移行対象

Que sera sera ~け・せら・せら~
け・せら・せら~
Vol.10
心理士通信
平成 27 年 3 月号
児童発達支援事業所あいさい わかば 臨床心理士
岸
千鶴
移行対象
今年の冬は寒さが厳しく感じ、春の訪れが待ち遠しいで
すね。花粉症の方にはつらい季節かもしれませんが、春の
便りには心が浮き立ちますね。
ライナスの毛布
みなさんは移行対象という言葉を知っていますか?以前
「ほどよい母親」の回に出てきたウィニコットが使い始め
た言葉です。
彼は幼児が肌身離さず持ち歩き、それがないととても不
安になる、毛布やぬいぐるみなどの無生物を移行対象と呼
びました。スヌーピーでおなじみのピーナッツシリーズに
出てくる、ライナスが持っている毛布ですね。
ライナスはいつも指しゃぶりをして、毛布を持っていま
すよね。お姉さんのルーシーに「現実
を直視しないさい!」
と叱られて、
時々
手放してみるものの、不安で体が震え
てしまい、やっぱり手放せません。
どんなものがあるの?
毛布、布団、シーツ、タオルケット、ハンカチ、ガーゼ
など、生まれてすぐから手元にあるものが多く、ぬいぐる
みや枕などが続きます。ちなみにライナスの持っている毛
布はセキュリティ・ブランケット(安心毛布)とよばれて
いるそうですよ。
欧米では 6~7 割の子どもたちに移行対象がありますが、
日本では 3 割程度の出現率だそうです。自分やわが子に移
行対象がなかったという人の方が多いということですね。
何のために?
毛布やぬいぐるみなど色々な物が移行対象になりますが、
共通しているのは、柔らかくて肌触りがよいという特徴で
す。これは赤ちゃんが感じる「お母さん」の特徴です。い
つも優しく身を包んで守ってくれるお母さんの代わりのも
のが、移行対象なんですね。
お母さんにいつもそばにいてほしいという子どもの願い
をかなえるのが、移行対象のもつ働きです。
子どもたちはこの毛布を使って、なんとかお母さんがそ
ばにいないという現実に耐えているのです。ですから、移
行対象がなくてもいつでもお母さんを思い出せるようにな
ると、母子関係が安定し移行対象は役目を終えます。
とりあつかい
移行対象は子どもにとって、初めての所有物であり、専
有権があるので、大人は勝手に取り上げてはいけません。
専有権を認めてもらって、その物をコントロールすること
は自分の気持ちをコントロールすることへつながります。
子どもは移行対象を大切にし可愛がるだけでなく、攻撃
もします。移行対象に対してプラス、マイナス全ての感情
をぶつけることで、感情のコントロールを学びますので、
攻撃していても取り上げないでね。
勝手に洗わないであげてください。汚いからと大人は親
切のつもりでも、子どもは自分の領域を勝手に侵されたと
感じます。洗われることで、その「毛布」は違うものにな
ってしまうのです。
「汚れたから新しいお母さんどうぞ」と
取り換えられるようなものなのです。だから、洗うならこ
っそりと見つからないように。
お母さんとの関係
移行対象は、子どもが心のおもむくままに可愛がり、攻
撃し、汚れて、ボロボロになっても、そこに存在しなけれ
ばなりません。
それは、お母さんと子どもの関係そのものかもしれませ
ん。どんなにわがままを言っても、大泣
きをしてぐずっても、ずっとお母さんは
そばにいて、自分を愛してくれている。
だから安心して、
自立していけるのです。
卒業
こんな風に大切にしていたものも、年少さん(4 歳)く
らいになると、まるでぼろ布のように見捨てて振り返るこ
ともなくなります。大人がどんなにやめさせようと思って
も、子どもにとって必要な間は決して移行対象から卒業す
ることはありません。
必要がなくなれば、自発的に移行対象から卒業していき
ます。
昨日まではあんなに執着していたのに、
別れの時は、
じつにあっさりとしていますよ。
こだわり
移行対象への愛着行動と、こだわり行動は少し意味合い
が違うようです。移行対象は「現実へのかけはし」である
のに対して、こだわりは「現実へのバリア」であると言わ
れています。どちらも、不安に対処するための方法だと言
えますが、こだわりの対象は固い物が多いそうです。
心配なことがあれば、先生に相談したり、あいさいわか
ばの心理相談をご利用ください。