産山村景観計画

産山村景観計画
平成27年5月
熊本県産山村
―
目 次 ―
第1章 景観計画の前提
1.計画の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.計画の位置付け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1
1
第2章 景観特性の整理
1.阿蘇地域における景観の現況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.産山村の景観特性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
3.産山村の景観形成における課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2
5
7
第3章 景観計画区域等
1.景観計画の区域・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
2.北外輪山周辺景観形成地域(産山村エリア)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
8
9
第4章 景観計画区域内における良好な景観形成に関する方針
1.景観形成の目的・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
2.景観形成の基本理念・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10
3.景観形成に関する基本方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・11
4.北外輪山周辺景観形成地域(産山村エリア)の景観形成に関する基本方針・12
5.公共事業等における景観形成指針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・13
第5章 良好な景観形成のための行為の制限
1.景観計画区域内における大規模行為の届出・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・14
2.北外輪山周辺景観形成地域(産山村エリア)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・15
3.届出の手続き・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19
第6章 景観重要建造物及び景観重要樹木の指定方針
1.景観重要建造物の指定方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
2.景観重要樹木の指定方針・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
第7章 景観農業振興地域整備計画の策定に関する基本的な事項
・・・・・・・・・20
<第1章>景観計画の前提
1.計画の目的
本村は、産山村の優れた自然環境、魅力ある景観及び良好な住環境が村民の貴
重な財産であることの認識のもとに、安全で住みよい魅力ある郷土の実現を図る
ため、平成16年に「産山村里山保護条例」を制定し、安全で住み良い魅力ある
郷土の実現を図ってきました。本計画は、これまでの景観保全の取組みを踏まえ、
行政、村民及び事業者の景観形成に関する責務を明らかにするとともに、景観法
の規定に基づく行為の規制等に関し必要な事項及び景観形成のための活動の促
進に関する事項等を定めることにより、本村の特性が活かされた景観の保全と創
造を図り、住み良い魅力ある郷土の実現に資することを目的とします。
また、本計画は、阿蘇地域に広域的に広がる「阿蘇の文化的景観」を活かすた
め、本村を含む阿蘇地域7市町村で策定する「阿蘇地域づくりビジョン」の主旨
を踏まえ、阿蘇地域の持続可能な発展にも寄与するものとします。
2.計画の位置付け
