リスクオフモード突 の背景と今後の 通し

ベアリング
インベストメント・アップデート
2015 年 8 ⽉ 27 ⽇
リスクオフモード突⼊の背景と今後の⾒通し
ベアリング・アセット・マネジメント・リミテッド
グローバル債券チーム
円ベース・ポートフォリオ構築グループ
要旨

中国の景気減速を契機とした世界同時株安が進⾏し、市場は⼀気にリスクオフモードに突⼊しています。

中国の景気減速は、資源価格の急落を通じて新興国不安にもつながっていますが、主要中央銀⾏は有効な対
策を打ち出せておらず、「中央銀⾏の政策期待の剥落」のリスクが顕在化しています。

市場の調整過程は年度後半も持続し、⽶国の利上げ観測は⼤きく後退するとみています。⽶国 10 年債利回
りは 1.8%以下の⽔準定着が⾒込まれます。
8 ⽉の⼈⺠元の実質切り下げ以降、市場は急速にリ
を取り巻く 3 重苦として、①中国景気の減速、②⽶
スクオフモードに⼊り、世界的に株価が急落し、⽶
ドル⾼、③資源安、を指摘していました。
国の利上げ観測の後退が進⾏しています。また、恐
怖指数とも呼ばれ市場のリスク警戒度を数値で⽰す
今般のリスクオフモード突⼊の背景は、中国の景気
VIX 指数は今週の始めに⼀時 40 に到達し、欧州債
減速を契機に中国株の急落と資源価格の⼀段の下押
務危機が深刻化した 2011 年以来の⾼⽔準にある状
しが同時並⾏的に進⾏していた中、8 ⽉に⼊り、中
況です。
国が打ち出した⼈⺠元の実質切り下げや株価買い⽀
え策が中国株の下落の⻭⽌めとならないことが鮮明
この急速なリスクオフモード突⼊の背景と今後の⾒
化し、加えて、資源価格下落で交易条件が悪化して
通しについて弊グループの⾒解は以下の通りです。
いる新興国経済への不安が増幅される格好でリスク
性資産に価格調整圧⼒が強まっていったものと⾒て
リスクオフモード突⼊の背景
います。

