2015/09/12 わたくしのプロフィール 研修会資料(最新版) 2015.9.2 なぜ、今、アクティブラーニングなのか 〜その危うさを超える方法〜 教育学研究科教育実践創成専攻 専攻代表 教職大学院 副院長 成田喜一郎 わたくしの立ち位置 ◉ 歴史学(日本近現代史) ◉ 国際理解教育研究・社会科教育研究 等 ◉ ホリスティック教育研究(越境する教育学) ・ ESDカリキュラム・デザイン研究 (本質的根源的問い,計画〔評価・内容・方法〕,実践,省察) ・ エスノグラフィー研究 (参与観察・実践記録・当事者記録を書く,分析・共有する) ◉ 原点への回帰(現在史・メタヒストリー) ・ライフヒストリー研究 (個人史・人間じんかん史を書く,分析・共有する) ・メタヒストリー研究 (歴史的事象の記述と詩や物語の記述との境界を超える) 本日のメニュー ① AL提唱の歴史的社会的を背景をつかむ WS1 ② 約10年間のAL定義の変遷を辿る WS2 ③ ALの危うさとは何か WS3 ④ ALの危うさを回避する方法 講義 ⑤ 「珠玉」のAL体験,本日の深い省察・観想 WS4 1978.3 W大学大学院修士課程修了(歴史学) 1978.4〜2003.3 附属中学校教員(25年) 2003.4〜2007.3 附属中学校副校長(4年) 2005.4〜現在 他大学兼任講師(11年目) 2007.4〜現在 本学大学教員(9年目) 2007.4〜2008.3 教職大学院設置準備室 新教員養成システム(コースの前身)の構築 2008.4〜現在 教職大学院専任教員(8年目) 本日のゴール アクティブラーニング=以下「AL」と略す ◎ 本質的で根源的な問い:永続的な理解・思考を促す問い 学習者と授業者にとって「学び」とは何か? ① ALとは何か,講義・WSを通して考えることができた ② ALとは何か,他者に説明できるようになった ③ 自らの単元計画を振り返る手立てを獲得できた ④ 明日の単元計画の中にALを位置づけようとしはじめた (CAN・DOリスト的「ゴール」の表示) AL提唱の歴史的社会的背景をつかむ 今,あなたがもっとも気になることは何か? 以下の中から列挙し,共有してみましょう。 ◉地球・・・ ◉国家・・・ ◉学校・・・ ◉家庭・・・ ◉個人(知・心・身体)・・・ ◉その他〔 〕・・・ WS1 1 2015/09/12 鬩ぎ合う持続可能性・不可能性 前人未踏の人口減少社会 + 超高齢・人口減少社会の日本 図1 持続可能な開発のための教育課題 AL提唱の背景に通底するもの ◉ 多様で複雑化する、喫緊の課題が襲来 上部構造(法・政治,社会的意識形態等) ↑規定(↓) 土台(生産関係の総体,経済的機構) マルクス(1956)『経済学批判』岩波文庫,p.13の要約 ALと聞いて何を連想するか? アクティブ ラーニング ひとりで・・・ ともだちと・・・ (友達/共達) 図2 日本の総人口の長期的トレンド(広井,2013) 持続可能な未来へのシナリオは? 政治家・実業家が危機感・焦燥感を募らせ, マスメディアがセンセーショナルに扱い, 学者・研究者でさえも適切な処方箋は出せない。 「専門家に任せるには重大過ぎる?」多様なテーマ 鷲田清一(2015)『しんがりの思想:反リーダーシップ論』角川新書 p.105 ◉現実からの本質的で根源的な問い 多数解の存在,それを調整し,合意形成へ AL定義の変遷を辿る① ①学生の自らの思考を促す能動的な学習」(略)「ア クティブ・ラーニングという用語は包括的な概念で あって、実際にそれは「学生参加型授業」「協調/協 同学習」「課題解決/探求学習」「能動的学習」 「PBL(Problem/Project Based Learning)」などと、 扱う力点の違いによってさまざまに呼ばれている。」 (溝上,2007:271) 2 2015/09/12 AL定義の変遷を辿る② 本約10年間のAL定義の変遷を辿る③ ②「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、 学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学 習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、 認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含 めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学 習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内での グループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク 等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。」 ③「一方的な知識伝達型講義を聴くという(受動的) 学習を乗り越える意味での、あらゆる能動的な学習 のこと。