本計画は、「産山村総合振興計画」の基本政策の実現に向け展開する施策であ
り、景観法第8条に基づく計画です。今後は、本計画に基づき、村民や企業等の
景観に関する意識の高揚を図り、協働して景観づくりを進めていきます。
産山村
国
*景観法
*自然公園法
産山村総合振興計画
等
産山村景観計画
熊本県
*熊本県景観計画
*屋外広告物条例
文化的景観保存計画
等
景観農振計画
各種関連計画等
『
阿
蘇
地
域
づ
く
り
ビ
ジ
ョ
ン
』
世
界
文
化
遺
産
登
録
に
向
け
た
取
組
み
阿
蘇
郡
市
7
市
町
村
に
よ
る
<第2章>景観特性の整理
1.阿蘇地域における景観の現況
(1)自然景観
阿蘇地域の特徴である火山活動によって生み出された巨大なカルデラと多様な地
形によって作り出される景観は、それ自体が良好な景観資源であるとともに、農地
や集落の背景としての役割を果たし、地域の景観の基盤となっています。
■火山活動によって生み出された巨大なカルデラと多様な地形
火山活動が生み出した巨大なカルデラ地形を基盤とし、荒々しい火口付近の景
観や周囲では優美で穏やかな山々の景観が形成されています。
中央火口丘群の北側と南側にはカルデラ床が広がり、北側は広大かつ平坦な「阿
蘇谷」と、南側には段丘上の地形を持ち、阿蘇谷と比較してコンパクトな空間に
広がる「南郷谷」とで異なる景観を呈しています。外輪山上は、北側から東側に
かけて、遠方に阿蘇五岳を望むなだらかな高原地域であり、南から西側では、起
伏の大きな丘陵状の地形が広がっています。
■豊かな水環境
阿蘇地域の河川は、九州の6水系の源流となっています。阿蘇谷をなだらかに
蛇行する黒川など地域の骨格となる景観や、集落を巡る小川や、豪快に流れ落ち
る滝など、場所ごとに多様な水の流れをつくり出しています。
阿蘇地域は地下水が豊富であり、これらの湧水が生活や農業において、日常的
に使われている様子を見ることができます。また、名水百選にも選ばれている白
川水源や池山水源は、阿蘇を代表する観光スポットの一つとなっています。近年
では、阿蘇神社を有する阿蘇市の門前町商店街をはじめ、湧き水を活用したまち
おこしによって、賑わいある街並みがつくり出されています。
■多様な生態系とその生息・生育環境
阿蘇地域に分布する植物の数は約1600種と言われ、特に、草原には600
種以上の植物が生育しており、大陸系依存植物のノヤナギやキスミレ、湿地に生
息するオグラセンノウやヒゴシオンなどの希少な植物も生育しています。また、
森林と草原、双方の自然環境に恵まれていることから、多様な鳥類や昆虫類が見
られます。
中央火口丘では、火口縁から遠ざかるにつれて裸地の中に火山荒原が広がり、
それを取り巻くようにミヤマキリシマの群落が形成されています。
ます。
(2)歴史や文化を感じる景観
阿蘇地域においては、農耕にまつわる祭事やその舞台となる神社、豊後街道など
地域で数多くみられる歴史・文化の資源が、地域の特徴のひとつとなっています。
■農耕祭事を中心とした歴史・文化や伝統ある温泉地
阿蘇地域には、古くから火山を神の霊の宿る所として恐れられ、信仰の対象と
なってきました。
また、火振り神事や御田祭で知られる阿蘇の農耕祭事や、生活に根ざして伝承
される神楽、各地でみられる神社仏閣等も阿蘇地域の特徴のひとつとなっていま
す。また、阿蘇神社の門前町、豊後街道の宿場町等、独自のまち並みが形成され
ています。
また、阿蘇地域には内牧、杖立や黒川に代表される温泉郷が古くから湯治の地
として栄え、現在も湯気の立ち込める温泉地で湯めぐりを楽しむ観光客の姿を目
にすることができます。また、南小国町満願寺地区の川湯(共同浴場)のように、
地域の生活文化が表れる情緒豊かな景観もつくり出されています。
(3)暮らしの景観
阿蘇地域には古くから集落が点在し、牧畜によって農業を営んできました。中央
火口丘の麓や外輪山上の高原で牧畜が営まれる草原は、阿蘇地域の代表的な景観と
なっています。外輪山上は、平坦地が少ない地形条件のため、田園・集落や畑地は
