(2012). Effects of task complexity and pre

SLAA 発表資料(輪読)
Task-Based Language Teaching in Foreign Language Contexts
2015/05/08
K.Y
Chapter 2
Effects of task complexity and pre-task planning on Japanese EFL learners’
oral production (pp.23-42)
Shoko Sasayama and Shinichi Izumi
University of Hawaii at Manoa, USA and Sophia University, Japan
Abstract
この研究では、タスクの複雑さとタスク前の計画が EFL 学習者の口頭産出に与える影響
を調査することによって Skehan (1996, 1998)の制限容量仮説(the limited capacity
hypothesis)と Robinson (1995, 2003)の認知仮説 (the cognition hypothesis)を検証しよう
とした。調査の結果は、次のことを表している。
(a) タスクの複雑さが高いものはシンタックスの複雑さの specific measure にポジテ
ィブに影響するが、全体的な正確さと流暢さにはネガティブに影響する。
(b) 計画の時間は全体のシンタックスの複雑さにポジティブに影響するが、流暢さには
ネガティブに影響する。
これらの発見は Robinson の仮説と Skehan の仮説を部分的に支持し、部分的に妥当ではな
いとしている。
1. Introduction
L2 教室でのタスクの使用は、最近とても人気になってきている。タスクは、学習者が意
味に注意を向けられるのと同時に意味を伝えるために必要な形にも注意を向けられるよう
にデザインされている。したがってタスクは、form-meaning のつながりの発達を促進する
ために有用な手段だと考えられている。しかし、どのようなタスクが効果的なのか、どの
ような状況の下で行うのが効果的なのかというような未解決の問題がまだある。多くの
SLA 研究者は、さまざまな要因が学習過程に影響を与えるということを認めている。今回
の研究では、次の 2 つの要因に焦点を当てている。

タスクに参加する前に、発話を計画する時間を学習者に与えることは、学習者の
言語使用にどのように影響するか。

タスク自体の複雑さは、学習者の言語使用にどのように影響するか。
2. Task complexity and L2 task performance
2.1. Task performance and attentional capacity
最近の SLA に関する文献には、相反する 2 つの主要な主張が存在する。Skehan (1996,
1998)による制限容量仮説(the limited capacity hypothesis)と、Robinson (1995, 2001,
2003, 2005, 2007)による認知仮説(the cognition hypothesis)である。
1
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
制限容量仮説 (the limited capacity hypothesis)
学習者は、言語使用の主要な 3 つの側面(複雑さ・正確さ・流暢さ)に同時に注意を払
うことはできない。1 つの側面に注意を払うことで、他の側面への注意が損なわれる
であろう。

認知仮説 (the cognition hypothesis)
学習者は、言語運用の異なる側面に注目することができる。構造上の複雑さと正確
さを、談話での機能上の複雑さから生じるものとしてみなす。L2 使用の異なる側面
に同時に注目することは可能なことであるというだけでなく自然なことでもある。
Robinson (2005)は、3 つのカテゴリーに要因を区別した(task complexity, task difficulty,
task condition)。Task complexity はさらに 2 つのカテゴリーに分けられる。

resource-directing dimension: タスクの特定の特徴は、学習者の注意を言語の特定の
側面に向ける。

resource-depleting dimension: タスクの複雑さが増すと、L2 運用の特定の領域ではな
く多くの領域に学習者の注意が分散する。
Skehan (1996, 1998)は、タスクの複雑さを 3 つの主な領域に基づいて分析した。

language: タスクを完了するために、どのくらい複雑な言語が必要とされるか。

cognition: 学習者が持っている知識や情報を引き出す認知的な要求に関すること。

performance conditions: タスクを行っている間参加者が置かれるコミュニケーショ
ンのための重圧に関すること。
これらの要因が、タスク中に学習者がどのように注意を向けるかということに影響してい
る。
2.2. Previous studies on the effects of planning on L2 performance

Foster and Skehan (1996): 個人情報のやり取りを行うタスクでは、複雑さと流暢さよ
りも正確さにより大きな効果があった。一方、物語のタスクでは、複雑さと流暢さが
促進された。

Ortega (1999): シンタックスの複雑さと流暢さへは計画によってポジティブに影響が
あるが、語彙の複雑さにはそうではない。正確さに関しては、名詞修飾の一致に効果
が見られたが、冠詞の一致には見られなかった。

