取引先倒産とその事前兆候(1)(PDF

取引先倒産とその事前兆候
(その1)
■ 倒産とは何か?
■ 企業が倒産に至る典型的パターン
TOSHO.Co.,Ltd
(C) 2016 TOSHO Co.,Ltd.
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倒産とは何か?
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倒産とは?(1/2)
危ない会社の特徴、兆候を考える前に、まず倒産とは何かについて整理してみます。
倒産とは?
政府機関等の組織を除けば、「絶対につぶれない会社」「永久に存続する組織」はありません。では、いったい倒産という
のはどういう状態のことでしょうか。そもそも倒産とは法律上の言葉でもないため明確な定義はありませんが、簡単に言え
ば「資金繰りに行き詰って事業が継続できなくなる状態」 (あるいはその恐れのある状態)のことです。「借金が返せなくな
る」「仕入先に代金を払えなくなる」「従業員に給与が払えなくなる」など、お金を約束どおりに支払うことができなくな
り、他人に迷惑をかけ会社の「信用」が失墜して事業継続が困難になった状態を、一般的には倒産と言っています。
典型的な倒産状態について
典型的な倒産状態としては、以下のようなものがあります。
(1) 6ヶ月以内に手形不渡り2回出すと銀行取引停止になり、実質的に事業継続が困難になること
(2) 破産申立てを行ない清算することや、民事再生法や会社更生法に基づく法的整理
(3) その他、法的整理によらない私的整理(内整理・任意整理)、夜逃げ(放置消滅型)、等
電子記録債権の支払不能を2回出して取引停止処分を受けることも(1)と同様の状態です。
倒産手続きの形態
なお、倒産処理は上記のように特定の法律に則って裁判所の関与のもと進める法的整理の手続きと、法的整理によらないで
債権者と債務者の協議によって進める私的整理の手続きに分けることができます。また、倒産手続きは清算型と再建型に分
かれます。法的整理の手続きは、裁判所の監督によって債権者の平等が確保できますが、時間・コストがかかり弾力性に難
があります。私的整理は、法的な制約を受けない話し合いのため、柔軟な手続きが可能ですが、大口債権者や悪意のある整
理屋による恣意的な介入を招くこともあり、公平性に問題が発生する可能性があります。
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倒産とは?(2/2)
その他の事業再生手続(準則型私的整理について)
会社が早期に事業再生を図ろうとする場合に、民事再生法などの法的手続を申し立てると、倒産状態ということがオープン
になり、商取引が円滑に継続できなくなってしまうという欠点があります。一方で、旧来型の私的整理の場合には、法的な
制約がないために多数の利害関係者の調整が困難で、いずれも早期の事業再生にとっては障害があります。そこで近年、様
々に整備されてきたのが準則型私的整理手続です。銀行や経団連の紳士協定的な「私的整理ガイドライン」、公正な第三者
が関与する事業再生ADR(裁判外紛争解決手段)、中小企業再生支援協議会や地域経済活性化支援機構による事業再生スキ
ーム、民事調停法の特例としての特定調停手続など、様々な仕組があります。これらは厳密には倒産とは言えないものです
が、主に金融機関を中心に債権カットが行われたり、これらの準則型私的整理も利害関係者の調整がうまくいかなければ、
結局法的整理に移行することもあり、与信業務の立場からは倒産に準ずるものとして認識しておく必要があります。
倒産及び事業再生手続の全体像
破産
法的整理
倒産
清算型
特別清算
民事再生
再建型。清算型へ移行する場合も
会社更生
私的整理
事業再生手続
準則型私的整理
ほとんど清算。一部に再建型も
事業再生ADR
特定調停
私的整理ガイドライン
中小企業再生支援協議会
地域活性化機構
その他の枠組みetc...
再建が前提。失敗すれば法的整理へ
移行も
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企業が倒産に至る典型的パターン
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企業が倒産に至る典型的なパターン(1/2)
会社が倒産に至る要因は様々ですが、会社の信用が傾きはじめてから倒産に至るまでには、典型的なプロ
セスがあります。かつての名門企業や大企業でさえ、平成の大不況下に体力を落とし、中には倒産した会
社があるように、経営というものはどのような会社でも常に順風満帆とは行きません。
時代、市況の変化などによってビジネスモデルが合わなくなると、まず収益と利益に影響が出てきます。
会社はそのような状況に対して、新規事業投資や事業の選択と集中、コスト削減などを通して、様々な経
営改善策を講ずることになります。
その過程のなかで、様々な兆候が現れます。与信管理担当者の立場としては、取引先の経営改善が順調に
進むのか、それとも信用低下に歯止めがかからないのか、信用性の変化を表す兆候を見極めながら慎重に
モニタリングする必要があります。
一般的には、損益面の悪化から財務面の悪化、そして資金繰りの悪化というプロセスを経て倒産に至るの
が普通ですから、各プロセスにおける定量面・定性面に現れる兆候の典型的なパターンを知っておくこと
で、その会社の信用性を判断する基礎となります。
兆候
兆候
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倒産
信用性低下プロセスと兆候のイメージ
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企業が倒産に至る典型的なパターン(2/2)
兆候
P/L改善努力
コア事業への集中、ニュービ
ジネス開発、販売戦略見直し
コスト削減、リストラ、等
収益の悪化
競争激化や商材陳腐化による
売上減少、収益低下、焦付発
生、赤字決算
粉飾決算に
手を染め易い
B/S改善努力
資産・事業の売却、更なるリ
ストラ、資本増強、等
財務の悪化
赤字が定着、資産の不良化、
金利負担大、財務内容が悪化
融通手形、架空取引、
循環取引、高利金融導入
などに走り易い
・開示された決算書と実
際の業況の乖離
・決算書の情報開示に消
極的になる
・経理責任者が退職する
・会計監査人が交代
資金繰りの悪化
C/F改善努力
リスケ要請、主要取引先への
支払条件緩和要請、等
債務超過に転落、仕入先や金
融機関からの信用が低下、資
金調達が困難に
兆候
・不動産登記に大勢の抵当権者、抵当権者の顔ぶ
れが変わる、個人など正体不明の債権者
・ノンバンクの債権譲渡登記、動産譲渡登記
・構造不況業界なのに、不自然な売上高の増加
・その他、業界内での憶測・噂の増加
倒産
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以上は倒産へ至る典型的なパターンの全体イメージですが、取引先が倒産する前には、このように何らか
の兆候が現れることが普通です。そのような取引先に関する異常性の発見、“気付き”が、まず自社の債
権保全の第一歩となります。従いまして、企業の倒産予知に役立つ代表的なシグナルについての理解をし
たうえで、それらをキャッチする努力が欠かせないと言えるでしょう。
危ない会社に見られる具体的な兆候の各論については、
『取引先倒産とその事前兆候(その2)』をご覧ください。
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