谷あいに点在しています。これらの景観は、阿蘇地域の人々が永きにわたって築い
てきた暮らしの風景です。
■カルデラの多様な地形に展開する農地と集落
阿蘇山麓や外輪山上の高原地帯では、古くから行われてきた牧畜によって、広
大な草原が形成されています。雄大な草原は熊本を代表する景観のひとつに数え
られています。また、春の野焼きや、夏の青々とした草原の景観のように、四季
折々に移りゆく様子も「阿蘇の1年」を感じさせてくれる景観です。
巨大なカルデラの底部には農地と集落が形成され、多くの人々が生活していま
す。カルデラ床では、田園景観と外輪山の雄大な草原景観が地域の印象を創り出
しています。外輪山では、山林の間に小規模な畑地や牧野が点在し、中山間地域
の趣を残しています。
(4)眺望景観
眺望景観は、地域住民のみならず来訪者に阿蘇地域全体のイメージとして強く印
象づけられるものであり、阿蘇地域のカルデラ地形の特徴を表すものです。
■阿蘇を大スケールで目にすることができる視点場や風景が展開する道路景観
阿蘇地域では、地形の多様さやカルデラ床に広がる水田や集落など、人々の営
みを大スケールで目にすることができる視点場が多く存在しています。特に、五
岳は数々の視点場から視対象となっており、その姿は涅槃像に例えられるなど、
信仰の対象であり、阿蘇のシンボルとしても地域に根付いています。
また、阿蘇ミルクロードや山なみハイウェイなど阿蘇地域内を通る道路では、自
然の雄大さと移動による眺望の変化を体験することができ、多くの来訪者がドラ
イブやサイクリングを楽しんでいます。
2.産山村の景観特性
(1)自然環境
本村は、環境省指定の全国名水百選「池山水源」や熊本名水百選「山吹水源」な
ど、豊富な水資源に恵まれており、緑の中で昏々と湧き出る様子は来訪者に神秘的
な印象を与えています。山野には希少な植物も多く自生しており、ヒゴタイやキス
ミレなど、多様な生態系があります。
瑠璃色に咲き誇る村花『ヒゴタイ』
ヒゴタイ公園の5万本の『コスモス』
(2)歴史・文化
豊後街道の石畳(参勤交代道)をはじめとして、古い石橋や棚田を開くために築
造された水路など、社会基盤の形成を物語る歴史資源を豊富に有しています。また、
村内の神社とそれにまつわる物語や伝統芸能など、目に見えない文化も継承されて
います。
国史跡に指定された『参勤交代の石畳』
子どもによる伝統芸能『ひょっとこ踊り』
(3)生活・生業
多様な地形が織りなす波打つ草原景観と、そこで放牧される牛たちの様子を一体
的に見ることができます。また、谷部ではいくつかの河川によって開かれた水田地
帯、平均標高600m火山灰土に覆われた畑作台地が広がっています。
絶景を鑑賞できる本村の草原地帯と放牧の様子
全国棚田百選・うまい米作り百選の『扇棚田』
(4)眺望
九重・阿蘇・祖母の三山を一望できる視点場が存在し、徳富蘇峰により「一覧三
山の台」と称された素晴らしい眺望を有しています。また、やまなみハイウェイに
代表される道路から望む草原景観は、多くの来訪者に好まれています。
緑豊かな大自然に囲まれた『花の温泉館』
やまなみハイウェイ沿いから望む『久住高原』
3.産山村の景観形成における課題
(1)自然
・平成24年7月に発生した九州北部豪雨により森林環境が大きな被害を受けたた
め、防災・減災や生物多様性、地球温暖化対策の観点から、森林の公益的機能を
発揮させるために積極的な森林の適正管理が求められています。
(2)歴史・文化
・豊後街道の石畳(参勤交代道)が土砂災害等により一部損壊しており、適正な修
復・保存が必要となっています。
・地域の盆踊りや神楽、獅子舞などの伝統舞踊が人口減少や少子高齢化等の理由に
より衰退しています。
(3)暮らし
・畜産農家の減少や野焼きの放棄により野草地が減少しているため、放牧の利用促
進や草資源の需要拡大による草資源の有効活用策が模索されています。
・あか牛飼養頭数の減少や農業形態の変化による放牧や採草活動が縮小しているた
め、野草地の保全や牧野の円滑な管理に適した土地利用が必要とされています。
