-No.86- 2 Life Creation 2015 火の用心はしっかりしているし、隣家から出火した場合は、弁償してもらえるから火災保険に加 入していなくても大丈夫、という考えを持つ人が少なからずいるようです。しかし、もらい火によ る火災で、火元へ損害賠償請求できないケースがあることをご存知ですか?日本には「失火の責任 に関する法律(失火責任法)」という法律があり、失火者(火元)に重大な過失がなければ、法律上は 損害賠償をしなくてもよいことになっています。 失火責任法と損害賠償 故意または過失によって火事を起こして他人に損害を与えた場合、本来であれば民法第 709 条(※1) に規定する不法行為に基づく損害賠償責任を負うことになります。しかし日本では木造住宅が多く、一 旦火災が生じた場合近隣への延焼が広範囲に及び、そのすべての損害賠償を失火者が負うのは苛酷であ るとの理由から、「失火責任法」が定められ、損害賠償責任は免除されています。つまり、隣家からの もらい火や消火活動による被害にあった場合でも、火元に損害賠償を請求できないケースが多くありま す。 この法律により、失火によって他人の家が延焼した場合であっても、失火者に「重大な過失」がなけ れば、損害賠償責任を負わせないことになっています。これは逆の立場から見ると、隣家から出た火災 によって自分の家が焼失してしまった場合でも、隣家へ損害賠償請求ができないということになりま す。 しかし、火元に故意または重大な過失が認められる場合は免除されません。「重大な過失」は、少し 注意すれば事故が起きなかったのに漫然と事態を見過ごしてしまったような場合、例えば以下のような 場合が相当するケースであると考えられています。また、軽度な過失であっても、それが 2 度目となる と重大な過失に該当するという考え方もあります。 ☆重大な過失の例 1. 台所のガスコンロに天ぷら油の入った鍋をかけて加熱中、その場を離れて出火させた。 2. たばこの吸殻が完全に消えたことを確認せず、その吸殻を紙類が入ったビニール製ごみ袋に入れ て放置したまま外出し出火した。 3. 漏電の可能性があり、回線の修理や不在時の回線遮断の指摘を受けたが修理せず、指摘を聞き間 違えて不在時には別の回線を遮断していたところ、漏電により出火した。 さらに、失火責任法で損害賠償義務を免れるのは民法第 709 条の不法行為責任についてのみであるこ とに注意が必要です。借家の居住者自らが火元となった場合、家主に対する損害賠償責任(債務不履行 責任)は免除されないため、失火者は損害賠償責任を負います。 例えば、賃貸住宅の場合、賃借人(入居者)は賃貸人(家主)と賃貸借契約を締結しますが、退去時 には原状を回復して返還する義務を負っているのが一般的です。そしてこれが履行されなかった場合に は、民法第 415 条(※2)に規定する「債務不履行に基づく損害賠償責任」を負うことになります。この 民法第 415 条は失火責任法の適用を受けないため、失火を起こしてしまった賃借人(入居者)は賃貸人 (家主)に対して、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことになります。 (※1) 民法 第 709 条(不法行為による損害賠償) 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償 する責任を負う。 (※2) 民法 第 415 条(債務不履行による損害賠償) 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求する ことができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。 発行責任者 編集責任者 株式会社 来富創造(らいふそうぞう) 〒740-0036 岩国市藤生町 3-38-27 代表取締役 濵村雅彦 TEL:0827-34-5570 FAX:0827-30-8055 ファイナンシャルプランナー 高木奉子 業務内容 1/2 経営労務に関するコンサルティング業務 ファイナンシャルプランニングに関する業務 財産相談 reLife Bank 岩国店 生命保険募集業務 損害保険の代理業務 他 火災保険での近隣への補償 そのため、自分の家からの出火の場合だけでなく、隣家からの延焼火災に備える意味でも、各自が火 災保険を契約しておくことが必要であるということになります。 しかし「無保険」または「保険金額不足」であった場合、近隣住民とトラブルに発展する可能性があ ります。こうしたトラブルをなるべく少なくするためにも、「類焼損害・見舞費用特約」をセットする ことをおすすめします。 類焼損害保険金 保険の対象としている建物もしくはこれに収容される家財または保険の対象としている家財もしく はこれを収容する建物から発生した火災、破裂または爆発の事故により近隣の類焼補償対象物(建物 および建物に収容される動産)に損害が生じた場合に、損害の額(修理費等)から他の保険契約(類 焼先で契約している火災保険等)から支払われる保険金の額を差し引いた額を類焼損害保険金として 支払われます 。 類焼補償対象物に含まれない主なもの ・通貨、有価証券、預貯金証書、印紙、切手 ・ 1 個または 1 組について 30 万円を超える貴金属等 ・商品、原料、材料、見本品、展示品、受託品 等 失火見舞費用保険金 保険の対象としている建物または保険の対象としている家財もしくはこれを収容する建物から発生 した火災、破裂または爆発の事故により第三者の所有物に損害が生じた場合に、支出した見舞金等の 費用の額が失火見舞費用保険金として支払われます。 賃貸住宅の場合、建物自体は家主の所有となるため、家主が建物と家財に対し火災保険を契約してい ることが考えられますが、その保険で補償される家財は家主自身の所有物であり、入居者が所有する家 財は補償されません。入居者が家財の損害に備えるには、自らが家財に対する火災保険を契約する必要 があります。そして、上記のとおり、失火によって戸室を焼失させた場合の家主に対する損害賠償責任 に備えるため、家財の火災保険に特約として「借家人賠償責任補償特約」 (借家人の責に帰すべき火災、 破裂・爆発等で借用戸室を損害し、家主に対して損害賠償責任を負ったときの損害を補償する火災保険 の特約)を付帯(セット)するなどして、これに備える必要があります。 「借家人賠償責任保険(補償特約)」は、借りた戸室に対する損害賠償責任を補償してくれるので、 「ボヤ火災」などの戸室内に生じる損害に備えるうえでは便利な保険です。しかし、例えばガス爆発な どの事故を起こしてしまった場合には、借りた戸室のみならず、近隣の建物にも被害が生じるおそれが あります。近隣の建物は自己が借りた戸室ではないため、 「借家人賠償責任保険(補償特約) 」では補償 されません。このような事態に備えるには、別途、 「個人賠償責任保険(補償特約)」を契約する必要が あります。 「個人賠償責任保険(補償特約)」では、ガス爆発などによる近隣の建物の損壊や住民の身体 の障害(ケガや死亡など)といった損害のほか、水漏れなどによって階下の住民の家財に損害を与えた 場合など、日常生活で発生する様々な賠償事故による損害を補償してくれます。ただし、借りた戸室に 対する損害賠償責任は補償されません。 このため、賃貸住宅に住む場合には、 「借家人賠償責任保険(補償特約) 」と「個人賠償責任保険(補 償特約)」の 2 つの契約があった方が安心です(自己所有の住宅でも、ガス爆発などの事故に備えるに は「個人賠償責任保険(補償特約)」の加入が必要です)。 今回ご紹介した内容は、平成 27 年 2 月現在においての情報であり、今後商品内容の変更等により、 取扱いが変わる場合があります。また、保障内容は概要となりますので、詳細につきましてはパンフレ ット、約款等で必ずご確認ください。 以上 2/2
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