最近のフランチャイズ加盟の実態を解く フランチャイズ研究所代表の黒川

最近のフランチャイズ加盟の実態を解く
フランチャイズ研究所代表の黒川孝雄氏は、フランチャイズ店舗の直営店、加盟店の比
率を推計し、さらには独立行政法人経済産業研究所(RIETI)が実施した調査からフ
ランチャイズ店舗のオーナー数及び複数出店オーナー数、複数出店オーナーの店舗数を試
算している※。日本フランチャイズチェーン協会が発表した最新の 2004 年度版データをこ
の試算にあてはめると、オーナー数は約7万4千人、そのうち複数出店オーナーは約1万
9千人。全体の26%弱のオーナーが、フランチャイズ店舗全体の69%強を保有し、平
均所有店舗数は6.4店舗ということになる。一部のオーナーによる多店化が進んでいる
といえる。こうした実態の背景には、加盟したチェーン(単一チェーンとは限らない)で
成功を収め、2店舗、3店舗(あるいはそれ以上)と店を増やしている複数出店加盟店が
相当数存在するということだろう。これらの加盟店はフランチャイズ加盟を成長戦略の手
段と捉える法人企業がほとんどである。
・台頭するメガフランチャイジー
メガフランチャイジーという言葉を耳にするようになって、それほど長い年月は経過し
ていない。メガフランチャイジー(以下メガジー)とは、巨大なフランチャイズ加盟店と
いう意味で、フランチャイズ加盟店の成功者である。社団法人中小企業診断協会東京支部
フランチャイズ研究会(西野公晴会長)では、「メガフランチャイジーに関する調査研究報
告書」の中で、メガジーを加盟店部門の売上高20億円以上もしくは加盟店店舗数30店
以上のフランチャイジーと定義している。
この定義に該当するメガジー企業が日本にどれだけあるかは不明だが、おそらく、100
社程度はあるというのが一般的である。正確な数字はわからないのは、チェーン本部にと
って、誰がそのチェーンに加盟していて何店舗を展開しているかは企業秘密であり、外部
に公表することはないからである。
メガジーを排出しているチェーンはケンタッキーフライドチキン、ミスタードーナッツ、
吉野家が代表格。そのほかには、ブックオフ、TSUTAYA、ハードオフ、オートバックス、
明光義塾、牛角などだろう。これらチェーンは店舗数も多く、売上規模も大きい。社会的
にも認知度が高いチェーンということができる。
・複数出店加盟店はメガジー予備軍
メガジーの成長過程を個々に見ると共通項があることに気付く。メガジーはほぼ例外な
く、最初に加盟したチェーンの1店舗目で成功した後、そのチェーンで多店化して成長の
基盤を固めている。このように考えると、近い将来、前述の同一チェーンで複数出店する
加盟店がメガジーに成長することは相当数あるだろう。そうした意味で、彼らはメガジー
予備軍であるといえるだろう。
・加盟店の多店化展開に積極的なチェーン
本部にとって加盟店の多店化はメリットとデメリットがある。最大のメリットは、実績
がある優秀な加盟店に複数店舗を引き受けてもらうことで、新規出店の失敗リスクが軽減
し、将来に渡って安定的に収益が見込めることである。どんなに優れたチェーンにも必ず
あるのが不振店。立地の優劣という面もあるだろうが、繁盛店と不振店との分かれ目は加
盟店オーナーの資質に負うところが大きい。
デメリットとしては、まず加盟金やロイヤルティの値引きによる一時的な収益減少があ
る。加盟店の多店化に積極的なチェーンでは、2店目以降の加盟金を優遇することも多く、
ロイヤルティを割引く場合もある。また、加盟店の多店化を推進する場合、事業規模拡大
のスピードが落ちる可能性が高いだろう。よほどの規模の加盟店でない限り、短期間で複
数店舗を出店することは難しい。それより、複数の新規加盟店に出店させたほうが短期間
に店舗数を拡大する早道である。
本部にとって加盟店の多店化は、短期的に見るとそれほどメリットがあるとは思えない。
だが、前述のメガジーを排出した名だたるチェーンは、加盟店を育成しながら加盟店の多
店化を積極的に進め、自らも日本を代表するチェーンに成長したのである。視点を変えれ
ば、こうしたチェーンのフランチャイズ・パッケージが優れていたからこそ、加盟店は複
数出店に応じたのである。このように考えると、加盟店の多店化に積極的なチェーンは、
将来大きく飛躍する可能性を秘めているといえるだろう。
ただし、加盟店の多店化に積極的なチェーンだけが優良チェーンではない。日本一のチ
ェーンと目されるセブンイレブンは、基本的に加盟店の多店化を好ましくないと考えてい
る。その理由は、店舗運営の最適なユニットは家族単位と考えているからである。
・多店化の功罪
加盟店から見て同一チェーンで多店化することは、①自分自身で実証したビジネスに再
投資することによるリスク軽減、②条件面での優遇、③本部からの重点的なサポート、④
人材育成が容易、などのプラス面があるだろう。
一方、同一チェーンで多店化する場合、予期せぬ外的要因によって経営が窮地に陥る可
能性がある。例えば、BSEや鳥インフルエンザ、道交法改正による飲酒運転取締りの強
化など。牛丼、焼肉、ステーキ、焼き鳥、フライドチキン、ロードサイド立地の居酒屋な
どの加盟店が打撃を被ったことは記憶に新しい。加盟チェーンを分散したほうがこうした
リスクは低下する。
次いで、店舗数の多い成熟期のチェーンに加盟した場合、新規出店の余地は少なく、既
存店の買収などの手段を用いない限り多店化はむつかしい。メガジーが最初に加盟して多
店化したチェーンのライフサイクルを見ると、ほとんどがアーリーステージの段階である。
だが、アーリーステージのチェーンの中から、将来大きく成長するチェーンを見出すこと
は決して簡単なことではない。
さらには、例え成長過程のチェーンに加盟したとしても、多店化は遅かれ早かれ壁に突
き当たる。特に飲食業、小売業の場合、既存店との商圏のバッティングもあり、一定エリ
ア内に好立地の店舗物件を確保することは簡単なことではない。
※FRANJA 原稿を一部修正して掲載
㈱フランチャイズ研究所ホームページ「FC時評」を参照