小児生活習慣病予防健診 - 宮崎県健康づくり推進センター

小児生活習慣病予防健診
~リスク要因の傾向性について~
○馬場美穂 谷口尚大郎 櫛間三鈴 枦真理絵 川越真貴子 大友さおり 児玉三智子 村山亜希子
倉元良子 村口理江 黒原久美子 福永清美 川越由美子 下池弘美 浜田恵亮
(公益財団法人宮崎県健康づくり協会)
Ⅰ.はじめに
当協会では、小学校、中学校の児童・生徒に対し、将来発症するおそれのある生活習慣病の予防を目的に、平
成 4 年度より小児生活習慣病予防健診を実施している。今回、平成 16 年度から平成 25 年度の 10 年間で小学 4
年時、中学 1 年時に受診した児童・生徒の健診結果を集計し、肥満及び痩身傾向児出現率の年次推移と傾向性、
総合判定Ⅰ~Ⅲの年次推移と傾向性を調査したので報告する。
Ⅱ.対象と方法
1. 研 究 デ ザ イ ン
記述疫学的研究
2. 対 象
平 成 16 年 度 か ら 平 成 25 年 度 で 小 児 生 活 習 慣 病 予 防 健 診 を 実 施 し た 小 学 4 年 生 男 子 4,195
名 、女 子 4,013 名 、中 学 1 年 生 の 男 子 4,386 名 、女 子 4,197 名 の 計 16,791 名 を 対 象 と し た 。
3. 方 法
予 防 医 学 事 業 中 央 会 が 判 定 処 理 を 行 っ た デ ー タ ベ ー ス を 基 に 、対 象 者 の 情 報 を 抽 出 し た 。
主 な 評 価 項 目 は 「 平 成 16 年 度 か ら 平 成 25 年 度 に お け る 肥 満 及 び 痩 身 傾 向 児 出 現 率 の 年 次
推 移 と 傾 向 性 」 と し た 。 そ の 他 の 評 価 項 目 と し て 、「 平 成 16 年 度 か ら 平
表 1 総合判定区分
成 25 年 度 に お け る 総 合 判 定 Ⅰ ~ Ⅲ( Ⅰ 、Ⅱ 、Ⅲ の 合 計 、以 下 同 じ )の 年
Ⅰ
次推移と傾向性」について調査を行った。総合判定区分は表 1 のとおり
で あ る 。 デ ー タ は P 値 で 表 記 し 、 傾 向 性 に つ い て は Wilcoxon rank sum
test を 拡 張 し た 傾 向 性 の 検 定 を 行 っ た 。 有 意 水 準 は p<0.05 と し 、 両 側
Ⅰ-1
Ⅰ-2
Ⅰ-3
Ⅱ
Ⅲ
Ⅳ
N
要医学的管理
要経過観察
要生活指導
管理不要
正常
検 定 を 行 っ た 。 統 計 処 理 ソ フ ト は STATA/IC 11.2 を 使 用 し た 。
Ⅲ.結果
・主な評価項目
平 成 16 年 度 か ら 平 成 25 年 度 に お け る 肥 満 及 び 痩 身 傾 向 児 出 現 率 の 年 次 推 移 と 傾 向 性 に つ
い て 図 1~ 図 4 に 示 す 。 小 学 4 年 男 子 で は 高 度 肥 満 で の み 有 意 な 減 少 傾 向 を 示 し た (図 1)。
中 学 1 年 男 子 で は 、 高 度 肥 満 と 中 等 度 肥 満 で 有 意 な 減 少 傾 向 を 示 し た (図 2)。 一 方 、 小
学 4 年 女 子 (図 3)、
中 学 1 年 女 子 (図 4)
では、有意な変化は
認められなかった。
痩身傾向児出現率
においては、いずれ
の対象群においても
有意な変化は認めら
図1 肥満及び痩身傾向児出現率年次推移(小学4年男子)
図2 肥満及び痩身傾向児出現率年次推移(中学1年男子)
れなかった。
・その他の評価項目