・牧野組合員(畜産農家等)の高齢化や後継者が不足しているため、草原再生に携
わる人々のメリットを明確化し、経済的支援のしくみをつくることが求められて
います。
・担い手不足や高齢化に伴う農地や農業施設の維持管理にかかる労力が増大してい
るため、新規就農者の受け入れ体制の更なる推進と農業者全体の意識向上が必要
とされています。
・輸入農作物の浸透や景気低迷による農作物の販売価格の低下、生産コストの上昇
による農林畜産業従事者の所得減少が進んでおり、本村の農産物の付加価値向上
や生産振興に向けた流通・販路システムの変更、開拓が求められています。
(4)眺望
・広告物の乱立や別荘の建築、農地へのメガソーラー建設など、景観の変容や眺望
の阻害等が発生しており、雄大な自然環境や手入れが行き届いた生業空間を「阿
蘇らしい」景観として保全することが求められています。
・やまなみハイウェイ(県道11号線)や国道57号線などの観光道路からの山林
の管理不足による眺望の悪化が起きているため、阿蘇のイメージ向上を狙った地
域の顔となる魅力的な景観の形成や保全が必要とされています。
<第3章>景観計画区域等
1.景観計画の区域
景観計画区域は、産山村全域とします。
2.北外輪山周辺景観形成地域(産山村エリア)
北外輪山周辺景観形成地域は、村の景観づくりを進めていく上で、特に重要な地
域と位置付けることとし、その区域は、阿蘇市と隣接する草原地帯とします。
(1)北外輪山周辺景観形成地域の区域は、次のとおりとします。
産山村
大字
田尻の一部
大字
山鹿の一部
大字
大利の一部
<第4章>景観計画区域内における良好な景観形成に関する方針
1.景観形成の目的
産山村は、阿蘇くじゅうに囲まれた清らかな水源や清流、美しい草原地帯や田園
などの緑豊かな景観をはじめとする雄大な自然資源を有しており、私たちの暮らし
に潤いを与えています。これらの優れた自然資源の保全と創造を図り、魅力あふれ
る郷土の形成・実現に資することを目的とします。
2.景観形成の基本理念
阿蘇地域の景観の特徴は、カルデラ地形の中央にそびえる阿蘇五岳と、これを取
り巻く外輪山の広大な草原にある。火山によって形成された中央火口丘・外輪山に
見られるような独特なカルデラ地形、カルデラ底部の平坦部に広がる集落・農地、
外輪山から山麓へ広がる大規模な草地、カルデラ底部から外輪山の外へと流れ出る
白川・黒川等の河川から景観が構成されています。
阿蘇の環境は、カルデラ火山という数十万年に渡る自然の営為による基盤の上に、
数千年をこえて草原の広がりに代表される人々の営為が積層し、今なお阿蘇の各地
において創意ある手入れが重ねられることによって成り立っています。その背景に
は、自然、歴史、文化、社会(コミュニティ)、産業(生業)の全てが有機的に結び
ついて共生している固有の「つながり」がある。その強さや充実は結果として、固
有の「文化的景観」となって表れています。
このような「つながり」の環境を再認識し、歳月を経て築かれ先人から受け継が
れてきた阿蘇の全体景観を、表面的ではない総体の環境として捉え、地域のみなら
ず我が国の貴重な共有財産として、地域との協働によって守り、次世代に継承して
いく必要があります。また、行政や多くの関係者とともに阿蘇の魅力を地域活性化
につなげ、阿蘇地域に住む人、訪れる人の感性を育て、暮らしを豊かにしていく阿
蘇地域ならではの環境づくりを行なっていく実践活動を展開・支援していくものと
します。
こうした阿蘇の文化的景観を構成する本村は、熊本県の最北東部で九州のほぼ中
央に位置し、阿蘇北外輪及び九重連山に囲まれた、東西6Km、南北10km、総
面積60.72㎢の高原型の農山村です。また、地形は北に久住連山、南西に阿蘇
五岳、南東に祖母山を望む標高480m~1,050mの火山山麓高原です。河川
は、大分県の別府湾に注ぐ大野川の支流である産山川、玉来川、大利川が北から南
へ流れており、いずれも最上流部となっています。
このような雄大な自然環境に恵まれた本村は、全国名水百選の池山水源などの湧
水のほか、牧歌的風景が訪れる人々の心を癒す緑豊かな草原など、多くの自然資源