中国⼈⺠元の実質切り下げや⾦融緩和でも下げ
⽌まらない中国株の下落
中国⼈⺠銀⾏が相次いで打ち出した⾦融緩和策が奏

中国株の下落が⽰唆する中国経済への不安と同
時並⾏的に進む資源価格の急落
不安⼼理を拡⼤させ、この不安⼼理の増⼤に⽶連邦

中国への資源輸出に依存していた新興国経済へ
の不安⼼理増⼤

これらの複合的な不安⼼理増⼤に対して万策尽
きつつある中央銀⾏

何かあれば救ってくれるだろうという中央銀⾏
への過度の期待の剥落(中央銀⾏神話の崩壊)
功せず、⼈⺠元の実質的引き下げもかえって市場の
準備制度理事会(以下、FRB)や欧州中央銀⾏(以
下、ECB)、⽇銀も有効な政策を打ち出せていない
⾯では、弊グループが⾒ていた 2015 年のリスク要
因の⼀つである、「中央銀⾏の政策期待の剥落」の
リスクが顕在化している状況とも考えられます。市
場では何かショックがあれば最終的には中央銀⾏が
救ってくれるだろうという過度の期待がありました
弊グループでは、昨年秋からこれまでの間、2015
ので、その期待をもとに価格形成されていた株式な
年に念頭に置くべきリスク要因として、①⽶ドル⾼
どのリスク性資産は、期待の剥落分だけリスクプレ
と新興国のデフォルトリスク、②先進国の中間層の
ミアムが上乗せされ厳しめに価格調整圧⼒が加えら
崩壊と決められない政治、③新興国の地政学的リス
れます。
ク、④中央銀⾏の政策期待の剥落、⑤⻑期停滞論の
台頭、の 5 つを挙げていました。また、新興国市場
市場の様々な期待(中国の成⻑軌道は崩れないだろ
う、中国が資源を買い続けるだろう、市場を脅かす
情報提供⽤資料
ショックが起きても中央銀⾏が救ってくれるだろう)
今回のリスクオフモード突⼊の背景を弊グループの
が⾒直しを迫られ、相応のリスクを織り込む形で価
⾒⽴て通りと仮定すると、中国景気の減速、中央銀
格⽔準の調整が進⾏しているのが現状のリスクオフ
⾏の政策期待の剥落を織り込む市場のリスク性資産
モード突⼊の背景であると⾒ています。
の価格調整の過程は⼀時的なものでは収まらず、年
度後半を通して持続していくことが予想されます。
これまで期待に働きかける政策を打ち出し、バーナ
夏場まで利上げを織り込んでいた⽶国は拙速な利上
ンキプット、ドラギプット など中央銀⾏が最後の救
げを慎み、利上げ観測は⼤きく後退していくものと
済策を打ち出すことへの期待感を⽰す⾔葉が市場で
予想します。
※
語られてきたことが⽰すように、市場の中央銀⾏へ
の期待の熱狂度が強ければ強いほど反動は⼤きく、
⼀⽅、ECB は量的緩和の強化を打ち出し、⽇銀は市
有効な政策が⾒えなければ、中央銀⾏神話の崩壊の
場から追加緩和を催促される展開を予想します。中
様相が強まることを覚悟する必要が⽣じるのかもし
国は、景気減速が社会不安の増⼤に直結し、ひいて
れません。
は中国共産党体制を揺るがす事態に⾄ることを防ぐ
※中央銀⾏の⾦融緩和策が相場を⽀えてくれるとの期待が、保有株式の損失を
ためにも公共投資などのカンフル剤的な政策を打ち
限定するプット・オプション(売る権利)と同じような役割を果たす状態を指
します。
の背景が、⼈⼝動態の変化、先進国へのキャッチア
ップを前にしたいわゆる「中進国の罠※」的なもので
今後の⾒通し
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出していくものと予想されますが、中国景気の減速
あれば、需要の前倒し的な⼀時的な政策の実効性に
中国の景気減速、中央銀⾏の政策期待の剥落を
織り込み、市場の調整過程は年度後半も持続。
は疑問が残ります。
※国⺠⼀⼈当たり GDP(国⺠総⽣産)が 1 万ドルに接近する「中進国」となっ
⽶国は拙速な利上げを慎み、利上げ観測は⼤き
く後退。ECB は量的緩和の強化、⽇銀は追加緩
和を市場から催促される展開を予想。
た頃から、「発展途上国」の追い上げによって輸出品が競争⼒を失う⼀⽅、
「先進国」と競争するには技術⼒などが⼗分でないため、結果として成⻑が停
滞してしまう現象のことを指します。
中国は、景気減速に伴う社会不安鎮静化(中国
共産党体制維持)のための公共投資を打ち出す
ものの、実効性には疑問。
このような策が、⼀時的な株価対策と認識されてし
⼀時的な株価対策はかえってポジション調整の
好機と捉えられ、株価、商品などのリスク性資
産の戻りも限定的。
の戻りも限定的なものになっていくことが想定され
安全資産への需要は⾼まり、10 年物国債利回り
は、⽶国、ドイツ、⽇本でそれぞれ、1.8%、
0.5%、0.3%以下の⽔準定着を⽬指す。
債利回りは、⽶国、ドイツ、⽇本でそれぞれ、1.8%、
まえば、策を出すたびに、かえってポジション調整
の好機と捉えられ、株価、商品などのリスク性資産
ます。結果的にはリスク性資産のボラティリティが
⾼⽌まる中、安全資産への需要は⾼まり、10 年物国
0.5%、0.3%以下の⽔準定着を⽬指す展開となるこ
とを予想します。
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Date Complied(東京): 2015 年 8 ⽉ 27 ⽇
Ref No. M20153Q40
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