能動的な学習には、書く・話す・発表するな どの活動への関与と、そこから生じる認知プロセスの 外化を伴う。」 (溝上,2014:7) (2012年:平成24年8月28日中教審答申「新たな未来を築くための大 学教育の質的転換に向けて:生涯学び続け、主体的に考える力を育 成する大学へ」p.37) いわゆる〔文科省用語集」 約10年間のAL定義の変遷を辿る④ ④「課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学 ぶ学習(いわゆる「アクティブ・ラーニング」)」 下村博文(2014)「初等中等教育における教育課程の基準等の在り 方について(諮問)」 約10年間のAL定義の変遷を辿る⑤ ⑤「アクティブ・ラーニング」は、狭い意味における授 業の方法や技術の改善に留まるものではなく、子供 たちの深く対話的で主体的な学びを引き出 し、どの ような資質・能力を育むかという観点から、学習の在 り方そのものについて、そ の問い直しを目指すもの である。 (2015.8.20「教育課程企画特別部会 論点整理(案)」, p.21) ALの暫定的定義の創成:成田 課題の発見と解決,すなわち探究に向けて, 主体的な学びを引き出し,協働的な思考・判 断・表現等を促す学習である。 それは,単元やシラバスなど一連のカリキュラ ムの中で,観る,読む,聴く,書く,話す,発表 し合うなど,あらゆる学習活動に〈意味あるつ ながり〉を生み出してゆく。 (成田,2015.9.2創成©) ALの危うさとは何か アクティブラーニングへの共感と違和感とその狭間 など,あなたの正直な気持ちをカミングアウトし合お う。 ◉共感しますか? ◉違和感をいだきますか? ◉その狭間にいますか? ◎それは,なぜだと思いますか? 3 2015/09/12 ALの危うさとは何か ALの危うさとは何か ① 学校現場における両極分解の可能性 : 校種別温 度差・個人差の固定化 ② 90年代「新学力観」登場時の学校現場・教育委員会 の動向「バスに乗り遅れるな!」 : 従前型一斉授 業・講義形式の授業の全面否定への集団心理 ③ いつか来た道、這い回る「活動主義」の横行 : 児童 生徒・学生・教員が「やらされる活動」への展開 ④ 問いのない学習活動、振り返りや見通しのない学習 活動、方法やスキルへの過度な依存 ⑤ 地球規模及び我が国の現状認識の捉え方とアク ティブラーンングの目指す方向性の違い ALの危うさを回避する方法 ① 何のためのALなのか(課題発見・解決,探究) ② 学習者に切実・有意味な問いはあるか ③ 事前のゴールを示せるか(クライテリアの明示) ④ 思考・判断・表現等を促す課題となっているか ⑤ 如何なる形態のALが有効なのか(方法の選択) ⑥ 学びを振り返る機会はあるか(形成的アセスメント) ALの危うさを回避する方法 ⑦ 学習者の学びの履歴を言語化・可視化できたか ⑧ 教師の指導(学び)の履歴を「実践記録」に残せるか → ⑦⑧:学習と実践をメタ認知するエスノグラフィー (別紙資料 p.5 脚注参照) ⑨ カリキュラム・マネジメントが行われているか → 教科・領域間のつながりの意識化・可視化 (R-)PDCA,CAP, Do ! サイクル,ALACTモデル (別紙資料 p.5 脚注参照) ⑩ その他,貴校・貴教科・あなた独自の方法開発! 多様なAL手法からの選択(抄) ① 「PBL(Problem based learning/Project based learning)」 ② 「知識構成型ジグソー法」 ③ 「ディベート」 ④ 「グループワーク」 ⑤ 「ペアワーク」(二人)→「鼎かなえのワーク」(三人)へ ⑥ 位置づけ直される「問答法」 ⑦ 位置づけ直される「講義」(一斉授業) ⑧ 位置づけ直される「個別学習」(独学) ⑨ 「ルカーワ型テスト」及び「作問・作解・作解説」 ALの暫定的定義の創成,再び 課題の発見と解決,すなわち探究に向けて, 主体的な学びを引き出し,協働的な思考・判 断・表現等を促す学習である。 それは,単元やシラバスなど一連のカリキュラ ムの中で,探す,観る,読む,聴く,書く,話す, 発表し合うなど,あらゆる学習活動に〈意味あ るつながり〉を生み出してゆく。 (成田,2015.9.2創成・二訂版©) 4 2015/09/12 これまでの本講義やWSへの質問等 ① ずっと前から理科で「実験」をしているが、それはア クティブラーニングではないのか? →(1)単元や教科のねらいを超えた問いがあるか (2)主体的で?協働的な?学び?になっているか (3)深い振り返り(省察・観想)の機会はあるか ② アクティブラーニングの「評価」はどうするのか? →カリキュラム(授業)の逆向き設計をしたか ③ 香蘭女学校ならではの質問等は? 体験を通して,ALを説明する ① 講義を踏まえて,ALを説明できるか? ② 体験を通して,このALを説明できるか? ③ 体験を通して,浮かび上がる疑問や違和感は? 