を有しています。また、全国で2番目に古い歴史を持つ「うぶやま民宿村」は、田
舎ならではの優しいおもてなしと地元の伝統料理で多くの観光旅行客を受け入れて
いるなど、本村独自の文化(産業)が成り立っています。
よって、この里山で営まれる農林畜産業や集落の暮らしが、本村の文化的景観を
支える要素として存在していると言えます。以上より、産山村の景観形成における
基本理念を次のように定めます。
基本理念
「守り受け継がれてきた集落の暮らしと景観を守り育てる」
3.景観形成に関する基本方針
基本理念の達成を目指して、次のような景観形成の基本方針を定め、産山村の景
観形成を進めます。
(1)産山村の景観の骨格となる自然の景観を守り育てる
阿蘇くじゅう国立公園に属する本村の美しい草原景観は、訪れる人々の心
を魅了しており、良質な温泉や豊富な湧水などの自然資源と併せて一体的に
保全していきます。
(2)産山村固有の歴史・文化資源とその周辺環境を守り育てる
本村には、歴史ある農耕祭事や伝統文化が今なお受け継がれており、集落
に暮らす人々と密接に関わり合っています。また、国史跡に指定された豊後
街道の石畳などの歴史的・文化的資源も有していることから、本村の貴重な
財産として適正に管理していきます。
(3)産山村内の耕作地や集落の暮らしの景観を守り育てる
本村は、稲作や高冷地野菜、畜産等の第1次産業が基幹産業であり、先祖
代々これらの産業が営まれてきた結果として、美しい農村風景や田園風景が
現存していることから、この「自然と人間の共生」による素晴らしい景観と
暮らしを維持・継承していきます。
(4)産山村を印象付ける眺望を守り育てる
本村を印象付ける眺望は、緑豊かな森林と草原であると言えます。これら
を将来にわたって守り受け継ぐために、山の手入れ(間伐等)や野焼き等の
維持管理を継続して行なっていきます。
4.北外輪山周辺景観形成地域(産山村エリア)の景観形成に関する基本方針
(1)北外輪山周辺地域の草原景観の現状
■北外輪山周辺(産山村、阿蘇市及び南小国町)に共通した草原景観
阿蘇地域は雄大なカルデラ地形として知られ、古くから観光地として多くの
人々が訪れる場所です。中でも、広大な草原景観は、「採草」「野焼き」「放牧」
によって維持されてきた阿蘇地域を代表する景観であり、特に北外輪山周辺地
域は、産山村、阿蘇市及び南小国町との連続性を持つ草原景観が形成されてい
ることから、阿蘇を訪れる人々にとって極めて印象深いものとなっています。
■産山村としての草原景観
当地域は、九重連山、阿蘇山、祖母山などの雄大な山々と広大な草原景観か
ら形成されています。
■北外輪山周辺(産山村、阿蘇市及び南小国町)に共通した草原景観の保全
当地域は広大な草原景観を有していますが、その草原維持に必要な「野焼き」、
「輪地切り」等の担い手不足や高齢化により、現状の維持が困難になっていま
す。そのため、
「野焼き」が行なわれない草原は、今後森林化することが懸念さ
れていることから、草原の維持が困難になっている現状を踏まえ、阿蘇らしい
草原景観の保全が求められています。
■産山村としての草原景観の保全
当地域の草原の大部分は、他の多くの阿蘇地域の草原と異なり、自然公園法
に指定されていません。そのため、自然公園としての景観形成は行なわれず、
同法による支援もないことから、他の地域よりも一層草原の維持が困難になる
ことが懸念されています。
(2)景観形成にあたっての基本的な方向性
広大な草原や地域特性と調和した、統一感のある景観の形成を図るため、次の
ことを景観形成にあたっての基本的な方向性とします。
■北外輪山周辺(産山村、阿蘇市及び南小国町)に共通した景観形成の方向性
①広大な草原景観との調和
当地域の広大な草原景観は、北外輪山周辺地域の景観を構成する大切な要
素となっていることから、広大な草原景観と調和した景観の形成を図ります。
②主要幹線道路からの眺望を考慮した景観の形成
当地域には、国道212号、ミルクロード、やまなみハイウェイ等の主要幹
線道路沿線から広大な草原景観を望むのに適した場所が多く存在しています。
