知財訴訟とバリュエーション 独禁法と競争政策の経済分析 背景 日本経済の成熟化や経済のグローバル化に対応するために国内外で大型の合併が計画されるようになり、独禁法 (反トラスト)上の企業結合規制のリスクが高まっています。カルテル・談合事件の摘発は、リニエンシー制度の導入に 伴い世界的に行われるようになり、当局の調査や事後的に生じうる損害賠償請求への対応の重要性が増しつつあり ます。損害額に関わる民事訴訟のリスクについては、私的独占の問題があるとして排除措置命令をうけることになっ た場合でも同様です。我が国では、優越的地位濫用の規制が活発化し、巨額の課徴金が課せられる事例も発生して います。知財と独禁法が交錯する問題においても、当局規制や独禁法違反を根拠とした民事訴訟が引き起こされてい ます。このような独禁法上の問題においては、市場支配力(独占力)、価格等の企業戦略の効果、損害賠償額の算定 等の経済原則に基づく定量的な証拠が重要な役割を果たしています。 NERAの経済分析サポート NERAのエコノミストは、米国のみならず日本においいても、企業結合、カルテルや談合、私的独占等に関わる様々な 経済分析の経験を有しています。NERAは、以下のような領域において独禁法と競争政策の分野における専門性を 有しています。 (1) 企業結合規制対応-NERAは、非常に広範にわたる業界における企業結合審査への対応に関わる数多くの 経験を有しています。企業結合審査において必要となる市場画定や競争への影響に関する専門家レポートの 作成や、企業結合の独占禁止法上リスクの予備的な評価の形で経済分析を行っています。また、独禁法弁護 士と協力しながら、最適な当局対応のアドバイスやデータリクエスト対応支援を行っています。 (2) 談合・カルテル-NERAは、企業間の談合やカルテルの問題に対して、当局による審査対応の場面から、事後 的な損害賠償請求訴訟の場面まで、様々なコンサルティングを提供しています。談合やカルテルの直接的証拠 が十分でない場合や、当局による罰金・刑事罰に裁量の余地がある場合には、当局の審査が行われている段 階から間接証拠として取引データの詳細な検討や経済分析を行うことが有益です。事後的な民事訴訟の場面 では損害額の算定に経済分析が必須となっています。 (3) 私的独占・不公正な取引方法-不当廉売、抱き合わせ・バンドリング、市場閉鎖などの企業戦略は、日本にお いては私的独占や不公正な取引方法として規制され、当局により排除措置命令が課せられる可能性がありま す。排除措置命令が課せられない場合であっても、独禁法違反を理由として民事訴訟が引き起こされる可能性 もあります。NERAは、議論が行われている企業戦略の経済合理性の経済分析や、損害賠償額の算定を行っ ています。 (4) 優越的地位濫用-我が国では、近年、優越的地位濫用規制が強化されており、小売業を中心とした摘発が相 次ぎ、巨額な課徴金が課せられるリスクが高まっています。NERAは、当局による審査の段階から、企業の取 引データ等の詳細な分析を行い、優越的地位の有無や濫用の嫌疑がかけられている行為の合理性について 定量的な分析を実施しました。 (5) アンケート調査の設計と分析-NERAは、専門家の観点からアンケート調査(サーベイリサーチ)の知見を活用 し、当局による審査の妥当性について検証を行っています。また、審査や訴訟の場面においてアンケート調査 に基づく証拠の作成や、相手側のアンケート調査の検討を行っています。 (6) 政策・規制関連調査-NERAは、専門知識や関連実務経験を活かして、政府や企業からの依頼を受けて、独 禁法や競争政策に関わる政策や規制に関わる調査や経済分析を行っています。 日本における主要実績 (1) 鉄鋼業界における経営統合-我が国の鉄鋼業界にお (8) 小売業における優越的地位の濫用被疑事件-ある小 売チェーンストアは、納入業者に対して優越的地位の ける経営統合が日米欧及びその他の競争当局による 濫用に相当する行為を行っているとして、公正取引委 独占禁止法上の審査を受けることになり、NERAは、規 員会による調査をうけました。NERAは、小売チェーン 制リスクが高いと想定されるいくつかの領域についての の優越的地位の有無についてガイドラインや経済理論 経済分析を実施しました。地理的な市場の範囲に係わ に基づく検討を行い、小売チェーンに一方的に優越的 る価格分析や、商品範囲に係わる需要関数の推定と臨 地位があるとはいえないことを示しました。