日本のデジタル著作権市場 - 日本オーディオブック制作社協会

日本のデジタル著作権市場
~衰退か成長か?~
2015 年 10 月 1 日
日本オーディオブック制作社協会
現在の日本におけるデジタル著作権というと、パソコンやゲーム機のソフトウェアを想
像しますが、書籍における電子書籍やオーディオブックもデジタル著作権の方に分類され
ます。
書籍におけるデジタル著作権は電子書籍が先行して普及しましたが、どちらかというと
アマゾンが黒船として Kindle を持って開国を迫り、市場が広がった印象があります。しか
し、実際の所は電機メーカーが 20 年前に端末を開発していたりするので、ハードウェアで
は無く、ソフトウェアの開拓が市場を作ったと言う事が出来ます。
オーディオブックに関して言えば、再生機器については、専用のプレイヤーやスマートフ
ォン、パソコンなど、一家に一台くらいの数で普及しているので、問題はソフトウェアだと
思います。
メディア各社から指摘されていたりしますが、オーディブルが参入したあと、オーディオ
ブックの作品が劇的に増えたかと言うと、一定数は伸びているかも知れませんが、劇的な伸
びは見受けられません。
日本のオーディオブック市場を調べた結果ですが、前年度に比べれば数字は間違いなく
伸びていますが、それはオーディブルの数字が加わったから伸びただけで有り、純粋な増加
は殆ど見られません。
それというのも、業界最大手のオトバンクの経営状態が悪いらしく、新規作品の制作投資
が滞っているため、伸びていないみたいです。オーディブルについても、既にアマゾンで切
り捨て路線になりそうな気配もありますが、オーディブルの広告をアマゾンジャパンのト
ップ画面で見ることは出来ず、早期サービス終了の可能性も極めて強く感じます。業界大手
のパンローリングはメインビジネスがあり、サブビジネスでオーディオブックを手がけて
いるので、リスクは低いと思いますし、寧ろ今後の業界の台風の目はパンローリングになる
と予想されます。
楽天については、参入の兆しが見えないので、オーディブル、オトバンク、パンローリン
グの三社で市場を動かす事になりますが、オーディブルは日本市場撤退かオトバンクがま
だオーディブルに 2 割弱しかコンテンツを提供していないので、コンテンツを得るために
オトバンクを丸ごと購入する可能性もあります。オトバンクの株主は経営者ではなく、ベン
チャーキャピタルなのと、ベンチャーキャピタルのサイトではオトバンクが紹介されてお
らず、あまり良い事例扱いをされていないので、アマゾンが買収を持ちかければ、意外と簡
単に買収される可能性があります。
それか、オトバンクが生き残りのために、コンテンツのみをアマゾンに売却するというの
もあります。そうなると、オトバンクがオーディオブックの市場に固執する理由が無くなる
ので、事業転換する事になると思います。それか、パンローリングの規模は知りませんが、
パンローリングがオトバンクを買収するというのも有りだと思います。そうすることで、オ
トバンクが持っている出版社のネットワークとパンローリングの資金で、オーディオブッ
クの制作の幅が広がる可能性はあります。
メディア各社から言われる共通の意見として、電子書籍の市場は既に新刊以外は刈り尽
くされていて、伸びしろが無く、成長の見込みは薄いことと、オーディオブックは一度目の
ブームの時点で大失敗し、再起は無いだろうという意見もあります。日経系ではオーディオ
ブック元年とも言われましたが、楽観視は出来ない市場ではあると思います。
以上