重要文化財 宝城坊修理場見学 県央支部 東 二郎 平成27年7月8日午後3時30分から約一時間、伊勢原市の日向薬師にある重要文化 財宝城坊の修理工事の状況を見学させて頂きました。当日は、案内人南雲一郎さんを含め 県央支部より5名と、ほか4名の合計9名の参加がありました。 工事期間は、平成22年11月より来年平成28年9月までの約6年間。工事概要とし ましては、本堂には屋根の雨漏りがあり、柱の蟻害などの破損があり、建物を全解体し、 破損部を修理の上組み直すという大変大規模な工事であります。 解説は文化財建造物保存技術協会の園田様からこれまでの工事写真に従って詳しい説 明をして頂きました。 使用されている材料から推定すると建設は、ある部位では鎌倉時代の材料が使われてい たりしているそうですが、江戸時代中期に間違いないと思われ、柱には杉・松が使用され ているそうですが、材種に関しては、当時、手に入りやすい材料を用いたのではないかと の説明がありました。 今回一番に興味深かったのが、蟻害のある柱の補修方法でした。端部から 100cm 程の範 囲については、蟻害の部分を削ぎ出してそこに芯材を入れて一体化させる方法と、柱全体 に蟻害が及んでいる場合は、柱をのこぎりで半分に割って、皮だけは使うようにして新た な芯材を入れて接着剤を用いて皮と一体化させ柱を復元している点でした。 もう一つの興味を引いた点は、この改修工事に先立ち、宝城坊の耐震診断及び耐震補強 設計を行い工事に臨まれた点です。1階に補強壁(現状の落込板の厚みを厚くする)を増 設したり、建物的には大きな空間なので、地震力に対して建物全体で抵抗できるよう水平 剛性を確保するために、軒天の上に構造用合板を重ね貼りし、場所によってはターンバッ クル(木材を傷めないように端部はプレートを挟み込み)を設置して床面から架構に地震 力を伝達させている事でした。 木材に鉄材を使用する事への抵抗感を大工さん達は持たれているのではないかと思い ながら、耐震結果を数値にて確認せざるを得ないシステムがあり、木組みによる抵抗値を 数値化できない歯がゆさを想像しました。確か昨年も見学会が開催されたと思いますが、 その時にも来ておけば良かったと反省したところです。支部の仲間と伝統建築の良さを語 り合えた午後でした。 SALON_73 /2015.9 (一社)神奈川県建築士会
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