第 回 少額の減価償却資産の金額判定と規定適用上の注意点 公認

平成27年
第
回 少額の減価償却資産の金額判定と規定適用上の注意点
篠藤 敦子
公認会計士・税理士 減価償却資産のうち取得価額が10万円未満のもの(少額の減価償却資産)については、取得価額を一括して損金の額に算入することが
できます。この少額の減価償却資産に関する規定は、会社の規模に関わらず適用する機会が多いものです。
そこで、今回は、取得価額が10万円未満であるかどうかの判定方法と、規定を適用するときの注意点について解説します。
本体価格95,000円のパソコンを10台購入し、使用を開始しました。会計上は、取得価額の合計額である95万円を費用処理
しています。税務上も、95万円を一括して損金の額に算入することができますか。消費税の処理は、税抜経理方式を採用し
ています。
税抜経理方式を採用していますので、パソコン1台あたりの取得価額は、消費税抜きの価額である95,000円となります。
取得価額が10万円未満となり少額の減価償却資産に該当しますので、税務上も95万円を一括して損金の額に算入することが
できます。
解説
1 取得価額10万円未満の判定
取得価額の判定の単位】
取得価額が10万円未満であるかどうかは、取得価額の合計額ではなく、次のように判定します。
① 単体で機能する減価償却資産
② 単体では機能を発揮しない減価償却資産
▶ 通常1単位として取引されるその単位ごとに判定
▶ 機能を有する単位ごとに判定
(例)パソコン、機械
➡
1台あたりの金額で判定
(例)組立式の書棚
➡
各部材の金額ではなく、書棚一式の金額で判定
< 10万円
パソコン1台ごと < 10万円
< 10万円
< 10万円
組立式の書棚一式 < 10万円
< 10万円
消費税の取扱い】
取得価額が10万円未満であるかどうかは、採用している消費税の経理処理方式に基づいて算定した価額で判定します。課税事業者であ
れば、税抜経理方式を採用している場合は消費税抜きの価額、税込経理方式を採用している場合は消費税込みの価額となります。
なお、免税事業者は税込経理方式によることになりますので、消費税込みの価額で判定します。
消費税の経理処理方式と10万円未満の判定
消費税の経理処理方式
10万円未満の判定
税抜経理方式
消費税抜きの価額
税込経理方式
消費税込みの価額
課税事業者
免税事業者
規定適用上の注意点
少額の減価償却資産として取得価額を一括して損金の額に算入することができるのは、資産の使用を開始した事業年度であり、会計上、
取得原価を費用処理(損金経理といいます)している場合に限られます。
使用を開始した事業年度に固定資産として計上している場合には、その後の事業年度において取得価額を一括して損金の額に算入する
ことはできません。
また、取得事業年度と使用開始事業年度が異なる資産については、取得した事業年度ではなく使用を開始した事業年度の損金の額に算
入することになります。
少額の減価償却資産について、取得価額を一括して損金の額に算入することができるのは、❶使用を開始した事業年
度であること、❷損金経理をしていること、が要件となります。取得価額の判定方法とともに、これら2つの要件を満
たしているかどうかにも注意が必要です。
しの とう
あつ こ
篠藤 敦子(公認会計士・税理士)
著者紹介
名古屋市出身。津田塾大学卒業後、平成
北区堂島)開業。平成20年
年公認会計士登録。大手監査法人を経て平成
年に篠藤公認会計士事務所(大阪市
月より甲南大学大学院社会科学研究科会計専門職専攻教授。企業の監査役を兼務している。
月