一般に、計画についてのこれまでの研究から 3 つのことが明らかになった。
(a) タスク前の計画は主として L2 学習者の流暢さとシンタックスの複雑さを促進する。
(b) 正確さに関しては一致した結果がない。
(c) これら 3 つの側面はタスク前の計画では向上しないかもしれない。
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2.3. Previous studies on the effects of inherent task characteristics on L2 performance

Robinson (1995): 複雑なタスクは、語彙の複雑さを著しく促進した。しかし、シンタ
ックスの複雑さに関しては統計的に重要な違いは見られなかった。

Robinson (2007): 正確さ、シンタックスの複雑さ、流暢さに関しては、異なるタスク
間において統計的に重要な違いは見られなかったが、語彙の複雑さの影響はより簡単
なタスクに見られた。

Ishikawa (2007): 複雑なタスクでは、シンタックスの複雑さと正確さが著しく高くな
った。流暢さにはネガティブな影響があった。

Gilabert (2007): 計画は、流暢さと語彙の複雑さを著しく促進したが、シンタックスの
複雑さと正確さは促進しなかった。
2.4. Research aims and hypotheses
RQ1. Resource-directing dimension ([±few elements])と resource-depleting dimension
([±planning])に沿ったタスクの複雑さの操作は、複雑さ・正確さ・流暢さの観点か
ら L2 学習者のタスクパフォーマンスにどのような影響があるか。
RQ2. 特定のものを尺度として分析することは、L2 タスクパフォーマンスの複雑さと正確
さに対する全体的な尺度を使って分析することとどのように異なるか。
Hypothesis 1: 複雑なタスクは、より複雑で正確だがあまり流暢ではない発言を引き出すだ
ろう。
Hypothesis 2: 複雑さと正確さの明確な尺度は、Robinson の認知仮説に証拠となる土台を
与えるだろう。
Hypothesis 3: 計画する人は、正確さへは影響を受けないのと同時に、計画しない人より複
雑で流暢な発言を産出するだろう。
Hypothesis 4: resource- depleting で複雑さが減少することは、resource-directing で増加
する attention-directing effect を支持するだろう。
3. Methodology
3.1. Participants
7 人の男子生徒と 16 人の女子生徒の 23 人の日本人 EFL 高校生。彼らの学校での英語の
授業は能力別にクラス編成がなされていて、23 人は最もレベルの高いクラスにいる。しか
し、クラス分けは生徒の筆記の知識に基づいているので、オーラル熟達度は一様ではなく
制限されている。
3.2. Tasks and procedures
被験者には、複雑さの異なる 2 つのモノローグの物語のタスクが課せられた。簡単なタ
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スクでは、2 人の登場人物がいる一連の絵について語ることが求められ、複雑なタスクでは、
4 人の男性、1 人の女性、1 人の警察官、2 人の救急隊員、1 匹の犬がいる一連の絵につい
て語ることが求められた。
実験は 2 日間に分けて行われた。被験者全員が簡単なタスクと複雑なタスクの両方を行
った。どちらのタスクでも 10 人には計画の時間が与えられ、残りの 13 人には与えられな
かった。計画する被験者にはタスク前の計画として 5 分間与えられ、計画しない被験者は
絵に精通するために 1 分間しか与えられなかった。
3.3. Data analysis
被験者の発話は T ユニットと従属節に分けられた。T ユニットは主節として定義された
(Hunt, 1970, p.189)。今回の研究ではモノローグタスクが省略の発話をほとんど引き出さな
かったので T ユニットが選ばれた。従属節は、等位関係、従属関係、埋め込みを含んでい
るものとして定義された (Celce-Murcia & Larsen-Freeman, 1999)。

シンタックスの複雑さ: T ユニットごとの節で分析。

語彙の多様性: the mean segmental type/token ratio (MSTTR)を計算して測定。

正確さ: 誤りがない節のパーセンテージを計算して分析。

流暢さ: 繰り返して言われた語や句のパーセンテージを計算して分析。繰り返しは、逐
語的な繰り返しと置き換えの繰り返しの 2 つのタイプに分けられた。
4. Results
4.1. Analysis by global measures

複雑なタスクでは、簡単なタスクとほとんど同じ割合の T ユニットごとの節が引き出
された。

計画を行った被験者は、行わなかった被験者よりも T ユニットごとの節を多く産出し
た。
4
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
語彙の複雑さ: すべての状況でほとんど同じスコアが得られた。タスクの複雑さの影響
は無く(F = 0.83, p = .37)、計画の有無も影響は無かった(F = 0.37, p = .55)。

