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JAPAN LIFELINE TVI MARKETING REPORT
Vol.038
戸頃 康男
先生 (久喜総合病院 循環器科)
デバイスデリバリーに難渋した高度閉塞病変において
GuideLiner が有用であった 1 例
年齢:70 歳女性 主訴:労作時動悸息切れ 診断:労作性狭心症
冠動脈危険因子:高血圧、脂質代謝異常、糖尿病あり、喫煙歴なし
eGFR 52
標的病変:LAD #7 100% #9 75% 高度石灰化 (Fig.1)
Fig. 1
手技手順
右撓骨動脈アプローチにより 6Fr sheathless JL3.5 を用いて
手技を行った。
Sion(朝日インテック)および Corsair(朝日インテック)
を併用しワイヤークロスを行った。
ワイヤーは、何とか通過するものの Corsair は病変を通過せ
ず (Fig. 2) TAZUNA 1.2mm(テルモ)を用いたが、どうして
も通過できなかった。
Fig. 2
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そのためGuideLinerをできるだけ冠動脈末梢まで
Fig. 3
進めた。ガイドカテーテルもなるべくディープエン
ゲージをした状態で再度TAZUNAを病変へ押し付
けながら何度か拡張を行い、病変への押し付けを持
続させたところ病変クロスに成功した。
IVUSではバルーン抵抗性部位に全周性に近い石灰
化にクラックが入っているのを確認した。
同システムのままHiryuPlus 2.25mm(テルモ)
により再度拡張を行ったがインデンテーションが改
善しなかった(Fig. 3) 。
石灰化が原因であると考えScoreflex 2.5mm(オーバスネイチ)で同部位を20回程度高圧で拡張したところインデンテー
ションは消失した(Fig. 4)。同部位にステント持ち込みを行うも病変を全く通過しなかった。石灰化病変であること及びガイ
ドカテーテルのバックアップが弱いことが通過困難の原因と考え、再度GuideLinerをワイヤーに沿って冠動脈内末梢にで
きるだけ進めた。
そのまま再度ステントの持ち込みを試みたが、今度はGuideLinerのカラー部で抵抗を感じたため、ステント損傷リスクを
考えステントを一旦抜去し、使用済みバルーンにてカラー部での通過抵抗性を確認した(Fig. 5)。バルーンでもカラー部で
軽度の抵抗を感じたため、この状態でのステント持ち込みは諦め体外へGuideLinerを抜去した。
ステントの持ち込みを確実に行うため、ガイドカテ内へGuideLinerを挿入する前に体外で目視と用手でGuideLinerカラー
部にステントが通過したことを確認し、ステントと共にGuideLinerを冠動脈内へ進めた。
Fig. 4
Fig. 5
GuideLinerが病変部まで到達したことを確認した後、GuideLinerだけ引き抜きResolute Integrity 2.5/38(メドトロ
ニック)を高圧留置した(Fig. 6)。続いて、一部ステントが重なる形でResolute Integrity 3.5/33を留置した(Fig. 7)。対角
枝近位部にも狭窄を認め、2.5mmScoreflexで拡張後、Resolute Integrity 3.5/12を留置した(Fig. 8)。本幹、対角枝、そ
れぞれからIVUSを確認し、2.5mm耐圧バルーンで最初にインデンテーションが見られた部分を追加拡張し、(Fig. 9) IVUS
により良好なステント拡張と圧着不良がないことを確認し、手技終了とした(Fig. 10)。
Fig. 6
Fig. 7
Fig. 8
Fig. 9
Fig. 10
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考察
最近のPCIにおいて、治療難易度が高いのはCTO、分岐部病変の治療に加えて、高度石灰化病変である。ロータブレーター
などのデバルキングデバイスが日常的に使用可能ならば石灰化への対処も若干難易度が下がるものの施設基準の問題から未
だに使用できない施設はある。当院もその一つである。
今回は、閉塞期間不明のCTOであったがワイヤーはなんとか通過出来た。しかしその後のデバイス通過は不良であった。病
変そのものは、スコアリングバルーンで対処を行ったが病変へデバイスが未達となる問題がある。スコアリングバルーンは
セミコンバルーンに比較すれば通過性は劣り、デリバリーに難渋することがある。
その場合、デバルキング以外では、以下をメインに行うことが一般的であると考える。
① ガイドカテーテルの形状変更やサイズアップ
② ダブルワイヤー、トリプルワイヤー
③ アンカーリング
④ Mother in child
GuideLiner 取扱時の注意点
Mother in childは確かに有効性が高いが手技が煩雑化し、またエアーエンボリ、造影困難などの問題も懸念される。昨
今、GuideLinerが使用可能となり手技の複雑化を避ける事ができるようになってきた。しかしながら、いつくかの問題点
がある。今回の様に、
① GuideLinerの手前のカラー部分で引っかかり、ステントの持ち込みが困難になる場合(Fig. 11)。
② GuideLinerそのものが冠動脈内で進みにくい場合
③ GuideLinerの変形、などである(Fig. 12)。
今回の症例では、カラー部分で引っかかりステントが変形を来したため、GuideLinerの特に手前部分にステントを予め挿
入しておき、冠動脈内を進めていくことで病変までの持ち込みに成功した。
Fig. 11
Fig. 12
Tips & Tricks
GuideLinerの挿入性を高めるテクニックとして、いわゆるバルーンアンカーテクニック(スリップストリームのようにア
ンカーバルーンをデフレートし、直ぐにGuidelinerを進めるようなテクニック)やGuideLiner先端にバルーンを拡張して
置いておき、そのまま進めていくテクニック(魚雷テクニック)、またGuideLiner手前に拡張デバイスを置いておき、そ
のまま進めていくテクニック等が挙げられる。
今回GuideLinerのガイドカテーテル内でのカラー部位置を変更することが困難であったため、予めGuideLiner内にステ
ントを仕込んで病変クロスに成功した症例であった。この方法はアンカーテクニックと比較すればPushabilityは劣るもの
の、カラー部でのステント損傷は予防できるものであり、一度は試す価値のある方法と考えられたのでここに報告する。ま
た他に行っている予防方法として、体外でGuideLinerカラー部を3.5mm程度のバルーンで拡張しておきフレア状に拡張す
ることで、カラー部でのステントのあたりを外す方法も成功しており、状況によって試すことがある。
術者紹介
久喜総合病院 循環器科
戸頃 康男 先生
2000 年 3 月
2000 年 4 月
2003 年 5 月
2006 年 10 月
2012 年 12 月
杏林大学医学部 卒業
杏林大学医学部付属病院 第 2 内科
葉山ハートセンター 循環器科
上尾中央病院 循環器科 医長
埼玉県厚生連久喜総合病院 循環器内科 医長
2014-11-07-01