衆議院比例代表定数の

衆議院の比例代表選出の定数を減らそうという動きがあります。
これは政権与党である民主党が中心となっているもので、比例定数
を現行の180から100へと80議席も減らそうとするものです。
衆議院だけでなく、さらに参議院の定数(現行、選挙区146、比
例96、合計242)も40も削減する動きが表面化しています。
衆議院の現行定数合計480は「多すぎる」のでしょうか?
民主党が“モデル”にしているイギリスでは、日本の衆議院に相当
する下院の定数は650です。イギリスの人口は日本の半分以下なの
で、人口比率では日本の約3倍の定数です。
「無駄を省く」は、口実に過ぎず、真の狙いは小選挙区の割合を高め、憲法改悪反対、あるいは消費税増税反
対などの多様な意見を国会から締め出すことです。憲法改悪のために戦後一貫して小選挙区制の導入がねらわ
れ、改憲論者である民主党小沢幹事長はかねてから小選挙区制が最もよいと公言しており、財界も完全小選挙区
制を強く主張しています。
現在の衆議院議員選挙は、小選挙区比例代表並立制といわれるもので、1994年
に導入されました。
有権者は小選挙区に1票、比例代表に1票の計2票を投票することができますが、
衆議院の総定数は480名のうち、小選挙区300名、比例代表180名で、現在でも
小選挙区優位の制度となっており、日本の現行制度の基本は小選挙区制です。
現行制度の導入前は、一つの選挙区から3~5人を選
出するという中選挙区制度でした。これは、少数政党か
らの議員の選出を可能とするもので、比例代表選挙に準
じたものとされていました。しかし、「政治改革」の名
のもとに、小選挙区制と比例代表制というまったく異質
な制度を足すという妥協がはかられたものです。
1994 年 2000 年~ 2010 年~?
小選挙区
300
300
300
比例区
200
180
100?
総議員数
500
480
400?
当初は、比例定数は200でしたが、2000年に20議席減らされて現在にいたっています。
それをさらに減らそうというのですから、小選挙区制の強化にほかならず、さらには完全小選挙区制実
現が狙われているといえるでしょう。
小選挙区制は、一つの選挙区から一人しか当選できませんので、その
当選者以外に投じられた票は、議席には結びつかず、「死票」となって
しまいます。このため、多様な民意は反映されるとはいえず、また、自
分の票が死票とならないように、本当は支持していなくても、当選しそ
うな候補者に投票するという有権者の行動も指摘されており、結局、民
意を正確には反映しない多数派を無理やりつくることになります。
2005年の衆議院選挙の小選挙区で自民党は47.8%の得票で73%の
議席を、2009年の衆議院選挙では民主党は47.4%の得票で73.7%の
議席を獲得しています。
それに対して、比例代表制は議席が得票数に比例して配分される制度
ですから、投票が議席に結びつき、多様な民意を正確に反映し、死票が
生じない制度です。「小党乱立で政治の安定性が確保できなくなる」と
の批判もありますが、国会での十分な議論により政策ごとに多数派の形
成は可能です。
2005 年総選挙
2009 年総選挙
小選挙区
得票率
議席占有率
得票率
議席占有率
民主党
36.4%
17.3%
47.4%
73.7%
自民党
47.8%
73.0%
38.6%
21.3%
かつて、鳩山内閣、田中内閣等は憲法改悪のために小選挙区制の導入を画策し、そのたびごとに広範
な世論の反対で阻止してきました。
中選挙区制→小選挙区比例代表並立制導入→比例代表議席の削減という流れの先には、完全小選挙区
制の実現という意図がみえます。最終的には、憲法の改悪がねらわれているといえるでしょう。
民意の正確な反映を第一として選挙制度を変更するとすれば、慎重に検討する必要があります。
選挙制度を小選挙区制の強化という方向に変えるのではなく、中選挙区制の復活も含め、多様な民意
を反映できる比例代表制度を基本とした制度が今求められているのではないでしょうか。