資料4 事故物件サイトに掲載される自殺に関する情報について NPO 法人全国自死遺族総合支援センター 杉本 脩子 家族の自殺が死亡直後から事故物件サイトに掲載されているという驚くべき相談を受けま した。昨年末に東京都内で起きたことです。根底には社会に根強い自死・自殺に関する偏 見の問題が大きいことを痛感しております。インターネットによる新しい手法によって、 遺族を大きく傷つけるこのような事態がこれ以上広がらないように、関係諸機関との連携 により以下につきまして至急の対処をお願いします。 1.死因はプライバシーとして尊重され、公表されないようにすること 2.自殺に関する情報管理の徹底 3.居住者の死亡に関する情報提供は、その死因のいかんにかかわらず、死者のプライ バシーに最大限配慮するかたちで行うことを徹底すべき <相談内容> 葬儀も終わらない死亡直後に、自殺の起きた自宅の住所、部屋番号、建物の写真が掲載さ れ、死因も掲載されていた。しかも、更新情報はツイッターとフェイスブックで全国に拡 散されていた。当該物件は相談者所有のもので、長期間家族で居住、近隣との関係も良好 で今後も住み続ける予定であった。 相談者である遺族は、事故物件サイトに削除依頼をすることを思いたち、ネットで調べて みた。すると、情報に誤りがある場合を除き、削除要請には一切応じていないことが明ら かになった。削除要請をした人の要請文が無断で2ちゃんねるに転載され、 「自業自得」、 「育 て方が悪かった」 、 「次の借り手の利益をどう考えているのか」等の批判が寄せられていた。 独力で削除要請することは到底不可能な雰囲気だった。 ネットで不特定多数の人間が自宅住所と家族の死因を知っているということが、とにかく 怖い。事実上住み続けることは不可能に近く、眠れない日々を過ごしている。記事を削除 し、自宅での平穏なくらしを取り戻すためには、どうすればいいか。 事故物件サイトを見た人がどのような噂をたてるか分からない。隣室の入居者等から不動 産の価値が下がったなどと苦情をいつ言われるか不安。また、見知らぬ人が面白半分で自 宅を見に来ないか不安。マンションの前で地図を広げている人を見るだけで胸が苦しくな り布団に倒れこむ日々が続く。今後も居住を続けたいのだが、自殺の事実が知れたら近隣 住民との関係をどう作って行けばいいのか。住み続けるのがとても辛いと遺族の衝撃と動 揺は非常に大きい。 <調査経過> 1 自殺の事実等のプライバシー情報性 注目すべきは、遺族が現在も居住を続けているという点である。事故物件サイトに住所、 自殺の事実、その手段等の情報が掲載されれば、閲覧者は当該物件に実際に行って表札等 を確認すれば当該物件の居住者の氏名を簡単に特定できる。親族の自殺の事実は近親者に とって外部に公表されることを望まない私的な事実であり、自己情報コントロール権たる プライバシー権によって保護されるべきものである。 また、過去の裁判例でも、個人の容貌についてたとえ個人名を伏せたとしてもこれを書籍 のかたちで公表することはプライバシー権侵害にあたるとして出版差止めや損害賠償を認 めた例がある。このように考えると、本件掲載行為がプライバシー権侵害にあたる可能性 は極めて高い。 2 情報源について 疑問に思うのは、当該事故物件サイトが、いかなる情報源から自殺に関する個人情報を取 得したのかということである。遺族にとって自殺の事実は知られたくない事実であり、近 隣住民にも秘しておくことが多い。自殺手段に関する正確な情報まで、いかなるルートか ら取得したのか。 当該事故物件サイトを調査したところ、自殺に関しては、「広聴」という手法を用いて情報 を取得していることが判明した。これは、簡単にいえば一般からのタレ込みである。医療、 警察その他行政、葬儀社等の関係者が、持ち帰った情報を自宅パソコンから送信する等の 方法により情報が漏えいした可能性も十分考えられる。 自殺に関する情報管理のありかたについて、再度検証する必要性があるものと思われる。 3 削除要請の困難さ インターネットの名誉棄損的表現やプライバシー権侵害については、いったん掲載される と無限に増殖する可能性があるため、いったん発生した損害の回復がきわめて困難である。 加えて、事故物件サイトにおいては、削除要請した者の住所をさらし者にする等、きわめ て不誠実かつ悪質な対応が目立つ。削除要請者の個人情報をネット上にアップしたり、代 理人弁護士の事務所だけでなく自宅住所まで調査しネットで公表したり、その他裁判記録 等も個人名を消去しないまま全てアップしている。アップすることで、詳しい事情を知ら ないネットユーザーを煽り、匿名の多数者の書き込みを通じて削除要請者に心理的圧力を かけるという方法で自己のサイトの存続を図っている。 このような状況であるから、遺族が個人名を出してサイト運営者と直接接触を図ることは 到底困難な状況である。 以上
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