このため、主要幹線道路からの草原景観を保全するため、その眺望に配慮した
景観形成を図ります。
■産山村としての景観形成の方向性
当地域は、九重連山、阿蘇山、祖母山などの雄大な山々と広大な草原の景観
を有しており、その優れた眺望景観に配慮した景観形成を図ります。
(3)景観形成を図るうえでの基本方針
■北外輪山周辺(産山村、阿蘇市及び南小国町)に共通した景観形成の基本方針
当地域にひろがる広大な草原は、地域住民の放牧採草地の場であると同時に、
春から夏にかけて緑豊かな背景を構成する重要な地域となっています。このた
め、地域の農畜産業の向上に努めながら、緑豊かな現景観の基調を保全・創造
する方向で景観形成を図るものとします。
具体的なイメージとしては、「主要幹線道路沿線から眺望した場合において、
雄大な草原の広がりが感じられるような地域で、杉、ヒノキ、クヌギなどの用
材となる樹木が少なく、物件の堆積はできる限り小規模なものとすることで、
雄大な草原の広がりが感じられるような地域」を目指して景観形成を図るもの
とします。
■産山村としての景観形成の基本方針
当地域は広大な草原地域であり、九重連山、阿蘇山、祖母山などの雄大な山々
と広大な草原が眺望できる景観となっています。そのため特に雄大な山々と広
大な草原景観の維持保全を図るため、次章(第5章)において届出対象行為及
び景観形成基準を定め、景観形成を図るものとします。
5.公共事業等における景観形成指針
産山村は、村土の景観形成に著しい影響を及ぼす公共事業等について、地域の実
情の把握や景観への配慮等を促すための景観形成指針を定めていることから、村内
で実施される全ての公共事業等は、産山村公共事業等景観形成指針を遵守するもの
とします。
<第5章>良好な景観形成のための行為の制限
1.景観計画区域における大規模行為の届出
(1)届出対象行為
行為
規模
建築物の新築、増築、改築、移転及び撤去、外観を
変更することとなる修繕若しくは模様替並びに色彩
の変更
・高さ13メートルを超えるもの。
・建築面積1,000平方メートルを超える
もの。
工作物の新築、増築、改築、移転及び撤去、外観を
変更することとなる修繕若しくは模様替並びに色彩
の変更
・高さ13メートル(規則第2条第6号に規
定する電気供給又は有線電気通信のための
電線路又は空中線の支持物にあっては20
メートル)を超えるもの。
・工作物の敷地面積が1,000平方メート
ルを超えるもの。
柵及び塀の新築、増築、改築、移転及び撤去、外観
を変更することとなる修繕若しくは模様替並びに色
彩の変更
・高さ2メートルを超え、かつ、長さ50メ
ートルを超えるもの。
鉱物の掘採及び土石の採取
・地形の外観の変更に係る土地の面積が1,
000平方メートルを超えるもの。
・高さが5メートルを超え、かつ長さが10
メートルを超える法面または擁壁が生じる
もの。
土地の区画形質の変更(土地の開墾及び水面の埋立
て又は干拓を含む)
・変更に係る土地の面積が1,000平方メ
ートルを超えるもの。
・高さが5メートルを超え、かつ長さが10
メートルを超えるもの。
(2)景観形成基準
行為
事項
位置
建築物及び工作物
の新築、増築、改
築、移転、撤去、
外観を変更するこ
ととなる修繕若し
くは模様替又は色
彩の変更
意匠
外観
色彩
材料
敷地の緑化
基準
・道路等の公共用地に接する敷地境界線からは、極力後退し
た位置とすること。
・周辺の景観との調和に配慮し、全体的にまとまりのある意
匠とすること。
・外壁、屋上等に設ける設備は、露出しないように努め、本
体及び周辺の景観との調和に配慮すること。
・附帯する広告物は、極力小さく、箇所数は少なくし、周辺
の景観との調和に配慮すること。
・色彩は、周辺の景観との調和に配慮すること。
・周辺の景観と調和するような材料を使用すること。
・敷地内は極力緑化に努めること。
・既存の樹木がある場合には、修景に活かすよう配慮するこ
と。
・道路等の公共用地に接する敷地境界線からは、極力後退し
た位置とすること。