「珠玉」のAL体験 深い振り返り体験 ① 教科を超えてALを体験してみよう 「雲ってなんだろう」(中2理科) ② 教科や領域を超えて「絵本」を読み解いてみよう 『父は空 母は大地 : インディアンからの手紙』 (中学生・高校生,学生・院生,教員,市民) ③ 教員研修等としてのALを体験してみよう 「ライフヒストリーデザイン曼荼羅」(教員,保護者) 知識構成型ジグソー法を体験する ① 導入(つながり) : わたくしの想い出の中の「雲」 ② 課題(問い) : 「雲」はどのようにしてできるのだろう ③ 予想(予察) : 「雲」ができるわけを予想しよう ④ エキスパート活動 : 資料ABCを読み解く あなたは資料A, 資料B,資料Cのエキスパートになる(説明できる) ⑤ クロストーク活動 : 各ABCの考えを再構成する 「分業による協業」によって,問いへの応答をめざす ⑥ 課題解決 : 問いへの応答を行い、発表する ⑦ まとめ(振り返り) : 省察や観想を行う 教科等を超えて「絵本」を読み解く ① あなたのライフヒストリーの中の「絵本」は何? ② 問い:「絵本」を自分の教科や領域等に引き寄 せて教材=学習財化できるだろうか. ③ 『父は空 母は大地』の「読み聴き」体験をする. ④ 「で・と・に」学習を行う. ・ひとりで,ともだち(友達・共達)と,先生に学ぶ. ⑤ 指示されたワークシートにメモする. 「ライフヒストリーデザイン曼荼羅」を描く ① あなたは,いつどこで「曼荼羅」に出会ったか? 「曼荼羅Mandala/Mandorlaとの出会い:2015.9.2」(ブログ) http://blog.goo.ne.jp/jzs03765/e/0569ede1868d5024a73cde6a8f23a439 ② 別紙ワークシート資料(③・④)を参照する. ③ 「ライフヒストリーデザイン曼荼羅」を描く. ④ 「ライフヒストリーデザイン曼荼羅」敬聴し合う. ⑤ 振り返り(省察・観想)を行う. 5 2015/09/12 本日,深い「振り返り」を体験する 本日,深い「振り返り」を体験する ◉ まずは、「観想的アプローチ」にチャレンジ 本日の学びの事実+あなたの想像力等→創作叙事詩 ◉ 次に、「省察」を行いましょう! ◉ 創作叙事詩の表現形式の自己選択 ① 詩(自由詩・定型詩) ② キャッチ・フレーズ,標語 ③ 漢字1字 ④ イラスト ⑤ 空白! ◉ 論理と証拠をもとに,「解題」を書く なぜ、その「創作叙事詩」を書いたのか, 理由や根拠を講義・WSの中から見つける。 観想と省察のシェア ◉シェアの方法 ① 「回覧コメント法」を行う。 ② 「創作叙事詩」を読み語り,質問や感想・意見 をもらう。そして,「解題」を読み語り,質問や感想・ 意見をももらう。(間主観性の世界へ) ③ 「創作叙事詩・解題」を回収し,「創作叙事詩・ 解題」集を作り,学びの共有財産(エビデンス)とす る。 本日のゴール ◎ 本質的で根源的な問い:永続的な理解・思考を促す問い 学習者と授業者にとって「学び」とは何か? ① ALとは何か,講義・WSを通して考えることができた ② ALとは何か,他者に説明できるようになった ③ 自らの単元計画を振り返る手立てを獲得できた ④ 明日の単元計画の中にALを位置づけようとしはじめた (CAN・DOリスト的「ゴール」の表示) 主な参考サイト 問い合わせ先 等 ・山地弘起「アクティブ・ラーニングとはなにか」: http://www.juce.jp/LINK/journal/1403/02_01.html ・文部科学省「産業界ニーズに対応した教育改善・充実体制整備事業」中 部圏の地域・産業界との連携を通した教育改革力の強化 平成26年度 東 海 A(教育力)チーム成果物 『アクティブラーニング失敗事例ハンドブック』: http://www.nucba.ac.jp/archives/151/201507/ ALshippaiJireiHandBook.pdf ・How can you incorporate active learning into the classroom?: http://www.crlt.umich.edu/sites/default/files/resource_files/Active %20Learning%20Continuum.pdf ・アクティブ・ラーニングをどう評価すべきか〜西岡加名恵氏に聞く http://eduview.jp/?p=1636 ◉東京学芸大学教職大学院専攻代表/副院長 成田喜一郎 電話(研究室) : 042-329-7397 E-mail : [email protected] Blog①「越境する教育学の創成」: http://pedagogytocrosstheborder.blogspot.jp Blog②「社会科教育の現在・過去・未来」: http://shakaikakyouikukennkyuu.blogspot.jp 教職大学院キーワード・カタカナ語小事典(Web初版): http://keywordkatakanagojiten2013.blogspot.jp/? view=flipcard 6
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