平 成 16 年 度 か ら
平 成 25 年 度 に お け
る総合判定Ⅰ~Ⅲの
年次推移・傾向性の
結 果 を 図 5~ 8 に 示
図3 肥満及び痩身傾向児出現率年次推移(小学4年女子)
図4 肥満及び痩身傾向児出現率年次推移(中学1年女子)
す。小学 4 年男子では有意な減少、小学 4
年女子では有意な増加が認められ、中学 1
年男女では有意な変化は認められなかった。
Ⅳ.考察
今 回 、 平 成 16 年 度 か ら 平 成 25 年 度 に お
図5 総合判定Ⅰ~Ⅲの割合 年次推移(小学4年男子)
図6 総合判定Ⅰ~Ⅲの割合 年次推移(中学1年男子)
ける肥満及び痩身傾向児出現率の傾向を肥
満度別に調査した結果、男子では高度・中
等度肥満傾向児の有意な減少が認められた。
また、総合判定Ⅰ~Ⅲの年次推移の傾向性
を調査した結果、小学 4 年男子で有意な減
図7 総合判定Ⅰ~Ⅲの割合 年次推移(小学4年女子)
図8 総合判定Ⅰ~Ⅲの割合 年次推移(中学1年女子)
少 傾 向 、女 子 で 有 意 な 増 加 傾 向 が 認 め ら れ た 。平 成 25 年 度 学 校 保 健 統 計 調 査 に よ る と 、全
国 の 肥 満 傾 向 児 出 現 率 は 、 平 成 18 年 度 以 降 減 少 、 平 成 23 年 度 以 降 ほ ぼ 横 ば い に 推 移 し て
い る ¹⁾。平 成 25 年 度 に お け る 9~ 14 歳 の 全 国 平 均 は 男 子:約 8~ 11% 、女 子:約 7~ 9% で
あ る が 、宮 崎 県 の 肥 満 傾 向 児 出 現 率 は 男 子:約 9~ 14% 、女 子:約 9~ 12% で 、男 女 と も に
全 国 平 均 よ り も 高 い 状 況 が 続 い て い る ¹⁾。 本 研 究 の 小 学 4 年 ・ 中 学 1 年 の ど ち ら の 対 象 群
に お い て も 高 度・中 等 度・軽 度 を 合 わ せ た 肥 満 傾 向 児 出 現 率 が 10 年 間 を 通 し て 男 子 は 10% 、
女 子 は 9% を 上 回 っ て い る 。肥 満 度 を 基 準 に し た 欧 米 の 研 究 で は 、7 歳 の 肥 満 の 40%、思 春
期 肥 満 の 70~ 80%が 成 人 肥 満 へ 移 行 す る と い う 結 果 が 報 告 さ れ て い る ²⁾。 本 研 究 で は 、 男
子の肥満傾向児は減少傾向にあったものの、依然肥満傾向児出現率は高く、何らかの介入
が 必 要 と な る 総 合 判 定 Ⅰ ~ Ⅲ の 割 合 も 1~ 2 割 を 占 め る 。今 後 は 、肥 満 傾 向 児 の 減 少 に 向 け
て一層の積極的な取り組みが必要となることが考えられる。
Ⅴ.結語
本 研 究 で は 、過 去 10 年 間 に お い て 肥 満 傾 向 児 の 減 少 傾 向 が み ら れ た も の の 、県 内 の 肥 満
傾向児の出現率は依然高い。将来の肥満・生活習慣病の予防のためにも、今後も小児生活
習慣病予防健診を継続していくとともに、健診結果を活かした子ども、保護者、学校への
健康支援の取り組みへと発展させていきたい。
参考文献
1) 文 部 科 学 省 :平 成 25 年 度 学 校 保 健 統 計 調 査 、 2013
2) Klish WJ :Childhood obesity:Pathoph ys iolo g y and treat men t. Ac ta Paedia trica Japonica(1995) 37,1-6