・周辺の景観との調和に配慮し、全体的にまとまりのある意
意匠
匠とすること。
色彩
・色彩は、周辺の景観と調和に配慮すること。
材料
・周辺の景観と調和するような材料を使用すること。
・柵及び塀の周囲については、極力緑化に配慮すること。
・敷地内及び敷地周囲の緑化に努め、周囲の道路等からの遮
遮へい及び緑化
へいに配慮すること。
法面又は擁壁の ・掘採後の法面等の事後処理については、周辺の景観との調
外観及び緑化
和に配慮し、緑化に努めること。
土地の形状及び ・区画形質の変更の方法については、周辺の景観との調和に
緑化
配慮するとともに緑化に努めること。
法面又は擁壁の ・周辺の景観との調和を考慮した形態、材料とし、緑化に努
外観及び緑化
めること。
柵及び塀の新築、 位置
増築、改築、移転、
撤去、外観を変更
することとなる修 外観
繕若しくは模様替
又は色彩の変更
緑化
地形の外観の変更
を伴う鉱物の掘採
又は土石の採取
土地の区画形質の
変更
2.北外輪山周辺景観形成地域(産山村エリア)
(1)届出対象行為
行為
規模
建築物等(※)の新築、 建築物の新築、増築、
・床面積の合計が10㎡を超えるもの。
増築、改築又は移転若
改築又は移転若しくは
しくは撤去、外観を変
撤去
更することとなる修
建築物の外観を変更す
繕若しくは模様替又
ることとなる修繕若し
は色彩の変更
くは模様替又は色彩の
・面積の合計が10㎡を超えるもの。
変更
柵、塀、擁壁その他こ
・高さが1.5mを超えるもの。
れらに類するもの
記念塔、電波塔、物見
・高さが5mを超えるもの。
塔、煙突、高架水槽、
鉄筋コンクリート造り
の柱、金属製の柱又は
合成樹脂製の柱
電気供給又は有線電気
通信のための電線路又
は空中線の支持物
・高さが10mを超えるもの。
観覧車その他これに類 ・高さが5mを超え、又は築造面積が10㎡を超
する遊戯施設、アスフ
えるもの。
ァルトプラントその他
これに類する製造施
設、石油、ガス、液化
石油ガス、穀物、飼料
等を貯蔵又は処理する
施設、自動車車庫の用
途に供する立体的な収
納施設、汚物処理施設、
ごみ処理施設その他の
処理施設、太陽光発電
施設
木竹の植林
植林
屋外における土石、廃棄物、再生資源その他の
物件の堆積
・植林面積が1,000㎡を超えて植林するもの。
・90日を超えて、高さ1.5mを超えるか、又
は水平投影面積が100㎡を超えて堆積する
もの(但し、建築物の存する敷地内で行う行為
にあっては、高さ1.5mを超えて堆積するも
の)。
(外部から見通すことのできない場所にお
ける物件の堆積は除く)
鉱物の掘採又は土石の採取
・面積が500㎡を超えるか、又は高さ1.5m
を超える法面又は擁壁が生じるもの。
土地の区画形質の変更(土地の開墾及び水面の
埋立てを含む)
・面積が500㎡を超えるか、又は高さ1.5m
を超える法面又は擁壁が生じるもの(但し、宅
地の造成、土地の開墾、水面の埋立て以外で農
林漁業を営むために行う行為は除く)。
屋外における自動販売装置の設置
・すべてを対象
広告物の設置又は外観の変更
・表示面積が1㎡を超えるもの(但し、県屋外広
告物条例に基づく許可を受けるものや、はり
紙、のぼり等で掲出期間が90日以内のもの等
を除く)
。
※建築物等とは、建築基準法第2条第1号に規定する建築物(塀を除く)及び規則で定める工作物を
いう。
(注)届出の適用除外行為については、産山村景観条例、同施行規則、景観法及び景観法施行令に規
定されています。
(2)景観形成基準
行為
事項
基準
建築物等の新築、 位置
・道路等の公共用地に接する敷地境界線からは、極力後退し、
増築、改築、移転、
主要道路から草原景観を望める位置での設置を避け、眺望
撤去、外観を変更
に配慮すること。
することとなる
外観
修繕若しくは模
意匠・
形態
様替又は色彩の
・周囲の基調となる景観と調和を図り、景観のまとまりを保
つとともに、背景となる草原景観との調和に配慮するよう
努めること。
変更
色彩
・外壁の色彩は、草原と調和した落ち着いたものとし、季節
