〈調査レポート〉子どもの中の幸福感と未来像

〈調査レポート〉子どもの中の幸福感と未来像
速報版
『児童心理』3月号〔1000 号記念特別号〕
(2月 12 日発売)に掲載となる調査報告の中
から、内容をピックアップしてご紹介します。調査対象は、小学6年生 1,439 名で、1979
年調査は小学6年生 1,834 名。
なお、本調査研究の代表者(第1部)は、深谷昌志・東京成徳大学名誉教授(教育社会
学専攻)である。
1.本プロジェクトのねらい
現在の日本の子どもの成長の姿を、35 年前の子ども調査のデータと対比させながら(注1)、
明らかにしようとした。子どもの幸福感や未来像(日本社会のこれから)を探ろうとして
いる。
注1)「子どもの中の未来像」(深谷昌志・深谷和子『モノグラフ小学生ナウ』Vol.1-3 号、
福武書店(現ベネッセ)教育研究所、1981 年 8 月)より
2.昼休みが楽しい
朝、目が覚めた時から寝る時まで、1 日の順を追う形で「楽しさ」を尋ねた。1日の中で、
もっとも楽しい時間は、現在も 35 年前も「昼休みに、友だちと遊んでいる時」、次いで、
「家
でテレビを見ている時」
、その後に「給食の時間」と「体育の時間」がつづく。1979 年と比
べて体育の時間の楽しさが減少し、昼休みの楽しさが増加したのは興味深い。
図表1 1 日の中での楽しさ
「とても」+「かなり」楽しい割合 (%)
90.0
83.5
77.4
80.0
68.6
67.1
66.2
70.0
55.755.7
50.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
45.6 45.5
45.243.3
38.7
36.6
37.3
34.4
24.6
20.0 24.2
13.3 16.7
8.3 12.0
7.6
1979
2014
11.9
10.9
0.0
①
朝
、
目
覚
め
た
時
②
朝
ご
飯
の
時
③
授
業
の
前
④
算
数
の
時
間
⑤
体
育
の
時
間
⑥
給
食
の
時
間
⑦
昼
休
み
の
遊
び
⑧
学
習
塾
の
時
⑨
夕
ご
飯
の
時
⑩
食
後
、
家
族
と
⑪
家
で
テ
レ
ビ
⑫
家
で
勉
強
⑬
寝
る
時
3.ケータイ・スマホは、ほどほどの楽しさ(現在)
友だちとケータイやスマホをしている時の楽しさを尋ねた(35 年前は項目がない)。
「と
ても」と「かなり」楽しい割合は 48.2%で、楽しさの中では5位。
「給食の時間」程楽しく
はないが、
「夕食の時間」よりは楽しいという評価である。熱中という印象は受けない。
図表2 ケータイやスマホをしている時の楽しさ(2014 年)
とても
楽しい
かなり
楽しい
楽しい・
小計
少し楽
しい
男子
26.0
19.2
45.2
15.2
女子
31.7
19.6
51.3
全体
28.8
19.4
48.2
あまり楽
しくない
全く楽し
くない
19.2
4.2
16.3
14.5
19.6
5.1
9.6
14.8
19.4
4.6
12.9
*ケータイやスマホ所持者の回答
普通位
(%)
p<0.05
4. 「テレビもスマホも大好き」な子は要注意
スマホの利用時間とテレビ視聴時間の関連を見た。テレビ視聴が長時間の子どもは、ス
マホ利用5時間以上が、36.3%を占める。この結果は、テレビに溺れがちな子がスマホにも
溺れることを示唆している。
図表3 スマホの利用時間×テレビ視聴時間
(%)
1 時間
以内
2 時間
3 ~4
時間
10 時間
以上
短時間
60.5
7.0
18.6
7.0
4.7
2.3
中間群
40.6
26.2
19.8
7.9
3.5
2.0
長時間
15.4
23.1
25.3
16.5
15.4
4.4
全体
36.2
22.8
21.4
10.1
6.9
2.7
スマホ
テレビ
*回答者はスマホの所持者。
5~6
時間
7~10
時間
p<0.001
5.人生はおおむね幸せ?