また、濫用の 界弾力性分析(SSNIPテスト)を実施し、当局による競 嫌疑がかけられていた行為の定量分析を実施し、小売 争制限の懸念を軽減することに貢献しました。 チェーン側の被疑行為は納入業者を不利にするという (2) 電子部品産業における部品事業の買収-日系電子部 よりもむしろ利益をもたらしていることを明らかにしまし 品企業Aは、ライバル企業Bからある部品事業を買収す た。このようなNERAの分析は、課徴金を大幅に減少さ る計画を有していました。しかし、買収によりその部品 せることに貢献しました。 事業の市場集中度は著しく高くなり、当局から禁止され る強い懸念が存在しました。NERAは、その事業部門 (9) ゆうパック事件-郵政公社とヤマト運輸の間でゆうパッ クの価格改訂が不当廉売に当たるかどうか争われた訴 の市場集中度は見かけ上は著しく高くなるとしても、そ 訟において、NERAはヤマト運輸の依頼を受けてゆうパ の関連市場での競争が激しいことから、競争は実質的 ックの不当廉売性について経済分析を行い、また、損 に制限されることはないことを示す様々な経済分析を行 害額の推定を行いました。 いました。当局は、二次審査に行くまでもなく、当該買収 を認可する判断を行いました。 NERAとは (3) 化学産業における事業統合-非常に広範に渡る化学 製品を製造販売する企業の統合計画では、市場画定 が大きな争点となり、NERAは価格分析と需要関数の 推定を行い、各都道府県や地域ブロックよりは全国で 市場画定をすることが妥当であることを示しました。当 局は市場画定としては狭い認定を行いましたが、競争 分析の段階で地域間の強い競合関係を認める判断を 示しました。 NERA エコノミックコンサルティング(www.nera.com)は、経 済学、ファイナンス、統計学の専門知識を有するエコノミスト を擁し、ビジネスおよび法律上の難問へのソリューションを 提供する国際的コンサルティングファームです。 NERAのエコノミストは、半世紀にわたり、政府系機関や世 界中の主要な法律事務所および企業向けに、戦略策定や 調査研究、報告書の作成、法廷における専門家証言、政府 (4) 米国カルテル事件(1)-米国司法省によってカルテル嫌 当局への政策提言を行ってきました。NERAのエコノミスト 疑がかけられていた企業に対してNERAは、代理人と は、学問的厳密さ、客観性、実務経験を携え、競争や規制、 なっている弁護士事務所をサポートして取引データの 公共政策、戦略、財務・金融、訴訟等、幅広い分野で問題 詳細な検討や定量的な分析を米国司法省の審査対応 解決に関与しています。 として実施しました。これらの分析は、罰金や刑事罰の 軽減に繋がりました。 最先端のアプローチを用いて明瞭かつ納得のいく説明を行 (5) 米国カルテル事件(2)-米国司法省との間で司法取引 うNERAの姿勢は、偏りのない結果へのこだわり、質の高い による解決後に生じた損害賠償に関わる民事訴訟の対 サービス及び独立性の定評とともに、クライアントから高く評 応の場面で、NERAはカルテルの効果の分析及び損害 価されています。世界最大級のコンサルティングファームな 賠償額の算定を行い、和解交渉の支援を行いました。 らではの資源や信頼感に裏打ちされたNERAの専門家チー NERAの厳密な分析の結果、和解金額は当初の想定 ムがもつ真摯な姿勢と専門技能は、クライアントから厚く信 よりも大幅に低く、早期の解決が可能となりました。 頼されています。 (6) カルテル事件(3)-カルテルにおける直接被害者からの NERAは、米国ニューヨーク州に本部を構え、現在、北米や 損害賠償請求に関わり、NERAはカルテルの効果の推 欧州、アジア太平洋地域に25カ所以上の拠点を展開してい 定及び損害賠償額の算定を行いました。当事者は、 ます。 NERAの客観的な分析を前提に交渉を行い、直接被害 者からの請求額よりも大幅に低い金額で和解に成功し お問い合わせ ました。 (7) 化学製品メーカーのカルテル嫌疑-NERAは公正取引 委員会からカルテル嫌疑がかけられた化学製品メーカ ーの価格を統計的に分析し、価格がカルテルによって 必ずしも説明できないことを示しました。 石垣 浩晶 東京事務所代表/ヴァイスプレジデント 03-3500-3295 [email protected] 金子 直也 シニアコンサルタント 03-3500-3294 [email protected]
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