P10,11 円蔵寺縁起

t e m p l e
Y e n - z o u
H i s t o r y
圓蔵寺縁起
◎歴史◎
千二百年におよぶ歴史を誇る
名刹・福満虚空蔵尊圓蔵寺。
いにしえの昔より霊験あらたかとし
て人々の厚い信仰を広く集め、会津
では親しみを込めて﹁柳津の虚空蔵
さま﹂と呼ばれてきました。
圓蔵寺の福満虚空蔵菩薩は、千葉
県天津小湊町・清澄寺の能満虚空蔵
菩薩、茨城県東海村・日光寺の大満
虚空蔵菩薩と共に、日本三大虚空蔵
菩薩に数えられています。
御本尊である福満虚空蔵尊は弘法
によれば、延暦二十三年︵八〇四︶
大師の御作と伝えられており、縁起
いにしえより続く人々の厚い信仰
弘法大師が三十一歳にて唐に渡り、
あ じゃ り
歴史の流れに消えることなく
青龍寺の慧可阿闍梨に謁して修行を
え か
柳津の地に時空を越えて響く祈りの心
積み帰国の際に三鈷と霊木を授けら
れました。帰国の途中、日本におけ
る仏法興隆有縁の霊地を求めて三鈷
と霊木を海に投じると、不思議にも
三鈷は紀伊国︵和歌山︶に流れ着い
たため、その地に真言宗総本山高野
山金剛峰寺が建立されました。一
方、霊木は、紀伊国那智の浦に漂着
したのを巡錫中の大師が見つけら
れ、元・中・末に三断して再度海に
投じられました。後日、元木は安房
国 天 津浦に流れ着いて能満虚空蔵尊
が刻まれ、中木は常陸国村松に至り大
満虚空蔵尊が刻まれました。末木は、
越後の海より川を遡って柳津に至り、
土地の漁翁に拾い上げられました。霊
さいかいもくよく
いっ
木が漂着した知らせを聞いた大師は、
とうさんれい
大慈大悲の願いを込めて斎戒沐浴し一
刀三礼されて虚空蔵菩薩の尊像を刻ま
れました。これが霊験は比類するもの
なきと言い伝えられている福満虚空蔵
尊であり、圓蔵寺は大同年間に法相宗
の大僧徳一によって開創されたと伝え
られています。
寺の難工事を手伝った赤牛の話
や、七日堂裸まいりにまつわる話な
ど、虚空蔵尊圓蔵寺に由縁の伝説も
多く、弘法大師が虚空蔵菩薩を刻ま
れた際に出た木屑を只見川に投じた
ところ、たちまち無数のウグイに変
じたと伝えられており、現在も魚淵
に群生するウグイは霊魚として厚く
保護され、昭和十五年には天然記念
物に指定されています。
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