平成 27 年 11 月 2 日 No.516 金融商品に係る課税方式の変更と損益通算範囲の拡大 平成 28 年 1 月より金融所得課税の一体化を進める観点から、債券や公社債等に対する課税方式が上場株式等と同様に申告 分離課税に変更されます。そのうえで損益通算できる範囲が債券や公社債等にまで拡大されます。 1.改正の背景 現行の制度においては、債券や公社債等と上場株式等とに係る課税方式に差異があり、株式の譲渡損失を債券等の利子所 得と損益通算ができないなど、金融商品間の損益通算範囲が制限されており、投資家が多様な金融商品に投資しにくい状況 にあります。そこで、個人投資家の市場参加を促すことを通じ、国民の長期的な財産形成を支援する観点から、金融証 券税制の抜本的見直しが行われます。 2.債券や公社債等に対する課税方式の変更 債券や公社債等も上場株式等と同様に、課税方式が申告分離課税になります。したがって、今まで原則非課税であった債 券や公社債等の譲渡益が課税対象となります。 平成 27 年分まで 平成 28 年分以降 譲渡益(債券・公社債等) 利子(債券) 収益分配金 原則非課税 20%(※1) の申告分離課税 源泉分離課税 (公社債投信) 償還金(債券) 総合課税 ※1 平成49 年末まで、復興特別所得税の対象となるため20.315%となります。 3.債券や公社債等と上場株式等との損益通算の対象範囲の拡充 特定公社債等の利子所得及び配当所得が上場株式等の譲渡損失及び配当所得の損益通算の特例の対象に加えられ、これら の所得間並びに上場株式等の配当所得及び譲渡所得等との損益通算が可能になります。 また、平成 28 年 1 月 1 日以後に特定公社債等の譲渡により生じた損失の金額のうち、その年に損益通算しても控除しき れない金額については、翌年以後 3 年間にわたり、特定公社債等の利子所得等及び譲渡所得等並びに上場株式等の配当所得 及び譲渡所得等からの繰越控除ができます。 ~平成 27 年は損益通算不可 通 算 可 平成 28 年~は損益通算可 上場株式・株式投信等 債券・公社債投信 上場株式・株式投信等※ 債券・公社債投信 譲渡・償還差益 譲渡・償還損益 譲渡・償還差益 譲渡・償還損益 通 算 通 不 算 可 可 可 配当・分配金 利子・分配金 配当・分配金 通 算 通算不可 通 通算可 算 可 利子・分配金 4.年末までに検討したい対策 譲渡益の発生する債券については、年内に譲渡することを検討し、譲渡損(※2)が発生する債券については、年明けに譲渡 することを検討してはいかがでしょうか。 ※2 平成28 年以降、上場株式等の譲渡損益と取引相場のない株式の譲渡損益との通算はできません。 (担当:矢幡 賢一)
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