キャッシュフロー計算書とは ©2015 TOSHO Co., Ltd. All Rights Reserved. TOSHO.Co.,Ltd. 1 CF(キャッシュフロー)計算書とは CF計算書は貸借対照表と損益計算書と並ぶ財務諸表の一つで、会計年度内で企業のキャッシ ュ(現金及び現金同等物)がどれだけ増減したかを表しています。 ※現金:現金及び自由に引き出せる預金(当座預金等) ※現金同等物:換金が容易、価値の変動リスクの小さい投資(コーマーシャル・ペーパー等) 損益計算書上では黒字であるにも関わらず、資金繰りに行き詰まって倒産してしまう所謂「黒字倒産」 がしばしば見られる昨今、CF計算書は企業の資金事情を見る一つのツールと言えます。 CF計算書は大きく分けて「営業活動によるCF」・「投資活動によるCF」・「財務活動によるCF」で構成さ れており、企業がどこから資金を得ているかをある程度知ることができます。 「売上→現金収入」・「仕入→現金支払」、これらにタイムラグの生じる企業の取引において、実際にど れだけキャッシュが増減したかを把握できるCF計算書の重要性は高まりつつあります。 TOSHO.Co.,Ltd. 2 営業CFとは 増加要因 営業CFとは企業が営業活動によって1年間でど れだけのキャッシュを生み出したかを表したもの であり、CF計算書においても大きな割合を占めて おり、最も重要視されている項目でもあります。 黒字企業であっても営業CFがマイナスであれば 不足する資金を資産の売却や外部からの借入等 の方法で調達する必要があり、後々の経営を圧 迫する要因となる恐れがあります。 上場会社等では、営業CFのマイナスの継続に よって、「継続企業の前提に関する重要事象」あ るいは「ゴーイング・コンサーンの注記」が付され ることも少なくありません。 「税金等調整前当期利益」に右表にある増加要 因及び減少要因を加減することで営業CFを算出 します。 減少要因 税金等調整前当期利益 減価償却費 減損損失 売上債権の減少 売上債権の増加 棚卸資産の減少 棚卸資産の増加 仕入債務の増加 仕入債務の減少 有価証券等売却損 有価証券等売却益 ※減価償却費や減損損失は損益計算上は損失として 処理されているが実際にキャッシュが減っているわけ ではないためCF計算書上ではその分を加算 ※売上債権の減少はそれだけ回収が進んだというこ とでキャッシュは増加 ※棚卸資産の減少はそれだけ販売が進んだというこ とでキャシュは増加 ※仕入債務の増加はそれだけ支払いをしていないと いうことでキャッシュは増加 TOSHO.Co.,Ltd. 3 投資CFとは 投資CFとは企業の投資活動に関するキャ ッシュの動きを表しています。 企業の営業力や生産力向上のための「設 備投資」や、資金運用を目的に株式や金融 商品への「証券投資」、第三者に対する「貸 付け」といったものが該当します。 投資は将来的にキャッシュを生み出します ので、何にどれだけ投資したかを見ることで 企業の戦略を把握する手助けとなります。 投資CFは一般的にマイナスとなりますが 継続してマイナスが続いているにも関わら ず営業CFの増加が見られない場合は適切 な投資がなされていない恐れがあります。 貸付けに関しても、継続的に貸付けをして いるものの回収が見られない場合は貸借対 照表の「貸付金」が不良化しているという見 方も出来ます。 増加要因 減少要因 固定資産売却 固定資産取得 有価証券等売却 有価証券等取得 貸付け回収 貸付け ・営業CFを計算する際に減算していた固定資産や有価証 券等の売却益や売却損はこの投資CFの項目での扱いとな ります。 ・損益計算書上では「有価証券等売却益」もしくは「有価証 券等売却損」と損益だけの表記ですが、CF計算書では「期 中に取得した金額」と「期中売却した金額」と分けて表記しま す。 ・固定資産の売買に関しても同様に「期中に取得した金額」 と「期中売却した金額」と分けて表記します。 TOSHO.Co.,Ltd. 4 財務CFとは 財務CFとは、企業が営業活動及び投資活 動によってどれだけ資金を調達したかあるい は返済したかを表しています。 資金不足の企業は経営を維持するために 外部から資金を調達しなければならないた め、この財務CFのプラスが大きくなってしま います。 特に注目されている項目は「借入」に関す る部分で、期中に借入によってどれだけ調達 したか、どれだけ返済できたかを把握するこ とが出来ます。 逆に、業績不振にも関わらず財務CFがマ イナスの場合、外部からの調達がない一方 で返済等に追われているという見方もできま す。 増加要因 減少要因 借入 借入返済 社債発行 社債償還 株式発行 自己株式取得 配当金の支払 ※財務CFのキャッシュの増減は貸借対照表の負債や 株主資本へ影響します。 ・借入や社債での調達であれば負債の増加、それらを 返済・償還すれば負債の減少に繋がります。 ・株式発行による資金調達であれば株主資本の増加、 自己株式の取得であれば株主資本の減少に繋がりま す。 TOSHO.Co.,Ltd. 5 フリーCF キャッシュフローの基本的な指標として「フリー CF」があります。これは、企業が自由に使えるキ ャッシュを指しており、営業CFと投資CFによって 求められます。 健全な企業であれば営業CFはプラス、投資CF がマイナスとなっています。フリーCFがプラスで あれば、本業で得たキャッシュを成長への投資 に使った上で、キャッシュが残っており、企業は それらを借入の返済や配当に使える余裕がある 状態です。 成長への大きな投資をすることで、 短期的にフリーCFがマイナスとなることもありま すが、その投資が適切であれば翌期からの営業 CF増加に繋がりフリーCFをプラスにする要因と なります。 長期的にフリーCFがマイナスであれば企業の 資金事情が悪化していると推測できます。 また、フリーCFがプラスであっても営業CFがマ イナス、投資CFがプラスといったケースでは事 業縮小が更なる営業CF減少を招く恐れがありま す。 営業CF 投資CF フリーCF 負債圧縮 次期繰越 TOSHO.Co.,Ltd. 6 CFの構成による分類 営業CF 投資CF 財務CF A + - - B + - + C + + - D + + + E - - - F - - + G - + - H - + + 「営業CF」・「投資CF」・「財務CF」がそれぞれ プラスかマイナスかによって大きく左表の8パタ ーンに分類できます。 この中で営業CFがマイナスとなっているE~H は本業でキャッシュを生み出せていないためA ~Dに比べ注意度は高いと言えます。 Eは外部からも調達が出来ず過去の蓄積を投 資に使っているため、過去の蓄積がどれだけ残 っているかが重要になります。 Fは外部から調達し投資することで事業の再建 を図っていると見ることができます。 Gは資産の売却により借入等の返済をしており 金融機関等からの支援が受けられていない可能 性があり、危険度が高いと言えます。 Hは資産の売却に加え外部からの調達なしで は資金繰りを維持できておらず、危険度は非常 に高いと言えます。 TOSHO.Co.,Ltd. 7 財務三表の活用 ・貸借対照表:期末の資産状況 ・損益計算書:1年間の収益状況 ・CF計算書:1年間の資金状況 貸借対照表 損益計算書 CF計算書 財務三表にはそれぞれの役割があり、与信管 理においていずれかを蔑ろにはできません。 財務分析と言うと、自己資本比率や流動比率、 粗利率や経常利益率といった貸借対照表や損 益計算書に目を向けられがちです。 そういった指標に、CF計算書による資金状況 を加えることでより企業の状況を把握することが 可能となります。 TOSHO.Co.,Ltd. 8
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