?』と聞きながら走りま
した。(エイドのあたたかいお茶はありがたかったですが、距離を知らないボランティ
アの方もいて・・いや、知っていてもテキトーに答えないのが佐渡ならでは!?か
も?)
リセットされてしまったガーミンの最後の距離表示が正しければスタートからゴール
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までの総距離 46km、それが正しいのかどうかは別として、すべてガーミンまかせで走
るのであれば、誤差を含め最後の 10km を歩くための貯金はこの時点でなくなり、2周
回目は思わぬ借金返済のため 5 分/km でスタート。
とにかく行ける所までこのペースで行くしかない。降りしきる雨の中、出口の見えな
い闇のトンネルをくぐるような、今思えばこの2周回目の往路が、一番苦しかった分
だけ、一番記憶に焼き付く佐渡の思い出となりました。
『プロの競技者ではない僕らにとって、トライアスロンは試合当日の結果
よりも、そこに向かって日々努力する事が一番大切で意味のある事。』
師匠、近藤真彦さんのお言葉が胸にしみる、
忙しい夏を超えての「いいわけ」が明らかな、練習不足の佐渡紀行でした。
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国際 A タイプ男子 557 位
年齢別順位 50-54 男子 93 位
総合記録 236.0km 14:50:00
スイム 3.8km 1:37:04 バイク 190.0km 8:02:03 ラン 42.2km 5:10:53
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