幸せ感について、
「小学 1.2 年の頃」
(過去)
、現在、そして、
「中学生になった頃」、
「大学
生の頃」
、さらに、成人後へと、見通し(予想)を聞いている。1979 年の子どもは、「中学
生、大学生になると幸せ感が減って、これから先は苦しい時期が待っているだろう」と予
想していたが、2014 年の子どもは、基本的に現在と同じ幸せ感が続くと予想している。
図表4 しあわせ感の推移
「とても」+「かなり」幸せの割合 (%)
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
58.1
60.2
57.5
57.4
52.1
36.3
56.2
76.2
64.7
52.2
36.0
30.4
1979
2014
小
一
・
二
年
現
在
中
学
生
の
頃
大
学
生
の
頃
結
婚
し
て
年
を
と
っ
て
6.友だちが多い子、勉強が得意な子が頑張る
「とても頑張る」との自己評価を抱くのは、勉強が得意で(32.8%)、友だちも多く(32.9%)
、
テレビの視聴時間の短い(18.7%)子どもである。
図表5 頑張る(自己評価)×属性(勉強、友だち、テレビ)
(%)
勉強
(得意群) 32.8
(普通群) 13.6
(苦手群)
8.5
友だち
(多い群) 32.9
(普通群) 11.3
(少ない群) 5.9
テレビ
(短い群) 18.7
(普通群) 17.1
(長い群)
14.2
*表中の数値は「とても頑張る」と答えた子の割合(全体では 16.8%)
。
*勉強、友だちが p<0.001。テレビ p<0.01 で有意差
7.中学進学のプレッシャーの減少
中学へ進んだ時、子どもの生活はどう変わると予想されているか。1979 年の子どもは、
中学へ入ったら、勉強時間がぐんと増え(88.0%)
、テレビを見る時間が減り(86.7%)
、友
だちと遊ぶ時間も大きく減る(81.8%)と予想していた。勉強に追われる暗い日々の到来を
予感している。そして、2014 年の子どもの 76.4%も、勉強をする時間が増えると感じてい
る。しかし、
「テレビを見る時間が減る」が 53.5%のように、未来の暗さはそれ程深刻では
ない。
図表6 中学生になってからの見通し
(%) 100.0
90.0
80.0
70.0
60.0
50.0
40.0
30.0
20.0
10.0
0.0
88.0
76.4
86.7
81.8
53.5
79.0
56.8
53.4
1979年
2014年
勉
強
増す
える
る時
間
が
時
間
が
減
る
テ
レ
ビ
を
見
る
時
間
が
減
る
友
だ
ち
と
遊
ぶ
眠
る
時
間
が
減
る
8.頑張る、のんびりの両極化
勉強が得意な子は、中学生になったら、「テレビ視聴時間を減らし、睡眠時間を短くして
勉強する」と答えている。それに対し、勉強が苦手な子は「テレビの視聴時間はそれほど
減らないだろう」と予想している。したがって、中学へ入ってから、頑張る子とのんびり
とする子とに、子どもが両極化するのを感じる。
図表7 中学生になったら×属性
勉強
(%)
項目
テレビを見る
友と遊ぶ時間
勉強する時間
ねむる時間
条件
やや+
ぐんと減る
やや+
ぐんと減る
やや+
ぐんと増える
やや+
ぐんと減る
得意群
60.1
31.1
81.7
58.3
中間群
55.8
30.5
79.7
58.0
苦手群
43.3
24.7
65.5
53.2
p<0.001
9.日本は頑張る人と親切な人が多い国
子どもたちは日本をどう感じているか。1979 年の子どもたちは、日本を「平和で頑張る
人が多い国」と評価している。そして 2014 年の子どもたちも、日本を「頑張る人と親切な
人が多い平和な国」と感じている。全体として日本に対する評価は 35 年間で3割程度高ま
っている。
図表8 日本の国について
全体
差
2014
1979
頑張る人が多い
80.3
46.8
親切な人が多い
74.5
とても平和な国だ
(%)
男子
女子
2014
1979
2014
1979
33.5
80.8
49.7
79.9
43.4
31.5
43.0
76.2
32.2
72.6
30.5
74.6
54.9
19.7
76.9
56.5
72.4
53.1
皆が豊かな暮らし
56.5
40.9
15.6
59.0
42.4
43.8
39.4
4 項目平均
71.5
43.5
28.0
73.2
45.2
67.2
41.6
*「とても」+「かなり」そうの割合
10.日本の将来は楽観できない
日本の「現在と未来との比較」をすると、1979 年の場合は(差の欄によれば)
、現在と未
来でほとんど変化がない。それに対して、2014 年の場合は、現在の日本についての評価は
高いが、将来について明るい見通しを持つ子どもの割合が減少している。
図表9 日本の国の現在と未来
1979
現在
未来
頑張る人が多くなる
46.8
48.1
親切な人が多くなる
31.5
とても平和な国になる
豊かに暮らせるように
(%)
2014
差
現在
未来
差
1.3
80.3
68.1
-12.2
37.6
6.1
74.5
64.6
- 9.9
54.9
51.0
-3.9
74.6
68.4
- 6.2
40.9
40.4
-0.5
56.5
65.8
9.3
43.5
44.3
0.8
71.5
66.7
- 4.8
*「とても」+「かなり」そうの割合