第1節 FP(ファイナンシャルプランナー) 1とは何か? 1 家計のホームドクター 2 FP は「家計のホームドクター」と説明されます。 日々の生活を送るために必要となる収入や支出等のお金の流れを「家計」と 呼びますが、こうした家計(お金)を管理する方法を体系的に学ぶ機会はほ とんどないままに、今までの経験やその時々の周りからのアドバイスに従っ て生活を営んでいる方がほとんどでしょう。 このこと自体が悪いわけではありませんし、必要な支出を賄えるだけの収入 を常に確保できているのであれば問題ないのですが、世の中が複雑になって いている現代では、 「知らなかったことで不利益を被る」ケースも少なくあり ません。 例えば、住宅を買う時や子どもの教育資金の負担が重なった時、病気やケガ で入院した時などに必要となるまとまったお金は、その時の収入だけでカバ ーできない可能性が高いので、事前に今後の出来事を想定し、それに向けて の準備をしておくかが重要な要素となってきます。また、退職して仕事によ る収入が無くなった場合に備えるためには、そこから先の人生で必要となる 資金計画を考えておくことはもちろん、老後の収入の柱となる「年金」の知 識などが欠かせなくなります。 お金に対する考え方や生活の状況は人によって様々ですが、こうした人生に おける様々なお金との関わりに対して、その人の現在の状況(家族構成や収 支状況、資産の状況など)と、将来の希望(ライフプラン上の夢)を基にし て、実現するために必要な今後のマネープラン・生活設計プランを作成する 専門家がファイナンシャルプランナーなのです。 1 「ファイナンス(finance)」は金融・財務・財政という意味で、「プランナー(planner)」はプランを 立てる人なので、「ファイナンシャルプランナーは、お金に関する包括的な計画を立てる専門家のことを いう) 2 「家計のホームドクター」は NPO 法人日本 FP 協会の登録商標である 2 FP 資格の種類 日本における FP 資格には「特定非営利活動(NPO)法人日本ファイナンシャル・ プランナーズ協会」が認定する「AFP(Affrieited Finanncial Plannner)」と「CFP (Certifid Finanncial Planner)」、そして厚生労働省が認定する「ファイナンシ ャルプランニング技能士(1 級~3 級)」の 2 種類があり、これらの資格を持つ人 を総称して「ファイナンシャルプランナー(FP)と呼びます。 3 自分の人生を考えてみよう 人は 1 年に 1 つずつ歳を重ねるので、現在 20 歳であれば、10 年後には 30 歳、 40 年後には 60 歳になります。では、その時の自分はどんな生活を送っているで しょうか? 将来のことを正確に予測することはできませんが、 「この年齢ぐらいの時には、こ んなことをしていたい」という想いがあるならば、そのために「今できること」 を考え、実行することはとても大切です。 ファイナンシャルプランニングは「お金に関する計画」ですが、ただ単に「お金 を貯める」という話ではなく、自分自身が実現したい夢や希望のために必要とな るお金を計画的に準備したり、そのために必要な日々の支出のコントロールなど を行うものであり、その前提となるのが自分の「ライフプラン(生活設計)」なの です。 もちろん、最初からすべてのことを想像できるわけではありませんし、旅行や趣 味のように、自分の好きなことのためにお金を使う場面も多くあります。いずれ にしても、いきあたりばったりでお金を使ってしまい、 「こんなはずじゃなかった のに・・」とならないよう、お金を上手くコントロールし、活かしていくことが 大切といえるでしょう。 <ライフプランの例> プライベート・家族 仕事 22歳 卒業 就職 30歳 結婚? 32歳 33歳 第一子誕生? 36歳 第二子誕生? 39歳 住宅の取得? 58歳 子育ての終了? 転職?独立? 65歳 退職?引退? 80歳 4 4.1 FP 技能士資格を活用する場面 生活の中での活用 ファイナンシャルプランナーの資格を取得する一番の魅力は、自分自身のこれか らの生活の役に立つ、ということです。 通常、資格試験というのは「その分野の専門家になるための知識を問う」ために 「専門分野を深く掘り下げる」ものですが、FP の学習内容は、 「生活にまつわるお 金周りの知識を広く浅く習得する」ことなので、資産運用、年金、税金、保険、 ローン、相続や贈与など、これからの人生において知っておきたいお金の知識を、 包括的に学べます。つまり、 「 学習した内容がそのまま自分の生活に役立つ」上に、 身近な人のためにも役立てることができるのです。 4.2 仕事の中での活用 FP 資格を生かせる仕事は幅広い分野にわたります。まず銀行や証券、保険などの 金融機関では、自社で扱う商品が様々な分野に広がっている上、お客様からの多 様な質問や要望にお応えできなくてはいけません。また、商品の提案の際にも、 単に内容を説明するだけではなく、その方のライフプランに合わせた提案をして いくことの重要性が高まっています。さらに、住宅メーカーなどでもお客様への 住まいの提案に際して、将来のライフプランに基づいたアドバイスが求められま す。 こうした業種では、FP の資格取得を奨励しているケースが多くなっており、また、 一定以上の役職になるためには資格取得を義務付けているケースも珍しくありま せん。企業によって違いはありますが、 「資格を持っていると役に立つ」というよ り、「資格を取ることが必然」と言えるかもしれません。 それ以外でも、会社の人事や労務、総務部門、あるいは労働組合などにおいても、 単に仕事を充実させるだけはなく、自分自身の生活を自分で考えて守っていける ように、ライフプランの考え方を重視した取り組みが多くみられるようになって いるので、どの業種で仕事をするか、ということに関係なく、誰にでも必要とな る知識であり考え方である、といえるでしょう。 また、税理士や社会保険労務士、司法書士、行政書士など、より専門的な資格を 目指す場合にも、FP 資格は役立ちます。お客様との会話の中で、自分の専門分野 以外のことが出てきた時にも適切なアドバイスができる専門家は業務の幅が広が るとともに、お客様との信頼関係、絆などを深めることが期待できます。 他資格の取得を考えている人にとっても、FP の学習で学ぶ「幅広い分野の知識」 をバランスよく身に付けることで、次のステップに進みやすくなるという面もあ るのです。
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