正確さ: 複雑なタスクより簡単なタスクのほうがより正確な発話を産出した(F = 21.00,
p < .01)。計画を行うことは、学習者の言語の正確さにそれほど影響は無かった(F = 1.56,
p = .23)。
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
流暢さ: 簡単なタスクよりも複雑なタスクのほうがより流暢ではない発話を産出し(F
= 6.12, p < .05)、計画を行わないよりも行うほうがより流暢ではない発話を産出した(F
= 5.81, p < .05)。

繰り返しを 2 つに分けて分析すると、複雑なタスクでは逐語的な繰り返しが多くあっ
た。しかし、置き換えの繰り返しは複雑なタスクも簡単なタスクも重要な違いは無か
った。計画を行った被験者は行わなかった被験者よりも逐語的な繰り返しが多かった
が、置き換えの繰り返しには重要な違いは見られなかった。

簡単なタスクで計画を行わない場合、流暢さが最も良く促進された。
4.2. Analysis by specific measures

複雑なタスクでは簡単なタスクよりも名詞修飾語の使用が著しく多い。

計画の有無は、名詞修飾語の使用にそれほど影響は無かった。

正確さに関しては、違いはほとんど見られなかった。
5. Discussion
仮説 1 は、流暢さの測定によって裏付けられたが、シンタックスの複雑さ、語彙の多様
性、正確さによっては裏付けられなかった。実際、正確さの測定結果は、仮説 1 と反対の
ことを示している。複雑なタスクの場合、複雑な筋書きを伝えるための考えを整理するこ
とが必要となるので、正確さに注意を払うことを妨げられたかもしれないということがあ
りえる。
The global complexity measures では、タスクの複雑さへのポジティブな影響を得るこ
とはできなかったが、the specific measure は、簡単なタスクよりも複雑なタスクのほうが
名詞修飾語の使用がより多かったということを示した点において、仮説 2 は部分的に裏付
けられた。タスクの複雑さの調査では global measures が広く使われてきているが、これか
らの研究では、学習者の L2 運用への機能上の要求が増えた結果をより正確に調査できるよ
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うな specific measures を使用することが助けとなるだろう。
仮説 3 は、シンタックスの複雑さの測定では裏付けられたが、流暢さの測定では支持さ
れなかった。繰り返された語の割合を分析すると、計画を行った被験者は行わなかった被
験者より著しく流暢ではない発話を産出したという結果は、タスク前の計画に関する他の
研究とは反対の結果である。
複雑なタスクの場合、学習者は限られた中間言語を用いてより多くのことを考えて表現
しようとしなければいけないので、認知的な過程に対処するための時間を作る必要があっ
たのかもしれない。計画する時間によって、学習者は考えをより精密にしたり言いたいこ
とを付けたしたりできるので、計画する時間がこの状況を悪化させた。それに比べて簡単
なタスクの場合、学習者が語るのは分かりやすくて簡単な話なので、処理する時間を心配
せずに 1 回でタスクを行うことができるのだろう。
仮説 4 は今回の研究では裏付けられなかったが、the specific complexity measure からの
暗示的な証拠(著しい違いはなかったけれども複雑なタスクで計画を行う状況が最も多くの
名詞修飾語を引き出した)があったということは注目されるべきことである。
今回の研究の結果は、限られた言語熟達度の L2 学習者は、複雑さ、正確さ、流暢さに同
時に注意を向けることが困難であるということを示しているようである。同時に、学習者
が向ける注意の配分は、タスクの特性とタスク実施の状況を操作することである程度まで
変えられるようである。研究の結果、いくつかの共通の傾向に注目することができる。
(1) 認知的に複雑なタスクは、タスクに関連があり、複雑な言語構造を引き出すこ
とができる。
(2) タスク前の計画によって、学習者は彼らの中間言語の限界に挑むことができ、
複雑な言語構造を産出することができる。
(3) 簡単なタスクは、流暢さを発達させるために効果的でありうる。
教員は、目的に従ってタスクとタスクの実施状況を選ぶべきであるということが示唆さ
れる。しかし、複雑さ、正確さ、流暢さの点でバランスのとれた言語の発達が、異なるタ
スクと異なる実施状況を通して長期的にはどのように達成されうるかということは、これ
からの研究で見ていかなければならない。
6. Conclusion

Robinson の主張と Skehan の主張は、矛盾しているというよりも互いに補足し合って
いると解釈されるべきである。

これからの研究では、タスクの特定の機能上の要求が学習者の L2 使用に影響を与える
特定の言語の要求とどのように関係しているか調査するために、複雑さと正確さの
task-discourse sensitive measures を用い、2 つの立場を同時に調査していくことが必
要となりそうである。
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