平成 27 年 8 月 子育て情報 8月号 椙山女学園大学附属幼稚園 早寝早起きは元気のもと 園長 横尾 尚子 7月号の終わりで、夜更かし・朝寝坊になりかねない夏休みは「生活リズムを大事にしてください」とお 願いしました。早寝早起きを基本とする規則正しい生活リズムづくりは、子どもの成長にとってなぜ大事な のでしょうか。その理由を少しお話させてください。 私たちの身体にある体内時計は、1 日約 25 時間で動いています。そのため、早寝よりも遅寝、昨日より 1 時間ほど遅く寝て、1 時間ほど遅く起きる方が身体的には楽な仕組みになっているようです。この体内時計を 毎日 24 時間にリセットしているのが、朝の目覚めと太陽の光です。脳の視交叉上核(しこうさじょうかく)が、 毎朝太陽の光を視覚で認識することによって、生活リズムを 24 時間に調整しているのだそうです。目覚まし 時計は脳にあるのですね。 私たちの体内にはさまざまなリズムが存在しているそうです。 身体の成長を促進し、脂肪を分解する「成長ホルモン」は、寝入りばなの深睡眠時に分泌のピークがある そうです。抗酸化作用で癌の発生を防いだり、第二次性徴が始まるのを抑えたりする「メラトニン」は、暗 くなると分泌され始め、深夜に分泌のピークを迎えるようです。 「メラトニン」が一生の内で最も多く分泌さ れるのは幼児期で、夜に強烈な光を浴びると分泌が遅れると言われています。夜しっかり眠ることが「成長 ホルモン」と「メラトニン」の分泌を促し、健やかな身体の成長を保証してくれるのですね。まさに、寝る 子は育つという訳です。 さらに、体温の調整も睡眠と関係しています。体温は、明け方安静にしている状態が一番低く、起床と共 に上昇し、午後にピークを迎え、夜寝る前に下がるリズムをもっているそうです。夜 10 時までに寝て、朝 6 時頃に起きると、起床時には体温が 36℃程度まで上昇していて、元気に動き出せる状態(フォーミングアップ OK)になっているのですが、この就寝時間が 2 時間ほど遅れると、体温 36℃までの上昇にほぼ午前中かかって しまいます。そのため、低体温(身体が充分に目覚めていない状態)で午前中ボンヤリ過ごさざるを得ない子 どもが出来上がってしまいます。これでは、遊べません。学べません。 また、朝の光を浴び、歩行やそしゃく、呼吸などのリズミカルな運動によって分泌が高まるのが「セロト ニン」 。気分を穏やかに保つ働きがあるそうです。イライラを防止し、ストレス軽減に一役買ってくれている と言われています。 「セロトニン」は朝起きることで分泌が促進され、日中規則的に分泌されるそうです。 私たちの睡眠時間は減少する一方です。社会全体が昼夜を問わず動き続け、深夜営業のコンビニには、大 人はもちろん、塾帰りの小学生やベビーカーに乗せられた赤ちゃんまでも集まってきます。テレビ、ゲーム、 インターネット、スマホの影響は、確実に子どもの世界に入り込み、睡眠時間を奪っています。 睡眠時間を奪われた子どもの世界に、不機嫌、イライラ、無気力が広がっているのではないか、と心配す る声が上がっています。朝からあくびばかりで、機嫌が悪い。すぐ周りの子に手を出す。朝の時間がせわし くて朝食を食べてこないために、午前中の活動を支えるエネルギーが不足している。低体温で動けない。そ んな子ども達がいます。寝不足の朝食抜きで登園・登校すると、脳が栄養失調状態になり、集中力に欠けた りイライラしたりすることにもなるそうです。「早寝、早起き、朝ごはん」は、やはり大切なんですね。 生活リズムは、生後4ヶ月位から育ち始め、5~6歳頃に完成すると言われています。幼な子を育ててい る私たち大人が、まず大事にしなければならないのは「生活リズムづくり」 。子ども達がそれぞれの持てる力 をフルに発揮して、遊べるように、学べるように、その土台となる生活リズムづくりに親子で取り組みまし ょう。想い出多い夏休みをお過ごしください。
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