の変化に伴う草原の色彩の変化にも調和するよう配慮す
ること。
・敷地内における建築物等は色調を統一するとともに、多色
の利用を避けること。
材料
敷地の緑化
・草原景観と調和するような材料を使用すること。
・敷地内は極力緑化に努めること。
・既存の樹木がある場合には、修景に生かすよう配慮するこ
と。
木竹の植林
植林
・主要道路から草原景観を望める位置での植林は避け、眺望
に配慮すること。
・植林については草原の維持管理に支障を来たさない場所と
規模の設定に努めること。
・植林の樹種は阿蘇地域の生物多様性を妨げないように配慮
すること。
屋外における土
位置
・道路等の公共用地に接する敷地境界線から極力後退し、主
石、廃棄物、再生
要道路から草原景観を望める位置への設置を避け、眺望に
資源その他の物
配慮すること。
件の堆積
遮へい
・物件の堆積を行う場所の周囲については緑化等による道路
等からの遮へいに配慮すること。緑化による遮へいを行う
場合には、草原景観と調和する樹種、高さの樹木を選定す
ること。
・囲い等により遮へいを行う場合には、遮へい物の色彩及び
材料について、草原景観との調和に配慮すること。
鉱物の掘採又は
遮へい
土石の採取
・鉱物の掘採又は土石の採取を行う場所の周囲については緑
化等による道路等からの遮へいに配慮すること。緑化によ
る遮へいを行う場合には、草原景観と調和する樹種、高さ
の樹木を選定すること。
・囲い等により遮へいを行う場合には、遮へい物の色彩及び
材料について、草原景観との調和に配慮すること。
法面又は擁壁の
外観
土地の区画形質
遮へい
の変更
・掘採後の法面等の事後処理については、草原景観との調和
に配慮した緑化に努めること。
・土地の区画形質の変更を行う場所の周囲については緑化等
による道路等からの遮へいに配慮すること。緑化による遮
へいを行う場合には、草原景観と調和する樹種、高さの樹
木を選定すること。
・囲い等により遮へいを行う場合には、遮へい物の色彩及び
材料について、草原景観との調和に配慮すること。
法面又は擁壁の
外観
屋外における自
位置
動販売装置の設
置
・草原景観との調和を考慮した形態、材料とし、緑化に努め
ること。
・道路からできる限り後退し、草原景観を望める位置への設
置を避け、眺望に配慮すること。
外観
・意匠や色彩等については地域の基調となる景観との調和に
配慮すること。
広告物の設置又
位置及び外観
は外観の変更
・位置は道路からできる限り後退し、意匠、形態、規模、材
料、色彩等については地域の基調となる景観との調和に配
慮すること。
設置
・広告物の掲出数を極力抑え、簡易広告物等はできるだけ掲
出しないように努めること。
3.届出の手続き
届出対象行為は、以下の図に示す手続きが必要となります。
<第6章>景観重要建造物及び景観重要樹木の指定方針
1.景観重要建造物の指定方針
地域の自然や歴史、文化、生活等から見て、地域の景観上の特徴を有し、地域の
景観を形成する上で重要と認められ、所有者の合意を得たものについて、景観重要
建造物として指定します。
2.景観重要樹木の指定方針
地域の自然や歴史、文化、生活等から見て、樹容(樹のすがた)が景観上の特徴
を有し、地域の景観形成上重要であると認められ、所有者の合意を得たものについ
て、景観重要樹木として指定します。
<第7章>景観農業振興地域整備計画の策定に関する基本的な事項
本村の農村景観(主に草地景観)においては、有畜農家の減少や高齢化、後継者不
足などの問題を抱えているとともに、野焼きや輪地切りといった草原維持の作業も難
しくなってきており、草地面積の減少・変容による草原生態系の多様性も失われつつ
あることから、阿蘇の文化的景観の保全に不可欠である農村景観(主に草地景観)の
保全策のひとつとして、産山村景観農業振興地域整備計画(以下、「景観農振計画」
という。)の策定を行ないます。
また、景観農振計画に関連する景観条例・景観条例施行規則・景観計画などの周知
も行なうことで、産山村の農村景観保全に対する気運の醸成、景観と調和のとれた農
業振興を推進するものとします。